2016年09月27日

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」/分岐ルート後日談

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」の分岐ルートスピンオフ、各ルートの後日談です。


以下のリンクから各ルートに飛びます

ハンタールート
猫耳ルート
勇者ルート







ハンタールート

わいわい

魔姫「綺麗に手入れされた庭園、爽やかなそよ風……紅茶の香りが私に癒やしを与える」

ハンター「……」

魔姫「ね? いいお店でしょ、ハンター」

ハンター「……確かに店はいい。景観もメニューも文句はない。だが……」

魔姫「何よ?」

ハンター「何で、知らん内にここが俺のバイト先になってるんだ!?」

店長「ハンター君、ネクタイ曲がってるよ」

魔姫「だって、店員さんの制服が素敵なんだもの。是非、ハンターに着て欲しくて」

ハンター「いや納得せんぞ」

魔姫「どうせ今日は私の貸切なんだし、楽なお仕事じゃないの」

ハンター「そういう問題では……。ハァ、言い合いしても無駄か」

魔姫「そういうこと。ほら、ネクタイ直してあげるわよ」

ハンター「ありがとうございます、お客様ー」

魔姫「あら照れ隠しに棒読みなんて、可愛い~。心の中ではドキドキしてるんでしょ~?」

ハンター「いや別に。慣れてるからな」

魔姫「………」

ハンター「いつまでかかって……ってオイ」

魔姫「あらハンター、ねじねじネクタイも素敵ねぇ~」

ハンター「お前な……。そういうイタズラするところがお子様だな」

魔姫「そのお子様に惚れた貴方は少女趣味なのかしら?」

ハンター「しょ……断じて違う! というかお前も成人近いのだから、その自覚を持て」

魔姫「ふぅん? どうやったら成人らしくなるのかしら?」

ハンター「そうだな……。大人としての振る舞いを身に付け……」

魔姫「わかった。店長さーん!」

ハンター「は?」



魔姫「いらっしゃいませー」

ハンター「……待て。何でお前もバイトしてるんだ?」

魔姫「大人としての振る舞いを身に付ける為よ」

ハンター「だからって何故バイト」

魔姫「1度やってみたかったのよね~。猫には内緒ね!」

ハンター「いやちょっと待て。……オイ!」

魔姫「いらっしゃいませお客様、お席はこちらになりまーす♪」

ハンター「……」

魔姫「ご注文如何ですか? はい、コーヒーと……あれっ、何だっけ」

魔姫「テーブル拭くわね~」ビチャビチャ

魔姫「え、モンブランご注文でない……。あら、どこのテーブルだったっけ??」

ハンター(いかん……。初日とはいえ駄目すぎる)

客「おい! 何だこのコーヒーのブレンドは、クソにがいぞ!」

魔姫「あらっ」

ハンター(あぁ、やらかした……)ガクッ

魔姫「申し訳ございません、お客様。すぐにお取替え致しますね」

客「待てよ、姉ちゃん。こんな濃いコーヒー飲んじまったせいで、今日は俺は眠れそうにない」

魔姫「はぁ……?」

客「だから姉ちゃんもこのコーヒー飲んで、今夜は眠らず俺に付き合ってくれよおぉ!」ヒヒヒ

魔姫「……は?」

ハンター(まずい……モンスター客だったか!)

客「いいだろう姉ちゃん、可愛いねぇ~」

魔姫「おほほお客様、ご冗談を」ゴゴゴ

客「冗談じゃねぇよ、いいからとっとと……」

ハンター「……お客様」ニッコリ

客「あん? テメェは黙って――」

ハンター「……」グビッ

客「」

魔姫「い、一気飲み……」

ハンター「……お客様。彼女の代わりに、この私がお付き合い致しますので」ニコニコ

客「い、いや、そんな……」

ハンター「私 が お 付 き 合 い 致 し ま す の で」

客「……いいや。代わりの持ってきて」ショボン



魔姫「何よぅ、私の威圧よりハンターの威圧の方が怖かったっての?」ブツブツ

ハンター「ああいう、女相手でないと強気になれない奴もいるんだ。またひとつ勉強になったな」

魔姫「ふぅん。なるほど、こうやって色んな人を知っていくのね」

ハンター「今日は頑張ったな。だが、お前がこの手のバイトに慣れるには時間がかかりそうだ」

魔姫「あー疲れたわ…。肉体的ってより精神的に」

ハンター「そう。だから大人は酔う程酒を飲むんだ」

魔姫「不健全ねぇ~。早めに寝た方がいいかしらぁ~…」フアァ

ハンター「……いや、眠るのは待て」

魔姫「ん?」

ハンター「今夜は付き合え。お前の淹れたコーヒーのせいで眠れそうにない」壁ドン

魔姫「………」

ハンター「もう一段階、大人の階段……昇ってみないか?」

魔姫「……あのオジサン客と関節キッスした口はちょっと」

ハンター「……うげぇ」

魔姫「大丈夫? 背中擦る?」

ハンター「誰のせいで……。お前、覚えてろよ」

<終わり>








猫耳ルート

わいわい

魔姫「誕生日に城で立食パーティーが開かれるなんて、流石勇者。英雄ねぇ」

猫耳「はい魔姫、料理取ってきたよ~」

魔姫「ありがとう。でも、そんな気を使わなくていいのよ?」

猫耳「なーに言ってるの。魔姫に料理を盛らせるなんて、できないよ!」

魔姫「でも、立食パーティーなんだから……」

猫耳「僕は魔姫に恥をかかせたくないんだ!」

魔姫「まぁ猫ったら」

魔姫(柄にもなく格好つけちゃって。でもまぁ、悪い気分じゃないわ)フフ

猫耳(魔姫が盛り付けたら、せっかくの料理がぐちゃぐちゃになるからね……)

魔姫「うん…一流シェフの味付けね」

猫耳「? 魔姫、もしかしてお腹空いてなかった?」

魔姫「え? どうして?」

猫耳「魔姫っていつも、凄く美味しそうに食べるからさ。今日の反応はイマイチに見えるなー、って」

魔姫「う。猫の目は誤魔化せないわね……」

猫耳「お腹空いてないなら、デザートとか……」

魔姫「だけど、まだまだ私を見る目が未熟ねぇ。私はお腹一杯じゃないし、お料理も美味しく頂いているわよ」

猫耳「んん~? ……あ、パーティーだからお上品ぶってるとか」

魔姫「私は『ぶってる』んじゃなくて、本当にお上品なのよ、猫ちゃ~ん?」ギュウゥ~

猫耳「あいたた~!」

魔姫「もー、猫。理由はひとつしか考えられないじゃない」

猫耳「いたた……。な、何?」

魔姫「普段頂いているお料理の方が、美味しいからよ」

猫耳「………へ?」ポカン

魔姫「ほら猫、早く食べないと冷めちゃうわよ」

猫耳「あ、う、うん! ……そ、そっかぁ。僕の料理が……」

魔姫(猫ったら照れちゃって。可愛いんだから)

猫耳「……あっ。新しい料理追加されたから、持ってくるねっ!」

魔姫「ありがとう~」

貴族A「魔姫様、ご機嫌よう」

魔姫「ん?」

貴族B「初めて貴方をお近くで拝見しましたが…やはり、お美しい」

魔姫「あら、ありがとう」(うん、知ってる)

貴族A「魔姫様、どうか今度行われる僕の家のパーティーにご出席下さい」

貴族B「僕たちの家は、代々国王陛下と懇意の仲であり……」

魔姫「あらー」ニコニコ

魔姫(いや知らないし。でも心なしか周囲の注目も集めちゃってるし、手ひどく振って恥かかすのも気が引けるし……)

猫耳「ま、魔姫……」

魔姫「あ、猫……」

貴族A「おや。魔姫様の確か従者の……」

貴族B「ご機嫌よう、坊や。少し魔姫さんとお話させてもらっても良いかな?」

魔姫「いえ、猫は……」

がばっ

魔姫「!? ね、猫……」

猫耳「……駄目」

貴族A「え?」

猫耳「魔姫は僕の~っ!」フーッ

魔姫「!?」

ざわざわ

貴族B「……へ? ぼ、坊やの?」

魔姫「え、えぇ。私と彼はお付き合いしてて……」

猫耳「フシャーッ」

貴族A「そ、そうですか。では」ソソクサ

貴族B「うーかゆい、猫アレルギーが……」ポリポリ

魔姫「猫、もー……貴方ねぇ」

猫耳「作戦成功だにゃー」クスクス

魔姫「!?」

猫耳「これだけ大勢の前でラブラブな様子を見せつけたら、魔姫を取ろうなんて男はいなくなるからにゃ~。これで公認だね~♪」ニコニコ

魔姫「なっ……」

猫耳「あと……魔姫は、こういうの照れるんだよね」ニーッ

魔姫「こ、こらっ……! このぶりっ子~っ!」

<終わり>






勇者ルート

勇者「お、お、俺でいいんですか!?」

魔姫「えぇ。観劇のチケット2枚頂いたから…もしかして嫌い?」

勇者「とんでもありませんっ! ほとんど見たことないけど、魔姫さんと一緒なら!!」

魔姫「そう。じゃあ明後日、お洒落して行くわ」

勇者「お、お洒落っ!?」

魔姫「そうよ。……せっかくの、ほら、デート……なんだし」

勇者「~っ……」ボロボロ

魔姫「!? な、何で泣くのよ!?」

勇者「すみません……。魔姫さんを前にすると、俺……情緒不安定なんです」

魔姫「『冷静でいられない』とか『感情を乱される』とか、マシな言い回しはないの」ガクッ



魔姫「忘れてたわ、今日は暗黒騎士シリーズの最新刊発売日だった! 売り切れてなければいいけど!」バサバサ

勇者「……」

魔姫「あら、勇者だわ。衣装屋に入ったみたいだけど……声をかけてみようかしら」

カランカラン

魔姫「勇――」

勇者「どう?」

魔姫「………」

魔姫(何、あのカラフルで目がチカチカする格好は)

店員「よ、よくお似合いですが……。うーん、組み合わせをもうちょっとですね」

勇者「そっか。服とかよくわかんないから、任せた!」

店員「ちなみに、どのような目的で着るものでしょうか?」

勇者「観劇に行く為にね!」

魔姫(明後日用だったの!? 何でサーカスみたいな服選ぶのよ!?)

店員「観劇ですか……。スーツが無難かと」

勇者「スーツは動きにくい。客の中に襲撃者がいたら困る」

店員「しゅ、襲撃者!?」

魔姫(……考えられるわね、勇者なら)

店員「なら、こちらの伸縮性素材のスーツは如何でしょうか」

勇者「ふむ……。着心地は悪くない。ただ……」

店員「ただ?」

勇者「似合わんな。俺の顔がショボすぎる」

店員「い、いえ……そんなことは」

魔姫(店員さん困らせてんじゃないわよ!」

勇者「中の下が無理してお洒落したら駄目だな。だが、魔姫さんに恥はかかせられないし……」ウーン

魔姫(別に中の下とは思わないけど……。でも、私の為に真剣に選んでくれているわ)

勇者「やっぱ勇者といえばコレっしょ! 店員さん、この鎧――」

魔姫「デートに鎧を着ていくバカがいるかーっ!」

勇者「あ、魔姫さん!?」

魔姫「騎士だって休日デートには鎧を脱ぐわよ、鎧が私服じゃあるまいし!」」

勇者「うーん、服のことよくわからなくて……」

魔姫「なら私が選ぶわ。うーん、勇者は体格がいいから……」ジー

勇者「……」ジーン

魔姫「ねぇ勇者はどっちの色が……って、勇者? おーい?」

勇者「……魔姫さんっ!」ガシッ

魔姫「な、何?」

勇者「魔姫さんに服を選んで頂けるなんて、身に余る幸せ! しかし、俺はこの通りのダサ男……。魔姫さんさえ良ければ、これからも俺の服を選んで頂けますか!?」

魔姫「え、ま、まぁ……。し、仕方ないわねぇ! この私にコーデしてもらえるなんて、貴方は本当に幸せな男よ!」

勇者「魔姫さーん。下着なんですが、綿100%のやつよりこういうの履いた方がいいでしょうかー?」

魔姫「それは自分で選びなさい!!」



勇者「魔姫さん、今日はありがとうございました!」

魔姫「沢山買ったわねぇ。いい、絶対柄物と柄物の組み合わせはやめなさいよ?」

勇者「了解です! 組み合わせたらハンターに見てもらおうかな~……」

魔姫「そこまでしなくていいんじゃない。今日買った服なら、そうそう変な組み合わせにならないだろうし」

勇者「いーえ! 魔姫さんとの記念すべき初デートなのですから、手は抜きませんよ!」

魔姫「……ねぇ勇者、ツッコんでもいいかしら?」

勇者「へ? 俺なんかボケました?」

魔姫「この状況が、既にデートだと思わない?」

勇者「」ポトッ

魔姫「……勇者?」

勇者「ぎゃあああぁぁ!! 何てことだ、魔姫さんとの初デートなのにこんなモブみたいな服でええぇぇ!!」

魔姫「いやそこまで取り乱さなくても」

勇者「着替えます! 今すぐ着替えます!」

魔姫「ここで着替えるな……物陰行っても駄目ーっ!!」

<終わり>






あとがき

いちゃラブとは何ぞや。
元は恋愛ゲームを意識して書いたssなので、どのルートもアリで御座います。
このssを本当に乙女ゲーにしたら、王子ルートとかも隠しでありそうですね。
posted by ぽんざれす at 18:20| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月18日

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」/勇者ルート

本編はこちら


その少年が神童と呼ばれたのは、いつ頃からか――

魔物『ガアァッ!』

王子『ひっ!』

ダダダッ

『王子、伏せろ――ッ!!』

王子『!!』

出生、血筋――どれを取っても、彼に『特別』なものなど無かった。

『でりゃあぁ――ッ!!』ザシュッ

魔物『グアアアァァ』

だが平凡な少年は、やがてこう呼ばれるようになった。


勇者『討伐完了……立てるか?』


世界を救う英雄――『勇者』と。





魔姫「裏社会ギルド?」

ハンター「あぁ」

ハンターは朝早くこちらを訪れるなり、聞きなれない名前を口にした。

ハンター「俺たちは今、ギルドで残党狩りの依頼を行っているが……裏社会にも同様に、裏社会の人間に仕事を斡旋するギルドが存在する」

猫耳「あぁ聞いたことある。そのギルドを介して、魔物と手を組む人間もいるんだよね」

ハンター「で、だ……その裏社会ギルドの依頼書を入手したのだが……」ピラ

・討伐依頼
標的:魔姫一行
報酬:狩った獲物により変化、詳細は下記

魔姫「で、討伐報酬は……ちょっと嘘でしょ! 勇者が私より高いのはわかるけど、3倍はないでしょ3倍は!」

ハンター「俺なんてお前より3割少ないんだからな……」

猫耳「皆はマトモな額だからいいよ…。僕なんかワンコインだよ……」

魔姫「この値付けは正直納得できないけど……この値段なら、ギルドの依頼を見た連中がこぞって勇者を襲うんじゃない?」

ハンター「……それだが、既にその事態は起こっているかもしれん」

魔姫「……どういうこと?」

ハンター「今朝、勇者の家を訪れたのだが、応答がなかった。しかし扉に鍵がかかっておらず、不審に思い開けると……入口に、この依頼書が落ちていた」

魔姫「!! じゃあ、まさか……」

猫耳「勇者はギルドの依頼を受けた奴から襲撃を受けて……」

ハンター「この依頼書は、恐らくそいつが落としたものだろうな」

魔姫「大変じゃない! こんなとこでお喋りしてる場合じゃないわ!!」

ハンター「だが、勇者がどこにいるかわからん。すぐに通報したから、今頃兵士たちが勇者を探しているだろうが……」

猫耳「うにゃあ……魔姫も討伐依頼されてる身だよ。今は下手に動かない方がいいかも」

魔姫「でも……」

ハンター「勇者は強い。あいつが自力で何ともできない状況というのは……俺たちでは微力にすらならん」

魔姫「……」

魔姫(勇者……)


助手「失礼します!! ハンター様っ!!」バァン

魔姫「!!」

ハンター「助手、どうした!」

助手「勇者様が……勇者様が……ッ!!」

魔姫「……!!」





ワーワー

<まさか勇者様が……
<裏社会ギルドだって?
<物騒ねぇ……

魔姫「……」

ハンター「魔姫。気落ちするな」

魔姫「だって…だって……ッ!! 勇者が!!」

ワーワー


<キャー勇者様ー! 素敵ー!

勇者「はっはっは、ありがとう!」

<でも流石ですね勇者様!
<まさか、たった1人で裏社会ギルドを潰すなんて!


魔姫「悔しいいぃぃ!! 私達が情報を知った時には、勇者はまた1つ武勇伝を増やしていたなんて!!」

ハンター「言うな……。惨めになる」

猫耳「にゃー……ドアの鍵は締め忘れてただけなんだねぇ」


勇者「あ、魔姫さんとオマケ2人! おはようさんです!」

魔姫「勇者、あんたねえぇ!! 何か言ってから行きなさいよ、心配したでしょ!!」

勇者「えっ!! ま、魔姫さんが、俺の心配を……感激だああぁぁ!!」

魔姫「感激してないで、何で黙って行ったのか説明しなさい!!」

勇者「はい、魔姫さん! こんなタダ働きは、俺1人でチャッチャと済ませようと思ったからです!!」ビシッ

魔姫「私はお金目当てで残党狩りしてるわけじゃないのよ!! 名声独り占めなんてズルイじゃないの!」

勇者「あはは、魔姫さん何をおっしゃっているんですか。魔姫さんは世界で最も尊い女性じゃありませんか!」

魔姫「誤魔化すなあぁ――ッ!!」


ハンター「いや……誤魔化しじゃなくて本気だな」

猫耳「激怒状態の魔姫に動じないのは勇者だけだにゃー……」


魔姫「ぜぇっぜぇっ」

ハンター「勇者、裏社会ギルドの情報はどこで入手した?」

勇者「友達に聞いたんだよ。ほら俺って交友関係広いからさ」

ハンター「そうか。だが俺たちはパーティーだ、危険なことをする時は一言伝えて行け」

勇者「危険なこと……? うーん、俺にとって危険なことってそうそうないしなぁ」

ハンター「あのな……」

魔姫「よぉー…く、わかったわ」

勇者「はい?」

魔姫「勇者にとって、私達は頼りない仲間なのね! フン!!」スタスタ

勇者「あぁっ、魔姫さん! 誤解です、貴方は誰よりも強く美しく気高い!!」

ハンター「どうでもいいが、周囲に人がいるんだぞ」

<クスクス、もう勇者様ったらー



猫耳「ま、魔姫、待ってよぉ。勇者だって多分そんなつもりじゃ……」

魔姫「えぇ、そうでしょうね」

猫耳「うにゃー……そりゃまぁ名声独り占めかもしれないけど……」

魔姫「それは本気で言ったわけじゃないわ」

猫耳「だと思った。魔姫、何でそんなに怒っているの?」

魔姫「だって……」


キャーキャー

勇者「サイン? 俺にジャンケンで勝った人だけねー」

<うわー勇者様、字きたねー

勇者「うっせぇよ! 英雄様のサインだからな、プレミアつくぞ!」ハハハ


魔姫「……」

届かない。あまりにも遠すぎる。
だからこそ勇者にイライラしてしまう。これは私の身勝手――





>翌日・城前広場


猫耳「チラシ配ってた。音楽の国で祭典があるんだって」

魔姫「どんなことをするのかしら」

ハンター「昔、参加したことがあるな…。まぁ簡単に言うと音楽祭だ。その日は国中が音楽に包まれる」

魔姫「あら面白そうじゃない。人間の作る音楽は好きよ」

猫耳「オルゴールとか売ってるといいね~」

ハンター「露店が出ているはず……あ、勇者が戻ってきたぞ」


勇者「ちぃーす、お待たせ~」

ハンター「勇者。陛下からの呼び出しとは何だったのだ?」

勇者「あー。なんか、これ押し付けられた」パカ

猫耳「これは……」

勇者が開いた箱の中では、緑色の宝石がきらきら光っていた。

魔姫「み、見事なエメラルドだわ……!」

ハンター「大きさからして、俺の給料3ヶ月分くらいだな」

猫耳「勇者凄いね、良かったじゃない!」

勇者「はは……俺、宝石とかよくわからないし」

魔姫「ねぇ、これ……もしかして、ギルドを潰したご褒美じゃない?」

勇者「………え?」

猫耳「きっとそうだよ。だってあれだけ大きなことをしておいて、報酬ナシは割に合わないもん」

ハンター「褒美だと言えばお前は拒否するだろうから、押し付けたんだろうな」

勇者「………」

魔姫「素直に受け取っておきなさい。褒美を突き返されちゃ、王様の面目丸つぶれよ」

勇者「そういうことなら……魔姫さん、受け取って下さい」

魔姫「……え?」

猫耳&ハンター「!?」

勇者「この宝石が相応しいのは、俺ではなく、貴方だ。魔姫さんならこの宝石を、より輝かせられると思うんだ」

魔姫「う、受け取れないわ! だってギルドを潰したのは貴方であって……」

勇者「魔姫さんが狙われているんじゃなかったら、俺は裏社会ギルドまでたどり着けなかった。だから…魔姫さん、受け取って下さい」

魔姫「~っ……」

ハンター「くっ。宝石プラス口説き文句……見事に女のツボを突いてやがる!」

猫耳「うにゃあ……! 魔姫が陥落する……ッ!!」

勇者「はい、魔姫さん。俺が持ってても、引き出しの奥底で眠らせるだけなんで」グイ

魔姫「あ……ありが、とう……」

勇者「どういたしまして」ニコ

ハンター「……勝てる気がしない」ガクッ

猫耳「実力で得られるものは大きい……ッ!」ガクッ

勇者「あ、猫耳! それ、音楽の国の祭典のチラシじゃん! 俺、あの祭典好きなんよ~!!」

猫耳「あ、うん。面白そうだな~って皆で話してたの」

勇者「面白いぜぇ~。夜のダンスパーティーなんか、最っ高にムードあって!」

魔姫(ダンスパーティー……)


~魔姫の頭の中~

魔姫「私、ダンスは得意なのよ。一緒に踊ってくれる殿方がいれば、喜んで参加するのだけれど……」

勇者「魔姫さん……俺は立候補できない。貴方のような美しくて完璧な女性と踊るなんて、俺には……!」

魔姫「構わないわ、勇者」

勇者「えっ!」

魔姫「素敵なエメラルドを頂いたんですもの。そのお礼だと思いなさい」

勇者「お、おおぉ……! 感激だあぁ、美しくて完璧な魔姫さんとダンスができるなんて!!」

~終了~


魔姫(……な~んてね! た、ただのお礼だし!)

魔姫「ねぇ、勇」

勇者「よし! じゃあ行こうぜ、全員で!!」

魔姫「………」

勇者「俺、こう見えてダンスは得意なんだよな~。阿波踊りってやつ! あ ホイサホイサ~ってね」

ハンター「……おい勇者、後ろ見ろ」

勇者「へ?」クルッ

魔姫「おほほ、当日楽しみにしてるわね~」ゴゴゴゴ

勇者「あ、はい! 俺も楽しみにしてます、魔姫さん!」

ハンター(と、鳥肌が……!)

魔姫「じゃあね。帰るわよ猫」ゴゴゴゴ

猫耳「う、うん……」


勇者「魔姫さん、お腹空いたのかねー?」

ハンター「……お前がモテない理由がよくわかった」





>屋敷


魔姫「もーっ、やっぱり勇者腹立つーっ!!」ジタバタ

猫耳「喧嘩はハンターとの方が多いのにね。どこが腹立つの?」

魔姫「何か……悔しいの~っ! 強いくせに天然で心広くて無欲で、何なのよっ!!」

猫耳「あー……それは嫉妬だねぇ。劣等感だよ」

魔姫「あぁもう、何で私が嫉妬しないといけないのよっ! 勇者めっ!」

猫耳「可哀想な勇者……。好きな女の子に張り合われるなんて……」

魔姫「好きな女の子ぉ~?」

猫耳(あっ!! ヤバッ!!)

魔姫「だったらねぇ、ちゃんと口説きなさいよね! あいつがやってる賞賛は、ただのミーハーよ! 肝心な時にチャンス逃すんじゃないわよ!!」

猫耳「……え?」

魔姫「何なのよぉ~……あれが草食系ってやつなの~……?」ウーン

猫耳「……ねぇ、魔姫」

魔姫「何よ」

猫耳「もしかして……気付いてる? 勇者の気持ち……」

魔姫「あんなに露骨なの、気付かない方がどうかしてるわよ」

猫耳(だよねー)

魔姫「だけど気持ちがあるだけじゃ、駄目なのよ……」

猫耳「勇者は行動もしてるよ。魔姫を守る為にギルドを潰したり、宝石をくれたり……僕やハンターじゃ、できないよ」

魔姫「……そうなんだけどね」

素直に喜ぶことができない。
そればかりか、悔しいという気持ちが一杯で。

こんなにして貰って素直に喜べないなんて――そんな自分がワガママでイヤになる。


猫耳「魔姫はワガママだにゃ~」

魔姫「~っ…自覚してても、言われるのは腹立つわねぇ……」

猫耳「僕は魔姫のワガママに慣れてるけどさぁ…勇者はいつまで辛抱できるかにゃ~?」

魔姫「……どういうことよ」

猫耳「勇者の周りには、優しくて素直で勇者を好きな女の子が沢山いるよ。好きな子がいつまでもつれなかったら、誘惑に乗るかも……」

魔姫「初耳なんだけど! 勇者を好きな女の子が沢山!?」

猫耳「そりゃ世界的な英雄で、交友関係も広い勇者だからにゃ~」

魔姫「~っ……」

猫耳「本人は激ニブだから気付いてないかもしれないけど、それなら女の子達だってアピール方法変えてくるだろうし……」

魔姫「……何が言いたいの」

猫耳「さぁ?」ニコ

魔姫「わかったわよ! ちょっと出かけてくるわ!」

猫耳「行ってらっしゃ~い♪」





>勇者の家の前


魔姫(とはいえ、行って何を言うべきか……)

魔姫(あら無用心ね、カーテン開きっぱなし……って、勇者?)


勇者「………」

兵士「………」


魔姫(兵士と何か話してるわ。後にした方がいいかしら)


勇者「………!!」


魔姫(……? 何か深刻そうね……?)


勇者「じゃあ……悪魔王は生きてるのか!?」


魔姫「……っ!?」


兵士「それは何とも……ですが城の司祭が、奴の気配を強く感じると言っており……」

勇者「わかった、俺が行く。杞憂でないなら、何か起こる前に叩かないとな」

兵士「お仲間に知らせなくてよろしいのですか?」

勇者「あぁ、俺1人でちゃっちゃと済ますよ」ガチャ

タッタッ……


魔姫「……」

魔姫「何よ、それ……。冗談じゃないわ、また置いてけぼりにされてたまるもんですか!」





>城


勇者「敵の気配はないな」

兵士「はい、侵入の形跡もありません。しかし相手が悪魔王ともあれば、もしかしたら……」

勇者「悪魔王を倒したバルコニーに行ってみる。他の奴らは避難していてほしい」

兵士「ですが、援護は……」

勇者「援護はいいや。俺は協力して戦うってのが苦手なもんで、任せてほしい」

兵士「かしこまりました。健闘を祈ります」



勇者「さーて……確かここだったな、悪魔王をブッ殺したのは」

"ククク……"

勇者「!!」バッ

勇者(黒いもや……これは悪魔王の……!)

勇者「悪魔王!! お前なのか!」

"………"

勇者「……?」

"………!!"バッ

勇者「わっ!」ヒョイ

シュバババッ

勇者(くっ、俺に明確な殺意を持ってやがる……あの時仕留め損なってたのか!)

勇者「だとしたら俺の責任だな……今度こそ、仕留めてやるよ!!」バッ


ばさばさっ

魔姫(勇者が戦ってる…! あのもや、悪魔王の力を感じるわ)

魔姫(そういえば、死後に"呪い"を産む魔物が稀にいるけど……悪魔王も、そうだったのね)


勇者「でりゃあぁ――っ!」ズバッ

勇者「はんっ! 悪魔王ごときが俺に一矢報いようなんぞ、百万年早――」

ビュンッ

勇者「うわっ!!」

勇者「はー……流石に数が多いな。切るだけの単純作業じゃ飽きるんですけどー!」


魔姫「なら、手伝いましょうか?」

勇者「わわっ!? 魔姫さん!?」

魔姫「また1人で動いたわね。後でお説教よ」

勇者「魔姫さん、危険です! 早く避難を――」

ビュンッ

魔姫「お断りよっ!!」バチバチイイィィッ

勇者「……っ!」

魔姫「貴方、やっぱり私達を信頼していないの? こういう時はね――」

勇者「魔姫さん、伏せてっ!!」

魔姫「……えっ?」

ビュンッ

魔姫「!!」

魔姫(嘘……私の魔法攻撃じゃ、倒せてなかっ……)

勇者「このーっ!」バッ

魔姫「!!」

ブォンッ

勇者「……っう!!」

魔姫「勇者、大丈夫!?」

勇者「だ、大丈夫……! それより敵は全滅していない。魔姫さん、上に避難していてくれないっすか」

魔姫「けど……」

勇者「頼みます! 後で、いくらでも説教は聞くんで!」

魔姫「……わかった」


勇者「おらあああぁぁぁ!!」


魔姫(……情けないけど、私では勇者の足を引っ張るだけだわ)


勇者「ハァ、ハァ……これで最後だ……。でりゃあぁっ!!」

ズバッ――

勇者「はぁ…終わった……」

魔姫「勇者、お疲れ様。ごめんなさい、邪魔をして……」

勇者「はは、いいんすよ。ふぅ…数が多くて気が滅入ってたけど、魔姫さんのお顔を見れたお陰…で……」ガクッ

魔姫「勇者!?」

勇者「だ、大丈夫、です……。疲れているだけだから……。ハァ、ハァ」

魔姫「ゆ、勇者。その腕……」

勇者「ん……っう!?」


魔姫(勇者の左腕は、黒いもやに覆われていた――そこは勇者が攻撃を喰らった部位。嫌な予感がした)





>勇者の家


勇者「ハァ、ハァ……」

猫耳「うにゃー……勇者の顔色がどんどん青白くなっているよ……」

助手「……」

魔姫「ど、どう、助手……」

助手「……まずいことになりましたね」

ハンター「どうまずいのだ?」

助手「今回発生したもやは、悪魔王の死後に発生した呪いです。呪いそのものに意思はないものの、本能的に勇者様に襲いかかったのでしょう」

魔姫「単刀直入に聞くけど、勇者の腕はどうなってしまうの?」

助手「……悪魔王の特性を覚えていらっしゃいますか?」

魔姫「悪魔王の……?」

助手「奴は王子様に憑依し、身柄を乗っ取った。そして勇者様の腕も……悪魔王に侵食されています」

魔姫「!!」

ハンター「では…侵食が進めば、勇者が悪魔王に身柄を乗っ取られるのか!?」

助手「今は勇者様の強靭な精神力で、それを食い止めていますが……。それが限界に来れば、恐らく……」

猫耳「そんな……」

魔姫「……っ」

魔姫(わ、私のせいだわ……私が出しゃばらなければ、勇者は……)


勇者「はは。皆、何そんな悲壮感醸し出してるんだよ。心配ないって!」

魔姫「……!」

ハンター「勇者、お前は話を理解して……」

勇者「理解した。このままだと俺、王子の二の舞になるわけだろ?」

ハンター「わかっているなら、何故そんなにお気楽なんだ……!」

勇者「まだ、全身乗っ取られてねーもん。でも、駄目そうだったらさ……」チャキ

猫耳「!! 勇者、剣で何を……」

魔姫「――っ!! やめて勇者! それだけは!!」ガシッ

勇者「……魔姫さん」

ハンター「お前……今、自害しようとしていたのか……?」

勇者「ちげーし。腕を切り落とそうかとね」

ハンター「……っ! 俺たちの見ている前でやるとは、悪趣味な奴だな!」

猫耳「か、関係ないよぅ……。僕たちがいようがいまいが、そんなことやめてよ……」グスグス

勇者「わり。まぁ、そこまで気を落とすなよ」ハハハ

魔姫「……ごめんなさい、勇者………」

勇者「ん?」

魔姫「私のせいで、こんなことに……! どんな形になってもいいから、絶対に償うから!!」

勇者「……頭上げて下さい、魔姫さん」

魔姫「……勇者?」

勇者「償いなんて、必要ない。俺は勇者として生きると決めた時から、どんな命運も受け入れるって決めていました。魔姫さんにそんな顔をさせてしまうことの方が、遥かに俺の心が痛みます」

魔姫「勇者……」

勇者「心配しなくても、俺はそう簡単に侵食されませんから。むしろ根気で勝負して、呪いを追い出してやりますよ!」アハハ

ハンター「根気も何も、呪いに根性などないのだが……」

魔姫「……」クルッ

勇者「……ん、魔姫さん?」

魔姫「………」スタスタ

勇者「あちゃー……魔姫さん泣かせちゃった? 俺、何かまずいことでも言ったかなぁ……」

ハンター「あいつ……」タタッ

猫耳「魔姫……」



ハンター「おい待て!」

魔姫「……何」

ハンター「いや、確かにお前に非はあるが……。お前が自分を責めるのは勇者にとって本位ではない。だから……」

魔姫「慰めなんかいらないわ。それに私……別に泣いてないわよ」

ハンター「そうか……」

魔姫「私は、怒ってるのよ」

ハンター「……は?」

魔姫「ちょっと行ってくるわ! くれぐれも、勇者が変な気起こさないように見張ってて!」バサッ

ハンター「あっ、おい!? どこへ行く!?」


魔姫(呪いの進行を食い止めるには……あれしかないわ!)



ハンター「全く、あいつは何を……なぁ、勇――」

勇者「ハァ、ハァ……」

ハンター「……!? おい、俺が部屋を出てる少しの間に、何があった!?」

勇者「何でもねぇ……ちょっと気が抜けたんだよな……。ハハ……」

猫耳「魔姫の前では、無理していたみたいで……」

ハンター「勇者……何故、そこまで……」

勇者「うーん、何でだろうなぁ。でも理由を言うとしたら――」

こんな気の使い方、魔姫さんは気に入らなくて――きっと俺は、ますます嫌われるだろうけど――


勇者「魔姫さんのこと――好きだから」





>魔王城


魔姫「……ここへ来るのは久しぶりね」

父が倒されるまで、ずっと住んでいた城――懐かしくもあるが、今は思い出に浸っている場合ではない。
迷わずに真っ直ぐ大広間に向かい、立ち止まった。

魔姫「城に眠る亡者の魂よ、私の声を受け入れよ――"開け"」

ゴゴゴ……

魔姫(魔王城の隠し扉。お父様亡き後、この城を探索した人間には見つけられていないようね)

魔姫(この先にある空間は――異世界。お父様には絶対に入ってはいけないと言われていたけど――)

魔姫(ここまで来たら、行くしかないわ!)ダッ

ブオオオォォン

魔姫「うぅん……異世界トリップ、話には聞いてたけど酔うわね……こう、空間がぐにゃっとねじれるような感じが……」

魔姫「……って」


<グオオオォォォ
<ピギャーピギャー
<フワアァンフワアァン


魔姫「う……」タジッ

魔姫(ここに潜むのは魔物ではなく、"異形"……異形の世界なら、私でもアウェイ……)

魔姫(けどひるんでいられないわね……『あれ』がここにあるのは知っているのよ)

<キョエエエェェ

魔姫「っ!」バッ

<ヒョヒョヒョヒョ
<プギャープギャー

魔姫「やっぱりねぇ……探し物ひとつ、そう簡単にできないと思っていたわ。ま、確かに異物を排除するのは生物の本能でしょうね」

<ピュルピュルルルル

魔姫「何言ってるかわかんないわよ。この世界を探索させてもらうわ」バサバサッ

<ヒョゲアアアァァァ!! バッ

魔姫「せりゃああぁぁぁ!!」バチバチバリイイィィッ

<ゴアアアァァァァァ!! バタバタッ

魔姫(数は多いけれど、1匹1匹は大したことないわね。これなら……)

魔姫「悪いけど、侵略させてもらうわ! 私は魔王の末裔だからねっ!!」バチバチッ

<グパアァッ バッ

魔姫「遅いの……よっ!!」バキィ

<ゴフッ

――ゴオオオォォッ

魔姫「――っう!」

<ヒョゴォ! ボコッ

魔姫「痛っ……!!」

魔姫(こんな、モロに物理攻撃喰らったの久しぶりだわ……! けど……)

<グオオオォォォ
<ピギャーピギャー
<フワアァンフワアァン

魔姫(ひるんでる場合じゃないわね……!!)ヨロッ

魔姫「上等……! これくらいの痛みは喰らっておかないと、償いにはならないわね!!」





魔姫「せやあぁ――っ!!」バチバチィッ

<グアアアァァ バタッ

<ギュルルル
<ゴルルルル

魔姫(全く、次から次へと……! 早く目的のものを……!)

ヒュー……サラサラ

魔姫「……! あの木は……」タッタッ ブチッ

魔姫(この手触り……間違いないわ。これが『呪詛の実』ね)

<グオアアァァァ!! バキィ

魔姫「きゃああぁっ!!」ドサッ、ズザザー

魔姫「いったた……」ヨロ…

<ゲギャアアァァ

魔姫「悪いけど、もうこの世界は用済みなのよ! バイバイ!!」バサバサゥ

ヒュンヒュンッ

魔姫(って言って、わかりましたバイバイって言ってくれる相手じゃないわね……まぁいいわ、ひたすら逃げるだけよ)ササッ

魔姫(あとは、この実を勇者の元に――)

バッ

魔姫「!! 追いつかれ――」

バキイイイィィッ

魔姫「――っう!!」

ドサアアァァッ

魔姫「いった……あ、でも。殴り飛ばされた衝撃で、元の世界への出口まで飛ばされたわ」

魔姫「とにかく今は、この世界を出なきゃ……」ズルズル





勇者「うぅん……」

ハンター「苦しそうだな……助手、経過はどうだ?」

助手「侵食が広がってきましたね……。流石の勇者様でも、精神力に歪みが出ているようで……」

猫耳「勇者、負けたら駄目だよ! 勇者は、悪魔王なんかに負けないんだ!」

ハンター「俺たちはお前を信じているんだ。……勿論、魔姫もな」

勇者「う、うぅ……魔姫、さん……」

猫耳「そうだよ、魔姫のこと好きなんだろ!? だったら諦めないで!」

ハンター「これを乗り切ったら……癪だが、お前の恋を応援してやるよ」

勇者「う、うぐぐ……ハァ、ハァ……」

猫耳「うにゃあ……魔姫がここにいれば……」


バァン


魔姫「ただい……ま……」

猫耳「あっ、魔姫!? どこに行――」

ハンター「お、お前!? 何だ、そのボロボロの姿は!?」

魔姫「何てことないわよ……それより、これ……」

猫耳「この実は……」

助手「……呪詛の実」

ハンター「な、何だ。その呪詛の実というのは」

助手「食べれば、一定時間だけ"呪い"の力を得ることができる実ですよ。魔姫様、それをどうなさるおつもりで……」

魔姫「こうするのっ!」

パクッ ゴクリ

猫耳「っ!?」

ハンター「飲んだ!?」

助手「まさか、魔姫様……」

魔姫「毒には毒! 私の呪いの力で、悪魔王の呪いを追い出してやるのよ!」

ハンター「何て無茶苦茶な……。だが、何もやらないよりはマシか」

猫耳「魔姫! 勇者を救ってね!」

魔姫「えぇ!」


魔姫「勇者、ちょっと苦しいかもしれないけど…ごめんねっ!」

勇者「うぅっ!! んぎゃあぁっ!」

助手「勇者様の体内で、呪いの力がぶつかり合っている……これは……」

勇者「がひゃああぁ――ッ!!」ジタバタジタバタ

魔姫「くっ、悪魔王の呪いはやっぱり根強いわ……!!」ブルブル

ハンター「おい、お前も勇者もヤバいじゃないか! やめろ!」

勇者「ぐぎぎ……だっ、大丈夫だから……!!」

ハンター「勇者!?」

勇者「それよりハンター……俺のこと、抑えててくれ……!! 多少、殴ってもいい!!」

ハンター「勇者……くっ、わかった!」

勇者「ありが……んぎゃああぁぁ、あっ、ああぁ――ッ!!」

魔姫「……っ!!」ブルブル

猫耳「魔姫……」


魔姫(付け焼刃の力で、悪魔王を追い払うのは難解……)

勇者「んっ、んんっ……はぁっ、はぁっ」

魔姫(くっ。やっぱり……私じゃ、駄目なの!?)


"俺は、魔姫さんを信じる……"


魔姫「……え?」


"魔姫さんの努力を無駄にしない……俺は絶対に、悪魔王を追い払う!"


魔姫「……」

魔姫(勇者の、声?)

勇者「ぐぎぎ、あああぁ……!!」

魔姫(勇者は私を信じて、意思の力で悪魔王を拒絶してくれている……)

勇者「あああぁ、んああぁ、お、おぉ……んっ!!」

魔姫(だったら、私が諦めるわけにはいかない!!)


"悪魔王、テメェ……"


魔姫(勇者の、心の声が聞こえる)


"王子の体を弄んだ上、テメェは……!"
"魔姫さんのことまで苦しめやがって! 絶対に許さねぇからな!!"
"今度こそ、お前を滅ぼしてやる! お前はもう1度、俺に殺されるんだ!"


魔姫(こんな時にまで、自分のことは後回し……バカね、本当に)

魔姫(私、貴方のそういうところ大嫌い。何だか腹が立つのよ)

魔姫(だけどね――)


勇者「ぐぐ……負ける、もんか……ッ!!」

魔姫(そうやって溢れ出る、貴方の男気が、私――)


猫耳「い、今、どんな状態なの!?」

助手「少しずつですが、悪魔王の呪いが弱まっています。……しかし」

猫耳「しかし?」

助手「勇者様の精神力が限界に近い……勇者様が気を失っては、形勢逆転に――」


勇者「ハァ、ハァ――」

魔姫「あと少し……あと少しなのに……ッ!!」


"俺――絶、対に、諦め――"


魔姫「そうよ! 諦めるんじゃないわよ……ッ!!」

勇者「んっ、ハァ……」


"悪魔王の、好きには――魔姫、さん――……"


魔姫「……っ!」


"――俺、魔姫さんの……こと――……"


魔姫(そんな、最後の言葉みたな――)

勇者「…はぁっ」カクン


"魔、姫さんの、こと――……好――"


魔姫「――勇者っ!!」

勇者「え――っ!?」


ハンター「……!」

助手「魔姫、様……」

猫耳「え、嘘……き、き……」


魔姫「――」

勇者「………」

勇者(魔姫さんの、唇が………)

魔姫「……ハァッ。勇者」

勇者「ま、魔姫、さん……」ブルブル

魔姫「そう簡単に、諦めるんじゃ……」

勇者「んがあああぁぁ――ッ!!」ゴオオォォォ

魔姫「!?」

猫耳「!?」

ハンター「!?」


勇者「……フゥッ」

助手「………悪魔王の呪いが、消え去りました」

勇者「はー……スッキリ!」

ハンター「は? ……そんなに簡単な話だったのか?」

猫耳「……う、うん、良かったね! おめでとう!」

勇者「ありがとう!」

魔姫「ちょっ……何よ、このドラマ性のない終わり方は!? せっかく人前で……ちょっと勇者ぁ!」

勇者「魔姫さん、ありがとうございます! 魔姫さんの祝福を受けたなら、俺は神をも越えられますよ!」

魔姫「あっさりしすぎなのよ! もうちょっとねぇ……」

勇者「あ……すみません、魔姫さん。フワァ……」

魔姫「え?」

勇者「急激に眠気が……。ちょっと寝かせて下さい」

魔姫「え、ちょっ、待ちなさい、話はまだ……」

勇者「グガー」

猫耳「寝つきがいいねぇ。そういえば昨晩から寝てなかったもんね」

ハンター「……モテないわけだ」ハァ

魔姫「~っ……」

魔姫「やっぱり、勇者なんか嫌いーっ!!」





魔姫「……はぁ」

魔姫(良かったけど……何か、もやもやする)

魔姫(勇者って本当に何なのよ……わけ、わかんない)


勇者「ご心配おかけしました、魔姫さん!」

魔姫「!」

勇者「お陰で気分爽快、スッキリです! 魔姫さんは俺の命の恩人だぁ!」

魔姫「……そう、良かったわ」

勇者「それより、魔姫さんお怪我は大丈夫ですか!? さっきは朦朧としてたけど、ボロボロだったじゃないですか!」

魔姫「大したことないわ……。助手の回復魔法で何とかなる程度」

勇者「そうですか、良かったー……。魔姫さんの体に傷でも残ったらどうしようかと」

魔姫「……元々は、私のせいなのよ! バカなんじゃないの!」

勇者「へ?」

魔姫「私が怪我をしたのは自業自得! 貴方は私のせいで呪われた被害者! わかってるの!?」

勇者「えー、と……。呪われたのは悪魔王のせいであって……」

魔姫「ずっとそうよね、貴方は私を少しも責めない! 貴方の好意は好意じゃなくて、盲目的信仰なのよ! 嬉しくないわ!」

勇者「……魔姫さん、怒ってます?」

魔姫「怒ってるわよ、ずーっとね!」

勇者「そっかー……無自覚で怒らせるなんて、駄目だなぁ」ハハ

魔姫「何で笑うのよ!」

勇者「だって……俺は"勇者"だから」

魔姫「!」

勇者「誰かの為に戦って、誰かを守って、誰かの為に傷ついて……俺はそれが嫌だと思ったことないから。でも、魔姫さんはそんな俺が嫌なんですね」

魔姫「嫌……っていうか、理解できない。どうして、そういう風に思えるの」

勇者「どうして……。うーん。その答えは俺にもわからないけど、これだけは言えます」


勇者は自信満々の顔で言った。


勇者「俺は特別な出生も血筋もない、平凡な人間でした。そんな俺が"勇者"になれたのは――その価値観のお陰だと思っています」

魔姫「……やっぱり天才って変な人が多いわね。貴方は大の変人よ」グスグス

勇者「……魔姫さん、泣いてます?」

魔姫「何で、貴方なんかの為に泣かないといけないのよ……。私は、自分が許せないのよ……。貴方が、私を責めてくれないから……」グスッ

勇者「うーん……どうしたことか。魔姫さんを責めるわけにはいかないし……」

魔姫「私に聞いてどうするのよ! バカッ!」

勇者「う、うーん……」


勇者はバカ。
比べたくないけど――猫やハンターなら、もっと上手く対処してくると思う。

こうやって、鈍感で、裏表がなくて――そういう勇者だから、私はきっと――


勇者「……魔姫さん! 約束します!」

魔姫「――え?」

勇者「俺はもっと強くなります! で、魔姫さんを守れて、俺自身も傷つかないような! そんな男になります!」

魔姫「………」


わかってない。根本的に、わかってない。もう本当に、バカ。


魔姫「ふ、ふふ……」

勇者「……魔姫さん? 何か可笑し――」

魔姫「ふざけんじゃないわよーっ!! 私は守られヒロインじゃないのよっ!!」

勇者「うわあぁ!?」

魔姫「……でも、そうね」


行儀が悪いと思いつつ、私はビシッと勇者を指差した。


魔姫「……負けないから、勇者。私――貴方に並べるようになってみせるわ」

勇者「……はい?」ポカン

魔姫「でも、そう簡単に追い越されるんじゃないわよ! じゃないと、惚れ甲斐がないからね」

勇者「えーと、むしろ俺が魔姫さんに並べる男になる方が……って、ん? 惚れ、甲斐……?」

魔姫「ぐだぐだうるさい!」グイッ

勇者「――えっ」


チュッ


勇者「」

魔姫「……まずは一勝、ね」ニヤリ

勇者「ま、ま、魔姫さん……」ブルブル

魔姫「何よ」

勇者「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ」ゴオオォォォ

魔姫「!?」

勇者「落ち着いていられねええぇぇ!! 恥ずかしいいいいぃぃ!!」ダーッ

魔姫「あっ、ちょっ!? 待ちなさい!」


とことんバカ。……こっちが追いかけられているんだか、追っているんだか、わかりやしない。
だけど――


勇者「俺は……魔姫さんのこと、好きだぁ――っ!!」

魔姫「知ってるわよ、バカーっ!」


こんなバカに惚れた私も、ウルトラ級のバカ女。
これから前途多難だとは思うけれど……。


魔姫「絶対に捕まえてやるんだから! 覚悟しなさいよっ!!」


Fin



あとがき

本編で最も魔姫とフラグ立ってない男だったので、苦労しました~…。
ステータスが強さに全振りで他はアレですが、基本的には善意の人です。

乙女ゲーssでも言ってましたね、「勇者はどのルートでもいい人」と。……いい人止まりとか言ってはいけない。

男3人の中で唯一魔姫より強いんですが、魔姫は素直に守られてくれる子じゃないから難儀ですね!
posted by ぽんざれす at 13:10| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月07日

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」/猫耳ルート

本編はこちら


>朝


魔姫「ふぁあぁ~……」

魔姫「あ……。つい、早起きしちゃったわ。今日は特に何もないんだっけ……」

魔王軍の残党狩りを初めて早くも半年。
私達の活動は実を結び、最近は人間に危害を加える魔物もグッと減った。

魔姫「それじゃ二度寝決定ね。おやすみ~……」

ホカホカ……

魔姫「ん~? いい香りね~……」

トントン

猫耳「魔姫~…まだ寝てるのかな?」

魔姫(あ、猫。ゴメンね、私はもう少し寝ていたいの)

猫耳「寝てるなら仕方ないにゃー。せっかく、新作の紅茶を淹れたのに……」スタスタ

魔姫「おはよう、猫っ!!」バーン

猫耳「おはよう。ちゃんと、服に着替えてから来てね?」ニコ





魔姫「この紅茶いいわね~、クセになりそう♪」

ハンター「……俺には違いがわからん」

勇者「俺はわかりますよ! 魔姫さんが紅茶好きだから、俺も色々と勉強してるんです!」

ハンター「砂糖を入れないと飲めないみたいだがな」

勇者「美味しく飲めればいいんですぅー!!」

魔姫「ところで今日は非番よね。どうして2人とも、うちに来たの?」

勇者「そうだ! 魔姫さん、海行きませんか!!」

魔姫「海……?」

勇者「そーそー、海! たまにはパーッと遊ぶのもいいと思って!! な、ハンター! 助手も誘ってさ!」

ハンター「俺はバイトしようと思ったが……ま、まぁ、付き合いも大事にしないとな」

魔姫「今月は音楽の国でのお祭りもあるのよねぇ。海かぁ……」

勇者「あっ! もしかして魔姫さん、泳げないとか!? 大丈夫! 浮き輪もあるし、何なら俺が教えますよ! それとも日焼けですか!? いいオイルが」

ハンター(がっつきすぎだ、勇者!)


猫耳「スコーン焼けたよ~」トタトタ

魔姫「あらありがとう。ねぇ猫、海ってどう?」

猫耳「うーん……僕、泳げな」

勇者「大丈夫! 浮き輪もあるし、何なら俺が」

ハンター「落ち着け勇者」

魔姫「そういえば、昔は水遊びやったわね。ほら、魔王城の中庭に噴水があったじゃない?」

猫耳「うにゃー……思い出してきちゃった……」

魔姫「猫ったら水が苦手なものだから、足までしか入らなかったのよね~。それを私が猫にしがみついて引きずり込んで……」クスクス

猫耳「笑い事じゃないよ~。あれだけ密着されたら抵抗できないし……」

勇者「ね~こ~み~み~」

ハンター「俺が許す…やれ!」

猫耳「え、な、何?」ガクブル

魔姫「あ。私、水着持ってないわ」

勇者&ハンター「「何っ!」」ガーン

魔姫「残念ねぇ、海で遊ぶのも面白いと思ったんだけど……」

猫耳「あるよ、水着」

魔姫「え?」

猫耳「可愛いの見つけたから衝動買いしてたんだよね。デザイン気に入るかわからないけど……」

魔姫「猫のセンスなら大丈夫でしょ。海、行けるわね」

勇者「よくやったぞ! グッジョブだ、猫耳!!」グッ

ハンター「今ほどお前を有能な猫だと思ったことはない」

猫耳「うん、皆で遊ぶのも楽しいよねぇ」

魔姫「でも、サイズ大丈夫?」

猫耳「大丈夫だよ、僕は魔姫のサイズちゃんと把握し」

勇者「やっぱ許さん!!」ギュウゥ

ハンター「それではすぐに落ちる、なるべく長く苦しませろ!」

猫耳「フギャアアァァ!!」ジタバタ





>海


ザザザザザー


魔姫「急な雨ね」

猫耳「急な雨だね」

助手「急な雨ですね」

ハンター「……タイミングの悪い」

勇者「チッキショオオォォォ!!」ガクッ

魔姫「仕方ないわね。海辺のお店でお茶でも頂こうかしら?」


勇者「ううぅ……せっかくの計画が……」ヨロヨロ

ハンター「また次の機会を待つか……」


猫耳「魔姫、助手、水着着てよ」

勇者&ハンター「「!!!」」

魔姫「どうしてよ」

猫耳「2人の水着姿を見れるチャンスなんて、そうそうないじゃない。せめてもの雰囲気作りで、ね?」

魔姫「そんなに見たいわけ、私達の水着姿?」

猫耳「うん!!」ニコッ

魔姫「もう、仕方ないわねぇ」

助手「それでは、あちらの更衣室で着替えてきましょう」スタスタ


ハンター「フン…上手いこと言うじゃないか、猫耳」

勇者「よっ、この天然スケベ~!」ナデナデ

猫耳「ス、スケベ!? そ、そんなつもりじゃ」アワワ

勇者「赤くなるなよ、こいつぅ!」ギュウゥ

ハンター「ふっ……1人だけ純情ぶるのは許さん」

猫耳「ギニャアアァ、どうしてこんな目に遭うワケェ~!!」ジタバタ


<ギャーギャー


魔姫「何かうるさいわねー。ま、男3人仲悪いよりはいいわね」

助手「このメンバーでいると、ハンター様は活き活きとされています」

魔姫「そう、私もよ。友達とワイワイやってた思い出がないから、今はとても楽しいわ」

助手「そうでしたか。魔王城では、勉強漬けだったとか?」

魔姫「いえ、違うのよ」





魔王城にいた頃は――人間達との争いや、定期的に起こる反乱で、国は荒れていた。
その為、魔王の一人娘である私は安全性を重視され、外に出ることは許されてこなかった。

魔姫『息が詰まるわ! 他の子は自由に遊んでいるのに、私だけダメなんて!』

魔王『仕方ないのだ……姫が外に出れば、必ず姫に危害を加えようという者が現れる』

魔姫『どうして私はお父様の娘に生まれたのよ! 毎日こんなんなら、お姫様になんてなりたくなかったわ!』

魔王『姫……』

今となってはひどいことを言っていたと思うけど――子供の頃の私は、自由が欲しかった。

<あはははっ
<ふふふっ

魔姫『……』

魔姫(いいなぁ)

毎日、外で遊ぶ子供達を眺めていた。同じ国、同じ世界にいるというのに、その子達の存在はまるでファンタジー。
外で遊ぶなんてのは、私にとって遠い世界での話のようだった。





助手「そうだったんですか……確かに、時代が時代でしたからね」

魔姫「私ってワガママで好奇心旺盛だったからね……お父様、かなり苦労されたと思うわ」

助手「子供にとっては当然の不満ですよ。……あ、でも、猫耳さんがいらっしゃいましたよね」

魔姫「あぁ、猫ね。あの子と出会ったのは5歳くらいの頃かしらね」





『西部はほぼ壊滅状態だ……くっ、悪魔王め!』
『こんな時に反乱を起こすなど……』
『大きな痛手だぞ! 悪魔王、許さん!』

魔姫(どうしたのかしら)

大人たちがバタバタしていたのは覚えている。
外の世界を知らない私にとっては、まるで他人事だったけれど。

『生き残りの子供を保護したぞ! どいてくれ!』バタバタ

魔姫『んっ?』クルッ

不意に振り返ったその時――その魔物が抱えていた存在が目に入った。

魔姫(あっ……)

私はその時、初めて間近で小さな子供を見た。
だけどその子は、傷だらけで、土まみれで――その時は顔がよく見えなかった。

私はその子を追いかけて、すぐに医務室に飛び込んだ。

魔姫『ねぇ……』

と、声をかけようとしたら――

魔姫『――』

ベッド上に寝かされたその子はぐったりしていた。
正に、虫の息。
外の子達とは違う。弱い存在。儚い命――幼心に、そんなものを感じた。

『やはりダメかもしれない……この幼い体が、悪魔王の技に耐えられるわけが……』

魔姫『ダメ!』

『! 魔姫様……』

魔姫『お願い、その子を助けて! 治してあげてよ!』


まだ『死』という概念をはっきり知らない私だったけれど、それでも彼を救わないといけないということだけは強くわかった。
ともかく、医師、薬師、魔法使い――あらゆる治療のプロが手を尽くし、彼は1週間後に目を覚ました。


猫耳『………』


その子が、猫耳だった。





助手「そんな出会いが……」

魔姫「あぁ……猫には、本当にひどいことしたわ」ハァ

助手「? 何か」

魔姫「あの子、事件で家族も友達も皆失って……心に傷を負っていたのよ。それで、体が治った後もなかなか心を開かなかったんだけれど……」

助手「そうでしょうね……」

魔姫「私ってばお構いなしに『暗い子ね!』って言って、猫のこと引き連れ回してたのよ」

助手「…………」

魔姫「今では、猫本人は『あのお陰で陰鬱な気分から立ち直れたよ』って笑い話にしてくれているんだけど……。それにしても、ねぇ?」

助手「うーん……ご本人がいいとおっしゃっているなら、結果オーライということで」

魔姫「それでいいのかしらね」

助手「昔の話ですよ。それよりも、早く水着に着替えてしまいましょう」

魔姫「あ、そうね。皆を待たせているものね」ヌギッ

助手「……」ヌギッ

魔姫「……ねぇ助手」

助手「何でしょう?」

魔姫「貴方……着やせするタイプだったのね。ボリュームが……」ジッ

助手「!! あ、あまり見ないで下さい……。魔姫様とは違い、肌も荒れていますし……」

魔姫「水着は肌を晒すのよ、恥ずかしがってどうするのよ~」

助手「ひぃっ、狙いを定めないでーっ」

魔姫「あはは、助手ってばいつもクールだから新鮮だわ~」

助手「ま、魔姫様ぁ~……」


ズドオオオォォォン


魔姫「!? 壁が……」

助手「破壊された!?」


<ワアアアァァ バタバタ……

大たこ焼き「グオオオォォン」

魔姫「野生の魔物だわ!! ふん、蹴散らしてやるわよ!!」

助手「……服、どこに行きましたかね?」

魔姫「………」


勇者「魔姫さーん、助手ーっ!」ダダツ

魔姫&助手「「!!!」」

勇者「あぁ良かった、無事なnゲブヒャアアァァッ」

魔姫「来るなーっ!!」バチバチバチッ

助手「接近禁止です!」ゴオオォォ


ハンター「おぉ……見事に最悪なタイミングだったわけか」

猫耳「視線そらしていこー……」

勇者「く……しかしデッケェ魔物だな。雨で良かったかもな、海水浴客が多かったらパニックになっていた」


大たこ焼き「グオオオォォッ」ビュン

魔姫「!!」

猫耳「……っ!! 魔姫、逃げ――」


バッ


ハンター「何をしようとしている、この軟体動物が」ザシュッ

勇者「無防備な女性を狙う辺り、下等生物だな」ザシュッ

ボトッ

猫耳「!! タコの足を切り落とした……」


ハンター「助手、魔姫。そこでじっとしていろ、すぐに終わらせてやる」

勇者「この程度の奴ら、俺たち2人がいりゃ十分だな!」

大たこ焼き「グオオォォォン!!」

ハンター「勇者。タコの痛覚は、目にしかないそうだ」

勇者「へぇ、なるほど。じゃ、目を狙っていくか」

大たこ焼き「グオオオオォォォ!!」ビュンッ

勇者「でりゃあああぁぁぁ――っ!!」ザシュッ

ボトッ

勇者「攻めてこようがガードされようが関係ねぇ。邪魔なモン全部、切り落とすだけだ」

ハンター「その通り。単純作業だが、まぁいいか」チャキ


猫耳(わ、わぁ……。圧倒的だ)

魔姫「猫!」

猫耳「えっ、な、何?」

魔姫「バスタオル持ってたわよね! ちょうだい!」

猫耳「あ、う、うん!」

魔姫「猫! 上、上っ!」

ドンッ

猫耳「ぎにゃあ!?」

勇者「わり、猫耳。そっち気にかける余裕なかった」

ハンター「気をつけておけ…ここは戦場だからな」

猫耳(ひどいよー…でっかいタコ足もろに当ててくるなんて)クラクラ

助手「……勝負あり、ですね」

猫耳「え?」


勇者&ハンター「「はああぁぁ――っ!!」」

――ズシュ

大たこ焼き「グアアアァァァァッ!!」

ドオオォォン

魔姫「討伐完了。ま、勇者ならノーダメージで倒せると信じていたわ」

勇者「魔姫さああぁん! 貴方からお褒めの言葉を頂くなんて、俺は幸せ者ですッ!!」

ハンター「おい、勇者だけか!? 俺は」

魔姫「だから、こっち見るな!!」バチバチバリイィィッ

勇者&ハンター「「ぐああああぁぁぁ」」

魔姫「猫、早くバスタオルを」

猫耳「う、うん! ……ねぇ」

魔姫「なに?」

猫耳「その……僕はいいの?」

魔姫「? 何が?」

猫耳「あ、いや……何でもない。はい、バスタオル」

魔姫「ありがと。さて、ガレキに埋もれた服を探し……って、貴重な男手がノビてるわ」

助手「攻撃したのは、魔姫様ですがね……」

猫耳「ぼ、僕が探すよ!」

魔姫「いいわよ、力自慢の2人にやってもらうから。ほら2人とも、起きた起きた!」ペチペチ

猫耳「………」





>翌日


魔姫「ふぇっくしょん!」

ハンター「風邪でも引いたか?」

魔姫「そうかもね……」グスグス

ハンター「ずっと裸で雨に打たれていたからな。助手も昨日から寝込んでいる」

勇者「申し訳ないです! 俺が海に誘ったばっかりに!!」

魔姫「別に気にしなくて……ふぇっくし!」

猫耳「魔姫、寝た方がいいよ。早く治さないと、今度のお祭りにも行けなくなるし……」

魔姫「そうねー…何か新しい仕事入ったみたいなのに、行けなくてゴメンね」

勇者「なーに言ってんですか、魔姫さん! 俺が魔姫さんの分まで戦いますって!」

魔姫「そうね、勇者は頼れるわ」

ハンター「おい。俺に当てつけか?」

勇者「仕方ないじゃん。ハンター、魔姫さんより弱いんだし」

魔姫「大丈夫大丈夫、ハンターも人間にしてはやるから。頼れはしないけど」

ハンター「お前らなぁ~……」

勇者「はいはい、さっさと行くよハンター」ズルズル

ハンター「覚えてろ……」グヌヌ

魔姫「行ってら……ふぇっくしょん! ふぅー。寝てくるわ」

猫耳「あ。うん」





魔姫(とはいえ、昨晩はタップリ寝たから眠くないのよねー……)

トントン

猫耳「魔姫ぇ……起きてる?」

魔姫「あら猫? どうしたの」

猫耳「ホットミルク作ったよ。飲む?」

魔姫「あら、ありがとう。頂くわ」

猫耳「入るよ。……あー、魔姫。ダメでしょ、そんな薄いパジャマ着てー」

魔姫「だって暑いんだもの」

猫耳「風邪の時はあったかくして、おでこと脇の下を冷やすんだよ。保冷剤持ってくるから、ちゃんと着替えておいてね」

魔姫「はーい」ヌギッ

猫耳「!! 僕が出てってから着替えて!!」

魔姫「何を怒っているのよ。それより、保冷剤持ってきて」

猫耳「~っ……」





猫耳「はい、持ってきたよ」

魔姫「ありがとう。んー、冷たいの気持ちいい♪」

猫耳「当てるのはほっぺじゃなくて、おでこだよ」

魔姫「暑いんだもの。汗を流したいわー……」

猫耳「熱が下がるまで、お風呂はダメだよ」

魔姫「えー、そんなのイヤよ」

猫耳「イヤでもダメなの! 魔姫ってそうやって言うこと聞かないで、よく風邪を悪化させるよね!」

魔姫「もー、わかったわよ。だから怒らないで、猫」

猫耳「うん、言うこと聞くならいいよ」

魔姫「だから、体拭いてよ」

猫耳「………にゃ?」

魔姫「おねがーい……体がダルくて力入らないのよー……」

猫耳「ダ、ダメだよぉ! 女の子の体を拭くなんて、そんな」アワアワ

魔姫「なーに言ってるのよ、私と猫の関係じゃない」

猫耳「………」

魔姫「猫?」

猫耳「……背中だけだよ」

魔姫「えぇ、お願いねー♪」

猫耳「……」





魔姫「ふぅ、さっぱりしたわー」

猫耳「はぁー…もう何もない?」

魔姫「えぇ、ありがとう。何か眠くなってきたわー…」フアァ

猫耳「なら、寝た方がいいよ。僕は夕飯でも作っているよ」

魔姫「よく働くわねぇ。ちょっとは休みなさいよ」

猫耳「いや…僕は疲れてないから」

魔姫「そう? 何か様子がいつもと違うわよ。余裕がないみたい」

猫耳「……っ」

魔姫「私のせいかしら?」

猫耳「えっ!?」

魔姫「いつもの猫なら、不満はちゃんと言ってくれるのに……私が風邪を引いているから我慢してるのよね」

猫耳「……本当だよ」

魔姫「ごめんね。猫にはつい甘えちゃってワガママばかり…なんて、言い訳にならないか。伏せている間、反省しておくから」

猫耳「……甘えられるのも、ワガママ言われるのも、嫌じゃないよ」

魔姫「え?」

猫耳「だって魔姫は僕にとって特別だから……だから、全然嫌じゃない」

魔姫「……そうね。私にとっても昔から、猫は特別な存在よ」

猫耳「どういう意味で?」

魔姫「え?」

猫耳「魔姫は僕に対して無防備すぎるよ……! 僕に気を許してくれているのかもしれないけど、どうしてなの! 僕には度胸も力もないから安全だと思ってるの!? それとも――」

魔姫「猫……?」

猫耳「――それとも」


僕のこと、男だと――


ドォン


魔姫&猫耳「「!?」」

魔姫「下で音がしたわね……」

猫耳「僕が見てくるよ! 魔姫はここにいて!」ダッ


猫耳(尋常じゃない物音だったけど……)


「おい、そこのクソガキ!!」

猫耳「!!」バッ

賊A「魔姫んとこのガキだな?」

賊B「間違いねぇ。魔姫の従者の、猫耳だ」

猫耳「だ、誰だ! 勝手に入ってきて!」

賊C「あぁ? ただのお客様だよ、お客様!」


猫耳(そんなわけない。こいつら人間みたいだけど……そう言えば!)

猫耳(魔姫達がギルドの依頼で残党狩りをしているように……裏社会にも、裏社会にとって邪魔な者を排除するギルドがあると聞いたことがある)

猫耳(こいつら……ギルドの依頼で、魔姫を殺しに来たんじゃ……!)

賊A「聞いたぜ。お宅の今日の残党狩り、今日は人間2人だったそうじゃないか?」

賊B「魔姫は体調でも崩したか? それとも、人間とは仲違いしたか?」

賊C「ちょっくら、ご挨拶させてくんねェかなぁ?」

猫耳(魔姫は今、大分弱っている……。こいつらに会わせるわけにはいかない!)

猫耳「魔姫は出掛けているよ。帰りは遅くなるんじゃないかなぁ?」

賊A「へぇ? それじゃ、待たせてくれねェかな」

賊B「そいつはいい。茶でも出して、もてなしてくれや」

猫耳「……」

猫耳(こいつらを追い出す手段はない……ここに留まらせておいて、勇者とハンターが戻ってくるのを待つしか……)

賊C「いや、待て」

猫耳「っ」

賊C「もし先に、勇者達が戻ってきたらどうする。相当厄介なことになるぞ」

猫耳(…っ、読まれていた!)

賊A「それもそうだが、引き返すわけにもいかねぇだろ」

賊B「だなァ……どうするんだ?」

賊C「そりゃ勿論」ジロ

猫耳(……!? ぼ、僕!?)

賊C「おいガキ。魔姫がどこ行ったか、知ってるんだろ?」

猫耳「えっ……し、知らな」

ドゴォ

猫耳「――っう!! ゲホ、ゲホッ!!」

賊A「従者であるお前が知らないはずがない。おい、教えな」グイ

猫耳「本当だよ……魔姫は勝手に出かけること多いから……」

賊B「嘘つくんじゃねぇぞ!!」バキィ

猫耳「ぎにゃっ!!」

賊C「どうしてもそう言い張るなら……徹底的に痛めつけるだけだ」グリグリ

猫耳「~~っ……」

猫耳(耐える……こんなの、大したこと――)


バッ


魔姫「何をしているのかしら?」


猫耳「!! 魔姫……」

賊A「はっ、出かけてたなんて嘘じゃねーか。パジャマ着て真昼間からグースカ寝てたわけかよ」

魔姫「黙りなさい。私を怒らせたからには、どうなるかわかっているんでしょうね?」

賊B「望むところだ。お前の首には莫大な懸賞金がかかっているんだ」

賊C「それに見たところ顔が赤い。熱でもあるんじゃねーか?」

猫耳「魔姫、早く逃げて! こいつら、魔姫のこと――」

魔姫「心外ね」

猫耳「っ!?」

魔姫「いくら弱ってても、小物にやられる私じゃないわーっ!!」バチバチバチッ

賊's「「ぐあああぁぁぁ」」

魔姫「ふん、反省なさい」

猫耳「魔姫…ぇ」

魔姫「猫、怪我してるわ! 早く治療を……」タタッ

猫耳「!! 魔姫、危ないっ!!」バッ

魔姫「え――」


ドゴォ


魔姫「!!」

猫耳「~~っ……ゴホッ」

賊A「ちっ、このガキ邪魔しやがって。狙いを外したぜ」

魔姫「なっ……!? ピンピンしてる!?」

賊B「ちょっとシビれるくらいで、大したことなかったぜ」

賊C「どうやら、魔力まで弱っているみたいだな?」

猫耳「……ぅ」

魔姫「猫、猫っ!! しっかりして!!」

猫耳「僕はいいから……逃げて、魔姫……」

賊A「おっと、そうはいかねぇ。俺らは、お前を殺す為に来たんだよ」

魔姫「……っ!」ギリッ

賊A「そう睨むなよ。強がってるのが見え見えで可愛いねぇ」ヘヘヘ

賊B「顔だけは傷つけんなよ。ギルドに出す時、判別がつかなくなるからな」

賊C「あばよ、姫様……地獄でお父様がお待ちしてるぜ」

魔姫「……っ!!」

猫耳(魔姫……っ!!)


――どかっ


賊A「ぐっ!?」

魔姫「あ――」

猫耳「……え?」


勇者「何か……グッドタイミング? あ、それとも遅かった?」

ハンター「2人とも生きている。だが――」

勇者&ハンター「「お前たちは許さん」」

賊's「ひっ……」


ぐあああああぁぁぁぁぁ……


魔姫「2人とも、来てくれたのね……。猫、無事……?」

猫耳「うん……僕は大丈夫」

魔姫「そう……何か、安心したらどっと眠気が……」フラッ

猫耳「魔姫……うっ」ズキッ

勇者「あ、魔姫さんと猫耳が!」

ハンター「こいつらの粛清の続きは後でだな。おい、今助けてやるからな!」ヒョイッ

猫耳「ありがと……う」ガクッ

猫耳(力強い腕。魔姫を守るに相応しい。僕とは……何もかもが、違う)





魔姫「う~ん……」

勇者「何てこった! 魔姫さんの熱が上がったぞ」

ハンター「今、医者を呼んだ。熱が下がるまで、俺とお前が交代で護衛だな」

猫耳「ごめん……」

勇者「謝ることじゃないって。それより、自分の体心配しな」

猫耳「大丈夫。見た目が派手なだけで、大したことないから……」

ハンター「そうか、安心した。俺は一旦家に戻って諸用を済ませたい。2人とも、この場は任せたぞ」

勇者「了解。さーて…猫耳、ちょっと休ませてくれ。ちょっと疲れててよ……異変があったら大声で叫んでくれ」

猫耳「うん、わかった」

猫耳「……」

魔姫「うぅーん……」

猫耳「魔姫、安心してね……。頼りになる2人がいてくれるんだもん。もう、怖い目に遭うことはないよ」

猫耳「てか勇者はわかりやすいけど、ハンターも絶対、魔姫のこと好きだよね」

魔姫「うーん、うーん……」

猫耳「でもね、魔姫。僕だって――」スッ

魔姫「……すぅーっ」

猫耳「魔姫のこと――守りたいって、思っているんだよ……?」





『あいつ、出来損ないなんだってよ』

『魔物のくせに、戦えないんだ』

『何であんな奴が、魔姫様のお側にいるんだ』


猫耳『……』


魔物というものは本来、屈強な肉体もしくは魔力に恵まれた、戦う力に優れた種族だ。
だけど――僕は多くの魔物が持つその特性から、外れてしまった。


猫耳『力が……出ない』


それは、死の淵から生還した代わりに失ったもの。
悪魔王の技で傷つけられた体は、戦いの為の機能を失ってしまった。
悪魔王に恐怖心を植えつけられた心は、魔力を生み出すことができなくなってしまった。


猫耳(僕は――どうして生き残ってしまったのだろう)


生き残っても仕方ない。この命に価値はない。死んでも、誰も悲しまない――はずだった。

だけど――


魔姫『猫っ!』ポンッ

猫耳『! 魔姫様……』

魔姫『ボーっとして、どうしたのよ。相変わらず、暗い子ねぇ』

猫耳『ほっといてよ……』

魔姫『いーえ、ほっとかないわ! ダーツの相手を探してたのよ!』

猫耳『何で僕……』

魔姫『相手がいないからに決まってるでしょ』

猫耳『……変な奴』


他に友達がいれば、自分なんかに寄り付きもしないだろう――けど、


魔姫『ホラ、来なさい! 来ないなら、引っ張っていくわよ!』

猫耳『……わかったよ』クス


魔姫は、自分を必要としてくれる、唯一の存在だったから――





魔姫「うぅん……」


朦朧とする意識の中、夢を見ていた。
あれは――昔の光景。


猫耳『もーっ、魔姫のばかぁ!』

魔姫『何よぅ、猫のわからずや!』

昔、猫と喧嘩したことがある。理由は今にしてみれば、他愛ないことだった。
とにかくその喧嘩で、私は猫と絶交することにした。…のだけれど。

魔姫『猫ったら、何で謝りに来ないのよーっ!』プンスカ

喧嘩から2日経っても猫が謝りに来ないことに、私はひどく憤慨していた。

魔姫『謝りに来たら、許してあげようと思ってたのに……』

魔姫『謝りに来れない理由でもあるの? ……どうして、来てくれないのよ……』

魔姫『もしかして。猫が私を許してない、とか……?』

ワガママ放題に生きてきた私は、そんなことすら気付くのに遅れて。

魔姫『……何で、私が謝らないといけないのよ!』

魔姫『……でも………』

魔姫『このまま……猫と遊べなくなるのかしら』ジワァ

初めての喧嘩で、どうしていいかわからなくなって、心がぐちゃぐちゃになって。

魔姫『……そんなのは、イヤ!』

だけど、だからこそ、行動しなきゃ、って思えて――
気づいたら、猫の所に走り出していた。

魔姫(猫、猫――)

はやる気持ちが足を急がせた。
1分でも、1秒でも早く猫に会いたくて――


魔姫『猫――っ!』





魔姫「猫……」

ボーっとする。景色が変わり、目の前に天井があった。
猫はどこ――そう考えながら周辺を見て、ようやく気付く。

あぁ、あれは夢だったの。

魔姫「……猫?」

だけど夢から覚めても、私は猫を探していた。
何だか心細くて、猫に会いたくて――

ガチャ

魔姫「!」バッ

ハンター「よぅ。起きてたか」

魔姫「……猫は?」

ハンター「今はいない」

魔姫「え……っ」

ハンター「俺と勇者に看病を任せると言って、どこかに行っちまった。行き先くらい告げていきゃいいものを……」

魔姫「猫が、いない……」

ハンター「まぁあいつのことだ、そう遠くには……」

魔姫「猫……」ポロポロ

ハンター「!?」

魔姫「どうして、どうしていないのよ……」

ハンター「あー…まだ熱があるのか? 寝ておけ、じゃあな!」ピュー

魔姫「猫……」

何故だか無性に悲しかった。
猫がいない状況、夢の続きみたいで――まるで、あの時の私の心境そのもの。
どうしてこんな気持ちになるのかわからない。だけど、とにかく――

猫に、傍にいて欲しかった。





それから熱にうなされながら、何度か夢を見た。
夢の中の私は、猫を探していた。
生まれ育った魔王城、父亡き後に転々とした地、中央国のお祭り――

一緒に過ごした場所なのに、猫はどこにもいなかった。

孤独だった私の側にいてくれた。
父を失った後も側にいてくれた。

側にいてくれたから、私は元気でいられた。

だから――猫がいないだけで、私の心はこんなにも心細くなって、世界から取り残されたような暗闇に包まれてしまうの。


「魔姫」

魔姫「!」





魔姫「……」

猫耳「あ、目を開けた。お薬、飲める?」

魔姫「……猫」

猫耳「僕のこと、わかるの? 2人から聞いた話では、何か熱で頭がボーッとしてるって聞いたから……」

魔姫「猫っ!」ギュッ

猫耳「にゃにゃっ!?」

魔姫「どこ行ってたのよぉ……探したんだからね……!!」

猫耳「探し……? ぼ、僕も薬草を探しに行ってたんだよ」

魔姫「薬草……?」

猫耳「うん。お医者さんによると、魔姫は変なウイルスに感染してたみたいで……その薬草は、ネコ科が好きな類のって聞いて」

魔姫「だからってどーして、わざわざ貴方が採りに行くのよ!! バカなんじゃないの!」ポカポカ

猫耳「バ、バカって……。でも、そうだよね……僕みたいな奴が行くより、他の人に頼んだ方が確実だもんね」

魔姫「そういうこと、言ってるんじゃない……」ギュウ

猫耳「え……っと?」

魔姫「こういう時に、いなくならないでよ……猫は、いて当たり前なの! いなきゃダメなの!」

猫耳「……ワガママだなぁ、魔姫は」

魔姫「ワガママな私を受け入れてくれるのは、貴方だけだもの……」グスグス

猫耳「そんなことないよ。勇者やハンターだって……。魔姫はもう、僕以外にも仲間がいるじゃない」

魔姫「それでも、猫が特別なのはずっと変わらない」

猫耳「魔姫……」

魔姫「貴方がいないだけで、不安で心細くてたまらないのよ……だって猫はもう、私にとって特別な家族で……」

猫耳「……ぅ」

魔姫「……?」

猫耳「魔姫ぇ」ボロボロ

魔姫「ちょ、猫!? あ、貴方、何泣いてるのよ!?」アセアセ

猫耳「ふええぇぇぇ」





魔姫「落ち着いた? 全く…病人に気を遣わせるんじゃないわよ」

猫耳「グスッ、ごめんね魔姫……でも僕、僕、嬉しくて……」グスグス

魔姫「嬉しい……?」

猫耳「僕は……力もないし、弱いし、頼りにならないし……。魔姫だけが僕を必要としてくれていたのに、僕はずっと、役に立たないままで……だからせめて役に立ちたくて……」グスッ

魔姫「……だから、薬草を」

猫耳「せめて、僕も魔姫の助けになりたいって思って……」グスッ

魔姫「十分、助けてもらってるわよ。猫がいなければ私、とっくに孤独死してたわ」

猫耳「魔姫……」

魔姫「だから……ね? 猫には、側にいてほしいの。今までだけじゃなくて、これからもずっと……」

猫耳「うん……うん!」


~♪


魔姫「……あら、この音楽は?」

猫耳「お祭りの音楽かな? 今日だったんだよ」

魔姫「あぁ……風邪のせいで、行きそびれちゃったわねぇ」

猫耳「来年行こうよ。……僕たち、ずっと一緒なんでしょ?」

魔姫「ふふ……そうね」


~♪


猫耳「……それにしても、聞き覚えある曲だよね。何の曲だっけ?」

魔姫「ウエディングソングの定番じゃなかったかしら」

猫耳「あ、そうだったねぇ。はは、昔を思い出す……」

魔姫「……」

猫耳「……」

魔姫「ね、ねぇ」

猫耳「な、何っ!?」

魔姫「む……昔はよくやったわよね! 結婚式ごっこ!」

猫耳「にゃにゃっ!? お、思い出しちゃったの!?」

魔姫「まぁ……。むしろ、何で忘れてたのかが不思議なくらい……」

猫耳「そ、そう」

魔姫「ねぇ、猫」

猫耳「ん……?」

魔姫「また……する?」

猫耳「……ふにゃっ!?」

魔姫「せ、せっかくロマンチックな音楽だし……お祭り、行けないし……ねぇ?」

猫耳「理由になってないにゃ……」

魔姫「……嫌かしら?」

猫耳「………」ドキドキ


猫は黙って目を閉じる。

男女の役割が逆でしょ――そう苦笑いしながら、私は彼との距離を縮める。
昔と変わらず、あどけなくて可愛らしい顔に胸が高まる。

気分を盛り上げるのは、音楽の国の演奏――って、ん?


魔姫「……待って。何で、遠方の国の音楽がここまで聞こえ……」

<ガサガサ

魔姫「ん? 窓の外に何か……」


ハンター「おい、音楽止まったぞ。ネジ巻け、ネジ」

勇者「待って、待って! ねーじねーじ」グルグル

ハンター「全く……肝心な時に音楽が止まるとは、お前のそういう所が女を遠ざけているんだな」ハァ

勇者「何だとぉ! 俺だって頑張って……」


魔姫「何をしてるのかしら?」ニッコリ

勇者&ハンター「」


<グアアアアァァァァ


猫耳「魔姫の調子が戻ったにゃー」

魔姫「もー…まさか見られてたなんて」カアァ

猫耳「いいじゃん魔姫、見せつけてやれば♪」

魔姫「……えっ?」


チュッ


魔姫「……」

猫耳「えへへ。これで、公認カップルだにゃ~」

魔姫「な、な……」プルプル

ハンター「天然……なんだよな?」

勇者「恐ろしい逸材ですな」

魔姫「ね、猫ぉーっ!」

猫耳「わー、逃げろぉーっ!」


私と猫は、ずっと一緒。今までも、これからも――それを誓い合った今日は、特別な日。


魔姫「覚えてなさいよーっ。一生逃がさないからねっ!」



Fin


あとがき

猫耳は、本編では魔姫に男と意識されてない状態だったので、恋愛仲にするにはどうしたもんかと悩みました。
幼馴染って王道だけど、ずっと友達止まりの関係だったら進展が難しいんですねコリャ。
でも、魔姫が1番素直になれる相手は猫耳だと思ってます。

ちなみに悪魔王のせいで戦えなくなった設定は完全なる後付けなのですが、矛盾はない……ですよね?((
posted by ぽんざれす at 17:14| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月31日

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」/ハンタールート

本編はこちら


悪魔王との戦いから半年…


魔姫「はああぁっ!!」バチバチバリィッ

焼き鳥A「ギャヒイィィ」

魔姫「どう、雷撃の味は。いいスパイスになるかしら?」

焼き鳥's「ギュアアァァッ!!」

魔姫「何羽来ようと同じこと……」

――ザシュッ

魔姫「!」

ハンター「全く…数が多いばかりで手応えがないな」

魔姫「ちょっとハンター、邪魔しないで。そいつら、私の獲物なんだから」

ハンター「ふん。張り合うなら、とっとと獲物を狩ればいいものを」

魔姫「ちなみに貴方、何羽倒したの?」

ハンター「今ので12羽だな」

魔姫「あら、そう。私は20羽」ニッコリ

ハンター「……」

ハンター「これからが本領発揮だああぁぁ!!」ダダッ

魔姫「だから人の獲物取るんじゃないわよーっ!!」

<ギャーギャー


勇者「ははっ…2人とも苦戦する様子ないな、流石!」←スコア:40羽





勇者「それじゃ、焼き鳥の討伐をギルドに知らせてくるわ~」←最終スコア:87羽


ハンター「くっ……」←最終スコア:23羽

魔姫「数が多いだけで大したことなかったわねぇ」←最終スコア:31羽

ハンター「………フン」

魔姫「そんなに気落ちしないで。貴方、人間にしてはかなりやる方だと思うわよ?」

ハンター「えぇい、中途半端な慰めなどいらん!」

魔姫「あら、そう。なら…まだまだね」フッ

ハンター「俺に話しかけるな!」

魔姫「何よそれ!」

<ギャーギャー


勇者「報酬受け取ってき……って、また喧嘩かよ。ハンター、いい加減にしなよ~」

魔姫「そうよ、いい加減にしなさいよ~」

ハンター「俺が悪いのか!?」

勇者「魔姫さんが悪いわけないだろ」

魔姫「あらありがとう勇者。貴方って紳士よね~」

勇者「魔姫さん……! 俺は貴方を信じていますよ、このクールぶったキザ野郎が全部悪いんです!」

ハンター「…一生やってろ」ハァ


魔姫とその他一行は、人間に危害を加える残党刈り退治をしていた。





>魔姫の住む屋敷


猫耳「お帰りぃ~♪ 果物のタルト焼いたから召し上がれ!」

魔姫「あら、いい香りねぇ。猫、紅茶を淹れて」

勇者「俺は緑茶~! で、ハンターは……」

ハンター「…コーヒー」ムスッ


猫耳「ハンターの奴、機嫌悪いね」ヒソヒソ

勇者「あぁ、いつものアレだよ」

猫耳「そっかぁ、また魔姫に負けたのかぁ」

勇者「全くハンターの奴、魔姫さんに対抗意識燃やしちゃって……」


魔姫「砂糖とミルクは入れないの?」

ハンター「入れん。コーヒーの風味そのままを楽しむんだ」

魔姫「よく、そんな苦いの飲めるわねぇ」

ハンター「お子様にはわかるまい」フッ

魔姫「へぇー? 今だに辛い歯磨き粉使えない男が『お子様には』ねぇ?」

ハンター「」ブッ

魔姫「うんうん、ミントの風味は辛いもんねぇ。ふ、ふふふ……っ」

ハンター「えぇい黙れ、ピーマン食えない典型的子供舌が!」

魔姫「歯磨き粉よりはよっぽど一般的よ!」

<ギャーギャー


猫耳「まーたやってるよ」

勇者「魔姫さんのような素晴らしい方にケチをつけるなんて、由々しい奴だな」


助手「お邪魔致します」

魔姫「あら助手。いらっしゃい」ゼーゼー

ハンター「どうした」ゼーゼー

助手「お手紙を届けに。音楽の国の国王陛下からです」

勇者「音楽の国っつーと隣国だな。王様から手紙?」

助手「はい。1週間後の晩、国で祭典を行うので是非参加して下さい、と……」

魔姫「祭典? 美味しいもの食べれるの?」

勇者「勿論ですよ魔姫さん。それだけでなく、その日は楽器のメロディが国全体を包むんですよ。何せ、どこ行っても音楽、音楽、音楽ですから」

猫耳「へぇ面白そう!」

魔姫「音楽は静かな方が好きなんだけど…まぁ、美味しいものが食べられるならいいわ」

猫耳「魔姫ったら食べることばっかりだにゃ~」

勇者「ははっ、ご馳走も祭りを彩る大事な要素だからな。でも何と言っても、メインイベントは…」

魔姫「メインイベント?」

勇者「夜8時に行われるダンスパーティーですよ! その時間は国中がダンスフロア、どこを見てもリア充、リア充、リア充!」

魔姫「あら。私、ダンスは結構自信あるのよ」

猫耳「行きたい、行きたーい!」

勇者「うーん、スケジュールは大丈夫かな?」

助手「えぇ。我々の活動が実を結んだのか、現在指名手配されている残党はいません。祭典の日だけでなく、しばらく休む余裕はありますよ」

魔姫「報われたわぁ~。着ていく服、選ばないと!」

<わいわい

ハンター「……」

助手「ハンター様、祭典には……」

ハンター「俺は出ない」

魔姫「……え?」

ハンター「残党がいないならバイトする。…ああいう場は好かない」ガタッ

スタスタ

魔姫「……何よ、つまんない男ね」

勇者「あいつは元々付き合いが悪いですからね」

猫耳「行きたくないなら仕方ないにゃ~」

魔姫「…たまには、付き合ってくれたっていいじゃない……」

猫耳「ん~? そうだねぇ、ハンターと仲良くしたいよね」

魔姫「!!!」

猫耳「ハンターとは喧嘩ばかりだもんねぇ。楽しいことを共有して一緒に笑い合うってのも……」

魔姫「おほほほ! 何を言ってるのかしら、猫ちゃぁ~ん!」ギュウゥ

猫耳「ふぎゃあぁ、苦しい、苦しい!!」

勇者「いいなぁ猫耳、魔姫さんに締めてもらえて……」

魔姫(ハンターと仲良くしたいなんて有り得ないし! あいつは下僕のくせに生意気なのよ!!)





魔姫「ところでハンターのバイトって、何かしら?」

勇者「あぁ、それは……」





魔姫「……で、勇者に聞いて来てみたけど……」

カランカラン

ハンター「いらっしゃいま――せっ!?」

魔姫「ふふ、遊びに来たわよ」

ハンター「……冷やかしなら帰れ」

魔姫「冷やかしじゃないわ。紅茶を頂きたいのよ、ほら私って紅茶好きでしょ?」

ハンター「……1名様、ご案内致します」

わいわい

魔姫(それにしてもバイトがまさかの接客…しかも、お洒落めのカフェの店員なんてねぇ)

ハンター「ニヤニヤ見てくるな、気が散る」

魔姫「仕事に集中なさいよ。ほら、あそこのテーブルのお客さんが呼んでるわよ」

ハンター「ったく……お待たせ致しました、ご注文はお決まりでしょうか」

魔姫(意外とサマになってるじゃない。それに、いつも戦闘服ばかりだから、ワイシャツにエプロン姿ってのはかなり新鮮だわ)

魔姫(そう言えば、ハンターは元々お坊ちゃんなんだっけ。普段は荒々しいけど、きちんとしようと思えばできるのね)

ハンター「ご注文はお決まりでしょうか」

魔姫「えぇ。日替わりのケーキと紅茶のセットをお願い」

ハンター「かしこまりました」

魔姫「ハァ……」

ハンター「何か」

魔姫「ハンターがいつもこうならいいのに~」

ハンター「……失礼致します」サッ

魔姫(あら、挑発に乗ってこないわねぇ)

魔姫(…っていうか……)


クレーマー「おい店員! 紅茶が熱くて舌火傷したじゃねぇか、どうしてくれる!」

ハンター「大丈夫ですか? すぐに水をお持ち致します」

クレーマー「ふざけんな! 金返せ! 治療費よこせ!」

ハンター「申し訳ありませんが、それはできかねます」

<ギャーギャー


魔姫(……ふぅん、大人の対応できるんだ。何か、イメージ全然違うわ)





店長「上がっていいよ、お疲れさん」

ハンター「お疲れ様です、お先失礼します」


ハンター「ふぅ……」

魔姫「お疲れ様」ヒョコッ

ハンター「何だ。出てくるのを待っていたのか?」

魔姫「まぁね~。貴方も大変ねぇ、ああいうお客さんよくいるの?」

ハンター「たまにいるが、大変ではない。……もっと厄介なのと、ほぼ毎日顔を合わせているからな」

魔姫「そうなのォ、本当に大変ねー?」ニヤニヤ

ハンター「……自覚あるのかないのか、どちらだ」

魔姫「ないわ。でもハンター、私は貴方を見直したわ」

ハンター「見直した?」

魔姫「ほら、貴方って最年長なのに大人気ないし、クールぶってる割に感情表現豊かだし、意外と後先考えないし」

ハンター「俺を罵倒しに来たのか」

魔姫「いえ。そんな部分を出さずにキチンと働いてるから、凄いなと思ったわけよ」

ハンター「金を稼ぐとはそういうことだ」

魔姫(……ハンターの家は元々裕福だったけれど、父親が魔物に殺されて生活は一変した。ハンターは、母親に裕福な暮らしをさせたいと思っているようだけれど……)

ハンター「残党刈りの仕事がしばらく無いようなら、もう1、2件バイトを増やさんとな……」

魔姫「……偉いっ!」バシッ

ハンター「っ!?」

魔姫(ハンターのお母様自身はそんなこと望んでないと思うけど、でも……)

魔姫「私はもう、親孝行できないから。貴方は後悔のないようにやるのよ!」

ハンター「はぁ……?」

魔姫「よしハンター、労ってあげる。私の奢りよ」

ハンター「は?」

魔姫「飲みに行こうって言ってるのよ。好きでしょ、お酒」

ハンター「おい……お前は飲めないだろ」

魔姫「私はノンアルでいいわよ。さぁさぁ、行くわよ」

ハンター「……ったく。未成年と飲み屋に行くのは気が進まんが、お前は強引だからな」ハァ

魔姫「魔王の血筋は酒豪の血筋よ、成人したら負けないんだから!」

ハンター「そうかそうか。だが、飲み比べは体に悪いからやらないぞ」

魔姫「ノリ悪いわねぇ。まぁいいわ、アダルトに夜の街を案内してよ」

ハンター「じゃあ、あそこの店にするか。女に人気の店だぞ」

魔姫「いいわね~、外装も素敵。それじゃ、行きましょ♪」

ハンター「本当に、飲むなよ」





魔姫「うぅ~……」フラフラ

ハンター「本当にお前は……」ハァ

魔姫「何よぅ、飲んでないじゃない~」フラフラ

ハンター「夜ふかしできないなら、あらかじめ言え! ったく、酔ってないのに道端で寝そうだな……」

魔姫「寝ないわよぉ~。ふぁ~……」

ハンター「……お前、本当に一滴も飲んでないんだよな?」

魔姫「当たり前でしょぉ~。飲酒は成人を過ぎてから、睡眠は日付が変わる前に、の健康優良児よ!」

ハンター「やっぱり、子供は子供か……」

魔姫「子供子供って、バカにして~」

ハンター「馬鹿にする意味ではない。事実を述べただけだ」

魔姫「………」

魔姫(ハンターは私のこと、子供として見てるのかしら……)

ハンター「ほら、おぶされ」グイッ

魔姫「あっ」

ハンター「屋敷まで運んでやるよ。恥ずかしいかもしれないが、お互い様だ」

魔姫「お…重く、ない?」

ハンター「余程の肥満でもなければ、別に重くない」

魔姫「何よそれ~…」

ハンター「文句を言うな。黙って寝てろ」

魔姫「……」

魔姫(顔が近くて、アルコールの匂いがする。体は意外と筋肉質で……大人の男、って感じがする)

魔姫(ハンターは大人だから……子供の私には……)

ハンター「全く……大人しくしてりゃ、それなりに可愛げがあるものを」フゥ

魔姫「……うるさい。お互い様」ボソッ





>屋敷


猫耳「にゃにゃっ、魔姫に一体何が!?」

ハンター「眠気が来ただけだ。別に変なことはしていない」

猫耳「ありがとうハンター。魔姫ぇ~、こんな風になるまで夜遊びするなんて……」

魔姫「むにゃむにゃ…猫のくせに、説教なんて……すやーっ」

ハンター「寝言もハッキリしているのだな、こいつは」

猫耳「お恥ずかしいにゃ…」

ハンター「寝室はどこだ。お前じゃベッドに運べないだろう」

猫耳「2階の突き当たり。何から何までありがとうね、ハンター」





ハンター「よっこいせ、っと」

魔姫「すやー、すやー」

ハンター「人の気も知らずにのん気なことだ。さて、俺は帰るか」

魔姫「むにゃむにゃ……待ちなさいよぉ~」

ハンター「ん?」

魔姫「服のままで寝るの、イヤ~……」

ハンター「……自分で着替えろ」

魔姫「何よぅ。せっかく、こぉんなハイスペック美女が誘ってあげてるっていうのにぃ」

ハンター「……お前、本当に酔ってないよな? 凄まじい寝ぼけ方をするな……」

魔姫「寝ぼけてないぃ。着替えるの手伝ってぇ」

ハンター「猫耳に手伝ってもらえ。伝えておいてやる」パタン

魔姫「あ……」

魔姫(私って……そんなに魅力ないのかしら……)





>で


魔姫「このドレスがいいわ!」

猫耳「それは胸元が開きすぎてるよ」

魔姫「じゃあこれは!」

勇者「スリットがちょっと…。いや個人的には嬉しいんですがね、魔姫さんにはあまり肌を晒して欲しくないというか……」

魔姫「なら、どれがいいのよーっ! ひと皮剥けた、アダルトな私の魅力を出せるドレスはどれ!」

勇者「魔姫さん、どうしちまったんだ?」ヒソヒソ

猫耳「さぁ?」ヒソヒソ


ハンター「ここにいたのか」

勇者「あ、ハンター」

ハンター「女の衣装屋で何をしている」

猫耳「いやぁ、魔姫が祭典に着ていくドレスを買うから、男の意見が欲しいと言われて……」

ハンター「ろくに女経験のない2人の意見など聞いてもな……」ククク

勇者「何だとテメェー!」

猫耳「聞き捨てならないにゃーっ!」


魔姫(ハンターは女経験豊富なのかしら?)ジロ

助手「それよりも、ギルドより依頼が入りまして」

魔姫「ギルドから? 何かしら」

助手「はい。魔王軍残党、妖花の群れが農村地帯に被害を及ぼしたそうです。その妖花の討伐依頼が出されました」

魔姫「妖花…あぁ、魔王城の警備をしていた連中ね」

ハンター「数の多い連中だ。1日で全てを狩るのは不可能だというのがギルドの見解だが……」

助手「住処への往復も含め、3日はかかるでしょうか」

猫耳「待って。それって……」

勇者「おもっくそ、祭典と被るじゃん」

魔姫「まぁ…何てタイミングの悪い」

勇者「楽しみだったのになぁー…。でも人々の為だ、我慢するか!」

猫耳「じゃあ僕は1人で参加してくるにゃー」

勇者「うわぁーっ、それは許さん! お前も道連れじゃい!」

猫耳「フギャーッ、理不尽ーっ!」

ハンター「いや、お前たちは祭典に参加してこい」

魔姫「え?」

ハンター「数は多いが、相手はCクラス。俺と助手で何とかなる相手だ」

魔姫「でもハンター……」

勇者「よっしゃ任せたぞハンター! 全員討伐したら、褒美に飯奢ってやるよ!」バシバシ

魔姫「ちょ、ちょっと! もし何かあったら……」

ハンター「ふぅ…俺はお前に信頼されていないんだな」

魔姫「!! ち、違う、そういうわけじゃ……」

勇者「大丈夫ですよ魔姫さん。ハンターはこういう仕事、大ベテランですから」

猫耳「好意は素直に受け取った方がいいよ。ありがとう、ハンター」

魔姫「……」





>祭典当日


魔姫「ハァ……」

猫耳「魔姫、もう準備できた……わぁっ、そのドレスやっぱり似合うね! シックって言うのかな? 大人っぽいよ、魔姫!」

魔姫「ありがとう。猫も今日の衣装は素敵ね」

猫耳「主役は女の子だから目立たない程度に、でも連れの女の子に恥をかかせないように…って、ハンターが選んでくれたんだ」

魔姫「…そうなの」

魔姫(そういうTPO知ってるってことは…お祭りは好かないとか言いつつ、参加したことあるんじゃないの?)モヤモヤ

猫耳「音楽の国までは、馬車で1時間かかるんだってね。もうすぐ迎えに来ると思うけど……」

魔姫「ハンターは今頃、戦ってるのかしらね……」

猫耳「ん、そうだと思うよ。……あ、そう言えばさぁ。妖花が襲ったのって農村だっけ?」

魔姫「そう言ってたわね。それがどうかした?」

猫耳「確か妖花って、自然の養分を糧にしてたよなー…って」

魔姫「……!!」

猫耳「農村を襲ったともなると、作物に大分被害出ただろうねぇ。可哀想に……」

魔姫「ごめん、猫っ!」ガタッ

猫耳「どうしたの?」

魔姫「急用ができたわ! 祭典には先に行ってて!」バサッ

猫耳「え、急用って……魔姫ぇーっ!!」


バサバサッ


魔姫(全速力で飛べば……!!)






ハンター「ハァッ!」シュッ

妖花A「グファッ…」

ハンター「仕留めたか!?」

妖花A「ガアァ――ッ!!」ビュンッ

ハンター「ちっ!!」バッ


ハンター「たかが花とはいえ、デカいだけあって防御力が高いな」

助手「いっそ焼き払いましょうか?」

ハンター「ここは可燃物が多すぎる。できればそれは最終手段でいきたいが……」

妖花B「ガフォッ」

ハンター「……? 何かを振りまいている?」

助手「鼻と口を塞いで下さい! あれは、幻惑の花粉です!」

ハンター「!!」バッ

ハンター(くっ…少し吸い込んでしまった。少しだけ、気分が悪い……)


うぞぞ……


ハンター「……!!」

妖花ボス「グファ……」

ハンター(でかい…あいつが頭か)

ハンター「早々に討つ! 喰らえ!」ダッ

妖花ボス「ガファアァ――ッ!!」ビュンッ

ハンター「!!! 速――」

ベチーン

ハンター「つっ……」

助手「ハンター様!」

ハンター「平気だ。しかし…この素早さと力で、Cクラスだと!」

助手「恐らく、農村の作物の養分を吸い取ってパワーアップしたのでしょう。申し訳ありません、予想できていたはずなのに……」

ハンター「なに、気にするな。パワーアップされたなら、報酬を値上げ交渉するだけのこと」チャキ

妖花ボス「グルアァ――ッ!!」

ハンター「助手! ボスは俺がやる、他の奴らの対処を頼む!」ダッ

ベチーン

ハンター「ぐっ」

助手(ハンター様の動きがいつもより鈍い…幻惑の花粉のせいか)

ハンター「……この程度!」シュッ

ズブッ 妖花ボス「ゲヒャアァ!!」ピュッ

ハンター「何だ……?」サッ

シュウゥ

ハンター(これは…溶解性の粘液か。こんな技まで使うとは……)

妖花ボス「ギュアアァ!!」ピュッピュッ

ハンター「ふん…回避は容易い」サッ

シュルル

ハンター「!! しまった!」





魔姫(妖花の香りが漂ってくる…この辺で間違いないはずだけど……)


助手「ハンター様!」


魔姫「んっ?」


ハンター「くっ……」ズルズル


魔姫(ハンターが引きずられて…あっ、妖花のツルが足に!)


妖花ボス「ゲヒョア……」

ハンター「ち……っ! 粘液の狙い、ばっちり定めてやがる」

助手「ハンター様……!! くっ、雑魚が邪魔!!」

妖花ボス「ギュアアァ!!」ピュッ


魔姫「させないわ! ハン――」


ハンター「――甘いんだよ」


魔姫「え?」


ハンター「はああぁ――ッ!!」ブンッ

シュウウゥ

妖花ボス「!!! グギャアアァァ」


魔姫(足を振り上げて、妖花のツルで粘液をガードした……!)


妖花ボス「グウウゥ……」

ハンター「植物も苦しむんだな。沢山の魔物を狩ってきたが、これは初めて知ったな」

妖花ボス「ゲャアアァァ!!」シュッ

ハンター「おらっ!!」ズブッ

妖花ボス「ゲアアァァァ!!」


魔姫(あのパワーアップ版妖花を圧倒するなんて…ハンターって、あんなに強かったかしら?)


ハンター「何度……」


魔姫「え?」


ハンター「何度、いけ好かない小娘に泣かされてきたと思っている。あいつに比べればお前達の攻撃など、ぬるすぎてあくびが出る」


魔姫(何よそれ、いけ好かない小娘って私?)ムッ


妖花ボス「グギャアアァァァ!!」ビュンッ

ハンター「その上、お前たちは実力だけでなく――」ヒョイッ


魔姫「……?」


ハンター「――花としても、あいつに負けている。本物の花なら、あいつの足元程度には可憐になれ」


魔姫「――っ!!?」ボッ


ハンター「……なんて、知能の低い生物に言っても理解できないか」タタッ

ハンター「ハァッ!」ズシャッ

妖花ボス「グゲアアァァッ!!」ドサッ


魔姫「あっ……いけない!!」


ハンター「ようやく倒れたか。植物も首をはねれば死ぬのか。……どこが首だかわからんが」チャキ

魔姫「待って!!」

ハンター「……!! お前、どうしてここに」

魔姫「話は後よ。それより……妖花!」

妖花ボス「ギュルル……」

魔姫「全く、貴方はこのご時世に何をやっているの。迂闊なことをすれば残党刈りの対象よ、わかっているの?」クドクド

妖花ボス「しゅん」

ハンター「妖花が大人しくなった……?」

魔姫「ごめんなさい、ハンター。妖花を狩るのはストップしてもらっていいかしら?」

ハンター「何を言ってやがる」

魔姫「妖花の特性を思い出したのよ。この子達、人間に敵意は持っていないわ」

ハンター「どういうことだ」

魔姫「妖花は生きていく為に、養分を吸収しないといけないのよ。だけど」ギロリ

妖花ボス「」ビクッ

魔姫「考えなしの行動で、農村の作物の養分まで吸収してしまった。そうよね?」

妖花ボス「……ギュル」コクリ

魔姫「つまり今回の行動は悪意によるものでなくて、うっかりなのよ。だからって罪がないわけじゃないけど……命を狩る程のことではないと思って」

ハンター「……」

魔姫「妖花には人に迷惑をかけない住処に移住してもらって、農村には私から償いをするわ。だから……」

ハンター「……」

助手「ハンター様……」

ハンター「……本当に、もう人間に被害を出さないんだな?」

妖花ボス「ギュルル」

魔姫「ホホホ。万が一またこういうことがあったら、私の顔に泥を塗ったということで…わかっているわね?」ニコ

妖花ボス「ギュルッ!! グギャギャ~」ブルブル

ハンター「怯えているぞ。どれだけ恐ろしいんだ、お前は」

助手「どうなさいますか、ハンター様」

ハンター「そういうことなら仕方ないだろう。全く…無駄足だったな」ハァ

魔姫「そう言わないで。…ありがとう、ハンター」フフ

ハンター「何で礼……。まぁいい。ところでお前、祭典はどうした」

魔姫「あっ! もう始まっている時間だったわ……どうしよう」

ハンター「まぁ、飛んでいけば途中からでも参加できるだろう。ギルドには俺たちから伝えておいてやる、早く行……」

魔姫「そうはいかない!」ガシッ

ハンター「!!?」

魔姫「貴方も行くわよ、ハンター!」バサッ

ハンター「はっ!? だから俺は参加しないと……離せ!!」

助手「ギルドには私から伝えておきます。楽しんできて下さい」

魔姫「ありがとう助手! お土産買っておくわ、それじゃあ!」

ばっさばっさ <おーろーせー!





~♪


魔姫「フフッ…セーフね」ハァハァ

ハンター「大分遅くなったな。もうダンスが始まる時間じゃないか。俺を置いてきた方が早く着いただろ」

魔姫「駄目。たまには付き合いなさい」

ハンター「本当に強引だな…来てしまったものは仕方ないか」ハァ

魔姫「そんなに嫌なの?」

ハンター「そういうわけではないが……音楽に興味はないのでな」

魔姫「じゃあ、目の前にあるものを楽しめば?」

ハンター「あ?」

魔姫「気付かない? ほら私、いつもと違うでしょ?」クルッ

ハンター「……言われてみれば、地味になったな」

魔姫「うわぁ、ひどい感想。貴方、絶対モテないでしょ」

ハンター「文句を言う前に、レディー扱いしてもらえる女になれ」

魔姫「レディー、ねぇ。……でも」

ハンター「?」

魔姫「お花のようには思ってもらえてるみたいよね」ニヒッ

ハンター「!!!」ブッ

魔姫「ごめんねぇ~、あまりにも声が大きくて聞こえちゃったのよ~。ふふ、花かぁ」

ハンター「ちょ、待、違っ」

魔姫「へぇ、何が違うのよ?」

ハンター「それは、だな……お、お前のような半人前の小娘にすら負ける程ひどいと言いたかったんだ!」

魔姫「何よそれーっ! 人のこと、また小娘扱いしてーっ!!」

魔姫(ツンデレだとしても、言っていいことと悪いことがあるのよ!)プイッ

ハンター「……いや、その点については悪かった」

魔姫「え?」

ハンター「先日、お前に言われた通りだ。俺は大人気ないし、お前の方がよほど達観している」

魔姫「あら、そう思う出来事があったの?」

ハンター「俺がお前を追っていた頃からだ。お前は自分の父親が殺されても、勇者を憎んでいなかった。人間と魔物の争いという背景があったとはいえ……そう頭で割り切ることは、俺にはできない。俺はずっと、父親を殺された恨みで動いていたからな」

魔姫「誰だって感情はあるんだし、無理に割り切る必要はないのよ。私が憎んでいるのは勇者じゃなくて、時代だし……」

ハンター「それだ。お前は広い視野で物事を見ている。先ほどの妖花とのことだって、平和的解決の道をお前は提示した」

魔姫「まぁ……私も魔物だから、人間とは視点がちょっと違うというか……」

ハンター「……普段自信満々なくせに、褒められると謙遜するんだな? 照れ屋か?」ニヤ

魔姫「!!!」カアァー

ハンター「褒め言葉は素直に受け取っておけ。俺がお前を褒めることは、この先ないぞ」

魔姫「まぁーっ! 本当、ひねくれた男ね!」

ハンター「お互い様だ」ククク

魔姫「むむ……」

魔姫(なんか…ハンターが素直だと、調子狂うわ……)


ハンター「それにしても……これだけ人が多いと、勇者や猫耳を見つけられんな」

魔姫「そうね」

ハンター「2人とも、お前と踊りたかっただろうな」

魔姫「踊りたいのは2人だけじゃないわ」

ハンター「ん? …あぁ、お前もか。まぁ祭典にこだわらずとも、ダンスパーティーの機会はいくらでも……」

魔姫「今日じゃないと駄目なのよ。……だから」

ハンター「ん?」

魔姫「ハンター。私と踊りなさい!」

ハンター「……は?」

魔姫「ほら、始まるわ! 早く早く!」ダダッ

ハンター「ちょっ……」


~♪

魔姫「ほら、しっかり手を取って」

ハンター「いや待て……踊れと言われてもどうすればいいのか……」

魔姫「周囲の人の真似をしなさい。大丈夫よ、貴方は運動神経いいんだし」

ハンター「無茶なことを」ハァ

魔姫「ふふっ」

ハンター「どうした」

魔姫「いえ。何だかんだで、付き合ってくれるのねぇ」

ハンター「付き合わされているんだ。全く、好意的に受け取りやがって」

魔姫「……でも、このドレスを選んで良かったわ」

ハンター「? ドレスがどうかしたか」

魔姫「このドレス、大人っぽいじゃない? 貴方と踊るには、ぴったりだと思って」

ハンター「……ん? おい……」

魔姫「何かしら?」

ハンター「いや、勘違いなら悪いが……。まるで俺と踊る為にドレスを選んだかのような……」

魔姫「ほら、足がもつれてるわ! ここでターンよ!」

ハンター「……っ!」クルッ

魔姫「ふふ、上手い上手い! 貴方、ダンスの才能あるわよ!」

ハンター「~っ…もうダンスは2度とごめんだ」

魔姫「あら、どうしてよ?」

ハンター「だから元々こういったものは好かないと……」

魔姫「ひねくれてるわねぇ。楽しんでるの、伝わってくるわよ?」

ハンター「……」

ハンター「それは――だから」ボソッ

魔姫「え、何か言った?」

ハンター「……っ!! 意を決して言ったのに、お前は!」

魔姫「あら、ごめんなさい。もう1回言ってくれる?」

ハンター「……っ。いいか、聞き逃すなよ! 俺が楽しんでいるのは、相手が――」

~♪ ……

魔姫「あら、音楽が終わったわ」

ハンター「……」

魔姫「楽しい時間って、あっという間ね。これで終わりかしら」

ハンター「……終わらせない」

魔姫「え? ――っ」


ハンター「――」

魔姫「――」


ハンター「……ぷはっ」

魔姫「ハ、ハンター…今、唇……」

ハンター「終わらせたり、しない……」

魔姫「……え?」

ハンター「お前を他の男と踊らせる気はない。だから…この時間を、終わらせたりしない」

魔姫「ハン、ター……」

ハンター「……」ドキドキ

魔姫「……」ドキドキ


ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ


魔姫(何か言いなさいよ! どうしろってのよ、この状況!!!)カアアァァ


「あらヤダ奥さん、見ました?」

「見た見た、やーねぇ」


魔姫&ハンター「!!?」ガバッ


勇者「なァんか行動が不審だと思っていたら……そういうことだったのねェ」

猫耳「いつの間にそんな関係になってたのかしらねぇ。気づかなかったわァ」

勇者「ハンターさんたら興味なさそうにしてたくせに、やーねぇ」

猫耳「魔姫さんもよォ。いつも喧嘩ばかりしてたのに、まんざらでもなさそうよ」

勇者&猫耳「「やーねぇ」」


魔姫「ね、猫ぉ!?」

ハンター「勇者!? どうしてここに!?」

勇者「どうしてって。そりゃ、俺らだって祭典に参加してたんだから当たり前だろ。バーカ」

猫耳「僕たちは悲しく男同士で踊ってたのににゃ~。ふーん、へーぇ」

魔姫「こ、ここここれはっ! 違うの、ハンターの痴漢だから!」

ハンター「ちか……お前なあぁ、通報案件をサラッと口にするな!!」

勇者「はいはい、ツンデレツンデレ。喧嘩もいちゃラブのひとつなんですね、ご馳走様です」

魔姫「いやっ、だからっ、そのっ!」

猫耳「勇者、悲しい独り身同士で飲もうか~。お酒駄目だけど」

勇者「いいねぇ猫耳、傷心の俺を慰めてくれ。俺も酒駄目だけど」

ハンター「おい待て!」


猫耳「じゃあね~♪」

勇者「ごゆっくり~♪」


魔姫&ハンター「……」

魔姫「……どうするのよ」

ハンター「開き直るしかないんじゃないか?」

魔姫「……はい?」

ハンター「ほら、2曲目が始まる。踊るぞ」ギュッ

魔姫「!!! ちょっ」

ハンター「嫌か?」

魔姫「……」

魔姫「いや、じゃない。……いい」

ハンター「そうか」フッ

魔姫「そういう言い方は、ずるいわよ……」

ハンター「一応大人なのでな。経験値の差だ」

魔姫「!! そう言えばハンター、貴方過去に女性経験……」

ハンター「ステップが遅れているぞ。仕方ない、リードしてやるよ」グイッ

魔姫「ちょっ……後で覚えてなさいよ!!」


どうにも素直になれない2人だけど――
だけどきっと、気持ちは一緒だから。


ハンター「一生かけて尋問しろ。逃げも隠れもしない」

魔姫「望むところよ。今度は私が、捕まえてやるんだからね!」


Fin





あとがき

ハンタールートでした。
基本的にちゃんとした大人だけど、感情で無茶な行動を取ることもある所がハンターの魅力だと思っています。
そして勇者猫耳に比べると遥かにひねくれていて、ある意味1番大人であり、1番子供なのかもしれないですね。

それよりもバイト中の正装敬語ハンターをもっと書きたかったかもしれん((

ハンターの異性経験値? ご想像にお任せしますってことで~。
posted by ぽんざれす at 20:47| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月29日

スピンオフのお知らせ

乙女「スタートボタン、オン! あぁもう、広告とか邪魔! 早く早く!」

魔王「どうした乙女、そんなに焦って。む…ゲームか」

乙女「はい、"逃走プリンセス"のスピンオフが出たんです! もうずっと待ちに待っていたので、早くやりたくて!!」

魔王「そうか。何だか本当にずっと待っていた気がするな」

乙女「あ、ゲーム画面になった! というわけで…スタートッ!!」

       

つまりどういうことかというと魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」の分岐ルートスピンオフやりますよ。
完結から1年くらい経ってるし、賞味期限切れてますよねヒャハハ

今現在、頑張って書いている最中で御座います
ハンター→猫耳→勇者の順番で書いていますので、書き終わり次第どんどんうpしていきたいと思います~


紹介してくれたのは、乙女ゲープレイヤー「魔王を攻略しよう」より、乙女と魔王でした
posted by ぽんざれす at 21:25| Comment(0) | スレ立てお知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月17日

プロット大公開

ゴミ箱を漁ったらプロットが出てきたので公開してみます
読み返してみると、結構プロットから本編の展開が変わってるssがほとんどですねぇ
「自分さえわかればいい」って感じで書いたものなので、読みにくいのは仕方ない

僧侶「このパンツどうしよう
パンツプロット.jpg
あんなアホなssでもプロット書いてたのか…(愕然
パンツの細かい設定が本編ではカットされましたね。

盗賊娘「ハンターラビット」
うさちゃんプロット.jpg
終盤の、うさぎが盗賊になる展開の辺りが変わりましたね。
この頃まだ王子は残念な人じゃなかったw

魔女「世界から弾かれた私と彼」
暗黒魔女プロット.jpg
終盤の展開大きく違いますね。
魔女の性格も、この頃は大人っぽい性格を想定していたみたい。

執事「魔王よりもお嬢様の方が怖い」
お嬢執事プロット.jpg
細かいとこが変わってますね。
あれおかしいな、お嬢がセクハラする設定がどこにも書かれていないが…(錯乱

乙女ゲープレイヤー「魔王を攻略しよう」
乙女ゲープロット1.jpg
乙女ゲープロット2.jpg
側近の立ち位置がッ!!
このプロットやけに描写細かいですね。側近以外はほぼ本編通りですね。

勇者「パーティーでのカーストが最下位でつらい」
神界の騎士プロット.jpg
この時は恋愛ssだったんですねぇ。
何というか、女同士のドロドロを書きたかったので、話の本筋自体は割とシンプルなものにしたのですね。

勇者「俺はヒーローになれなかった」
俺ヒーロープロット.jpg
終盤の決戦時の展開が違いますねぇ。てか魔王倒された直後に魔王に村娘預けるってどゆことwww
邪神様本編では大物だったけど、プロットでは小悪党みたいな真似してますなぁ。

魔王「俺の体臭がやばい」
体臭プロット.jpg
ドロヘドロやアンテッドの下りカットしたんですなぁ。
このssは「魔王は引きこもっている間何をしているか」でtwitterでアンケートして筋トレすることに決まったので、筋トレのことはプロットに全く書いてないのですよ。

魔法使い「男は嫌い…」
百合プロット.jpg
武闘家は戦士だったのかぁ。
他に目立った変更点はないですね。しかし勇者はこの頃から最悪だw
posted by ぽんざれす at 14:13| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月07日

魔王「俺の体臭がやばい」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470218651/


1 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:04:11.33 ID:voHP6eV+0
側近「遂に魔王様が復活されるぞ……!!」


500年前、大賢者により封印された魔王。
その魔王の封印が今、解かれようとしていた。


北のドラゴン「500年――長いようで短かった」

西の悪魔「ウケケ。伝説となった大賢者とはいえ、所詮は人間。魔王様復活まで寿命はもたなかったなァ」

東の妖姫「ふふ…500年前の魔王様の武勇、心強いと同時に身震いがしますわ」

南の地蔵「細身ながら、数々の勇者を葬ってきた猛者じゃからのう」

側近「思い出話はそこまでです。見なさい、封印の力がどんどん弱まっている……」

ゴゴゴ…

側近(さぁ目覚めて下さい魔王様…そして、人間達に恐怖と絶望を!!)

北のドラゴン「なぁ…何か、空気がおかしくないか?」

西の悪魔「そう言われてみや…全身の感覚器官がゾワゾワするっつーか……」

東の妖姫「魔力……にしては、少々妙ですわね」

南の地蔵「見るのじゃ! 魔王様の封印が!!」

側近「!!?」


カッ――


2 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:04:37.11 ID:voHP6eV+0
魔王「ふぅ……」


彼こそが魔王。
まだ少年であった頃、魔王であった父に謀反を起こし、その座を奪ったという猛者である。


魔王「クク、血が騒ぐぞ…。500年、戦いを封じられたこの体が! 暴れたいと疼いている!!」


彼の欲求は世界の支配でも、魔物の繁栄でもない。

強い者と戦いたい――ただ、それだけである。


魔王「長らく待たせたな、側近、四天王よ! この俺が復活したからには! この大地に安らぎの時など与えぬぞおおぉぉ!!」


恐怖と絶望の時代が、今――


側近「……」プルプル

魔王「……? 側近、どうした?」

側近「……っせ」

魔王「せ?」

側近「くせえええぇぇぇ!!」

魔王「え?」

3 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:05:10.80 ID:voHP6eV+0
側近「くせぇ、くせええぇぇ!!」ゴロゴロゴロゴロ

魔王「き、貴様! この俺に何たる暴言を……」

北のドラゴン「ま、魔王ひゃま……」プルプル

魔王「何だ……ってどうした、鼻に詰め物なんかして」

西の悪魔「詰め物しても……駄目だオゲエエェッ!!」ゲロゲロ

東の妖姫「イヤ! 匂いがうつる!!」ダッ

南の地蔵「わしゃもう駄目じゃ……」パタリ

魔王「………え?」

4 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:05:39.18 ID:voHP6eV+0
>それで


魔王「配下が皆城を去って、はや一週間……」

魔王「500年分の垢が溜まったのかと思って体を擦り切れる程洗ったが、体臭は改善されていないらしい」

魔王「たまに、俺の復活を聞きつけた襲撃者は来るが……」


勇者「な、何だこの悪臭は……!!」

魔法使い「勇者…私、これ以上進めない!!」

僧侶「大変です! 戦士さんが気絶しました!」

勇者「撤退だ撤退ィ!!」


魔王「……と、俺の所にたどり着いた者はいない」

5 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:06:07.15 ID:voHP6eV+0
魔王「仕方ないので人間の大都市を襲いに行ってみたが……」


兵士A「オエエエェェッ!!」

兵士B「くっせ、くっせええぇぇ!!」

兵士C「何だよ、この悪臭!! 毒ガスだってもうちょっと鼻に優しいぞ!!」

王「魔王よ、降伏しよう。だからもうここには…オゲップ」

魔王「……」

魔王「帰る…」トボトボ

6 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:06:37.43 ID:voHP6eV+0
魔王「戦う前に降伏されては、気持ちも萎えるというもの」

魔王「それに会う奴会う奴に臭いと言われて、流石に俺も傷つく」ズーン

魔王「悪臭のせいで味方も敵ももういない」

魔王「……むなしい」



こうして、1年が経過した。

7 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:07:04.95 ID:voHP6eV+0



少女「はぁ、はぁ……」

<どこだー!! 出てこい!!

少女「うぅ、足が痛いよぅ…」グスッ

<こっちに足跡が!
<よし、こっちだ!!

少女「このままじゃ捕まっちゃう…どこか、隠れる場所は……」

少女「……あっ!」

少女「あれは……お城?」

9 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:53:44.33 ID:A+BNMxSZ0
>城内


少女「ふぅ、ふぅ……」

少女(廃城…なのかな? 誰もいないけど…)

少女(ホコリっぽい…でも、私がいた場所よりは綺麗かも)

<ガタッ

少女「っ!」ビクッ

少女(あの扉からだ…住んでる人、いるんだ……。って私、勝手に入ってきちゃった! どうしよう!!)

少女(と、とりあえず…挨拶しないと)

少女「すみません、お邪魔しまー……」ギー

「ふぅっ…ふぅっ……」

少女「っ!?」

10 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:54:25.66 ID:A+BNMxSZ0
魔王「28、29…30! フゥ…次回からウェイトを上げてもいいかもしれんな」

魔王「この1年、誰とも顔を合わさず、外にも出ず、やることがなくて延々と筋トレしていたが…」

魔王「あの細身が、大分サマ変わりしたものだな。フフフ……」ムキッ

魔王「この逞しい上腕二頭筋!  鋼鉄のような大胸筋! 6パックに割れた腹筋! 大黒柱のような安定感を誇る大腿四頭筋!」

魔王「フハハハ!! 美しき筋肉に俺自身が魅了されるッ!!」ビリビリビリ


少女「き、筋肉でシャツを破った!?」

魔王「!!!!」ビクウウウゥゥッ

少女「あっ」

魔王「ひ、ひ、ひ、人おおぉぉ!?」ガバッ

11 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:55:18.83 ID:A+BNMxSZ0
魔王「だ、だだだだ誰だ貴様はぁ!!」ガタガタ

少女「す、すみません! 勝手に入り込んじゃって、その、私……」

魔王「えぇい近寄るな! 貴様も言葉の刃で俺を傷つけるつもりだろう!!」ガタガタ

少女「えと…言葉の刃? ……はっ」

少女(この無人の城、『1年誰とも会ってない』という言葉。まさか……)

少女「……可哀想に」ホロリ

魔王「え?」

少女「貴方は人の悪意に触れて、傷つけられて、閉じこもってしまったのですね…。でも大丈夫、私は貴方を傷つけは……」

魔王「うわあああぁぁ、寄るな! 近寄……あれ?」

少女「どうしました?」

魔王「お前…俺の匂いが平気なのか?」

少女(匂い…? 筋トレしてたから汗の匂いが気になるのかな……?)

少女「匂いませんよ、大丈夫です」

魔王「そうか!!」ダッ

少女「わっ!?」

12 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:56:07.36 ID:A+BNMxSZ0
ダダダダ…

魔王(理由はわからんが、この1年で体臭が消えたようだ! ということは……)

魔王(ようやく外に出れる!!)



追っ手A「あの女はどこに行った。…気づけば、魔王城の前まで来てしまった」

追っ手B「なぁ…まさか、この城の中に逃げ込んだんじゃ……」

追っ手C「まさか。人を寄せ付けない、毒霧の城って話だぜ」

追っ手D「だよなー」ハハハ

ダダダ……

追っ手's「ん?」


魔王「外に出れるぞおおぉぉ――っ!!」

追っ手's「」

魔王「ん?」


追っ手A「ぐせえええぇぇぇ!! 何だこの、毒と汗が混ざったような悪臭は!!」

追っ手B「うぇろうぇろうぇろ」

追っ手C「目にきた…前が見えない!!」

追っ手D「もう、駄目……だ」パタッ

<キョエエエエェェェェ、ぎゃーぎゃー


魔王「」

13 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:56:37.09 ID:A+BNMxSZ0
魔王「ううぅ」グスッ

少女「あのぅ…そんなに気落ちしないで下さい」

魔王「黙れ! 変に期待を持たせやがって!!」

少女「ひいぃ! すみません!!」

魔王「俺の体臭が平気だなんて、お前肥溜めで生まれ育ったんじゃねぇの!? 名前はうん子だろ、ミスうん子!」

少女「流石にひどいですううぅぅ!!」

魔王「ハァ…俺はこのままここで、筋トレをして一生を終えるのか……」

少女「別に筋トレに固執する必要は…。でも、匂いが原因でこんな人里離れた場所で暮らしていらっしゃるんですか?」

魔王「ん? …お前、ここがどこだかわかっているか?」

少女「いえ…世間に疎いもので」

魔王「流石、肥溜めで育った奴は教養がないな」

少女「違いますぅ! 肥溜め出身じゃないですうぅ! びえええぇん!!」

魔王「肥溜めじゃなけりゃ、生ゴミ処理場か、ヘドロ沼か、運動部の更衣室か!? とにかく帰れ帰れ!」

少女「……うぅ」グスッ

魔王「何だ」

少女「帰る場所が、ないんです……」グスグス

魔王「え?」

14 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:57:06.50 ID:A+BNMxSZ0
少女「私…今追われてて、ここに逃げてきたんです……」グスグス

魔王「あ? 何だお前、犯罪者か?」

少女「ち、違います! 犯罪者なんかじゃ……」

魔王「しかし人間社会から弾かれた存在であるのは確かだな?」

少女「……ぐすっ」

魔王「同情はせんぞ。俺だって体臭が原因で弾かれた身だ。弾かれたなら弾かれたなりの生き方というものがある」

少女(さっきは泣いてたのに……)

魔王「弾かれた理由を見つめ直し、今後どうして生きていくかをだな……」

少女「ふえええぇぇぇん」グスグス

魔王「うわ、凄く面倒くさい」

少女「ぐすっ、悪かったですね、ぐすぐす」

魔王「…あー、わかったわかった。なら、この城を好きに使え」

少女「……え?」

魔王「俺1人で、この大きな城を持て余していたのだ。俺の体臭が原因で、追っ手も入って来れないだろう」

少女「い、いいんですか……?」

魔王「勝手にしろ。ただし、体臭が伝染ったとか文句を言うなよ」

少女「あ……行っちゃった」

15 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:57:47.58 ID:A+BNMxSZ0
>翌日


魔王「今日は有酸素運動の日だ。余分な脂肪を落として更に筋肉を……」

モヤモヤモヤ……

魔王「ん? 何だ、この焦げ臭い匂いは。厨房か?」



少女「~♪」

魔王「な、何だ、この充満した煙は!」

少女「あ、おはようございます。台所の食材、勝手に使わせて頂きました」

魔王「それより、何だその鍋の物体Xは! お前は魔女か、毒薬でも生成しているのか!?」

少女「いえ、朝ごはんです」

魔王「食えるようには見えないのだが……」

少女「食べられますよ」パクパク

魔王「……味は?」

少女「とてもマズイです」

魔王「何故平然と食う」

少女「お腹を満たしてくれる食べ物への礼儀です。ふぅ、ご馳走様」

魔王「うむ、食材を無駄にしないのは良い心がけだ」

少女「ところで、このお城を掃除したいので、掃除用具の場所教えて頂けますか?」

魔王「わかった」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 18:58:24.15 ID:+W2KT+vtO
電車の中の臭いに耐えながら読んでるわ
ワキガは滅ぶべし

17 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:58:25.80 ID:A+BNMxSZ0
少女「ふぅ~」

少女(このお城は広くて、1日じゃ手が回らないなぁ。毎日掃除する必要がありそう)

少女(でも、自分のお仕事があるっていいなぁ♪ お城が綺麗になっていくのも、気持ちがいいし)

魔王「随分熱心だな」

少女「あ、魔王さん! 集中してたら、時間がたつのも忘れて……」

魔王「しかし詰めが甘いな。お前、あまり掃除したことないだろ」

少女「う゛」

魔王「まぁ俺は綺麗好きというわけでもない。無理のない程度にやれ」

少女「はい…あ、魔王さん、どこに行かれるんですか?」

魔王「食料を採りにな。中庭の畑で野菜を育てていて、あと食う為の家畜を育てている」

少女「ええぇ! 魔王ともあろう方が、そこまでやっているんですか!?」

魔王「配下が去ってしまった以上、そうも言っていられん。奴隷なりを働かせることも考えたが、体臭が原因で倒れるのは目に見えているしな」

少女「素直に感心します…。本当に、ちゃんと1人で生きていけるように適応したんですね」

魔王「現状を受け入れねば前に進めん。それにきちんと食わないと良質な筋肉は作れんからな!」

少女「強い方なんですね、魔王さんは……」

魔王(全く、この卑屈なネガティヴ女は……待てよ)

魔王「そうだ、お前も筋トレをやれ!」

少女「はい!?」


18 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:59:18.24 ID:A+BNMxSZ0
魔王「筋トレはいいことだらけだぞ。アドレナリンが脳に回れば、ネガティヴな気持ちも吹っ飛ぶ」

少女「た、確かに運動はいいと聞きますが……」

魔王「それに運動した後の飯は美味いし、夜もぐっすり眠れる!!」

少女「それは確かにいいですねぇ」

魔王「そして! 筋肉がつけば自信もつく! お前は貧相な体しているから心も貧相なのだ!」

少女「うぐ。でも、私は運動音痴だし……」

魔王「筋トレに運動神経は必要ないぞ。貧相ならば軽いウェイトから始めればいいのだからな」

少女「そうなんですか? けど、とても気の長い話です……」

魔王「大丈夫だ。基本通りにやっていけば、3ヶ月で効果が現れてくる」

少女「そんなにすぐに!?」

魔王「どうだ。筋肉…欲しくなってこないか?」

少女「……欲しいです!」

魔王「よし! ならば筋トレ用具の説明からしよう! 来い!!」ハハハ

少女「はい!!」


こうして2人の筋トレ生活が始まった。

19 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:59:46.72 ID:A+BNMxSZ0
魔王「馬鹿者、いきなり重いウェイトでやるな! 10回の運動で限界がくる程度のウェイトでやれ!」

少女「は、はい!」


魔王「筋トレ後はストレッチをすることにより、後の疲れが軽減されるぞ!」

少女「はい…っ! イタタタ」


魔王「運動後は30分以内にプロテイン摂取だ。だがプロテインはあくまで栄養補助、飯でもしっかりタンパク質を摂れ!」

少女「はい……」グビグビ


魔王「筋肉は休んでいる間に作られる。筋トレ後は最低2日間は筋トレを休め。筋肉痛や疲労が残っている状態でトレーニングしたら、効率が悪いぞ!」

少女「はい!」


魔王「そして睡眠は……」

少女「8時間程度ですね!」

魔王「その通りだ! 今日はもう寝ろ!」

少女「はい! お休みなさい!!」

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 19:18:02.31 ID:2BVfjksfO
筋トレで体臭は改善されなかった模様

27 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:40:05.40 ID:oPOaqAAe0
>そんなこんなで3ヶ月後


少女「これが…私……?」

魔王「うむ。まだまだムキムキとは言えんが、まぁ貧弱さは抜けたな」

少女「凄い、本当に効果が現れるなんて! 私じゃないみたい!!」

魔王「どうだ、筋肉という鎧を纏った気分は?」

少女「最高です! 何か、自分は最強なんじゃないかって思えてくるくらいに!!」

魔王「はっはっは、馬鹿を言うな。お前以上の筋肉を纏った者は、この世に腐る程いるのだぞ」

少女「はい師匠! けど…自分がトレーニングをしてみると……」チラ

魔王「?」

少女「師匠の筋肉がいかに素晴らしいか、とてもよくわかります」ポッ

魔王「そうだろう、そうだろう! これぞ俺の筋トレの成果だっ!!」ムキッ

少女(無駄のない筋肉。真剣に取り組んだ証だわ……素敵)ドキドキ

28 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:40:35.35 ID:oPOaqAAe0
魔王「夕飯の親子丼だ! 鶏肉と卵で、タンパク質を摂取だ!」

少女「卵がとろとろで美味しいです~。師匠は何でもできますね」

魔王「本を読みながら勉強したからな。一人暮らしの賜物というものだ!」

少女「ご立派ですねぇ。私なんか煮物くらいしか作れなくて…」

魔王「そうだなぁ…。筋トレのコツも覚えたようだし、今度は飯作りでも教えてやろう」

少女「本当ですか!」

魔王「お前の作る物体Xは筋肉に良くない! この機会に、筋トレに活かせる栄養学も教えてやる!」

少女「お願いします、師匠!」

29 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:41:07.89 ID:oPOaqAAe0
>夜


少女「では師匠、お休みなさい」

魔王「あぁ、明日も頑張るぞ」


魔王(ここのところ、毎日が楽しい)

魔王(封印されていた間の500年は野望に燃えていたが…この1年間は、空虚を筋トレで埋めるだけの1年間だった)

魔王(しかし、あいつが来て変わった。あいつは俺を臭がらず、俺の教えを素直に吸収してくれる)

魔王(俺は戦いの中でしか生きられぬ者だと思っていたが――)

魔王(こういう日々も、悪くないものだな)

30 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:41:56.58 ID:oPOaqAAe0
>一方、某国の城


魔術師「陛下、あの娘の所在が掴めました」

皇帝「ほう。あの娘は今、どこに?」

魔術師「はい。魔王城…今は"毒霧の城"と呼ばれている、あの場所です」

皇帝「それはまた厄介な。あそこは侵入すら許さぬ、異臭がする猛毒が流れているという場所…大人数で攻めても無意味」

魔術師「しかも、その毒霧の正体は掴めておりません。鉄仮面等の装備も突破し、体を蝕むとか…」

皇帝「流石は魔王。自身は毒霧の中に身を置き、襲撃に対して完璧な備え。一筋縄ではいかない男よ」

魔術師「その城にあの娘が入れたということは…やはり、血筋でしょうか」

皇帝「あぁ、あの娘はやはり危険だ。もしあの娘が覚醒し、魔王と手を組んだら……」

魔術師「絶望的な話ですね」

皇帝「暗い顔をするな。既に対策は練ってある」

魔術師「対策…ですか?」

皇帝「先日、城より逃げ帰った勇者に、特別な改造を施している所だ――」

魔術師「特別な改造……?」

31 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:42:28.85 ID:oPOaqAAe0
>研究所


勇者「ぐああああぁぁぁ……」


魔術師「こ、これは……!!」

皇帝「クク…ガラス越しではわからないだろう。この勇者を閉じ込めている密閉した部屋、実は壁中に人糞を塗りたくっている」

魔術師「……」

皇帝「室内の気温と湿度を調整し、空気は梅雨時期に合わせた。悪臭の上、生ぬるく湿った空気というのはさぞ不快であろう……」

皇帝「部屋に出入りし給仕しているのは、先日捕えたオークだ。体を洗っていないから、汗と精液の匂いが染み付いているぞ」

皇帝「勇者に出す食事には微量の毒を混ぜている…。まぁ死に至る程ではない、せいぜい腹を下す程度だ」

皇帝「と言っても、同じ室内に設置してある汲み取り式のトイレは、さぞかし匂うだろうなぁ……!!」


勇者「ぐおおおぉぉぉぉぉぉ」


皇帝「どうだ、完璧なる勇者改造計画だ! ハハハハ、ハーッハッハッハッハ!!」

魔術師(皇帝陛下…恐ろしいお方だ)ブルブル

32 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:43:25.23 ID:oPOaqAAe0
>魔王城


少女「へぇ、包丁での皮むきってそうやるんですねぇ!! 器用ですね師匠!」

魔王「いや、お前この程度もできなかったのか……。ってことは物体Xには、皮付きの野菜を入れてたわけか?」

少女「ここに来る前は、皮ばかり食べてましたから」

魔王「だから貧相な体をしていたのか。まぁいい、練習してみろ」

少女「はい!」

魔王(詮索するのは好きでないから、こいつの素性は知らんが…それにしても、謎が多すぎる)

魔王(物の知らなさや、生活習慣、そして悪臭への耐性を見る感じ、下の階級の者だと想像はつくが)

魔王(しかし貧困層なら、馬車馬のように働いていたはず。にも関わらず、こいつは料理も掃除も不慣れな様子が見て取れる)

魔王(何一つできることがない、というのは生きていくのも一苦労だろうが……)

少女「師匠! 皮むきしました!」

魔王「不器用だな、皮が分厚いじゃないか」

少女「ごめんなさい…責任持って、その皮を食べますから」

魔王「いや、いい。豚の餌にするから無駄にはならん」

魔王(何だかんだで素直な奴だ。社会的には駄目な奴かもしれんが、側に置くにはこういう奴がいい)

魔王「少しずつ上達していけばいい」ポンッ

少女「!!」

魔王「俺も最初は下手くそだったからな。気持ちさえあれば、何とかなるものだ」

少女「…へへっ、師匠~」ニマー

魔王「声がたるんでいるぞ。そんな奴は、腹筋100回だ」

少女「申し訳ありません! 勘弁して下さい!」ピシッ

魔王「……フッ」

少女「ど、どうしました?」

魔王「いや……別に」ククク

少女「…? 変な師匠」

33 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:44:02.37 ID:oPOaqAAe0
>夜


魔王「こうして俺は竜の一族の長を倒し、そいつを四天王に迎え、魔王軍を大きくしていった」

少女「へーぇ」キラキラ

魔王「続きはまた明日だ。これでもまだ序盤だぞ」

少女「師匠って本当に凄い方だったんですね!」

魔王「過去の栄光だがな。知っての通り、今では現役を退いて筋トレするだけの日々を送っている」

少女「もったいないですよね~」

魔王「おかしなことを言うな。お前も人間側、魔王の敵だろう?」

少女「うーん…前にもお話した通り、世間に疎いもので……」

魔王「そうか。今はどのような時代なのか、話を聞く前に配下に去られたので、俺も全くわからんな」

少女「その配下の方々、元気にやっていらっしゃるんですかねぇ」

魔王「四天王も側近も野望を持った者たちだ。新たな魔王として君臨していても何ら不思議ではない」

少女「何か、寂しいですね」

魔王「いや、そんな奴らだからこそ俺と気が合ったのだ。俺の下を去って栄光を掴むのなら、喜ばしいことだ」

少女「師匠…」

34 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:45:47.62 ID:oPOaqAAe0
魔王「それより今はお前だ。『師匠の武勇伝聞かせて下さい』と言って、書物を渡すと『字があまり読めないんです』ときたものだ。こんなに手のかかる奴は初めてだ」

少女「ご、ごめんなさい。…でも」

魔王「何だ?」

少女「師匠の口から聞かせて頂く方が…師匠と過ごす時間が増えて、いいかなって」

魔王「……馬鹿かお前は」

少女「あ、あはは、馬鹿ですね~」

魔王「変な依存をしなくとも、互いに、他の者と会えぬ身だ。余裕を持て」

少女「そうですね~。…あ、そうだ!」

魔王「何だ?」

少女「師匠、字を教えて下さい! 自分で書物を読めるようにします!」

魔王「…話を聞かせてやるより、字を教える方が遥かに時間も労力もかかるな?」

少女「あ」

魔王「まぁ、良いだろう。お前ほどに不出来だと教え甲斐がある」

少女「むうぅ、反論できない~…」

魔王「お前が俺に反論しようなどと100年早い」

少女「100年経ったら死んじゃいますよ~」

魔王「そうか、お前にはわからん比喩だったか。『一生無理』ということだ」

少女「うわぁ~ん!」

魔王「クク、からかい甲斐のある奴だな、ククク」

少女「師匠の意地悪~っ!」

35 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:46:17.64 ID:oPOaqAAe0
今日はここまで。
前回書き忘れていましたが、魔王はプロテインを原材料から作っています。

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 19:01:46.01 ID:azWqIbczo
乙、流石魔王様
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 19:29:56.21 ID:jcqugDvi0
乙です。
人間相手の比喩まで知ってるとはさすが魔王だな。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 20:10:24.76 ID:CUUAV39PO
魔王△

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 22:15:56.71 ID:d/cZN+7OO
>>35
臭い以外は本当に優秀だな、臭い以外は

43 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:54:03.28 ID:cz/8kbpt0



魔王「さて、今日も筋トレの日だな」

魔王(不肖の弟子は、俺の教えを吸収し成長している。それが楽しくて仕方ない)

魔王(こういう毎日を過ごしていると、嘘のように思えてくるな。以前は戦闘狂だった自分が……)

魔王(戦闘狂が戦闘を奪われ、一時期は自暴自棄になった。だが心というのは案外強いもので、それならそれなりの生き方に順応する)

魔王「全く……人生というものはわからないもので……」


キュピーン


魔王「……っ!! これは、魔力反応!?」

少女「師匠、おはようござ……」

魔王「伏せろ!!」

少女「え?」


ドカアアァァン

44 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:54:44.67 ID:cz/8kbpt0
少女「ゲホ、ゲホッ」

魔王「大丈夫か?」

少女「は、はい…師匠、この爆発は……」

魔王「襲撃者、だな。城を破壊するなど……」


<ウォゲエエエェェェ


魔王「ん?」


魔法使いA「だから言ったじゃねぇか! 城に穴を空けたら、毒ガスが漏れ……オゲエェェッ」

魔法使いB「射程範囲ギリギリまで距離取って、追い風なのに……ウオエエェェッ」

魔法使いC「撤退だ撤退ィ!!」


魔王「」

少女(あわわ…師匠の心にダメージが……)

魔王「フッ、ゴミ虫共が」

少女「師匠!?」

魔王「今更、ゴミ虫ごときの暴言に傷つく俺ではない! 自ら肥溜めに突っ込んで文句を垂れるな、ゴミ虫共が!!」

少女(師匠、強くなったのね! でも自分を肥溜めなんて、ひどい自虐です!)


勇者「貴様が魔王か……」

魔王「ん?」

45 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:55:14.71 ID:cz/8kbpt0
魔王「何だ、貴様は」

勇者「俺は勇者……お前を討つ者だ」

魔王「お前……まさか俺の体臭が平気なのか?」

勇者「いや、臭いは臭い。だが、毒物や臭いものには、ある程度の耐性がついた」

魔王「ほう、流石勇者を名乗るだけのことはある。お前のような者が現れるとは、人生とはわからんものだな」

少女「師匠……」

魔王「お前は下がっていろ」

少女「は、はい」


勇者「お前の実力は聞いているぞ、魔王。しかし俺も勇者として選ばれた身、お前に勝つ!」

<頑張れ勇者様 ウオオオォォォ

魔王「ほう、大層な人気ぶりだな」

勇者「勇者だからな」

<(ここで魔王を倒してくれないと…増員の為、俺らまであの悪臭実験室に放り込まれる!!)

魔王「そうか。ならば来い、勇――」


――ドゴッ


魔王「――っ!?」

少女「師匠っ!?」

46 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:55:59.66 ID:cz/8kbpt0
勇者「どうしたァ、動きが鈍いぞ魔王ォ!!」シュッシュッ

魔王「がハァッ……」ドサッ


魔王(目で追えているのに、体が追いつかない……どういうことだ)

魔王「はっ!」

魔王(俺がこの1年で身につけた筋肉は戦闘ではなく、観賞用に特化している…つまり)

魔王(筋肉のせいで、俺の動きが鈍ったというのか!?)


勇者「どうしたァ、その筋肉は見掛け倒しかァ!」

魔王(全くもってその通りだ!!)


ズバッ


魔王「ぐっ……」

47 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:56:35.85 ID:cz/8kbpt0
魔王「こうなれば……魔界への扉よ、今開け!」

勇者「!! まさか、魔法か!」

魔王「その通り! 魔界への扉を開き、邪神の力を借り、魔法を発動させる! 塵となるがいい、勇者よ!!」

勇者「くっ……」ガバッ

魔王「防御姿勢など無駄だァ! 喰らえ、"灼熱の業火"!!」


シーン……


魔王「……」

勇者「……」

魔王「おい、邪神……」


邪神「扉開けないで! 匂いがこっちに来る!」


魔王「待て、邪神なら匂いも何とかしてみせろ! おい!!」

勇者「オラァ!」ズバッ

魔王「カハァ!!」

48 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:57:03.07 ID:cz/8kbpt0
ゴンッ

勇者「いでっ!!」

魔王「……っ!?」


少女「し、師匠を、傷つけないでっ!」

魔王「馬鹿お前…下がっていろと言ったろう!」

少女「見ていられません…! 師匠が、師匠が傷つけられるなんて!」

魔王「お前に何ができる! お前のような、か弱い小娘に!!」

<(その女が投げて勇者の頭にクリーンヒットしたの、ダンベルなんですが)


勇者「く…。小娘、やはり魔王と手を組んでいたのか」フラフラ

少女「きゃっ、起きた!」

魔王「…? 『やはり』とは……」

勇者「しかしまだ、"覚醒"はしていない様子だなァ!!」

少女「えっ……?」

49 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:57:32.23 ID:cz/8kbpt0
魔王「覚醒…? 何のことだ?」

勇者「そうか、お前たちは知らないか……。だが教えてやる義理もない、俺は任務を全うするのみ!!」バッ

少女「ひっ」

魔王「こいつに手を出すな!」バッ

勇者「ならばお前から死ねえぇ――っ!!」バキィ

魔王「カハッ!!」

少女「し、師匠!!」

少女(このままじゃ、師匠が……!!)


?『困っているようですね、私の愛しき血族よ』


少女「……え?」

50 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:58:13.51 ID:cz/8kbpt0
少女「だ、誰……? 声はするけど姿が……」キョロキョロ

?『私は、既に朽ちた身。しかし魂だけは、子孫である貴方の側におります』

少女「私のご先祖様……?」

?『はい――名は、大賢者と申します』

少女「大賢者……!? それって確か、師匠を封印したという……!!」

大賢者『はい、かつてあの魔王を封じた、大賢者です』

少女「私のご先祖様は大賢者……? でも、そしたらどうして私は……」

大賢者『説明している時間はありません』

少女「そ、そうだ、師匠!」


魔王「ぐっ……」

勇者「はん、頑丈だな。防御力だけは優秀な筋肉だな」


少女「きゃっ、師匠が殺されちゃう! またダンベルを……」ヒョイッ

大賢者『それはよしなさい』

51 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 19:03:59.47 ID:cz/8kbpt0
大賢者『貴方には私の血が流れています。ですから、覚醒すれば魔王を助けることができます』

少女「覚醒…?」

大賢者『心を鎮めるのです。そうしたら、私が貴方の力を引き出しましょう』

少女「心を鎮めるって、どうやって……」

大賢者『何も余計なことを考えず、周囲の情報を遮断し……』

少女「そんな簡単に言われても……」

大賢者『貴方が最も心を静かにする時はいつですか?』

少女「心を静かに…あ、筋トレの3セット目です!」

大賢者『じゃあそれで』

少女「待って下さい、今急いでダンベルを上げ下げするので!」

大賢者『私の子孫に脳筋がいるとは予想外です』

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/06(土) 19:28:48.31 ID:/WMcAnmao

筋肉欲しくなってきた

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/06(土) 19:41:45.14 ID:Gc30pLlp0
乙です。
使う所が全く違うし付けすぎると重いからな、戦闘用の筋肉は闘争の中でのみ作られるってどこかの地上最強の生物が実践してたな。

57 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:29:20.31 ID:oVY1bby+0
大賢者『……私はかつて魔王を封印する際、保険として魔王に呪いをかけました。貴方の力で、呪いから魔王を解放して下さい……』

少女「……あの、ご先祖様」

大賢者『何でしょう』

少女「どうして師匠と戦った貴方が、師匠を助けてくれるんですか?」

大賢者『そうですね……500年経ち、あの時とは状況が違ってきましたからね』

少女「?」

大賢者『今は心を鎮めなさい。そして魔王に纏っている呪いの気を、取り払うのです』

少女「は、はい!」


カアァ――ッ


魔王「!!」

勇者「なっ!?」

少女「これは――」

58 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:29:49.28 ID:oVY1bby+0
勇者「毒霧が……消えた!?」

少女(そうか…ご先祖様の呪いって、師匠の体臭のことだったんだ!)

魔王「……」

勇者「……」


勇者「ハーッハッハッハ! これで息を思い切り吸って戦えるぞおぉ!!」

<毒霧が晴れたぞー!
<我々も続けー!


少女「ってええぇぇ、呪い解除したら逆効果じゃないのよおおぉぉ!!」


「魔王様……大変お待たせ致しました」


少女「……え?」

59 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:30:19.26 ID:oVY1bby+0
ブオッ

北のドラゴン「人間風情が、舐めた真似を」


バサッ

西の悪魔「ウケケ。頭数揃えてきたんだから、ちったぁ手応えあるんだろうなァ」


ヴァンッ

東の妖姫「数よりも質…。勇者を討った方の優勝、ということでよろしいかしら?」


ドンッ

南の地蔵「これこれ、張り合うでない。それよりも……」


スタッ

側近「魔王様を痛めつけたあの男に、いかに苦痛を与えるか……それが1番重要ですね」


魔王「側近、四天王!」

60 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:31:04.76 ID:oVY1bby+0
側近「この1年あまり、お側にいられず…申し訳ありません、魔王様」

魔王「それより、どうしてここに……」

側近「はい。我々、魔王様の体臭が届かぬ位置にて、ずっと魔王様を見守り続けておりました」

魔王「そ、そうだったのか……!!」


勇者「魔王の部下か……。蹴散らせえぇ!!」

魔法使い's「うおおおおぉぉぉ!!」


北のドラゴン「蹴散らされるのは貴様らだ、矮小なる人間どもが!!」ブォンッ

魔法使い's「ぎゃああぁぁ」

西の悪魔「所詮テメェら、モブだよなァ!!」ザシュッ

東の妖姫「この程度の魔力で私達を相手しようと? 笑えますわ」ゴオォ

南の地蔵「現代人は肉体が劣化したのぅ」ドスーン

<うわあああぁぁぁ
<ぐおおぉぉぉ

勇者「つ、強い……!!」

側近「おっと、他人事ではありませんよ」パキポキ

勇者「!!」

61 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:32:07.32 ID:oVY1bby+0
側近「よくも魔王様をおおぉぉ!! その身をもって償うが良い!!」

勇者「くっ、せめて魔王だけでも……」ダッ

魔王「!」

側近「しまった! おのれ、足払いっ!」バッ

勇者「おっと!」ピョン

側近「くっ、かわされた!」

勇者「喰らえ魔王――」

ガシッ

勇者「……え?」

側近「おぉ! 勇者をキャッチした!」

魔王「攻撃の軌道が読みやすい、上空から仕掛けてきたのが失敗だったな……おらあああぁぁ!!」ブォン

勇者「うわああぁ!?」

側近「勇者を持ち上げた!?」

少女「あれはショルダープレスの構え!」

魔王「そして必殺のォ……」ゴオオォォ

勇者「!!!」

魔王「牛殺し――ッ!!」ガンッ

勇者「カハッ……」

62 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:32:36.83 ID:oVY1bby+0
補足

ショルダープレスとは:ダンベルなど重いものを持ち上げて、肩を鍛えるトレーニング

牛殺しとは:相手を持ち上げて、片膝に当てるように落とす技


63 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:33:16.25 ID:oVY1bby+0
勇者「」ピクピク

北のドラゴン「やりましたな、魔王様」

西の悪魔「ちぇー。ピンチだったくせに、結局いいとこ持っていくんだから」

東の妖姫「良いではありませんの。それでこそ、私どもの王ですわ」

南の地蔵「無計画な筋肉の付け方をしたのは、少々頂けませんがな」

魔王「もう戦いに戻ることはないと思っていたからな、大目に見ろ。というか、お前……」

少女「は、はい」

魔王「俺の体臭を消したのはお前か。一体、どうやったんだ?」

少女「あのぅ……わ、私もさっき知ったんですけど……」

魔王「?」

少女「私、その…師匠を封印した、大賢者の子孫みたいで」

魔王「大賢者の……お前が?」

64 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:34:17.48 ID:oVY1bby+0
少女「さっき、ご先祖様の声が聞こえたんです! それで私の力を解放し、師匠にかけた体臭の呪いを解いて……」

西の悪魔「あの体臭は呪いだったのかよ。だよなァ、じゃねぇとあんな、ひっでぇ匂い……」

東の妖姫「シッ!!」

北のドラゴン「何でそんな呪いをかけたんだよ……」

南の地蔵「魔王様を孤立させる為じゃろ。事実、呪いは効果的じゃったしのう」

魔王「なるほど、子孫なら俺にかかっていた呪いを解いたのも合点がいく。……しかし、疑問が沸くな」

少女「はい……私もです」

魔王(魔王を封じた大賢者となれば、英雄として崇められていたはず。その大賢者の子孫が、あんな貧相な身なりで、しかも追われていたなど……)

側近「魔王様。大賢者の子孫の扱いは、魔王様が想像しているものと違うのですよ」

魔王「どういうことだ」

側近「権力者達は恐れたのですよ…大賢者の持つ力、そしてカリスマ性を」

魔王「恐れた、だと……?」

側近「そう。400年前ですかな――時の皇帝が、大賢者の子孫である一族を、まとめて牢獄に投じたのは」

魔王「!?」

少女「……」

65 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:34:57.56 ID:oVY1bby+0
少女「私は牢獄で生まれ、牢獄で育ちました……」

魔王「何だと……」

少女「私の両親も、またその両親も…同じく、牢獄で生まれ育ちました。その理由は、ご先祖様が罪を犯したからだと聞かされてきましたが……」

側近「その罪というのも、勿論濡れ衣ですが……」

魔王「馬鹿な! それに牢獄の中で子孫を繁栄させるなど……」

側近「何が大賢者の子孫の力を解放するきっかけになるかわかりませんからね。恐らく投獄するだけで精一杯で、なるべく刺激を与えぬようにしていたのかと……」

魔王「ふん。大それたことをする割に小心者だな」

66 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:35:43.47 ID:oVY1bby+0
魔王「お前、牢獄からどうやって脱したのだ?」

少女「同じく投獄されていた方々が、抜け穴を掘っていたんです。そして囚人の中で1番歳の若い私が逃げろ、と……」

魔王「ふむ…それで追われて、俺の城にやってきたというわけだな?」

北のドラゴン「呪いをかけられた魔王様の体臭が平気だったのは、血筋のお陰か」

南の地蔵「先祖のかけた呪いじゃからのぅ」

少女「うぅーん……」

魔王「何だ?」

少女「わからないですねー。牢獄の環境も悪かったので、鼻がすっかり悪臭に慣れていたのかも!」

魔王「お前まで悪臭とか言うな」

少女「わわっ、すみません!」

魔王「まぁ、結果としては良かったのだろう」

少女「え?」

67 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:36:12.85 ID:oVY1bby+0
魔王「もしかしたら俺とお前が会ったのは、大賢者の導きかもしれんな。奴は俺に、子孫を救って欲しかったのかもしれん」

少女「そうなのでしょうか……。だとしたら魔王様には多大な迷惑を……!!」

魔王「俺がお前を迷惑だと言ったか?」

少女「え……っ」

魔王「そりゃ確かにお前は教養はないし、品もないし、とにかく手のかかる奴だった」

少女「うぅ」

魔王「だからこそ、退屈せずに済んだ。俺はお前に感謝している」

少女「感謝……?」

魔王「そう。嫌な顔をせず俺の側にいてくれたこと。俺に充実した時間をくれたこと。そして――野蛮人だった俺に、穏やかな気持ちを教えてくれたこと」

少女「師匠……」

側近「ちょっ」

68 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:36:55.72 ID:oVY1bby+0
側近「ま、ま、魔王様、穏やかって……」

魔王「側近、四天王。約1年もの間、気苦労をかけたな」

側近「それは、また魔王様と暴れる日を望んで……」

魔王「だが俺はもう、昔のような野蛮人ではない。お前たちと離れている時間は、俺を変えた」

側近「なっ!?」

北のドラゴン(そりゃまぁ、悪臭から逃げた部下なんか愛想つかすよなー……)

西の悪魔(戦闘狂だったのが戦えなくなってたんだから、変わりもするよな)

東の妖姫(牙の抜けた魔王様……500年前じゃ考えられませんわ)

南の地蔵(魔王様は本格的に引退かのう)

側近(そんな、魔王様……)ブルブル

魔王「俺の脳みそは考える力を身につけた。そして、これからの指針は――」

側近(聞きたくない……!!)ギュッ

魔王「――世界征服だ」

側近「……っ!!?」

69 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:38:10.16 ID:oVY1bby+0
魔王「大賢者は、この俺を封じた有能なる者。その者に敬意も払えぬ人間の権力者などに、世界を牛耳る権利などない」

魔王「それに不肖の弟子が迫害される世の中というのも、俺は気に食わん」

少女「師匠……」

魔王「俺は人間の権力者どもを倒し、この世界を手に入れる」

側近(魔王様……!!)

魔王「久々の大暴れだ。俺に賛同する者は、ついてこい」

南の地蔵「……ふっ。魔王様はやはり魔王様じゃ」

北のドラゴン「そんなの、答えは決まっています」

東の妖姫「そういう貴方だからこそ、私達はお慕いしておりますのよ」

西の悪魔「ついていくに決まってんだろォ、魔王サマぁ!!」

魔王「期待しているぞ、四天王」

側近「私もです! 側にいさせて下さい、魔王様!」

魔王「頼もしいな、側近」

少女「し、師匠……わ、私も……」

魔王「ん?」

70 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:38:53.70 ID:oVY1bby+0
少女「さっき、大賢者の力に目覚めてから……体に力がみなぎってくるんです」

魔王(…確かに、今まで感じなかった魔力の波動を感じる)

少女「師匠、魔法の使い方を教えて下さい! そして私、師匠と共に戦いたいです!」

魔王「お前が……俺と?」

少女「はい。きっと理不尽な目に合っているのは私だけじゃない…私は、そういう人たちを助けたいんです」

魔王「……やれやれ。教えることが、また増えたな」

少女「え……じゃあ、師匠!!」

魔王「いいだろう、魔法の使い方を教えてやる。俺はお前の、師匠だからな」

少女「やったぁ! 私、頑張ります!!」


東の妖姫「大賢者の子孫ですもの。あの子きっと、強くなるでしょうねぇ」

西の悪魔「ケケッ、俺らなんて抜かしちまうかもしれないなァ!」

側近「ま、負けるものか……!」ゴゴゴ

北のドラゴン「何の対抗心だ、何の」

南の地蔵「ほっほっほ。若いのは羨ましいのう」

71 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:40:13.69 ID:oVY1bby+0
魔王「ではまず手始めに、勇者のいた国から制圧するか。さぁ、行くぞ!」

東の妖姫「いっ、今からですか!?」

魔王「当たり前だ。俺自ら、奴らに勇者の敗北を報せてやろう!!」

西の悪魔「作戦とか無いんスか」

魔王「ない!! 力押しで何とかしろ!!」

南の地蔵「おやおや、これまた強引な。魔王様、ご自分が弱体化していることをお忘れですか?」

魔王「勇者以下の者と戦うなら、レベルダウンした位の方が楽しめる。勘は戦いながら取り戻せば良い。背中に乗せろドラゴン!!」

北のドラゴン「はいはい。全く、どこが穏やかになったんだか」

側近(いや…ただ大暴れするだけだった魔王様が、暴れる理由と目的を手に入れた。理由と目的があれば、暴れる意思は更に強くなる!)


魔王「おい、お前も行くぞ」

少女「い、今の私が行って、足を引っ張りませんか!?」

魔王「心配か? なら思う存分に足を引っ張れ。逆境を覆すのも面白い」グイッ

少女「きゃっ…し、師匠……」ドキドキ

72 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:40:45.61 ID:oVY1bby+0
側近「聞こえますか、魔王様。各地に散り散りになっていた魔物達が、魔王様の臭気が消えたことを感知し、集まってきています」

魔王「懐かしい感覚だ。今日が俺の、魔王としての復活記念日だな」

少女「魔王としての……」

魔王「どうした、不安そうな顔をして」

少女「いえ。師匠が魔王として活躍するのは喜ばしいことですが…何だか、穏やかな日々がなくなってしまうのかと思って……」

魔王「心配するな。しばらくはドタバタするかもしれないが、すぐに手に入れてやる」

少女「手に入れる……何をですか?」

魔王「世界を征服した先に手に入れる――本当の意味で、お前が穏やかに過ごせる時間だ」

少女「師匠……はいっ!!」


魔王「行くぞ、者共! 欲しいものは全て、己の手で勝ち取るのだ!!」

ワアアァァ……


Fin

73 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:41:25.59 ID:oVY1bby+0
ご読了ありがとうございました。
決して打ち切りではなく、魔王の体臭が消えたので、ここでキリがいいかなと思いました。

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/07(日) 18:13:16.25 ID:jZSrQuaMO

笑いながら読んでたわ

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/07(日) 18:21:52.43 ID:0VT9FFjXO
乙です。
この後は蛇足か……。

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/07(日) 18:24:47.99 ID:9CX2Ha6Wo
乙乙、面白かった


posted by ぽんざれす at 18:41| Comment(4) | ss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月03日

新作スレ立てのお知らせ

SS速報VIPにて魔王「俺の体臭がやばい」投下開始致しました
完結は1週間以内、100レス未満の予定。

あらすじ/
500年の封印より解かれた魔王の体臭はひどい悪臭になっており、彼の生活は一変する。

明らかに出オチなタイトルですが、この作者なのでギャグに突き抜けられませんね
ヒロインもいますがさほどスイーツではなく、読みやすいんでないかなと。
中途半端って言うな。
posted by ぽんざれす at 19:16| Comment(0) | スレ立てお知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月07日

【スピンオフ】魔術師「勇者一行をクビになりました」【七夕】

魔術師「勇者一行をクビになりました」の七夕スピンオフです。





勇者「ここにぶら下げて、と」

悪魔「いよおおぉぉッ!! 勇者クン、チィース!!」

勇者「!!!」ビクウウウゥゥゥッ

悪魔「イャハハ!! 七夕なんで、悪魔王様がハッピーをお届けに来たぜえェッ!!」

勇者「クリスマスじゃないんだぞ」

悪魔「細けェことはいいんだよ! ところで勇者、短冊に何書いたんだ?」

勇者「あっ!!」


『彼女ができますように 勇者』


悪魔「………」

勇者「………」

悪魔「ごめんなさい」

勇者「謝るなよ!!」

悪魔「イャハハハハ、ぶゎっ、ぶゎっ、うひゃひゃひゃ、ぐぁーっはっはっはっは!!」ジタバタ

勇者「笑い者にするのもヤメロ!!」

悪魔「ヒィ、ヒィ……つか勇者。テメェんとこ、ハーレムパーティーだったろ? 他の子達はどうしたよ?」

勇者「……各自、彼氏を作りました」

悪魔「うわー……」

勇者「わかっている、あの頃の俺は調子こいていた…! 女の子に囲まれて、自分はモテていると錯覚してたんだ!!」

悪魔「租チンのくせにね」

勇者「それを言うなああぁぁ!!」

悪魔「ま、頑張って」

勇者「えっ!? ハッピーを届けに来てくれたんじゃないの!?」

悪魔「だってテメー、俺様ンとこの国民じゃねぇし」

勇者「恥かき損かよチキショウ!! 頼むよ、助けてくれよ悪魔王!!」

悪魔「んー…じゃあアソコを引っ張って伸ばして、サイズアップする?」

勇者「するか!! 想像しただけでタマがヒュンとなったわ!!」

悪魔「下ネタ言ってんじゃねえェッ!!」バキィッ

勇者(えええぇぇーっ!!)ドサッ

悪魔「ったくよぉ…勇者ともあろうモンが、七夕の日にモテたいだのタマヒュンだの」

勇者「いでで……な、何か問題でも?」

悪魔「知ってっか! 七夕は1年に1回、彦星と織姫ちゃんが会える日なンだよ! 可哀想なカップルの記念日なンだよ!!」

勇者「お、おう…!」

悪魔「勇者、テメェは落ちぶれても勇者。人類の希望だろ?」

勇者「希望…そうだ、俺は希望を背負った勇者なんだ!」

悪魔「ならば…救ってみたいと思わねェか、悲劇のカップルをよォ」

勇者「救いたい! めっちゃ救いたい!」

悪魔「その言葉が聞きたかったアァ!! よし、俺様と一緒に来い!!」

勇者「この俺が、救ってみせよう!!」







>魔王城・魔術師の部屋の前


悪魔「魔術師ちゃ~ん、出ておいでェ~」

魔術師「もー知りませんっ! 悪魔さんイヤッ!!」

悪魔「ゴメンてば~! 今の魔術師ちゃんを最ッ高に愛してるから、ね、ね!?」


勇者「……?」

暗黒騎士「あー…まだやってたのか」

勇者「なぁ、一体何をやっているんだ?」

暗黒騎士「この短冊を見ろ」

勇者「?」


『魔術師ちゃんのバストが成長しますように 悪魔』


勇者「………」


悪魔「勇者、救って」

勇者「いや無理」



おわり



あとがき

魔術師ちゃんが怒ったら、流石の悪魔王様でもどうもできないってことで。
七夕スピンオフでやる意味? そこをツッコんではいけない。
posted by ぽんざれす at 11:43| Comment(2) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月06日

魔法使い「男は嫌い…」

1 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:01:59.34 ID:sm7FpiKv0
百合有り。苦手な方はお気を付け下さい。

2 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:02:24.96 ID:sm7FpiKv0
私は昔から、男が嫌いだ。


勇者「君たちが、俺と冒険を共にしてくれる子達か。宜しくな」ニコ


今日から旅と共にする勇者も、その例外ではない。


魔法使い(騙されないわよ、その笑顔の下に隠された下心!)ジト


そして男嫌いの一方で――


武闘家「いい人そうで良かったね、魔法使いちゃん♪」

魔法使い「……えぇ、そうね」


私は一生、叶わない恋をしている。

3 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:02:51.95 ID:sm7FpiKv0
人間と魔王との戦が始まって約10年。
争いで沢山の人が死に、人間の国々は疲弊していた。

そんな中現れたのが、この剣の申し子たる勇者なのだが――


勇者「皆可愛くてびっくりしたよ! これなら毎日頑張れそうだ!」

僧侶「ふふ、ありがとうございます」

盗賊「頼りにしてるです、勇者君」

魔法使い(騙されるんじゃないわよ、こんな二面性タラシに!!)

武闘家「魔王を倒した人って、姫様と結婚できるんだっけ?」

魔法使い「そうだけど……」


勇者「ねぇ、彼氏いる?」ニコニコ

僧侶「いえ、お付き合いしている男性はいません」

盗賊「い、いないのです~」

魔法使い(うわー、早速品定めしてる)


僧侶「では、早速ですが魔王城までの経路について話し合いませんか? 私、これについては少し詳しいので、色々とプランを考えてきたのですが…」

勇者「僧侶にお任せするよ、それより皆で遊びに行かない?」

魔法使い「却下!」


4 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:03:20.10 ID:sm7FpiKv0




>宿・女部屋


僧侶「では改めて皆さん、今日から宜しくお願い致します」

盗賊「仲良くやるです!」

武闘家「こちらこそ! ね、魔法使いちゃん」

魔法使い「そうね」

僧侶「武闘家さんと魔法使いさんは、お友達同士でしたっけ?」

武闘家「うん、幼馴染み! 魔法使いちゃんは、しっかり者のお嬢様で、頼りになるんだ~」

盗賊「わわっ、どうしよ! ボク育ち悪いから、色々と引かれちゃうかもしれんです……」

魔法使い「気にしないわ、手のかかる子は武闘家で慣れてるもの」フッ

武闘家「魔法使いちゃん、辛辣~!」

魔法使い「まぁ私、女の子には優しいから。特に貴方達みたいな、可愛い子には」フフ

僧侶「……へぇ」

魔法使い「?」

僧侶「魔法使いさん、案外気さくなんですね。顔合わせの際は無口だったので、そういう方なのかと思っていましたが…」

魔法使い「あー…それは……」

武闘家「魔法使いちゃんは男の人がいるとああなんだよ~」ハハハ

僧侶「そうなんですか」

魔法使い「……えぇ。私、男嫌いなの」

5 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:03:49.59 ID:sm7FpiKv0
魔法使い「父には8人の妻がいるのよ」

盗賊「8人!」


魔王との戦いで死んだ者のほとんどが男。
そのせいで、この世界の男女比は現在約2:8と言われている。
世界中で年々人口が減り続ける状況の為、ほとんどの国で一夫多妻制が導入されていた。


魔法使い「勇者もきっと、姫様の他にも何人かの妻を娶るでしょうね」

盗賊「そうかも。でも、複数の女の人を養える地位なら問題ないのです」

僧侶「世界を救った勇者様となれば、十分にその権利はありますし……」

魔法使い「そういう問題じゃないのよ…」

僧侶「と言うと?」

魔法使い「私達…その妻候補なのよ」

盗賊「……」

僧侶「……」

武闘家「えーっ!」

6 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:04:19.95 ID:sm7FpiKv0
魔法使い「私、聞いたのよ! あれは勇者の仲間募集のビラを見て、それについての質問をしに城を訪れた時……」


~回想~

魔法使い(あ、あれは勇者と騎士団長さん……。あ、集まった応募用紙を見てるみたい)


騎士団長『早くも志願者が集まりましたね。ほら見て下さい、レベル50越えの猛者も…』

勇者『不採用』

騎士団長『え?』

勇者『ゴツい男なんか御免だね。それより女の子、女の子!』

騎士団長『えーと…女性志願者は少ないですが、今のところ彼女と彼女と……』

勇者『この僧侶ちゃんと盗賊ちゃん採用』

騎士団長『え!? …お言葉ですが、もっと優秀な志願者は沢山……』

勇者『仲間の強さとかどうでもいいよ。どうせ俺が活躍するんだし。それより……』

騎士団長『それより?』

勇者『可愛い女の子のハーレムパーティー作って、ウハウハしたいんだよおぉ!! これぞ男のロマン!! 吊り橋効果イヤッホー!!』


魔法使い『……さいってー』

7 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:04:48.78 ID:sm7FpiKv0
魔法使い「不純、不潔! あんな勇者に、私は絶対心を許さないわ!!」

僧侶「なるほど…。ですが、女性に囲まれることで勇者様の士気が上がるのなら効率的ですよ」

盗賊「そうそう、男の子ってそんなものだと思うです。魔法使いちゃんはちょっと過敏なのです」

魔法使い「いーえ! 男は女の子のこと、せ、せ、せ……」

僧侶「せ?」

魔法使い「せ…性欲解消の対象としか、見てないし……」モジモジ

僧侶「うーん。そういう男性もいるかもしれませんが、『としか』ではないと思いますよ」

魔法使い「じゃあ男は『そういう行為』なしで女の子と付き合えるんですかー!! 無理でしょ、男ってそういう生き物!!」

僧侶「流石に極論ですよ」

魔法使い「極論でもなんでも、男のそういうとこが嫌いなの! 私は勇者に心を許さないから!」

僧侶「男性が苦手な理由はわかりましたが…」

盗賊「何で、勇者パーティーに志願したです?」

魔法使い「……」


だって――


武闘家「仕方ないなぁ、魔法使いちゃんは。でも、必要なコミュニケーションはちゃんと取ってね」

魔法使い(武闘家に…志願しようって誘われたから……)

8 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:05:38.84 ID:sm7FpiKv0
>子供時代


約2:8に偏った男女比のせいか、その繁殖能力のせいか――人間社会は男性優位だ。

女好きの父親、威張る男たち、精神発達の遅い男児――周囲はそんな男ばかりで、私は自然と男嫌いになっていた。
男性優位の社会において、私のように勝気な女子は周囲から浮きがちだった。

そんな中、私と仲良くしてくれたのが――


いじめっ子『ぎゃあー、鬼ババが怒ったー』ダッ

魔法使い『今度この子をいじめてみなさい、焼くわよ!』

武闘家『ぐすん……』


近所に住む同い年の女の子、武闘家だった。
彼女は頭の回転の悪さ故か、それとも小柄な体のせいか…とにかく、いじめられることが多かった。


魔法使い『そんなに泣いてたら、ますますあいつら喜ぶわよ。全く、何でやられっぱなしなのよ』

武闘家『ぐすっ…女の子は弱くて守られている存在だから、男の子に逆らっちゃ駄目なんだって』

魔法使い『あんた、あんな奴らに守られたいの?』

武闘家『……』

魔法使い『私は冗談じゃないわ。自分の身くらい、自分で守るわよ』

武闘家『…私も、強くなりたい。魔法使いちゃんみたく、強くなりたい』

魔法使い『そう。応援するわよ』

武闘家『強くなるのに、どれくらいかかるかわからないけど……』

魔法使い『……大丈夫よ』ポン


――あんたが強くなるまで、私が守るから

9 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:06:30.03 ID:sm7FpiKv0
>そして今現在


武闘家「どっせえええぇぇい!!」バキイイィィッ

魔物達「「ギャース!!」」

盗賊「凄いです! 魔物を蹴り殺し、更にその死体で魔物達が将棋倒しに!」

魔法使い(強くなりすぎよ!!)


そう、宣言通り強くなった。…肉体の力だけで男を凌駕する程に。


勇者「凄いな武闘家。その小さな体で、そんなパワーが出るなんて」

武闘家「筋肉があれば、できないことなんてないんだよ!」ムキッ

勇者「おおぉ、固いな~。でも、柔らかいところは柔らかいんだな」サワサワ

魔法使い(うぐぐぐぐ、男がその子の体に触るんじゃないわよ!!)ギロリ


非常に面白くない。武闘家本人が触らせているとはいえ。


武闘家「ふぅ、汗びしょびしょ~」ペロッ

魔法使い「!! ちょっと、武闘家!! 何、服をめくってるのよ!!」

武闘家「だってー、こうした方が背中拭きやすいんだもん。それに、出したのもお腹だけだよ?」

魔法使い「いやお腹だけでも…あーもう、こっち向きなさい! タオル貸して!」

武闘家「? …ひゃんっ、あはは、くすぐったい~」

魔法使い「じっとする! もう、ほんとあんたは無頓着なんだから…」フキフキ

武闘家「いつもありがとー、魔法使いちゃん。ごめんね、世話の焼ける友達で」

魔法使い「別に…ヤじゃないし。世話、焼けなくなる方が寂しいし……」ボソボソ

武闘家「ん? ごめんね、聞き取れなかった。何て言ったの?」

魔法使い「何でもないわ! それより汗拭いたから、行くわよ!」

武闘家「はーい」

10 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:07:05.67 ID:sm7FpiKv0
>宿屋


魔法使い「……はぁ」

魔法使い(武闘家の体…ちょっと固いけど、でもやっぱり女の子だった)


まだ感触が手に残る。思い出しては、ため息。


魔法使い(武闘家は私に無防備……。女の子同士だから。……"そういう対象"じゃないから)


勿論、それが普通のこと。変なのは、私の方だ。


魔法使い(勇者に…いや、どんな男にも、武闘家を触らせたくない)


いつ頃からかはわからないけど、武闘家は私にとって"友達"で収まる存在じゃなくなっていた。
ちょっとおバカで、ドジで、だけど元気で可愛くて、懷っこくて――そんなところが愛おしくて、守ってあげたくなる。彼女はそんな子。


魔法使い「……はぁ」

武闘家「たっだいまー♪ いいお風呂だったよー!」バァン

魔法使い「わわっ! お、お帰り!」

武闘家「どうしたの、慌てて? あ、あのね、盗賊ちゃんボインボインなんだよ!」

魔法使い「ふ、ふーん」

武闘家「魔法使いちゃんも一緒に入れば良かったのに~」

魔法使い「いえ、私は…同性でも、裸を見られるのに抵抗あるから。後で入る」

武闘家「そうだったね。細くてスタイルいいのに勿体無~い」


言った理由は嘘。本当は、私は変態だから。


魔法使い(美少女達と一緒にお風呂とか…刺激が強すぎるのよ!)ドキドキ

11 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:07:32.95 ID:sm7FpiKv0
今日はここまで。

本編に上手く入れることができなかったので、女の子4人の容姿を簡単に紹介します。

魔法使い→背が高くて大人びている。Dカップ。
武闘家→チビでやや筋肉質。Aカップ。
僧侶→清楚系、肌が白い。Cカップ。
盗賊→童顔、健康的な褐色肌。Fカップ。

18 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:09:18.31 ID:5MZvt89P0
>ある日


魔法使い「よし、移動魔法を習得したわ!」

僧侶「お疲れ様です。これで、旅が大分楽になりますね」

勇者「あ、じゃあ城下町に戻れないかな?」

魔法使い「いいけど…何か忘れ物でもした?」

勇者「いやぁ…姫様と文通してはいるけど、そろそろ顔を見せないと寂しいかなと思ってね」フッ

魔法使い(いつの間に、そんな仲に…てか、流石タラシ男はマメね)


旅を始めてから約1週間。私の勇者への不信感はぐんぐん上がっていた。


僧侶「勇者様…もうっ」プイッ

勇者「そんな顔するなよ…可愛すぎて困るよ」

魔法使い(お堅い聖職者を1週間で落とすって、どんなテクニックよ!? ていうか落とされてるんじゃないわよ僧侶!!)

武闘家「姫様の好感度上げとかないとねー」

勇者「武闘家…妬いてくれないんだね、ちょっと寂しいよ」ポン

魔法使い(てめええぇ、沢山の女に触れたその汚れた手で!! 武闘家に触るんじゃねぇわよ!!)ゴゴゴゴ

勇者「魔法使い、移動魔法を頼む」

魔法使い「言われなくてもわかってるわ!!」

勇者「……何で俺、怒られたの?」

武闘家「んー、勇者が嫌われてるからだと思う!」

勇者「ははっ、魔法使いは相変わらずだなぁ。でも、それでこそ落としがいがあるよね♪」

魔法使い「うっさい! きもい!」

<ワーワー

盗賊「……」

19 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:09:49.07 ID:5MZvt89P0
>城下町


僧侶「私は礼拝堂にいます。最近、ゆっくりお祈り出来ていなかったので…」

魔法使い「私はどうするかなー」

武闘家「ね、ね、魔法使いちゃん! ケーキのビュッフェ行こっ、可愛いお店があるんだ~」

魔法使い「あんた、そういうの好きよねぇ。いいわよ」

武闘家「やったぁ♪ あ、盗賊ちゃんも行こうよ!」

盗賊「……え?」

魔法使い「ん…もしかして、気が乗らない感じ?」

盗賊「あ、えーと…ボク、ダイエット中なのです」

武闘家「そっかー、残念だなぁ。けど、女の子にとって体型維持は大事だもんね!」

魔法使い「毎日三杯飯のアンタが言ってもね……」

武闘家「良質な筋肉を作る為には沢山食べなきゃ駄目なんだよ! 消費カロリー以上食べてプロテイン飲んで……」

魔法使い「筋肉の話はいいわ。じゃあ盗賊、また後でね」

盗賊「はいです……」

20 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:10:21.28 ID:5MZvt89P0
>1時間後


武闘家「はぁ~、食べた食べた~」

魔法使い「凄まじい食べっぷりだったわね。お店潰れなきゃいいけど……」

武闘家「え、潰れるの!? 大変!! 筋トレ仲間にお店を宣伝して、お客さん増やそう!」

魔法使い「その連中も沢山食べるんでしょ、トドメ刺す気か!」

武闘家「追々考えるとして…ねぇ、食後の散歩に"天使の庭園"行こうよ!」

魔法使い「天使の庭園…? …あ、聞いたことはあるような……」

武闘家「城の一流庭師が創り上げた庭園らしいよ~。とてもロマンチックで、定番デートスポットらしいんだ~」エヘヘ

魔法使い「相変わらず乙女趣味ねぇ。けど私も興味あるわ、行きましょう」

武闘家「うん! へへっ、魔法使いちゃんとデートぉ♪」ギュッ

魔法使い「ちょっ」

魔法使い(女同士でよくあるじゃれあいだけど…あんたにやられると、冗談じゃ済まないのよ)ドキドキ

21 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:11:21.43 ID:5MZvt89P0
>天使の庭園


魔法使い「へぇ~…綺麗ねぇ」


途端、視界に広がる優美な庭に目を奪われる。
丹念に刈り揃えられた緑の道と、それを彩る鮮やかな花々。舞踏会の娘達のように咲き誇る姿が、煌めいて可愛らしい。
天使をかたどる白い噴水は、水飛沫に輝き涼しげな音を奏でていた。


魔法使い「流石、天使の庭園って感じ。ね、武闘……」

武闘家「わぁーい!」タッタッタ

魔法使い「あら、ランニング?」

武闘家「あのね、全身で庭園の空気を感じているの!」

魔法使い「? 空気なんて、そこにいるだけで感じられるでしょ……」

武闘家「勢いつけて走った方が、強く感じられるんだよー」

魔法使い「よくわからないわね」

武闘家「えっとねー…えいっ!」ムギュッ

魔法使い「!!?!?」

武闘家「ねっ? 勢いよく抱きついた方が、私のこと強く感じられるでしょ?」

魔法使い(武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる)

22 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:11:57.13 ID:5MZvt89P0
魔法使い「ちょ、は、離れなさい! 人に見られたらどうするの!」アタフタ

武闘家「あ……そうだね。ここ最近、法律も厳しくなってきたもんね」パッ

魔法使い「……」


あっさり離れてくれて良かったのだけれど、ちょっと残念。
だけど冗談じゃなく、人に見られたらマズイ。


魔法使い「同性愛者への最も重い罰は…鞭打ちだったわね」

武闘家「この前も、同性のカップルが捕まったよね…可哀想」


国々は人口減少への対策に追われ、一夫多妻制を導入しただけではなく、同性愛の厳罰化を決定した。


魔法使い「厳罰化したからって、同性愛者が異性を好きになるわけじゃないのにね」

武闘家「好きじゃなくても子供を作れってことでしょ? 何か…そういうの、やだよね……」

魔法使い「……そうね」

23 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:12:26.58 ID:5MZvt89P0
権力者には男が多い。この法律を作ったのも男。
男なんてのは女を性欲の対象か、子供を産む道具にしか思っていない。だから、男は嫌い。


魔法使い(……だけど)

武闘家「あ、オシャレなベンチがある! ね、座ろうよ!」


例え、そんな法律が無かったとしても――


武闘家「久しぶりだよね、魔法使いちゃんと2人きりは!」

魔法使い「そうね。旅を始めてからは、仲間の誰かがいたものね」

武闘家「皆いい人だから好きだけど…でも、やっぱり魔法使いちゃんと一緒だから幸せ」ヘヘ

魔法使い「……羨ましいわ、あんたのそういう性分」

武闘家「え?」


私はきっと、武闘家に想いを伝えられない。


魔法使い「幼いとこよ。いつになったら手がかからなくなるのかしら~?」

武闘家「えぇー。見捨てないでよ、魔法使いちゃーん」ギュゥ

魔法使い「あーもうっ、わかったから離れなさいよ!」


武闘家はさっき、勢いよく抱きついた方が"彼女"を感じられると言ったが――私にとっては、逆。
昔からの距離感。友達という距離感。その変わらない距離感で一緒にいる方が、彼女を強く感じていられる。
その距離を詰める必要なんてない。だって私の気持ちは、秘めていなければならないもので――


魔法使い(いつか…離れちゃうんだろうな)

24 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:13:09.22 ID:5MZvt89P0
<わいわい


魔法使い「ん…誰か来る? ……まぁそうよね、定番デートスポットだもんね」

武闘家「ねぇ…聞いたことある声だと思わない?」

魔法使い「え?」



勇者「それでですね……」

姫「まぁ」フフフ



武闘家「あ、ほら。勇者と姫様だ」

魔法使い「こっちには気付いてないわね。邪魔しちゃ悪いし、そろそろ引き上げる?」

武闘家「そうだね。楽しかったねー♪」

魔法使い「えぇ……」

<ふぅ……

魔法使い「……ん?」


盗賊「……はぁ」

武闘家「盗賊ちゃん? どうしたの、そんなとこに隠れて」

盗賊「わわっ! 魔法使いちゃんに武闘家ちゃん……」

魔法使い(私達に気付いてなかった? …それに、盗賊が見てたのは……)



勇者「…ですよね」

姫「えぇ、そうですね」



武闘家「もしかして、盗賊ちゃん。あの2人を見てたの?」

盗賊「……」

魔法使い「…話は後よ。とりあえず、ここを去りましょう」

25 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:14:01.61 ID:5MZvt89P0
>宿屋


盗賊「恥ずかしい姿をお見せしました……」

武闘家「ううん、一途でいいと思うよ。ね、魔法使いちゃん」

魔法使い(どいつもこいつも、あのタラシに引っかかりやがって……)ゴゴゴ

盗賊「いいと思っているようには見えんのです……」ブルブル

武闘家「けど盗賊ちゃん、2人を見てて辛そうだったね。どうしたの?」

盗賊「それは……。お恥ずかしい話ですが……」

武闘家「うん」

盗賊「……姫様って、綺麗で、品があって、教養があって…だから、自分が惨めで」

武闘家「うん?」

盗賊「ボクは…卑しい身分に生まれ、底辺で育ってきたです。言葉を覚えるのも遅くて、今でも言語に自信ないです」

武闘家「そう? 気にしたことないけど……」

盗賊「ボクは気にしてるです。…同じ人間で、同じ女なのに、ボクと姫様は何もかもが違いすぎる」

魔法使い(……相手はあの姫様だものね)


容姿、頭脳、品格――全てに秀でている、正に「高嶺の花」。
盗賊じゃなくたって、あの姫様と並べる女性なんてそうそういない。


魔法使い(まーでも、勇者は可愛い女なら受け入れる感じだし)

魔法使い「気にしない、気にしない。盗賊には盗賊のいい所が、沢山あるわよ」

武闘家「そうそう! それに、魔王を倒したら盗賊ちゃんは"英雄"だよ! ほら、姫様と並べるよ!」

盗賊「2人とも……」

26 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:14:32.28 ID:5MZvt89P0
盗賊「へへ…ありがとうです、ボクはいい仲間を持ったです」ギュッ

武闘家「当たり前だよ。だって私達、盗賊ちゃんのこと大好きだから!」ナデナデ

盗賊「ありがとう、武闘家ちゃん…魔法使いちゃんも!」

魔法使い(くぅ…大きな胸が押し付けられて、なんかやばいわ)ドキドキ

僧侶「只今戻りました…あら?」

盗賊「あ、僧侶ちゃん! お帰りなさいです!」

僧侶「私のいない間に仲を深められたようで…少し妬けますね」

盗賊「僧侶ちゃんも大好きなのです!」ギュー

僧侶「あらあら…私も好きですよ、盗賊さん」

魔法使い(勇者に落とされた女の子同士で友情を確かめ合っている……)


仲が良いのはいいのだけれど、それでも非常に面白くない事態だった。

29 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:24:29.26 ID:5HfrqQBu0
それから勇者は、3日に1回くらいの割合で城下町に戻った。


魔法使い「今日もアイツはデート!! いい加減にしろっつーの!!」

武闘家「姫様に相当入れ込んでるよね~」

魔法使い「バッカじゃないの、魔王を討伐してこその勇者でしょーがっ!!」

僧侶「まぁ、猶予はあると思いますよ。最近世代交代した魔王は、先代より比較的穏健派ですし」

魔法使い「そうなの? でも、まだあちらこちらで火花が散ってる状態よね?」

僧侶「魔王にも色々なしがらみがあるのですよ」

武闘家「僧侶ちゃん詳しいよねー。旅も僧侶ちゃんのプランに従って進んでるからか、今のとこ順調だしね!」

魔法使い「そうね。頼りにしてるわ」

僧侶「恐縮です」

魔法使い「そうだ…詳しいついでに聞きたいんだけど、『魔王が進めている恐ろしい研究』って何だか知らない?」

僧侶「あぁ…一部の権力者の間でのみ広まっている、あの話ですね」

魔法使い「何か研究しているのは聞いたけど、肝心の内容がわからないのよね。僧侶は知らない?」

僧侶「……はっきりはわかりませんが、どうやら『生物の常識を覆し、人間社会に悪影響を与える』ものらしいですよ」

魔法使い「随分とぼんやりしてるけど…阻止しなきゃいけないものだってことだけはわかったわ」

僧侶「…そうですね」

30 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:25:06.83 ID:5HfrqQBu0
盗賊「ただいまです……」フゥ

魔法使い「あら、お帰り。デートの尾行は終わったの?」

盗賊「ハイです。姫様、お忍びに町娘の格好をしていたけど…それでも気品に溢れていたです」フゥ

魔法使い「あの姫様だもんね~。あれ程の女性は稀だから、気落ちする必要ないわよ」

魔法使い(あれ程の人が勇者と結婚するなんて…あぁ勿体無い)


勇者「たっだいま~♪」

魔法使い「ここ女子部屋。男は入ってくるな、シッシッ」

勇者「魔法使いは相変わらずつれないなぁ。姫様からのお土産だよ、手作りクロワッサンだってさ」

武闘家「わぁ~い♪ 姫様ってパンまで焼けるんだ~♪」モグモグ

盗賊「あの方は、何でもできるです…」ハァ

僧侶「……」プイ

勇者「何だよ僧侶~。あ、妬いてるんだろ?」

僧侶「妬いてません。どうぞお好きになさって下さい」ツーン

勇者「本当、僧侶は可愛いなぁ…ますます妬かせてやりたくなるよ」

僧侶「性格悪いですね」

勇者「可愛い女の子には意地悪したくなるものさ…心配しなくても、俺は僧侶のことだって……」サワッ

僧侶「ストップ」

勇者「?」

僧侶「婚前に、度が過ぎたスキンシップはしない主義なんです。いくら勇者様相手でもね」

勇者「…あぁ、そうだったね。ゴメンゴメン」チッ

魔法使い(うわ舌打ち聞こえた)「よそでやれ、よそで!! つか出てけ!!」

勇者「わぁ。じゃあ皆、明日からも頑張ろう♪」

武闘家「うん!」モグモグ

僧侶「フン」

盗賊「……ハァ~」

魔法使い(何であんな最低男を許容できるのよ…私がおかしいの!?)グヌヌ

31 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:25:39.87 ID:5HfrqQBu0
それでもとりあえず、魔王城には着実に近づいていった。


魔法使い「うーん…」

僧侶「どうしました?」

魔法使い「いや。何か、魔物達の攻撃がヌルくない? 魔王城に近づいてるんだから、もっと刺客を送ってきてもおかしくないと思うんだけど……」

勇者「俺に恐怖してるんだろ」フッ

僧侶「以前も言いましたが、魔王は比較的穏健派ですから。気にしなくていいと思いますよ」

魔法使い「うーん…」

魔法使い(いくら穏健派でも、敵を放置するなんて有り得るの…? それとも何か企んで……)

武闘家「ねぇねぇー!」

魔法使い「うん? どうしたの、武闘家」

武闘家「何と! 遂に、腹筋が6パックに割れました~♪」バッ

魔法使い「こらーっ、お腹を出して見せるな!!」

勇者「おぉ、見事な筋肉だ」サワサワ

魔法使い「女の子のお腹を気安く触ってんじゃないわよ!!」

勇者「武闘家…実は、俺の筋肉も凄いんだぞ。見てみたいか?」

武闘家「ホント!? 見たい見たーい!」

勇者「それじゃ今晩、俺の部屋に……」

魔法使い「断固阻止する!! 武闘家、こっち来なさい!!」


魔法使い「あんたね、もうちょっと警戒心ってもんをね…」クドクド

武闘家「えー、でもー」


勇者「……厄介な女」

勇者「こうなりゃ、順序を変えるか……」

32 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:26:06.72 ID:5HfrqQBu0
>夜


武闘家「それじゃ、お風呂入ってくるね~」

魔法使い「行ってらっしゃい」

魔法使い(さて…魔術書でも読むか。と言っても、もうほとんどの魔法は覚えちゃったわけだけど……)

<トントン

魔法使い「はーい?」

勇者「やぁ、こんばんは」ガチャ

魔法使い「…何。皆なら、お風呂に行ったけど」

勇者「知ってる。魔法使いに用があって来たからさ」

魔法使い「私に? 何よ、さっさと言いなさい」

勇者「…はぁ。魔法使いは本っ…当~に俺のことが嫌いみたいだね」

魔法使い「嫌いよ、大嫌い」

勇者「ふふ…そのツンケンしたところが可愛くもあるんだけどね」

魔法使い「そういう軟派な所が嫌われてるんだって自覚はあるかしら?」

勇者「魔法使いは固いよなぁ。でも今のご時世、男は沢山の女を口説いてナンボだよ?」

魔法使い「そうね。だから私、今のご時世の男は大嫌いなの」

勇者「流石に凹むよ」スタスタ

魔法使い「!!」ビク

33 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:26:40.24 ID:5HfrqQBu0
勇者「どうかした、魔法使い?」

魔法使い「べ、別に…ってか、こっち来ないでよね!」

勇者「どうして? …まさか、魔法使いって……」クスクス

魔法使い「な、何よ」

勇者「男が怖いのかな?」

魔法使い「!!」


男は嫌い。嫌いだけど――


魔法使い「あ、あんたなんか怖いもんですか! 変なこと言わないで!」

勇者「へぇ。じゃあ何で、そんなに緊張しているのかな?」

魔法使い「嫌いだからよ、男なんて――女のこと、性欲の対象にしか見てない生き物は!」

勇者「それが怖いってことじゃないの?」

魔法使い「……っ!」

勇者「やっぱり。怖いんでしょ、性的な目で見られるのが」ククッ

34 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:27:52.60 ID:5HfrqQBu0
魔法使い「そ、そこまで自意識過剰じゃないわよ!」

勇者「へぇ、そう? 俺は、魔法使いのことそういう風に見てるよ?」クスッ

魔法使い「…っ!!?」

勇者「美人だし、スタイルもいいし…ツンケンしたとこも、男が怖いからだと思えば可愛く見えるよ」

魔法使い「や、やめて……」


そんなこと言わないで。私を、そんな目で見ないで――


勇者「魔法使いは、男を知らなすぎるんだよ。ちゃんと愛されてみれば、男が好きになると思うよ…?」

魔法使い「ぅ…やだ……」


クラクラする。勇者が一歩一歩近づいてくる度に、体が硬直していって……。


勇者「そういうお嬢さんは案外、荒療治でコロッと変わったりするんだよね……」スッ

魔法使い「!!!」


勇者に触れられた途端、全身に鳥肌が立った。


魔法使い「ゃ、やだ……」ガタガタ

勇者「大丈夫…俺は魔法使いのこと、ちゃんと愛するよ……」

魔法使い「――っ!!」

35 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:28:19.30 ID:5HfrqQBu0
バァン


武闘家「魔法使いちゃーん!」

魔法使い「!!」

勇者「ぶ、武闘家……」

武闘家「魔法使いちゃん、お風呂におサルが来たよ!」グイッ

魔法使い「あっ!?」

武闘家「早く来て、ねぇねぇ!」

バタバタ…

勇者「………ちっ」

36 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:28:53.29 ID:5HfrqQBu0
魔法使い「……」

武闘家「田舎って凄いよね~。あ、でも餌付けするのは駄目みたいだよ。あとね……」

魔法使い「…武闘家」

武闘家「え、何? ……って」


急に全身の力が抜けて、私は武闘家にもたれかかった。
だけど彼女は嫌がらずに、背中をさすってくれた。


武闘家「よしよし、怖かったね~」

魔法使い「……ぐすっ」

武闘家「もう、あんなことないようにするからね。私が守るから」

魔法使い「グス…変なの。あんたが私を守るなんて……」

武闘家「あはは、そうだね。小さい頃からずっと、魔法使いちゃんが私を守ってくれてたもんね」

魔法使い「ほんとよ…。あんたって幼いし、すぐ泣くし……」

武闘家「でも私、そんな自分を変えたくて体を鍛えてきたんだよ。だから今度は、私が魔法使いちゃんを守る番」

魔法使い「……やだ」

武闘家「何で!?」ガーン

魔法使い「そんなの生意気。私だって、あんたのこと守るし……」

武闘家「えー。私の方が強いよー?」

魔法使い「それでもよ! 私は、守られるだけなんてイヤ!」

武闘家「……くすっ」

37 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:29:27.12 ID:5HfrqQBu0
武闘家「嬉しいよ、魔法使いちゃん。…うん、そうだね。私も、まだまだ頼りないもんね」

魔法使い「そうよ。あんたってば今でも1人で行動できないし、道には迷うし、脳筋だし……」

武闘家「あ、あははー。ほんと世話の焼ける友達だよねー」

魔法使い「別に、いいわよ。世話の焼けるあんたで」

武闘家「ほんとに? 欠点なのに?」

魔法使い「何を今更。…私がカバーするだけだし」

武闘家「ありがとうっ! 魔法使いちゃん、大好きっ!」ギュッ

魔法使い「っ!!」


大好き。きっと私の思う"好き"とは違う。
違うけど――


魔法使い「……ありがとう」

武闘家「? 何に対してのお礼?」

魔法使い「別に……何となく」

武闘家「あはは、何それー。変な魔法使いちゃん」

魔法使い「あんたに変だなんて言われたくない」

武闘家「もー、ひどいなー」アハハ



――ありがとう。私と一緒にいてくれて。

38 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:29:59.19 ID:5HfrqQBu0
僧侶「あの、そろそろいいでしょうか」

盗賊「うー。友情が眩しいです」

魔法使い「わわっ、2人とも!?」

僧侶「言っておきますが、武闘家さんに忠告したのは私ですよ。勇者様の行動が怪しい、と……」

魔法使い「そ、そうだったの。ありがとう…って、何で?」

盗賊「男の人を苦手としてる魔法使いちゃんに、下心を持った勇者君が近づこうとしている。これは由々しき事態なのです」

僧侶「そういうことです。……まぁ、私としても勇者様の関心が他の女性に向くのは好ましくありませんし」

盗賊「僧侶ちゃんは素直じゃないのです。魔法使いちゃんのこと本当に心配してたのに」

僧侶「……そんなことありません」プイ

魔法使い「盗賊、僧侶……」

僧侶「……何ですか?」

魔法使い「2人とも、男の趣味は悪いけど……何て、いい子達なのっ!!」ギュッ

盗賊「えっ?」

僧侶「っ!」

魔法使い「こんな私のこと心配してくれるなんて、嬉しくて嬉しくて……」

僧侶「そ、それは…仲間、ですし……」

盗賊「そうなのです。それにボク達、魔法使いちゃんのこと好きですよ」

武闘家「うぅー、いいなぁ。私なんか魔法使いちゃんからギュッとして貰ったことないのにー」

僧侶「ま、まぁ…。とにかく、魔法使いさんはしばらく単独行動をやめましょう」

盗賊「と、いうことで~…一緒にお風呂入るのです!」

魔法使い「え、ええぇーっ!?」

武闘家「行こう行こう!」

僧侶「裸の付き合いも大事ですよ」

盗賊「絶対に逃がさないです~♪」

魔法使い(ちょっ……普通にヤバいってー!!)


その後、風呂場で煙幕魔法を使うという手段でとりあえず乗り切った。


41 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:32:38.45 ID:pUUG/5wW0
>後日


勇者「……そうして手に入れたのが、この"戦女神の剣"というわけです」

姫「まぁ、流石勇者様ですわ」フフフ


魔法使い「話を盛ってるわー。あれは盗賊の探索能力のお陰だったじゃない」

武闘家「それにしてもびっくりだね。まさか、私達がお茶してるカフェにデートで来るなんてね」

魔法使い「何で入口側の席に座ってるのよ…。店を出ようにも、あの位置からじゃ気付かれるじゃない」ハァ

武闘家「気付かれたら、何か気まずいもんねー…あ、立ち上がったよ。お店を出るみたい」

魔法使い「そうね。じゃあ私達も出ましょう」

42 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:33:08.28 ID:pUUG/5wW0
盗賊「…はぁ~」

魔法使い「盗賊、相変わらずストーキングしてるの?」

盗賊「うぅ…姫様は本当に素敵です……」

武闘家「ん、勇者と姫様が……」



姫「では今日は、これで失礼しますわ」

勇者「おや…もう一件、行きたい所があったのですが……」

姫「少し用事がありまして…。それに、勇者様の旅も終盤でしょう? あまり、時間を取らせるわけにはいきませんわ」

勇者「姫様…俺にとって、貴方と過ごす時よりも大切な時間はありません」

姫「そんなことを言ってはいけませんわ。貴方は世界の希望を背負った勇者様なのですから」

勇者「そんな、俺は……」

姫「では勇者様、ご機嫌よう。城はすぐそこなので、1人で帰りますわ」ニコ



武闘家「うーん、流石姫様。ガードが固いねぇ~」

魔法使い「あーあ。姫様、もっとガツンと言って下さって構わないのに」

盗賊「勇者君と姫様、くっついちゃうんでしょうか……」

魔法使い「そうなんじゃない? でも、勇者は女好きだし、盗賊も第二第三夫人なら……」

姫「ねぇ」ニコニコ

魔法使い「!!?」ビクッ

武闘家「わぁ!?」

盗賊「ひ、ひひひひ姫様!?」

姫「ふふ、ご機嫌よう。勇者様のお仲間様」

43 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:33:35.43 ID:pUUG/5wW0
盗賊「ご、ごごごご機嫌麗しゅう……」ガチガチ

魔法使い「き、奇遇ですねぇ~」

武闘家(うわぁ…近くで見ると、本当に綺麗)

姫「ねぇ…貴方」

盗賊「ボ、ボク!? は、はいです!!」

姫「貴方…私と勇者様の逢瀬、たびたび見ていらっしゃったわね?」

盗賊「!!!」

魔法使い(あちゃー…気付かれていたか)

武闘家(姫様、意外と勘がいいんだなぁ)

盗賊「そ、そ、それは……」

姫「ふふっ…言い訳しなくていいのですよ。ねぇ、盗賊様…でしたわね?」

盗賊「そ、そんな、呼び捨てでいいです! 敬語も必要ありません!!」ブンブン

姫「では、盗賊…少し、2人きりで話しましょう?」

盗賊「!!!」

魔法使い(まさか……私刑!?)

武闘家(大変だあぁーっ!!)

44 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:34:03.40 ID:pUUG/5wW0



僧侶「で、盗賊さんは姫様と、この庭園に入って行かれたと」

魔法使い「万が一盗賊がひどい目に遭いそうになったら、助けなきゃ!」

武闘家「あ……2人がいたよ!!」



姫「私と勇者様でここを歩いていた時からずっと、陰で見ていたわね……?」

盗賊「は、はい、です……」

姫「うふふ。どうしてそんなに緊張しているの?」

盗賊「だ、だって……」



魔法使い「怯えてるのかしら…あんなに緊張して」

武闘家「そんなに怖いかなぁ?」

魔法使い「そりゃそうでしょ。威厳というか、オーラが違うわ」

僧侶「うーん……」

魔法使い「どうしたの、僧侶?」

僧侶「怯え、にしては…何か、様子がおかしいような……」

魔法使い「え?」



姫「勇者様から聞いていた感じと違うわね。盗賊は明るくて純朴な女の子、って聞いたけど」

盗賊「あ、ううぅ。だ、だって……」モジモジ

姫「私が相手だから?」

盗賊「!!!」

姫「ふふ、わかっているわ――」スッ


そして姫様は、盗賊の頬にそっと触れ――


姫「貴方――私のこと、好きなのでしょう?」


魔法使い「え?」

武闘家「え?」

45 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:34:32.89 ID:pUUG/5wW0
盗賊「そ、そそそそれは……」

姫「気付いていたわ…貴方が私に送ってくる熱い視線に。どうなのかしら?」

盗賊「……はい、です」コクリ

姫「ふふ、やっぱり……」

盗賊「み、見てるだけで良かったのです! 同性愛は禁止されているし、それに……」

姫「それに?]


盗賊「……ボクみたいに卑しい身分の者は……姫様に近づくことすら、おこがましいから……」

姫「そんなことないわ」ギュッ

盗賊「!!! ひ、姫様――」

姫「盗賊……貴方、可愛い」

盗賊「っ!?!!?」

姫「可愛い。そうやって弱気になっちゃうところも、一途なところも――」ナデナデ

盗賊「ぁ……ひ、姫様、そこは……っ」

姫「ふふ、ひと目見た時から、貴方が欲しいって思っていたの。そう簡単には、離さないわ……」

盗賊「ひ、姫、さまぁ……」



魔法使い「……退散」

46 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:35:02.76 ID:pUUG/5wW0
僧侶「見てはいけないものを見てしまいましたね……」

武闘家「凄かったねー」

魔法使い「……」ドキドキ

魔法使い(まさか盗賊の尾行の目当てが姫様の方だったなんて……。でも、今思い返せば……)


盗賊『……姫様って、綺麗で、品があって、教養があって…だから、自分が惨めで』

盗賊『ボクは気にしてるです。…同じ人間で、同じ女なのに、ボクと姫様は何もかもが違いすぎる』


魔法使い(……うん。姫様と自分が釣り合わないと思っての発言ね)

僧侶「それにしても、どうしましょうね…。このまま黙認しているのも……」

魔法使い「まさか僧侶……通報する気!?」

武闘家「駄目! それは駄目だよ!」

僧侶「武闘家さん……?」

47 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:35:36.66 ID:pUUG/5wW0
武闘家「2人の仲を無理矢理引き裂くなんて、そんなの駄目! 可哀想だよ!」

僧侶「だけれど…私達が黙認していたとしても、2人は結ばれることが許されぬ仲…」

魔法使い(そう、同性愛は御法度。だからこそ盗賊も苦しんで……)

武闘家「社会が許さなくても、私が認めるもん!」

魔法使い「……え?」

武闘家「今の法律の方が間違ってるよ…だから私、法律を変える! 魔王を倒して、偉い人になって……何年かかるかわからないけど、そんなことで罰せられることのない世の中にしてみせるよ!」

魔法使い(武闘家……)

僧侶「……まぁ、通報しては十中八九、盗賊さんが重い罰を受けます。私としても、それは避けたい事態です」

魔法使い「そうね。とりあえず黙認して…他の人にバレないようにしないとね」

武闘家「魔法使いちゃん、僧侶ちゃん…わかってくれるの?」

魔法使い「そりゃ、ね。私も今の法律が間違ってると思うし……」

武闘家「……へへっ」

魔法使い「な、何よ? 人の顔をジッと見て」

武闘家「嬉しいなぁ~って。魔法使いちゃん、私と同じだね~♪」

魔法使い「何で嬉しいのよ。変な子ね」

僧侶「……」

48 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:36:06.09 ID:pUUG/5wW0
>その晩


盗賊「姫様…あぁ姫様」ポー

僧侶「……くれぐれも、ボロは出さないようにして下さいね?」


魔法使い「ちょっと、勇者」

勇者「うん、何だい魔法使い」

魔法使い「旅も終盤、気を引き締めないといけないわ。だから魔王を倒すまで、城下町に戻るのはナシよ」

武闘家「そうそう。今まで息抜きしすぎだったと思うよ」

勇者「うーん…。あ! じゃあ魔法使い、しばらく君が姫様の代わりを務めるというのは」

魔法使い「死ね」ギロ

勇者「死ねはないだろ……」

武闘家「魔法使いちゃーん、行こう行こう~」

49 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:36:37.21 ID:pUUG/5wW0
魔法使い「これでいいわ。城下町に戻れば盗賊と姫様が会ってボロを出すこともないだろうし……」

武闘家「うん。少なくとも、魔王を倒すまでの間は誤魔化せるね」

魔法使い「折角姫様と通じ合えたところで盗賊には気の毒だけど……あ、見て武闘家」

武闘家「ん、何……わぁ、綺麗な星空だねぇ~!!」

魔法使い「えぇ。久々に見たわ、こんな満天の星は」

武闘家「魔法使いちゃん…あのね、星占いによるとね、盗賊ちゃんと姫様の相性はバツグンなんだよ」

魔法使い「そう。2人とも幸せになれるといいわね」

武闘家「そうだね! こういう星空の下を、2人で堂々とデートできるようになれるといいよね!」

魔法使い(本当そうね……っていうか)


星空の下を、2人でデート……それは、今の私と武闘家じゃないか。


魔法使い(…なんて、バカよね。盗賊達とは違うんだから、デートにならないって)

武闘家「……ねぇ、魔法使いちゃん」

魔法使い「ん?」

武闘家「あれ……僧侶ちゃんと勇者じゃない?」

魔法使い「本当だ…あんなところで、コソコソ何やってるのかしら」

50 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:37:03.74 ID:pUUG/5wW0
僧侶「……困ります」

勇者「そんなこと言わないで。僧侶だって俺のこと、好きだろう?」

僧侶「それとこれとは、話が別です……」

勇者「姫様との逢瀬を禁止されてしまった。……俺にはもう、僧侶しかいないんだよ」

僧侶「…でも……」

勇者「誰にも愛されてなかったら、俺、駄目なんだよ。こういう状態で魔王を倒せる気がしない……」

僧侶「……わかりました」

勇者「!! 本当!?」

僧侶「ですけれど…キスも婚前交渉も駄目ですよ」

勇者「えー…。それじゃ意味ないじゃん」ハァ

僧侶「……胸くらいならいいですよ」

勇者「えっ? 触ってもいいってこと?」

僧侶「えぇ…そこまでなら譲歩できます」

51 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:37:32.14 ID:pUUG/5wW0
魔法使い「何あいつ!! 最低、燃やしてやるわ!!」

武闘家「ストップ、ストップ! 魔法使いちゃん、押さえて!」

魔法使い「止めないで武闘家! 僧侶にそんなことさせられないわよ!!」

武闘家「でも、僧侶ちゃんは勇者のこと好きなんだよね?」

魔法使い「……そうみたいね」

武闘家「それに僧侶ちゃんは、イヤなことはハッキリ断れる子だよ。勇者の誘い方が気に入らないのはわかるけどさ……」

魔法使い「……わかった、見逃す。合意の上なら仕方ないわね」

武闘家「うん。見つからない内に行こう」

魔法使い(それにしても……)


勇者「僧侶…君の肌は綺麗だね。純潔を守る君らしい白さだ……」

僧侶「ん……っ」


魔法使い(僧侶…ほんとに、何で勇者なんかに惚れたの?)

52 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:38:11.58 ID:pUUG/5wW0
その日からは、魔王城に一直線だった。


武闘家「どりゃっ、せええぇぇいっ!!」バキィ

魔法使い「巨神兵の鎧をブチ破る程になったわ…。恐ろしい子」

武闘家「筋肉に、できないことなんてないんだよ!」

勇者「あ、ははは。武闘家は凄いなぁ~」

魔法使い(恐れてる恐れてる)


勇者は武闘家や、彼女と常に一緒にいる私にチョッカイをかけてくることはなくなった。


盗賊「隠し通路を見つけたです! これで、魔王城まで大分近道になるですよ!」


盗賊の様子に変わりはない。内心は姫様に会えなくて寂しがっているだろうけど、それを表に出すことはない。


勇者「僧侶…ちょっといいかな?」

僧侶「……はい」

魔法使い(またやってるわ……)


僧侶と勇者は、奇妙な関係を続けている。覗き見ているわけでないので、何をしているかは知らないけど……。


魔法使い「今日もお疲れー。あぁ疲れた」ドサッ

武闘家「魔法使いちゃん、一緒に寝るー?」ドサッ

魔法使い「バッ…バカじゃないの!? 子供じゃないんだし、1人で寝なさい!!」

盗賊「でも、この宿のベッドは大きいのです。これは皆で寝ないと損なのです」

魔法使い「意味がわからないわ」

僧侶「皆さん、魔法使いさんを取り押さえますよ」

魔法使い「ちょっ」

武闘家「えーい♪」ギュッ

盗賊「やー! なのです!」ギュッ

僧侶「ふふっ、たまにはいいでしょう」ギュッ

魔法使い(色々とヤバいわあああぁぁ!!)ドキドキドキドキ


私達女子4人は、仲良くやっていた。

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/03(日) 20:23:23.91 ID:5fhWv8E1O
このNTRはむしろGJ

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 12:48:30.58 ID:xyEwQ5m1O
百合にもNTRにも食指は動かんがこれは認めよう

認めよう

58 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:40:30.12 ID:6bFq7v+S0
>そんで


武闘家「遂に来たね……」

魔法使い「これが魔王城……」

盗賊「何か、ヤな気配がするです~…」

僧侶「……」

勇者「皆、緊張しちゃってんの~? 今の俺たちに敵なんかいないって~♪」

魔法使い「油断するな、足元すくわれるわよ」

勇者「魔法使いったら、本当に怖がりだね~♪ か~わ~い~い~」

魔法使い(こいつ、魔王と相打ちにならないかな)

僧侶「何が待ち受けているか、わかりませんよ」

勇者「そんな警戒しなくていいだろ、道中だって大したことなかったんだしさ」

僧侶「それなら勇者様、先頭を歩いて下さいませんか?」

勇者「任せろ。俺が君たちを守る」グッ

魔法使い「はよ行け」

勇者「おう…開け、魔王城の扉よ!!」バァン


ドガアアアァァァン


魔法使い「うわ、早速やられた」

盗賊「扉を開いたと同時に衝撃波とは、予想外なのです」

武闘家「先に行ってもらって良かったねー」

僧侶「勇者様あぁ――っ!!」

59 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:40:59.44 ID:6bFq7v+S0
?「フ…よくぞ来た、勇者とその一行の者共よ。待ちわびていたぞ……!!」


盗賊「…! だ、誰なのです!?」

魔法使い「あの女…尋常じゃない魔力の持ち主よ!!」


?「フフフフ……何者と問うなら応えてやろう」



魔王「我が名は魔王! 魔物達を統べる王である!!」


盗賊「魔王……あの人が!?」

武闘家「結構細身だねー。私の方が力はありそう」

魔法使い「油断するんじゃないわよ武闘家。何せ、勇者を一擊で葬った奴なんだから……」


勇者「何て美しい女性だ!」

魔法使い「あ、生きてた」

勇者「魔王……不毛な戦いなんてやめにしないか? 勇者と魔王、手を取り合って…和平の為に愛し合」

魔王「死ね」ゴオオォォッ

勇者「ぎゃばー!!」

魔法使い「勇者が死んだわよー。さぁ皆、構えて構えて」

勇者「いや…生きてる」ボロボロ

魔法使い「あそう。じゃ、剣構えて」

勇者「鬼か!!」

60 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:41:25.98 ID:6bFq7v+S0
魔法使い「まさか初っ端から魔王が出迎えてくれるとは思わなかったわ」

魔王「無駄に犠牲者を出すことは好まん。ならば、私が相手するのが良かろう」

盗賊「おぉ。部下思いの魔王なのです」

武闘家「それでも人間の敵だよ。魔王との争いで、人間達は数を減らしたんだから」

魔王「あぁ、先代は血の気が多い方だったからな…。しかし私も、歴代魔王の業を背負った身。言い逃れなどせんよ」

魔法使い「潔くて結構。穏健派と聞いて戦うことに戸惑いはあったけど、これなら思う存分戦えるわ」

武闘家「行くよ…全てを終わらせるんだ!」

盗賊「戦闘準備、オッケーなのです!」


勇者「俺が置き去りだよぅ……」

僧侶「今、回復魔法かけますから」

61 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:41:52.40 ID:6bFq7v+S0
魔王「喰らえ、黒雷!!」バチバチッ

魔法使い「シールド!!」

魔王「ほう、私の攻撃を魔法で防げる人間がいるとはな」ニヤリ

魔法使い「防御だけじゃないわよ! 煙幕っ!」

魔王「視界を曇らせるか…しかし気配を追えば、こんなもの……」

シュッ

魔王(投げナイフ……!?)サッ

盗賊「おぉ、煙幕と投げナイフのコンボを最初から回避したのは、魔王が初めてなのです! でも、諦めないです!」

シュッシュッ

魔王(くっ……素早い奴だ。気配を追うので精一杯だ!)サッサッ

武闘家「私を忘れてもらっちゃ困るなぁ~」

魔王「!! いつの間に……」

武闘家「喰らええぇ――っ!!」


――バキィ


魔王「――っ」

62 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:42:31.48 ID:6bFq7v+S0
魔王「人間にしては、力強い一擊だ……この"邪神の加護"がなければ、骨を折られていただろう」

魔法使い「何…? 魔王が纏っている魔力が、ダメージを吸収した?」

僧侶「あれは代々魔王に伝わる、邪神の加護。あれがある限り、彼女に致命傷を与えることはできません」

魔法使い「何それ、初耳なんだけど!? そんなの相手にどうダメージを与えるのよ!?」

僧侶「攻略法はあります。邪神の加護を打ち破ることができるのは"戦女神の剣"であり――」

勇者「その剣を扱える俺が、救世主ってわけだ」フフン

魔法使い「あら勇者、復活したの」

勇者「見てろよ皆…この俺が、魔王に纏っている加護を打ち破ってみせよう!」

魔法使い「うん、わかったからとっとと行って」


勇者「魔王よ…お前の時代は終わりだ。大人しく降伏して、俺の女になるがいい!!」ビシッ


魔法使い(何言ってんのあのバカ)


魔王「面白い。来るがいい、勇者よ」

勇者「はあああぁぁ――っ!!」ダダッ

武闘家「無駄のない走り、これなら行ける――」

勇者「喰らえ――」


僧侶「……肉を破れ。"堕天使の咎"」

バリバリバリッ

勇者「ぎゃあああぁぁっ!?」

盗賊「!? 勇者君の全身から血が……」

魔法使い「今の魔力は……」バッ


僧侶「……ふふ」

魔法使い「僧侶……あんたの仕業!?」

僧侶「はは……はははははっ!!」

63 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:42:58.53 ID:6bFq7v+S0
僧侶「回復魔法のついでに、『勇者』の体内に仕掛けをしたのですよ。面白い程に引っかかりましたね」

勇者「う……」ピクピク

僧侶「戦女神の剣……預からせて頂きます」

魔法使い「何で…? 裏切ったの、僧侶!?」

僧侶「いいえ、裏切ったわけではありません……。だって最初から、私は『魔王様』側の人間ですから」

魔法使い「何ですって……!!」


魔王「よくぞやった、僧侶よ……。勇者一行を欺くことに成功したようだな」

僧侶「えぇ魔王様、全ては貴方の為に――」

魔法使い「どういうことよ! 僧侶、私達を騙してたの!?」

僧侶「えぇ、そうです。勇者一行に入り、貴方達が魔王様を討てぬように旅を誘導させて頂きました」

魔法使い「誘導…!? そう言えば――」



僧侶『では、早速ですが魔王城までの経路について話し合いませんか? 私、これについては少し詳しいので、色々とプランを考えてきたのですが…』

勇者『僧侶にお任せするよ』



魔法使い「私達、僧侶の考えたプラン通りに旅を進めてきたわ…。まさか、それが策略だったの!?」

僧侶「えぇ、魔物側にとって重要な戦力を潰されぬよう誘導しました。あとついでに、魔王様を倒す為に必要な武具や、その情報を得られないようにも誘導しました」

魔法使い「な……旅が変にサクサク進むと思ってたら……」

盗賊「くうぅ…戦女神の剣を入手したことで、舞い上がっていたのです……」

64 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:43:41.63 ID:6bFq7v+S0
勇者「うぐぐ…僧侶……」

僧侶「あら。随分しぶといんですねぇ」

勇者「どうしてだ僧侶……俺はお前のこと、好きだったのに……」

僧侶「……笑わせてくれますね」フフッ

勇者「!!?」

僧侶「言っておきますが、私は貴方を好いているように見せていただけですよ。本当は心の底から大嫌いだし、むしろ一刻も早く便所に流されろゴミクズと思っていました」ニッコリ

勇者「ゴ、ゴミクズ……」ガーン

僧侶「あははは、脳みそが下半身に、頭に精液が詰まってる男は単純ですよね!! あはは、あはははははっ」

勇者「く、くそ……。惨めだ…俺は、惨めだ!!」


魔法使い(1ミリも同情できないわー)

65 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:44:10.25 ID:6bFq7v+S0
僧侶「魔法使いさん、武闘家さん、盗賊さん」

魔法使い「な、何…」

僧侶「大人しく帰って頂けませんか。貴方達では、魔王様にかないませんよ」

魔法使い「……帰ったら、貴方達はどうするの?」

僧侶「研究を進めるだけですよ。もうじき、研究は完成する予定……」

魔法使い「それって――」



魔法使い『『魔王が進めている恐ろしい研究』って何だか知らない? 何か研究しているのは聞いたけど、肝心の内容がわからないのよね。僧侶は知らない?』

僧侶『……はっきりはわかりませんが、どうやら『生物の常識を覆し、人間社会に悪影響を与える』ものらしいですよ』



魔法使い「人間社会に悪影響を与えるっていう、あの研究!?」

僧侶「悪影響…そうですね、悪影響かもしれませんね。だけど研究を完成させることが、私達の悲願ですから……」

武闘家「何だかわからないけど…私達は、魔王の野望を阻止しに来たんだよ!」

盗賊「ここで諦めるわけにはいかんのです!」

勇者「あのー…回復アイテム持ってないですか」ボロボロ

魔法使い「ない! 隅っこ行ってろ!」


僧侶「…仕方ありませんね。痛い目に遭ってもらいましょうか」

魔王「下がっていろ、僧侶。脅すだけなら、これで十分――」

魔法使い「!! この莫大な魔力は……」

盗賊「い、隕石が上空に!!」

魔王「凶星よ降り注げ…"黒雲の審判"」


ドガアアァァン

66 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:44:39.64 ID:6bFq7v+S0
魔法使い「み、皆…大丈夫?」

武闘家「う、うん…攻撃が外れたお陰で……」

魔王「今のはわざと外したのだぞ。だが……次はないぞ?」

盗賊「ひっ……」

魔法使い(何てこと…あんな魔法攻撃、防ぎきれないわ!)

僧侶「おわかり頂けましたか? 魔王様の攻撃を防ぐ防具も、魔王様が纏う加護を貫く武器もない貴方達に、勝つ方法なんて無いんですよ」


魔法使い「くっ…」

魔法使い(確かにその通りだわ…これだけの力を見せつけられたら、絶望的……)

盗賊「うぅ…打つ手がないのです……」

魔法使い「撤退…するしかないの?」

武闘家「駄目だよ」

魔法使い「武闘家…!? でも、僧侶の言う通り私達に勝つ手段は……」

武闘家「大丈夫!! 魔法使いちゃん、私、いつも言ってたよね」

魔法使い「え……?」

武闘家「筋肉に、できないことなんてないんだよ……!!」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 18:49:38.31 ID:K0mjP5QXo
レズもNTRも好きな身としては、誰と誰がくっついてもおいしい神展開

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 20:06:02.75 ID:fvUUryvwO
俺も僧侶のおっぱい揉みたい

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 16:02:55.81 ID:RFrXHIkwo
NLも百合も(薔薇も)それぞれ魅力あるよね

71 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:16:27.60 ID:iTyYYhYB0
魔王「ほう、人間…まだ私に立ち向かおうと言うのか?」

武闘家「私達は偉くなって、法律を変えなきゃいけないんだよね。その為に、絶対に貴方を倒すよ」

魔王「勇敢な小娘だな…だが、それだけで私には勝てぬぞ!」ゴゴゴ

盗賊「出たです、隕石!!」

魔王「降り注げ!! 黒雲の審判!!」

魔法使い「きゃああぁ、降ってくるぅーっ!!」

武闘家「すううぅぅ……」

魔法使い「どれくらい効果あるかわからないけど……シールd」

武闘家「はああああぁぁぁっ!!」


バキイイイィィッ


魔法使い「」

盗賊「な……」

武闘家「どう?」ニヤリ

魔王「馬鹿な……光速で降り注ぐ隕石を砕いただと!?」

魔法使い「え……。え?」

72 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:17:00.90 ID:iTyYYhYB0
魔王「何かの間違いだ! 喰らうがいい、爆炎、黒雷!」

武闘家「せあっ!!」ビュンッ

魔法使い「蹴りで…かき消した……」ポカーン

魔王「な…僧侶、何なのだ、あの人間は!?」

僧侶「ぶ、武闘家さんは、ただの怪力で……で、でも、あそこまでの力は……」

武闘家「あったんだなぁ、それが。今まで大した敵と戦ってなかったから、お披露目する機会がなかったけど」フフン

盗賊「そっか…魔物側の重要戦力との戦闘を回避させたせいで、僧侶ちゃんも武闘家ちゃんの戦力を正しく測れてなかったのです!」

僧侶「ま、魔王様…申し訳ありません!」

魔王「良い。それよりも、規格外の人間がいたものだな…面白い!!」

僧侶「ですが…きっとこのままでは、筋肉の力で邪神の加護も打ち破られるパターンです!」

魔法使い「パターンて言うな」

魔王「それならそれで……」ゴゴッ

魔法使い「!! この魔力の波動は……!!」

盗賊「くっ…吹き飛ばされそうなのです……!!」

魔王「距離を詰めなければ良いだけのこと。さぁ、どうする!?」

武闘家「…っ、厄介だなぁ」


勇者「」←吹っ飛ばされて壁に激突して気絶した

73 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:17:33.50 ID:iTyYYhYB0
武闘家「でも、行くしかないよね…! せりゃああぁぁっ!!」

魔法使い「無理矢理行った!!」

魔王「ほほー、やるな。だが……」クイッ

武闘家「!?」ヨロッ

魔法使い「!! 波動の向きが、向かい風から追い風に変わった!?」

盗賊「前方に勢いをつけていた分、追い風による前方へのよろめきが大きいです!」

魔王「隙ありだ」ドゴォン

武闘家「うわあぁぁっ!!」ドサァッ

魔法使い「武闘家ぁーっ!!」

武闘家「いてて…。大丈夫、とっさに防御姿勢取ったから!」

魔王「この程度の攻撃魔法では大したダメージも与えられぬか。見かけによらず、鎧のような筋肉だな」

僧侶「ですが魔王様、距離を空けたままダメージを積み重ねればいずれは……」

武闘家「めげるもんか! おらぁーっ!!」ダダッ

74 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:18:00.24 ID:iTyYYhYB0



武闘家「…はぁ、はぁ……」

魔王「かなりしぶといな。何発喰らわせただろうな?」

僧侶「しかし確実にダメージは蓄積しています。それに、体力も大分消耗してますよ」

武闘家「くっ、まだまだ……」

魔法使い「やめて武闘家、このままだと死んじゃうわ!」ガシッ

武闘家「!! 魔法使いちゃん……」

魔法使い「もう見ていられない! 武闘家がこれ以上傷つくのは、嫌よ!!」

盗賊「なのです…。ここは撤退して、出直した方が良いのです」

魔王「そうはいかんぞ」

僧侶「魔王様?」

魔王「勇者以外の虫けら程度、逃がしても支障はないと思っていたが…。事情が変わった。その筋肉娘は、確実に仕留める!!」

武闘家「…っ!」

魔王「これが私の全力だ……はああぁぁぁっ!!」

魔法使い「魔王の魔力が城中に蔓延して……危ないっ!!」


ドガアアァァン

75 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:18:53.49 ID:iTyYYhYB0
僧侶「……ゴホッ。城ごと吹っ飛ばすとは、正気ですか魔王様」

魔王「こうでもしないと倒せないと判断した。城は直せば良い」

僧侶「そう…ですね」

魔王「どうした僧侶。仲間だった者たちが気がかりか?」

僧侶「!! い、いえ、そんなことは……」

魔王「わかっている、お前は心優しい娘だ。仲間だった者たちに情がわかぬはずがない」

僧侶「……はい。あ、勇者のゴミクズはどうでもいいですけど」

魔王「すまない。お前には、辛い役目を任せたな……」

僧侶「魔王様の為なら、何だって……」

76 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:19:25.33 ID:iTyYYhYB0
魔法使い「う……」

魔法使い(いたた……。私、生きてる……?)

武闘家「良かったぁ、魔法使いちゃん。大した怪我はないね?」

魔法使い「!! ぶ、武闘家……」

武闘家「大分、吹っ飛ばされちゃったね? すっごい威力だったぁ~…」

魔法使い「あんた、す、凄い怪我じゃない!!」

武闘家「大丈夫だよ、見た目は派手だけど大したことないから」

魔法使い「嘘おっしゃい! あんたが嘘ついてたら、わかるんだからね!!」

武闘家「へ、へへ…やっぱり、魔法使いちゃんにはかなわないなぁ」

魔法使い「……私を庇ったんでしょ」

武闘家「………」

魔法使い「どうしてこんな無茶したのよ…!! 私のせいで、あんたが……」グスッ

武闘家「そんな、泣かないでよ魔法使いちゃん。私、ちゃんと生きてるんだよ?」

魔法使い「バカ……女の子なんだから、傷跡が残るとか、考えなさいよ……」

武闘家「あはは! 魔法使いちゃん、こんな時にずれてるー」

魔法使い「笑い事じゃないわよ……私にとっては、とってもとっても大事なことで……」グスグス

武闘家「うん、うん。ありがとう魔法使いちゃん。……ごめんね、泣かせて」ポンポン

77 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:19:52.19 ID:iTyYYhYB0
武闘家「さて、魔王のとこ戻ろうか」

魔法使い「!! あんた、その体でまだ戦おうっての!? やめなさい、逃げるわよ!」

武闘家「大丈夫。今ので、いい作戦思いついたんだ。あのね……」

魔法使い「あんたが思いつく作戦なんかで、あの魔王を打ち破れるわけないでしょ!」

武闘家「ひどいなぁ」プクゥ

魔法使い「せめて…体を治してから再戦するのよ! 僧侶が向こうについちゃったから、今は回復手段がないんだからね!!」

武闘家「それじゃ駄目だよ。今の魔王こそ、魔力を大きく消費してて、倒すチャンスでしょ?」

魔法使い「魔王以上にあんたが消耗してるのよ! それくらいわからないの、バカ!!」

武闘家「そりゃまバカだけど。どうして、そんなに止めるのさ」

魔法使い「……あんたに死なれたくないからに決まってるでしょ!!」

武闘家「魔法使いちゃん……」

魔法使い「負けてもいいし、世界がどうなってもいいのよ! あんたが生きてさえいれば……私は、どんな世界でだって笑って生きていけるんだから!!」

武闘家「……」

78 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:20:37.11 ID:iTyYYhYB0
武闘家「へ、へへへ……嬉しいなぁ」

魔法使い「人の気も知らずに……」グスグス

武闘家「あー、ごめんね魔法使いちゃん。泣かないで、ね?」

魔法使い「泣いてない! バカ! いいから帰るわよ!」

武闘家「魔法使いちゃん、言ったよね……? 体を治してから再戦なら、いいって」

魔法使い「言った、けど……」

武闘家「じゃあ――そうするね」クイッ

魔法使い「えっ、何――」


チュッ


魔法使い「――」

武闘家「……」


柔らかいものが、私の唇を塞いでいる。目の前にあるのは、彼女の顔で――


武闘家「……ぷはぁ」

魔法使い「……」ポカン

武闘家「へへ…ごめんね、魔法使いちゃん♪」

魔法使い「………え?」

79 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:21:13.84 ID:iTyYYhYB0
武闘家「さて回復したよ! 行こうか!」

魔法使い「ちょっ、あんた……っ、わわわ、私のファースト……」

武闘家「話は後! 魔王の魔力が回復する前に行かなきゃ!!」

魔法使い「ちょっ……いや、行ったところで勝てるわけ……」

武闘家「言ったじゃない、作戦があるって」

魔法使い「……どんな作戦よ?」

武闘家「それはねー……」

83 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:16:43.79 ID:8wdOIHkV0



盗賊「ううぅ……」

魔王「おや、1人見つけたぞ。良かったな僧侶、生きていたぞ」

僧侶「えぇ…"回復魔法"」

僧侶(魔法使いさんと武闘家さんも…できれば、逃げていて下されば良いのですが……)


武闘家「魔王ーっ!!」

僧侶「!! 武闘家さん、魔法使いさん……」

魔王「ほほう、あれを喰らってピンピンしているか。面白い!」

僧侶(な、何で逃げてくれなかったんですか! 殺されますよ!)

武闘家「行こう魔法使いちゃん! 協力して魔王を倒すんだ!」

魔法使い「えぇ!」ゴオォ……

魔王(あれは攻撃魔法の類か……だがあの程度の魔力、恐れるに足りん)

魔法使い「はああぁ――っ!!」

魔王「フンっ!!」ビュン

僧侶(流石、魔王様。人間の中でもトップクラスの使い手である魔法使いさんの魔法を、片手でかき消した!)

84 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:17:25.95 ID:8wdOIHkV0
魔法使い「まだまだ! でりゃあぁぁっ!!」

魔王「何発打ち込もうが無駄だ! 全て、かき消してやる!」ゴォッ

魔法使い(来た…魔力の波動による向かい風!!)

魔法使い「私の魔力で押し返す!!」ゴゴッ

魔王「ほう抵抗するか…しかし、脆弱だな」

武闘家「十分だよ!」ダッ

魔王「来るか、筋肉娘!!」

武闘家「うらぁーっ!!」ダダッ


僧侶「魔法使いさんの波動による後押しにより、魔王様の波動への抵抗力が強まっている! このままでは、距離を詰めれれる――」

魔王「それならそれで構わん」クイッ


武闘家「!!」ヨロッ

魔法使い(出た――また、向かい風を追い風に変えた!)


魔王「よろめいた一瞬の隙――今度こそ、仕留める」スッ


魔法使い「……っ!!」

魔法使い(作戦通り!!)

魔法使い「でりゃああぁ――っ!!」ドゴオオォォン

魔王「――っ!?」

85 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:17:52.46 ID:8wdOIHkV0
~先刻~


武闘家『魔法使いちゃんの魔法で、何とか魔王による波動を引き出してほしいの。そこからが勝負だよ』

魔法使い『波動って…あの技はシンプルだけど厄介よ。魔王も、いいタイミングで向かい風を追い風に変えてくるし…』

武闘家『うん、そこを狙うんだよ。私がよろめいた一瞬の隙――そこが魔王にとっての隙でもある』

魔法使い『まさか、そこを攻撃魔法で突けっての? それは無理よ。私の攻撃じゃ、魔王が纏っている加護を貫けないわ』

武闘家『そうじゃない。魔法使いちゃんが狙うのは魔王じゃなくて、私』

魔法使い『……え?』

武闘家『私を魔法で吹っ飛ばして。魔王の懐まで』

魔法使い『!!?!?』

86 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:18:26.18 ID:8wdOIHkV0
魔王「な――っ」

武闘家「へへっ……リーチ入りました♪」

魔法使い「攻撃ブチ込め、武闘家!!」

バッ

僧侶「させません!!」

魔法使い「!! 僧侶が間に……」

盗賊「邪魔させないのですっ!!」ガバッ

僧侶「!!! 離っ……」ジタバタ

魔法使い「盗賊……ナイス!! あとは……」


武闘家「でりゃああぁぁ――っ!!」

魔王「――っ!!」


幾つもの打撃音が、その場に響き渡った。

87 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:19:27.57 ID:8wdOIHkV0
魔王「う……」バタッ

僧侶「ま、魔王様……」


武闘家「ふぅ…倒したっ!」

魔法使い「信じられない……本当に筋肉の力だけでやりやがったわ」

盗賊「あれ? 魔法使いちゃん、武闘家ちゃんを信じて協力したんじゃないですか?」

魔法使い「そんなわけないでしょ! 武闘家がワガママ言って聞かないから……」

武闘家「いつもありがと、私のワガママ聞いてくれて。魔法使いちゃん、大好きだよ」ギュッ

魔法使い「!!!」

盗賊「おやおやぁ~? 何かアヤシイですね、お2人さん」

<ふっふっふ……

盗賊「ん?」

88 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:19:53.78 ID:8wdOIHkV0
勇者「よくやったな!! 僧侶の妨害工作にもめげず魔王を打ち破るとは、流石勇者パーティーだ!!」

魔法使い「うわ。あんた、何でピンピンしてるの」

勇者「10分寝たら回復した」

魔法使い「生命力だけは勇者ね。ゴキブリの称号を与えたいわ」

勇者「さて、魔王。敗者には審判が下される、それが戦いのルールだ」

魔王「ぐ……」

勇者「魔王よ……俺の女になれ!!」


武闘家(ないわー)

盗賊(何かシャクなのです)

魔法使い(ものすごく魔王を助けたい)


魔王「くっ、誰が……」

勇者「随分と反抗的だな……だが、思い知らせてやるよ。お前が、女だということをな」クイッ

魔王「!!」

ゴゴゴゴゴゴ

勇者「!?」

魔法使い「なっ!? この魔力は……」

89 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:20:26.19 ID:8wdOIHkV0
僧侶「魔王様に触れるな……このゴミクズが……」ゴゴゴゴゴ

勇者「ひぇえぇ!?」

魔王「やめろ、僧侶! それはお前の命を削る最終奥義!! 今は使うべき時ではない!!」

僧侶「いいえ、魔王様! そんなゴミクズに貴方が汚されるくらいなら、私はゴミクズもろとも死ぬことを選びます!!」

魔法使い「ゴミク…じゃなくて勇者! ヤバいから魔王から離れなさい!」

勇者「う……」パッ


僧侶「あぁ魔王様、大丈夫ですか! あの性病菌まみれの手で魔王様に触れるなんて、うううぅ」

魔王「大丈夫だ……僧侶、そこまで追い詰めてすまない」ギュッ

僧侶「魔王様…魔王様ぁ……」グスグス


魔法使い「…ねぇ、この2人の関係性って……」

武闘家「……うん、そうだよね」

盗賊「間違いないのです」ウンウン

勇者「え、えっ?」

90 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:20:55.13 ID:8wdOIHkV0
魔王「しかし、私は敗者確定だ……。お前と結ばれることは永遠にかなわん」

僧侶「そんなの、死んだ方がマシです……」シクシク

魔王「それが敗者の宿命というものだ。お前には、辛い思いをさせる。本当にすまない」

僧侶「いいえ魔王様! 私、諦めません! たとえ時間がかかっても……」


魔法使い「何か…可哀想よね」

武闘家「うん……僧侶ちゃんは、愛を貫いただけなんだよね」ホロリ

盗賊「見逃してあげたいけど……」


勇者「ファーッハッハッハ!! 百合だか何だか知らんが、諦めて俺の女になるんだな!!」

魔法使い&武闘家&盗賊(こいつのアレ、もげればいいのに)


僧侶「私達の意思を継いだ魔物達が、研究を完成させるでしょう! その時こそ、私は魔王様と……」


魔法使い(研究……そうだ、研究って何だったの?)


僧侶「魔王様の子を、産んでみせますとも!!」


魔法使い「……は?」

武闘家「え?」

盗賊「子……えっ、えっ?」

91 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:21:21.46 ID:8wdOIHkV0
魔王「完成間近だったのだがな…"同性同士で子を作れる研究"は」


魔法使い「」ピクッ


僧侶「きっと邪魔されます……だってあの研究は、"生物の常識を覆し、人間社会に影響を与え"ますから! 完成すれば"男優位の社会"が崩れ去ります!!」


武闘家「」ピクッ

盗賊「」ピクッ


魔王「そうだな…人間社会の偉い奴らは男ばかり。そんな研究、認めないだろうな」

僧侶「うぅ……私、魔王様との子が欲しいです……」


勇者「な、何て恐ろしい研究だ! 生殖の常識を覆すとは、生命への冒涜!! そんなの、俺たちが許すわけ……」

魔法使い「……皆、いいわね?」ゴゴゴ

武闘家「うん」ググッ

盗賊「やっちゃうのです」ビュンビュン

勇者「………え? 皆、戦闘準備なんかして何を…って、何で俺を見て……うわやめろ、何をする――」


ウゴヴァアアアアァァァァァ……



こうして私達は闇落ちしたのだった。

92 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:21:47.66 ID:8wdOIHkV0
それから1年……


武闘家「魔法使いちゃん、魔法使いちゃん!」ドンドン

魔法使い「ふゎあ~…何よ、うるさいわね」

武闘家「遂に人間社会で制定されたよ…"同性同士の婚姻"制度が!!」

魔法使い「本当!?」ガバッ


闇落ちした私達は、魔王城に居ついて研究を手伝っていた。
その一方で全世界の同性愛者、女性人権団体などと手を組み、人間社会で革命を起こした。
色々あったけどそれらが全部上手くいって、今に至る。


武闘家「今日、婚姻届出そうよ!! ほら、私はもう全部記入済みだよ!!」

魔法使い「後で書くから、二度寝させて……いつもならまだ寝てる時間……」

武闘家「魔法使いちゃんたら、寝坊助なんだから~」ゴソゴソ

魔法使い「ん……何ぃ、布団入ってきて」

武闘家「一緒に寝よう♪」イヒヒ

魔法使い「………」

93 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:22:14.18 ID:8wdOIHkV0
魔法使い「もー…どうしてあんたって、そんなに可愛いのよ……」ギュッ

武闘家「甘えたいんだもん」スリスリ

魔法使い「昔から本当、変わらないわね……」ナデナデ

武闘家「これでも我慢してたんだよー? 魔法使いちゃん、なかなかデレてくれないから……」

魔法使い「そりゃ……同性愛禁止だってのに、デレるわけにはいかないでしょ。本当にバカね……」

武闘家「両思いってわかってからも、同じじゃん! 魔法使いちゃん冷たいよ~」

魔法使い「あー、うん。ごめんね」

武闘家「絶対に許さないもん! 罰としてキス跡つけてやるっ!」

魔法使い「ちょっ、バカ! あーもう毎日毎日、このキス魔!」ポカッ

武闘家「ぎゃふっ」

魔法使い「ったく…ずっと焦がれてたのは、私の方もだっての。もう離さないわよ」ギュッ

武闘家「えへへ~……」

94 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:22:43.76 ID:8wdOIHkV0
生き物の常識は変わる。それは神の意思に反しているのかもしれないけれど。


僧侶「魔王様…あの、私、身篭ったみたいです」

魔王「何、本当か!! よくやったなぁ!!」ギュッ

僧侶「魔王様…愛しています」

魔王「私もだ! お前と産まれる子を、永遠に愛すると誓おう!」


私達は、それでも愛を貫くと決めた。


姫「盗賊、このドレスがいいんじゃないかしら?」

盗賊「ぼ、ボクには高貴すぎるのです…」

姫「結婚式用だもの、これくらい華やかな方がいいわ! もう盗賊ったら、可愛いんだから~!」チュッ

盗賊「姫様ぁ、まだお昼ですぅーっ!」


この愛を、永遠のものにすると決めたのだ。


武闘家「さて引越し完了! 今日から始まるんだね、私達の夫婦生活が!」

魔法使い「夫婦って…何をすればいいのかしらね?」

武闘家「とりあえず2、3年はイチャイチャしようよ! 子供作るのはそれからで……」

魔法使い「そうねぇ、武闘家が産みたくなってからでいいわよ」

武闘家「産むのは魔法使いちゃんだよ?」

魔法使い「え?」

武闘家「え?」

95 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:23:33.47 ID:8wdOIHkV0
魔法使い「どう考えても、甘えん坊なあんたの方が奥さん役でしょ!」

武闘家「私の方が力強いよ! 奥さん役は魔法使いちゃんだよ!」

魔法使い「あんたが産む子供の方が、絶対愛嬌あって可愛いわよ!」

武闘家「魔法使いちゃんの子供なら、頭の良い子になるよ!」

魔法使い「……」

武闘家「……」


きっと、新しい家族が増えても幸せでいられる。
この子となら、どんな世界でだって笑っていられる。


魔法使い「し、仕方ないわねぇ。……順番に、ってのはどう?」

武闘家「う、うん…そうだね」


Fin

96 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:24:10.27 ID:8wdOIHkV0
おまけ・勇者のその後


>酒場


勇者「うぅ…姫様にも仲間にも、キープしてた子達にもフラれたよぅ。チキショウ、女なんて、女なんて!」

ガチムチ「ニィちゃん、気の毒だなぁ。ほら、飲め飲め」

勇者「ありがとうございます…うぅ、酔いが回ってきた……」

ガチムチ「とことん酔いつぶれちまいな! イヤなことを忘れるには、それが1番だぜ!」

勇者「はい!!」グビグビ

ガチムチ「ニヤリ」





>1時間後


ガチムチ「ハァハァ、勇者、勇者ぁ……ひと目見た時から、良いと思ってたんだよ!」ズッコンバッコン

勇者「らめぇ、裂けちゃう! 肛門裂けちゃう!!」

ガチムチ「孕めやあぁァッ!! せやっ!」パンパンパンッ

勇者「アッー!!」


勇者はその後、5人の子供を産んだ。

97 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:24:45.42 ID:8wdOIHkV0
ご読了ありがとうございました。
魔王を倒した時の作戦は、VS戸愚呂兄弟戦のパクry

勇者は物語の時代背景を考えるとそこまでモラルに反したことはしてないので、救済しておきました(´∀`)

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 19:27:53.64 ID:EuIZEeCZO
毎度ながら楽しかった乙

そうか最後のは霊○だったか

posted by ぽんざれす at 19:36| Comment(7) | ss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする