2016年08月17日

プロット大公開

ゴミ箱を漁ったらプロットが出てきたので公開してみます
読み返してみると、結構プロットから本編の展開が変わってるssがほとんどですねぇ
「自分さえわかればいい」って感じで書いたものなので、読みにくいのは仕方ない

僧侶「このパンツどうしよう
パンツプロット.jpg
あんなアホなssでもプロット書いてたのか…(愕然
パンツの細かい設定が本編ではカットされましたね。

盗賊娘「ハンターラビット」
うさちゃんプロット.jpg
終盤の、うさぎが盗賊になる展開の辺りが変わりましたね。
この頃まだ王子は残念な人じゃなかったw

魔女「世界から弾かれた私と彼」
暗黒魔女プロット.jpg
終盤の展開大きく違いますね。
魔女の性格も、この頃は大人っぽい性格を想定していたみたい。

執事「魔王よりもお嬢様の方が怖い」
お嬢執事プロット.jpg
細かいとこが変わってますね。
あれおかしいな、お嬢がセクハラする設定がどこにも書かれていないが…(錯乱

乙女ゲープレイヤー「魔王を攻略しよう」
乙女ゲープロット1.jpg
乙女ゲープロット2.jpg
側近の立ち位置がッ!!
このプロットやけに描写細かいですね。側近以外はほぼ本編通りですね。

勇者「パーティーでのカーストが最下位でつらい」
神界の騎士プロット.jpg
この時は恋愛ssだったんですねぇ。
何というか、女同士のドロドロを書きたかったので、話の本筋自体は割とシンプルなものにしたのですね。

勇者「俺はヒーローになれなかった」
俺ヒーロープロット.jpg
終盤の決戦時の展開が違いますねぇ。てか魔王倒された直後に魔王に村娘預けるってどゆことwww
邪神様本編では大物だったけど、プロットでは小悪党みたいな真似してますなぁ。

魔王「俺の体臭がやばい」
体臭プロット.jpg
ドロヘドロやアンテッドの下りカットしたんですなぁ。
このssは「魔王は引きこもっている間何をしているか」でtwitterでアンケートして筋トレすることに決まったので、筋トレのことはプロットに全く書いてないのですよ。

魔法使い「男は嫌い…」
百合プロット.jpg
武闘家は戦士だったのかぁ。
他に目立った変更点はないですね。しかし勇者はこの頃から最悪だw
posted by ぽんざれす at 14:13| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月07日

魔王「俺の体臭がやばい」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470218651/


1 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:04:11.33 ID:voHP6eV+0
側近「遂に魔王様が復活されるぞ……!!」


500年前、大賢者により封印された魔王。
その魔王の封印が今、解かれようとしていた。


北のドラゴン「500年――長いようで短かった」

西の悪魔「ウケケ。伝説となった大賢者とはいえ、所詮は人間。魔王様復活まで寿命はもたなかったなァ」

東の妖姫「ふふ…500年前の魔王様の武勇、心強いと同時に身震いがしますわ」

南の地蔵「細身ながら、数々の勇者を葬ってきた猛者じゃからのう」

側近「思い出話はそこまでです。見なさい、封印の力がどんどん弱まっている……」

ゴゴゴ…

側近(さぁ目覚めて下さい魔王様…そして、人間達に恐怖と絶望を!!)

北のドラゴン「なぁ…何か、空気がおかしくないか?」

西の悪魔「そう言われてみや…全身の感覚器官がゾワゾワするっつーか……」

東の妖姫「魔力……にしては、少々妙ですわね」

南の地蔵「見るのじゃ! 魔王様の封印が!!」

側近「!!?」


カッ――


2 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:04:37.11 ID:voHP6eV+0
魔王「ふぅ……」


彼こそが魔王。
まだ少年であった頃、魔王であった父に謀反を起こし、その座を奪ったという猛者である。


魔王「クク、血が騒ぐぞ…。500年、戦いを封じられたこの体が! 暴れたいと疼いている!!」


彼の欲求は世界の支配でも、魔物の繁栄でもない。

強い者と戦いたい――ただ、それだけである。


魔王「長らく待たせたな、側近、四天王よ! この俺が復活したからには! この大地に安らぎの時など与えぬぞおおぉぉ!!」


恐怖と絶望の時代が、今――


側近「……」プルプル

魔王「……? 側近、どうした?」

側近「……っせ」

魔王「せ?」

側近「くせえええぇぇぇ!!」

魔王「え?」

3 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:05:10.80 ID:voHP6eV+0
側近「くせぇ、くせええぇぇ!!」ゴロゴロゴロゴロ

魔王「き、貴様! この俺に何たる暴言を……」

北のドラゴン「ま、魔王ひゃま……」プルプル

魔王「何だ……ってどうした、鼻に詰め物なんかして」

西の悪魔「詰め物しても……駄目だオゲエエェッ!!」ゲロゲロ

東の妖姫「イヤ! 匂いがうつる!!」ダッ

南の地蔵「わしゃもう駄目じゃ……」パタリ

魔王「………え?」

4 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:05:39.18 ID:voHP6eV+0
>それで


魔王「配下が皆城を去って、はや一週間……」

魔王「500年分の垢が溜まったのかと思って体を擦り切れる程洗ったが、体臭は改善されていないらしい」

魔王「たまに、俺の復活を聞きつけた襲撃者は来るが……」


勇者「な、何だこの悪臭は……!!」

魔法使い「勇者…私、これ以上進めない!!」

僧侶「大変です! 戦士さんが気絶しました!」

勇者「撤退だ撤退ィ!!」


魔王「……と、俺の所にたどり着いた者はいない」

5 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:06:07.15 ID:voHP6eV+0
魔王「仕方ないので人間の大都市を襲いに行ってみたが……」


兵士A「オエエエェェッ!!」

兵士B「くっせ、くっせええぇぇ!!」

兵士C「何だよ、この悪臭!! 毒ガスだってもうちょっと鼻に優しいぞ!!」

王「魔王よ、降伏しよう。だからもうここには…オゲップ」

魔王「……」

魔王「帰る…」トボトボ

6 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:06:37.43 ID:voHP6eV+0
魔王「戦う前に降伏されては、気持ちも萎えるというもの」

魔王「それに会う奴会う奴に臭いと言われて、流石に俺も傷つく」ズーン

魔王「悪臭のせいで味方も敵ももういない」

魔王「……むなしい」



こうして、1年が経過した。

7 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/03(水) 19:07:04.95 ID:voHP6eV+0



少女「はぁ、はぁ……」

<どこだー!! 出てこい!!

少女「うぅ、足が痛いよぅ…」グスッ

<こっちに足跡が!
<よし、こっちだ!!

少女「このままじゃ捕まっちゃう…どこか、隠れる場所は……」

少女「……あっ!」

少女「あれは……お城?」

9 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:53:44.33 ID:A+BNMxSZ0
>城内


少女「ふぅ、ふぅ……」

少女(廃城…なのかな? 誰もいないけど…)

少女(ホコリっぽい…でも、私がいた場所よりは綺麗かも)

<ガタッ

少女「っ!」ビクッ

少女(あの扉からだ…住んでる人、いるんだ……。って私、勝手に入ってきちゃった! どうしよう!!)

少女(と、とりあえず…挨拶しないと)

少女「すみません、お邪魔しまー……」ギー

「ふぅっ…ふぅっ……」

少女「っ!?」

10 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:54:25.66 ID:A+BNMxSZ0
魔王「28、29…30! フゥ…次回からウェイトを上げてもいいかもしれんな」

魔王「この1年、誰とも顔を合わさず、外にも出ず、やることがなくて延々と筋トレしていたが…」

魔王「あの細身が、大分サマ変わりしたものだな。フフフ……」ムキッ

魔王「この逞しい上腕二頭筋!  鋼鉄のような大胸筋! 6パックに割れた腹筋! 大黒柱のような安定感を誇る大腿四頭筋!」

魔王「フハハハ!! 美しき筋肉に俺自身が魅了されるッ!!」ビリビリビリ


少女「き、筋肉でシャツを破った!?」

魔王「!!!!」ビクウウウゥゥッ

少女「あっ」

魔王「ひ、ひ、ひ、人おおぉぉ!?」ガバッ

11 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:55:18.83 ID:A+BNMxSZ0
魔王「だ、だだだだ誰だ貴様はぁ!!」ガタガタ

少女「す、すみません! 勝手に入り込んじゃって、その、私……」

魔王「えぇい近寄るな! 貴様も言葉の刃で俺を傷つけるつもりだろう!!」ガタガタ

少女「えと…言葉の刃? ……はっ」

少女(この無人の城、『1年誰とも会ってない』という言葉。まさか……)

少女「……可哀想に」ホロリ

魔王「え?」

少女「貴方は人の悪意に触れて、傷つけられて、閉じこもってしまったのですね…。でも大丈夫、私は貴方を傷つけは……」

魔王「うわあああぁぁ、寄るな! 近寄……あれ?」

少女「どうしました?」

魔王「お前…俺の匂いが平気なのか?」

少女(匂い…? 筋トレしてたから汗の匂いが気になるのかな……?)

少女「匂いませんよ、大丈夫です」

魔王「そうか!!」ダッ

少女「わっ!?」

12 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:56:07.36 ID:A+BNMxSZ0
ダダダダ…

魔王(理由はわからんが、この1年で体臭が消えたようだ! ということは……)

魔王(ようやく外に出れる!!)



追っ手A「あの女はどこに行った。…気づけば、魔王城の前まで来てしまった」

追っ手B「なぁ…まさか、この城の中に逃げ込んだんじゃ……」

追っ手C「まさか。人を寄せ付けない、毒霧の城って話だぜ」

追っ手D「だよなー」ハハハ

ダダダ……

追っ手's「ん?」


魔王「外に出れるぞおおぉぉ――っ!!」

追っ手's「」

魔王「ん?」


追っ手A「ぐせえええぇぇぇ!! 何だこの、毒と汗が混ざったような悪臭は!!」

追っ手B「うぇろうぇろうぇろ」

追っ手C「目にきた…前が見えない!!」

追っ手D「もう、駄目……だ」パタッ

<キョエエエエェェェェ、ぎゃーぎゃー


魔王「」

13 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:56:37.09 ID:A+BNMxSZ0
魔王「ううぅ」グスッ

少女「あのぅ…そんなに気落ちしないで下さい」

魔王「黙れ! 変に期待を持たせやがって!!」

少女「ひいぃ! すみません!!」

魔王「俺の体臭が平気だなんて、お前肥溜めで生まれ育ったんじゃねぇの!? 名前はうん子だろ、ミスうん子!」

少女「流石にひどいですううぅぅ!!」

魔王「ハァ…俺はこのままここで、筋トレをして一生を終えるのか……」

少女「別に筋トレに固執する必要は…。でも、匂いが原因でこんな人里離れた場所で暮らしていらっしゃるんですか?」

魔王「ん? …お前、ここがどこだかわかっているか?」

少女「いえ…世間に疎いもので」

魔王「流石、肥溜めで育った奴は教養がないな」

少女「違いますぅ! 肥溜め出身じゃないですうぅ! びえええぇん!!」

魔王「肥溜めじゃなけりゃ、生ゴミ処理場か、ヘドロ沼か、運動部の更衣室か!? とにかく帰れ帰れ!」

少女「……うぅ」グスッ

魔王「何だ」

少女「帰る場所が、ないんです……」グスグス

魔王「え?」

14 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:57:06.50 ID:A+BNMxSZ0
少女「私…今追われてて、ここに逃げてきたんです……」グスグス

魔王「あ? 何だお前、犯罪者か?」

少女「ち、違います! 犯罪者なんかじゃ……」

魔王「しかし人間社会から弾かれた存在であるのは確かだな?」

少女「……ぐすっ」

魔王「同情はせんぞ。俺だって体臭が原因で弾かれた身だ。弾かれたなら弾かれたなりの生き方というものがある」

少女(さっきは泣いてたのに……)

魔王「弾かれた理由を見つめ直し、今後どうして生きていくかをだな……」

少女「ふえええぇぇぇん」グスグス

魔王「うわ、凄く面倒くさい」

少女「ぐすっ、悪かったですね、ぐすぐす」

魔王「…あー、わかったわかった。なら、この城を好きに使え」

少女「……え?」

魔王「俺1人で、この大きな城を持て余していたのだ。俺の体臭が原因で、追っ手も入って来れないだろう」

少女「い、いいんですか……?」

魔王「勝手にしろ。ただし、体臭が伝染ったとか文句を言うなよ」

少女「あ……行っちゃった」

15 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:57:47.58 ID:A+BNMxSZ0
>翌日


魔王「今日は有酸素運動の日だ。余分な脂肪を落として更に筋肉を……」

モヤモヤモヤ……

魔王「ん? 何だ、この焦げ臭い匂いは。厨房か?」



少女「~♪」

魔王「な、何だ、この充満した煙は!」

少女「あ、おはようございます。台所の食材、勝手に使わせて頂きました」

魔王「それより、何だその鍋の物体Xは! お前は魔女か、毒薬でも生成しているのか!?」

少女「いえ、朝ごはんです」

魔王「食えるようには見えないのだが……」

少女「食べられますよ」パクパク

魔王「……味は?」

少女「とてもマズイです」

魔王「何故平然と食う」

少女「お腹を満たしてくれる食べ物への礼儀です。ふぅ、ご馳走様」

魔王「うむ、食材を無駄にしないのは良い心がけだ」

少女「ところで、このお城を掃除したいので、掃除用具の場所教えて頂けますか?」

魔王「わかった」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 18:58:24.15 ID:+W2KT+vtO
電車の中の臭いに耐えながら読んでるわ
ワキガは滅ぶべし

17 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:58:25.80 ID:A+BNMxSZ0
少女「ふぅ~」

少女(このお城は広くて、1日じゃ手が回らないなぁ。毎日掃除する必要がありそう)

少女(でも、自分のお仕事があるっていいなぁ♪ お城が綺麗になっていくのも、気持ちがいいし)

魔王「随分熱心だな」

少女「あ、魔王さん! 集中してたら、時間がたつのも忘れて……」

魔王「しかし詰めが甘いな。お前、あまり掃除したことないだろ」

少女「う゛」

魔王「まぁ俺は綺麗好きというわけでもない。無理のない程度にやれ」

少女「はい…あ、魔王さん、どこに行かれるんですか?」

魔王「食料を採りにな。中庭の畑で野菜を育てていて、あと食う為の家畜を育てている」

少女「ええぇ! 魔王ともあろう方が、そこまでやっているんですか!?」

魔王「配下が去ってしまった以上、そうも言っていられん。奴隷なりを働かせることも考えたが、体臭が原因で倒れるのは目に見えているしな」

少女「素直に感心します…。本当に、ちゃんと1人で生きていけるように適応したんですね」

魔王「現状を受け入れねば前に進めん。それにきちんと食わないと良質な筋肉は作れんからな!」

少女「強い方なんですね、魔王さんは……」

魔王(全く、この卑屈なネガティヴ女は……待てよ)

魔王「そうだ、お前も筋トレをやれ!」

少女「はい!?」


18 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:59:18.24 ID:A+BNMxSZ0
魔王「筋トレはいいことだらけだぞ。アドレナリンが脳に回れば、ネガティヴな気持ちも吹っ飛ぶ」

少女「た、確かに運動はいいと聞きますが……」

魔王「それに運動した後の飯は美味いし、夜もぐっすり眠れる!!」

少女「それは確かにいいですねぇ」

魔王「そして! 筋肉がつけば自信もつく! お前は貧相な体しているから心も貧相なのだ!」

少女「うぐ。でも、私は運動音痴だし……」

魔王「筋トレに運動神経は必要ないぞ。貧相ならば軽いウェイトから始めればいいのだからな」

少女「そうなんですか? けど、とても気の長い話です……」

魔王「大丈夫だ。基本通りにやっていけば、3ヶ月で効果が現れてくる」

少女「そんなにすぐに!?」

魔王「どうだ。筋肉…欲しくなってこないか?」

少女「……欲しいです!」

魔王「よし! ならば筋トレ用具の説明からしよう! 来い!!」ハハハ

少女「はい!!」


こうして2人の筋トレ生活が始まった。

19 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/04(木) 18:59:46.72 ID:A+BNMxSZ0
魔王「馬鹿者、いきなり重いウェイトでやるな! 10回の運動で限界がくる程度のウェイトでやれ!」

少女「は、はい!」


魔王「筋トレ後はストレッチをすることにより、後の疲れが軽減されるぞ!」

少女「はい…っ! イタタタ」


魔王「運動後は30分以内にプロテイン摂取だ。だがプロテインはあくまで栄養補助、飯でもしっかりタンパク質を摂れ!」

少女「はい……」グビグビ


魔王「筋肉は休んでいる間に作られる。筋トレ後は最低2日間は筋トレを休め。筋肉痛や疲労が残っている状態でトレーニングしたら、効率が悪いぞ!」

少女「はい!」


魔王「そして睡眠は……」

少女「8時間程度ですね!」

魔王「その通りだ! 今日はもう寝ろ!」

少女「はい! お休みなさい!!」

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 19:18:02.31 ID:2BVfjksfO
筋トレで体臭は改善されなかった模様

27 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:40:05.40 ID:oPOaqAAe0
>そんなこんなで3ヶ月後


少女「これが…私……?」

魔王「うむ。まだまだムキムキとは言えんが、まぁ貧弱さは抜けたな」

少女「凄い、本当に効果が現れるなんて! 私じゃないみたい!!」

魔王「どうだ、筋肉という鎧を纏った気分は?」

少女「最高です! 何か、自分は最強なんじゃないかって思えてくるくらいに!!」

魔王「はっはっは、馬鹿を言うな。お前以上の筋肉を纏った者は、この世に腐る程いるのだぞ」

少女「はい師匠! けど…自分がトレーニングをしてみると……」チラ

魔王「?」

少女「師匠の筋肉がいかに素晴らしいか、とてもよくわかります」ポッ

魔王「そうだろう、そうだろう! これぞ俺の筋トレの成果だっ!!」ムキッ

少女(無駄のない筋肉。真剣に取り組んだ証だわ……素敵)ドキドキ

28 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:40:35.35 ID:oPOaqAAe0
魔王「夕飯の親子丼だ! 鶏肉と卵で、タンパク質を摂取だ!」

少女「卵がとろとろで美味しいです~。師匠は何でもできますね」

魔王「本を読みながら勉強したからな。一人暮らしの賜物というものだ!」

少女「ご立派ですねぇ。私なんか煮物くらいしか作れなくて…」

魔王「そうだなぁ…。筋トレのコツも覚えたようだし、今度は飯作りでも教えてやろう」

少女「本当ですか!」

魔王「お前の作る物体Xは筋肉に良くない! この機会に、筋トレに活かせる栄養学も教えてやる!」

少女「お願いします、師匠!」

29 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:41:07.89 ID:oPOaqAAe0
>夜


少女「では師匠、お休みなさい」

魔王「あぁ、明日も頑張るぞ」


魔王(ここのところ、毎日が楽しい)

魔王(封印されていた間の500年は野望に燃えていたが…この1年間は、空虚を筋トレで埋めるだけの1年間だった)

魔王(しかし、あいつが来て変わった。あいつは俺を臭がらず、俺の教えを素直に吸収してくれる)

魔王(俺は戦いの中でしか生きられぬ者だと思っていたが――)

魔王(こういう日々も、悪くないものだな)

30 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:41:56.58 ID:oPOaqAAe0
>一方、某国の城


魔術師「陛下、あの娘の所在が掴めました」

皇帝「ほう。あの娘は今、どこに?」

魔術師「はい。魔王城…今は"毒霧の城"と呼ばれている、あの場所です」

皇帝「それはまた厄介な。あそこは侵入すら許さぬ、異臭がする猛毒が流れているという場所…大人数で攻めても無意味」

魔術師「しかも、その毒霧の正体は掴めておりません。鉄仮面等の装備も突破し、体を蝕むとか…」

皇帝「流石は魔王。自身は毒霧の中に身を置き、襲撃に対して完璧な備え。一筋縄ではいかない男よ」

魔術師「その城にあの娘が入れたということは…やはり、血筋でしょうか」

皇帝「あぁ、あの娘はやはり危険だ。もしあの娘が覚醒し、魔王と手を組んだら……」

魔術師「絶望的な話ですね」

皇帝「暗い顔をするな。既に対策は練ってある」

魔術師「対策…ですか?」

皇帝「先日、城より逃げ帰った勇者に、特別な改造を施している所だ――」

魔術師「特別な改造……?」

31 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:42:28.85 ID:oPOaqAAe0
>研究所


勇者「ぐああああぁぁぁ……」


魔術師「こ、これは……!!」

皇帝「クク…ガラス越しではわからないだろう。この勇者を閉じ込めている密閉した部屋、実は壁中に人糞を塗りたくっている」

魔術師「……」

皇帝「室内の気温と湿度を調整し、空気は梅雨時期に合わせた。悪臭の上、生ぬるく湿った空気というのはさぞ不快であろう……」

皇帝「部屋に出入りし給仕しているのは、先日捕えたオークだ。体を洗っていないから、汗と精液の匂いが染み付いているぞ」

皇帝「勇者に出す食事には微量の毒を混ぜている…。まぁ死に至る程ではない、せいぜい腹を下す程度だ」

皇帝「と言っても、同じ室内に設置してある汲み取り式のトイレは、さぞかし匂うだろうなぁ……!!」


勇者「ぐおおおぉぉぉぉぉぉ」


皇帝「どうだ、完璧なる勇者改造計画だ! ハハハハ、ハーッハッハッハッハ!!」

魔術師(皇帝陛下…恐ろしいお方だ)ブルブル

32 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:43:25.23 ID:oPOaqAAe0
>魔王城


少女「へぇ、包丁での皮むきってそうやるんですねぇ!! 器用ですね師匠!」

魔王「いや、お前この程度もできなかったのか……。ってことは物体Xには、皮付きの野菜を入れてたわけか?」

少女「ここに来る前は、皮ばかり食べてましたから」

魔王「だから貧相な体をしていたのか。まぁいい、練習してみろ」

少女「はい!」

魔王(詮索するのは好きでないから、こいつの素性は知らんが…それにしても、謎が多すぎる)

魔王(物の知らなさや、生活習慣、そして悪臭への耐性を見る感じ、下の階級の者だと想像はつくが)

魔王(しかし貧困層なら、馬車馬のように働いていたはず。にも関わらず、こいつは料理も掃除も不慣れな様子が見て取れる)

魔王(何一つできることがない、というのは生きていくのも一苦労だろうが……)

少女「師匠! 皮むきしました!」

魔王「不器用だな、皮が分厚いじゃないか」

少女「ごめんなさい…責任持って、その皮を食べますから」

魔王「いや、いい。豚の餌にするから無駄にはならん」

魔王(何だかんだで素直な奴だ。社会的には駄目な奴かもしれんが、側に置くにはこういう奴がいい)

魔王「少しずつ上達していけばいい」ポンッ

少女「!!」

魔王「俺も最初は下手くそだったからな。気持ちさえあれば、何とかなるものだ」

少女「…へへっ、師匠~」ニマー

魔王「声がたるんでいるぞ。そんな奴は、腹筋100回だ」

少女「申し訳ありません! 勘弁して下さい!」ピシッ

魔王「……フッ」

少女「ど、どうしました?」

魔王「いや……別に」ククク

少女「…? 変な師匠」

33 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:44:02.37 ID:oPOaqAAe0
>夜


魔王「こうして俺は竜の一族の長を倒し、そいつを四天王に迎え、魔王軍を大きくしていった」

少女「へーぇ」キラキラ

魔王「続きはまた明日だ。これでもまだ序盤だぞ」

少女「師匠って本当に凄い方だったんですね!」

魔王「過去の栄光だがな。知っての通り、今では現役を退いて筋トレするだけの日々を送っている」

少女「もったいないですよね~」

魔王「おかしなことを言うな。お前も人間側、魔王の敵だろう?」

少女「うーん…前にもお話した通り、世間に疎いもので……」

魔王「そうか。今はどのような時代なのか、話を聞く前に配下に去られたので、俺も全くわからんな」

少女「その配下の方々、元気にやっていらっしゃるんですかねぇ」

魔王「四天王も側近も野望を持った者たちだ。新たな魔王として君臨していても何ら不思議ではない」

少女「何か、寂しいですね」

魔王「いや、そんな奴らだからこそ俺と気が合ったのだ。俺の下を去って栄光を掴むのなら、喜ばしいことだ」

少女「師匠…」

34 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:45:47.62 ID:oPOaqAAe0
魔王「それより今はお前だ。『師匠の武勇伝聞かせて下さい』と言って、書物を渡すと『字があまり読めないんです』ときたものだ。こんなに手のかかる奴は初めてだ」

少女「ご、ごめんなさい。…でも」

魔王「何だ?」

少女「師匠の口から聞かせて頂く方が…師匠と過ごす時間が増えて、いいかなって」

魔王「……馬鹿かお前は」

少女「あ、あはは、馬鹿ですね~」

魔王「変な依存をしなくとも、互いに、他の者と会えぬ身だ。余裕を持て」

少女「そうですね~。…あ、そうだ!」

魔王「何だ?」

少女「師匠、字を教えて下さい! 自分で書物を読めるようにします!」

魔王「…話を聞かせてやるより、字を教える方が遥かに時間も労力もかかるな?」

少女「あ」

魔王「まぁ、良いだろう。お前ほどに不出来だと教え甲斐がある」

少女「むうぅ、反論できない~…」

魔王「お前が俺に反論しようなどと100年早い」

少女「100年経ったら死んじゃいますよ~」

魔王「そうか、お前にはわからん比喩だったか。『一生無理』ということだ」

少女「うわぁ~ん!」

魔王「クク、からかい甲斐のある奴だな、ククク」

少女「師匠の意地悪~っ!」

35 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/05(金) 18:46:17.64 ID:oPOaqAAe0
今日はここまで。
前回書き忘れていましたが、魔王はプロテインを原材料から作っています。

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 19:01:46.01 ID:azWqIbczo
乙、流石魔王様
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 19:29:56.21 ID:jcqugDvi0
乙です。
人間相手の比喩まで知ってるとはさすが魔王だな。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 20:10:24.76 ID:CUUAV39PO
魔王△

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/05(金) 22:15:56.71 ID:d/cZN+7OO
>>35
臭い以外は本当に優秀だな、臭い以外は

43 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:54:03.28 ID:cz/8kbpt0



魔王「さて、今日も筋トレの日だな」

魔王(不肖の弟子は、俺の教えを吸収し成長している。それが楽しくて仕方ない)

魔王(こういう毎日を過ごしていると、嘘のように思えてくるな。以前は戦闘狂だった自分が……)

魔王(戦闘狂が戦闘を奪われ、一時期は自暴自棄になった。だが心というのは案外強いもので、それならそれなりの生き方に順応する)

魔王「全く……人生というものはわからないもので……」


キュピーン


魔王「……っ!! これは、魔力反応!?」

少女「師匠、おはようござ……」

魔王「伏せろ!!」

少女「え?」


ドカアアァァン

44 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:54:44.67 ID:cz/8kbpt0
少女「ゲホ、ゲホッ」

魔王「大丈夫か?」

少女「は、はい…師匠、この爆発は……」

魔王「襲撃者、だな。城を破壊するなど……」


<ウォゲエエエェェェ


魔王「ん?」


魔法使いA「だから言ったじゃねぇか! 城に穴を空けたら、毒ガスが漏れ……オゲエェェッ」

魔法使いB「射程範囲ギリギリまで距離取って、追い風なのに……ウオエエェェッ」

魔法使いC「撤退だ撤退ィ!!」


魔王「」

少女(あわわ…師匠の心にダメージが……)

魔王「フッ、ゴミ虫共が」

少女「師匠!?」

魔王「今更、ゴミ虫ごときの暴言に傷つく俺ではない! 自ら肥溜めに突っ込んで文句を垂れるな、ゴミ虫共が!!」

少女(師匠、強くなったのね! でも自分を肥溜めなんて、ひどい自虐です!)


勇者「貴様が魔王か……」

魔王「ん?」

45 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:55:14.71 ID:cz/8kbpt0
魔王「何だ、貴様は」

勇者「俺は勇者……お前を討つ者だ」

魔王「お前……まさか俺の体臭が平気なのか?」

勇者「いや、臭いは臭い。だが、毒物や臭いものには、ある程度の耐性がついた」

魔王「ほう、流石勇者を名乗るだけのことはある。お前のような者が現れるとは、人生とはわからんものだな」

少女「師匠……」

魔王「お前は下がっていろ」

少女「は、はい」


勇者「お前の実力は聞いているぞ、魔王。しかし俺も勇者として選ばれた身、お前に勝つ!」

<頑張れ勇者様 ウオオオォォォ

魔王「ほう、大層な人気ぶりだな」

勇者「勇者だからな」

<(ここで魔王を倒してくれないと…増員の為、俺らまであの悪臭実験室に放り込まれる!!)

魔王「そうか。ならば来い、勇――」


――ドゴッ


魔王「――っ!?」

少女「師匠っ!?」

46 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:55:59.66 ID:cz/8kbpt0
勇者「どうしたァ、動きが鈍いぞ魔王ォ!!」シュッシュッ

魔王「がハァッ……」ドサッ


魔王(目で追えているのに、体が追いつかない……どういうことだ)

魔王「はっ!」

魔王(俺がこの1年で身につけた筋肉は戦闘ではなく、観賞用に特化している…つまり)

魔王(筋肉のせいで、俺の動きが鈍ったというのか!?)


勇者「どうしたァ、その筋肉は見掛け倒しかァ!」

魔王(全くもってその通りだ!!)


ズバッ


魔王「ぐっ……」

47 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:56:35.85 ID:cz/8kbpt0
魔王「こうなれば……魔界への扉よ、今開け!」

勇者「!! まさか、魔法か!」

魔王「その通り! 魔界への扉を開き、邪神の力を借り、魔法を発動させる! 塵となるがいい、勇者よ!!」

勇者「くっ……」ガバッ

魔王「防御姿勢など無駄だァ! 喰らえ、"灼熱の業火"!!」


シーン……


魔王「……」

勇者「……」

魔王「おい、邪神……」


邪神「扉開けないで! 匂いがこっちに来る!」


魔王「待て、邪神なら匂いも何とかしてみせろ! おい!!」

勇者「オラァ!」ズバッ

魔王「カハァ!!」

48 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:57:03.07 ID:cz/8kbpt0
ゴンッ

勇者「いでっ!!」

魔王「……っ!?」


少女「し、師匠を、傷つけないでっ!」

魔王「馬鹿お前…下がっていろと言ったろう!」

少女「見ていられません…! 師匠が、師匠が傷つけられるなんて!」

魔王「お前に何ができる! お前のような、か弱い小娘に!!」

<(その女が投げて勇者の頭にクリーンヒットしたの、ダンベルなんですが)


勇者「く…。小娘、やはり魔王と手を組んでいたのか」フラフラ

少女「きゃっ、起きた!」

魔王「…? 『やはり』とは……」

勇者「しかしまだ、"覚醒"はしていない様子だなァ!!」

少女「えっ……?」

49 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:57:32.23 ID:cz/8kbpt0
魔王「覚醒…? 何のことだ?」

勇者「そうか、お前たちは知らないか……。だが教えてやる義理もない、俺は任務を全うするのみ!!」バッ

少女「ひっ」

魔王「こいつに手を出すな!」バッ

勇者「ならばお前から死ねえぇ――っ!!」バキィ

魔王「カハッ!!」

少女「し、師匠!!」

少女(このままじゃ、師匠が……!!)


?『困っているようですね、私の愛しき血族よ』


少女「……え?」

50 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 18:58:13.51 ID:cz/8kbpt0
少女「だ、誰……? 声はするけど姿が……」キョロキョロ

?『私は、既に朽ちた身。しかし魂だけは、子孫である貴方の側におります』

少女「私のご先祖様……?」

?『はい――名は、大賢者と申します』

少女「大賢者……!? それって確か、師匠を封印したという……!!」

大賢者『はい、かつてあの魔王を封じた、大賢者です』

少女「私のご先祖様は大賢者……? でも、そしたらどうして私は……」

大賢者『説明している時間はありません』

少女「そ、そうだ、師匠!」


魔王「ぐっ……」

勇者「はん、頑丈だな。防御力だけは優秀な筋肉だな」


少女「きゃっ、師匠が殺されちゃう! またダンベルを……」ヒョイッ

大賢者『それはよしなさい』

51 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/06(土) 19:03:59.47 ID:cz/8kbpt0
大賢者『貴方には私の血が流れています。ですから、覚醒すれば魔王を助けることができます』

少女「覚醒…?」

大賢者『心を鎮めるのです。そうしたら、私が貴方の力を引き出しましょう』

少女「心を鎮めるって、どうやって……」

大賢者『何も余計なことを考えず、周囲の情報を遮断し……』

少女「そんな簡単に言われても……」

大賢者『貴方が最も心を静かにする時はいつですか?』

少女「心を静かに…あ、筋トレの3セット目です!」

大賢者『じゃあそれで』

少女「待って下さい、今急いでダンベルを上げ下げするので!」

大賢者『私の子孫に脳筋がいるとは予想外です』

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/06(土) 19:28:48.31 ID:/WMcAnmao

筋肉欲しくなってきた

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/06(土) 19:41:45.14 ID:Gc30pLlp0
乙です。
使う所が全く違うし付けすぎると重いからな、戦闘用の筋肉は闘争の中でのみ作られるってどこかの地上最強の生物が実践してたな。

57 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:29:20.31 ID:oVY1bby+0
大賢者『……私はかつて魔王を封印する際、保険として魔王に呪いをかけました。貴方の力で、呪いから魔王を解放して下さい……』

少女「……あの、ご先祖様」

大賢者『何でしょう』

少女「どうして師匠と戦った貴方が、師匠を助けてくれるんですか?」

大賢者『そうですね……500年経ち、あの時とは状況が違ってきましたからね』

少女「?」

大賢者『今は心を鎮めなさい。そして魔王に纏っている呪いの気を、取り払うのです』

少女「は、はい!」


カアァ――ッ


魔王「!!」

勇者「なっ!?」

少女「これは――」

58 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:29:49.28 ID:oVY1bby+0
勇者「毒霧が……消えた!?」

少女(そうか…ご先祖様の呪いって、師匠の体臭のことだったんだ!)

魔王「……」

勇者「……」


勇者「ハーッハッハッハ! これで息を思い切り吸って戦えるぞおぉ!!」

<毒霧が晴れたぞー!
<我々も続けー!


少女「ってええぇぇ、呪い解除したら逆効果じゃないのよおおぉぉ!!」


「魔王様……大変お待たせ致しました」


少女「……え?」

59 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:30:19.26 ID:oVY1bby+0
ブオッ

北のドラゴン「人間風情が、舐めた真似を」


バサッ

西の悪魔「ウケケ。頭数揃えてきたんだから、ちったぁ手応えあるんだろうなァ」


ヴァンッ

東の妖姫「数よりも質…。勇者を討った方の優勝、ということでよろしいかしら?」


ドンッ

南の地蔵「これこれ、張り合うでない。それよりも……」


スタッ

側近「魔王様を痛めつけたあの男に、いかに苦痛を与えるか……それが1番重要ですね」


魔王「側近、四天王!」

60 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:31:04.76 ID:oVY1bby+0
側近「この1年あまり、お側にいられず…申し訳ありません、魔王様」

魔王「それより、どうしてここに……」

側近「はい。我々、魔王様の体臭が届かぬ位置にて、ずっと魔王様を見守り続けておりました」

魔王「そ、そうだったのか……!!」


勇者「魔王の部下か……。蹴散らせえぇ!!」

魔法使い's「うおおおおぉぉぉ!!」


北のドラゴン「蹴散らされるのは貴様らだ、矮小なる人間どもが!!」ブォンッ

魔法使い's「ぎゃああぁぁ」

西の悪魔「所詮テメェら、モブだよなァ!!」ザシュッ

東の妖姫「この程度の魔力で私達を相手しようと? 笑えますわ」ゴオォ

南の地蔵「現代人は肉体が劣化したのぅ」ドスーン

<うわあああぁぁぁ
<ぐおおぉぉぉ

勇者「つ、強い……!!」

側近「おっと、他人事ではありませんよ」パキポキ

勇者「!!」

61 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:32:07.32 ID:oVY1bby+0
側近「よくも魔王様をおおぉぉ!! その身をもって償うが良い!!」

勇者「くっ、せめて魔王だけでも……」ダッ

魔王「!」

側近「しまった! おのれ、足払いっ!」バッ

勇者「おっと!」ピョン

側近「くっ、かわされた!」

勇者「喰らえ魔王――」

ガシッ

勇者「……え?」

側近「おぉ! 勇者をキャッチした!」

魔王「攻撃の軌道が読みやすい、上空から仕掛けてきたのが失敗だったな……おらあああぁぁ!!」ブォン

勇者「うわああぁ!?」

側近「勇者を持ち上げた!?」

少女「あれはショルダープレスの構え!」

魔王「そして必殺のォ……」ゴオオォォ

勇者「!!!」

魔王「牛殺し――ッ!!」ガンッ

勇者「カハッ……」

62 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:32:36.83 ID:oVY1bby+0
補足

ショルダープレスとは:ダンベルなど重いものを持ち上げて、肩を鍛えるトレーニング

牛殺しとは:相手を持ち上げて、片膝に当てるように落とす技


63 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:33:16.25 ID:oVY1bby+0
勇者「」ピクピク

北のドラゴン「やりましたな、魔王様」

西の悪魔「ちぇー。ピンチだったくせに、結局いいとこ持っていくんだから」

東の妖姫「良いではありませんの。それでこそ、私どもの王ですわ」

南の地蔵「無計画な筋肉の付け方をしたのは、少々頂けませんがな」

魔王「もう戦いに戻ることはないと思っていたからな、大目に見ろ。というか、お前……」

少女「は、はい」

魔王「俺の体臭を消したのはお前か。一体、どうやったんだ?」

少女「あのぅ……わ、私もさっき知ったんですけど……」

魔王「?」

少女「私、その…師匠を封印した、大賢者の子孫みたいで」

魔王「大賢者の……お前が?」

64 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:34:17.48 ID:oVY1bby+0
少女「さっき、ご先祖様の声が聞こえたんです! それで私の力を解放し、師匠にかけた体臭の呪いを解いて……」

西の悪魔「あの体臭は呪いだったのかよ。だよなァ、じゃねぇとあんな、ひっでぇ匂い……」

東の妖姫「シッ!!」

北のドラゴン「何でそんな呪いをかけたんだよ……」

南の地蔵「魔王様を孤立させる為じゃろ。事実、呪いは効果的じゃったしのう」

魔王「なるほど、子孫なら俺にかかっていた呪いを解いたのも合点がいく。……しかし、疑問が沸くな」

少女「はい……私もです」

魔王(魔王を封じた大賢者となれば、英雄として崇められていたはず。その大賢者の子孫が、あんな貧相な身なりで、しかも追われていたなど……)

側近「魔王様。大賢者の子孫の扱いは、魔王様が想像しているものと違うのですよ」

魔王「どういうことだ」

側近「権力者達は恐れたのですよ…大賢者の持つ力、そしてカリスマ性を」

魔王「恐れた、だと……?」

側近「そう。400年前ですかな――時の皇帝が、大賢者の子孫である一族を、まとめて牢獄に投じたのは」

魔王「!?」

少女「……」

65 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:34:57.56 ID:oVY1bby+0
少女「私は牢獄で生まれ、牢獄で育ちました……」

魔王「何だと……」

少女「私の両親も、またその両親も…同じく、牢獄で生まれ育ちました。その理由は、ご先祖様が罪を犯したからだと聞かされてきましたが……」

側近「その罪というのも、勿論濡れ衣ですが……」

魔王「馬鹿な! それに牢獄の中で子孫を繁栄させるなど……」

側近「何が大賢者の子孫の力を解放するきっかけになるかわかりませんからね。恐らく投獄するだけで精一杯で、なるべく刺激を与えぬようにしていたのかと……」

魔王「ふん。大それたことをする割に小心者だな」

66 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:35:43.47 ID:oVY1bby+0
魔王「お前、牢獄からどうやって脱したのだ?」

少女「同じく投獄されていた方々が、抜け穴を掘っていたんです。そして囚人の中で1番歳の若い私が逃げろ、と……」

魔王「ふむ…それで追われて、俺の城にやってきたというわけだな?」

北のドラゴン「呪いをかけられた魔王様の体臭が平気だったのは、血筋のお陰か」

南の地蔵「先祖のかけた呪いじゃからのぅ」

少女「うぅーん……」

魔王「何だ?」

少女「わからないですねー。牢獄の環境も悪かったので、鼻がすっかり悪臭に慣れていたのかも!」

魔王「お前まで悪臭とか言うな」

少女「わわっ、すみません!」

魔王「まぁ、結果としては良かったのだろう」

少女「え?」

67 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:36:12.85 ID:oVY1bby+0
魔王「もしかしたら俺とお前が会ったのは、大賢者の導きかもしれんな。奴は俺に、子孫を救って欲しかったのかもしれん」

少女「そうなのでしょうか……。だとしたら魔王様には多大な迷惑を……!!」

魔王「俺がお前を迷惑だと言ったか?」

少女「え……っ」

魔王「そりゃ確かにお前は教養はないし、品もないし、とにかく手のかかる奴だった」

少女「うぅ」

魔王「だからこそ、退屈せずに済んだ。俺はお前に感謝している」

少女「感謝……?」

魔王「そう。嫌な顔をせず俺の側にいてくれたこと。俺に充実した時間をくれたこと。そして――野蛮人だった俺に、穏やかな気持ちを教えてくれたこと」

少女「師匠……」

側近「ちょっ」

68 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:36:55.72 ID:oVY1bby+0
側近「ま、ま、魔王様、穏やかって……」

魔王「側近、四天王。約1年もの間、気苦労をかけたな」

側近「それは、また魔王様と暴れる日を望んで……」

魔王「だが俺はもう、昔のような野蛮人ではない。お前たちと離れている時間は、俺を変えた」

側近「なっ!?」

北のドラゴン(そりゃまぁ、悪臭から逃げた部下なんか愛想つかすよなー……)

西の悪魔(戦闘狂だったのが戦えなくなってたんだから、変わりもするよな)

東の妖姫(牙の抜けた魔王様……500年前じゃ考えられませんわ)

南の地蔵(魔王様は本格的に引退かのう)

側近(そんな、魔王様……)ブルブル

魔王「俺の脳みそは考える力を身につけた。そして、これからの指針は――」

側近(聞きたくない……!!)ギュッ

魔王「――世界征服だ」

側近「……っ!!?」

69 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:38:10.16 ID:oVY1bby+0
魔王「大賢者は、この俺を封じた有能なる者。その者に敬意も払えぬ人間の権力者などに、世界を牛耳る権利などない」

魔王「それに不肖の弟子が迫害される世の中というのも、俺は気に食わん」

少女「師匠……」

魔王「俺は人間の権力者どもを倒し、この世界を手に入れる」

側近(魔王様……!!)

魔王「久々の大暴れだ。俺に賛同する者は、ついてこい」

南の地蔵「……ふっ。魔王様はやはり魔王様じゃ」

北のドラゴン「そんなの、答えは決まっています」

東の妖姫「そういう貴方だからこそ、私達はお慕いしておりますのよ」

西の悪魔「ついていくに決まってんだろォ、魔王サマぁ!!」

魔王「期待しているぞ、四天王」

側近「私もです! 側にいさせて下さい、魔王様!」

魔王「頼もしいな、側近」

少女「し、師匠……わ、私も……」

魔王「ん?」

70 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:38:53.70 ID:oVY1bby+0
少女「さっき、大賢者の力に目覚めてから……体に力がみなぎってくるんです」

魔王(…確かに、今まで感じなかった魔力の波動を感じる)

少女「師匠、魔法の使い方を教えて下さい! そして私、師匠と共に戦いたいです!」

魔王「お前が……俺と?」

少女「はい。きっと理不尽な目に合っているのは私だけじゃない…私は、そういう人たちを助けたいんです」

魔王「……やれやれ。教えることが、また増えたな」

少女「え……じゃあ、師匠!!」

魔王「いいだろう、魔法の使い方を教えてやる。俺はお前の、師匠だからな」

少女「やったぁ! 私、頑張ります!!」


東の妖姫「大賢者の子孫ですもの。あの子きっと、強くなるでしょうねぇ」

西の悪魔「ケケッ、俺らなんて抜かしちまうかもしれないなァ!」

側近「ま、負けるものか……!」ゴゴゴ

北のドラゴン「何の対抗心だ、何の」

南の地蔵「ほっほっほ。若いのは羨ましいのう」

71 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:40:13.69 ID:oVY1bby+0
魔王「ではまず手始めに、勇者のいた国から制圧するか。さぁ、行くぞ!」

東の妖姫「いっ、今からですか!?」

魔王「当たり前だ。俺自ら、奴らに勇者の敗北を報せてやろう!!」

西の悪魔「作戦とか無いんスか」

魔王「ない!! 力押しで何とかしろ!!」

南の地蔵「おやおや、これまた強引な。魔王様、ご自分が弱体化していることをお忘れですか?」

魔王「勇者以下の者と戦うなら、レベルダウンした位の方が楽しめる。勘は戦いながら取り戻せば良い。背中に乗せろドラゴン!!」

北のドラゴン「はいはい。全く、どこが穏やかになったんだか」

側近(いや…ただ大暴れするだけだった魔王様が、暴れる理由と目的を手に入れた。理由と目的があれば、暴れる意思は更に強くなる!)


魔王「おい、お前も行くぞ」

少女「い、今の私が行って、足を引っ張りませんか!?」

魔王「心配か? なら思う存分に足を引っ張れ。逆境を覆すのも面白い」グイッ

少女「きゃっ…し、師匠……」ドキドキ

72 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:40:45.61 ID:oVY1bby+0
側近「聞こえますか、魔王様。各地に散り散りになっていた魔物達が、魔王様の臭気が消えたことを感知し、集まってきています」

魔王「懐かしい感覚だ。今日が俺の、魔王としての復活記念日だな」

少女「魔王としての……」

魔王「どうした、不安そうな顔をして」

少女「いえ。師匠が魔王として活躍するのは喜ばしいことですが…何だか、穏やかな日々がなくなってしまうのかと思って……」

魔王「心配するな。しばらくはドタバタするかもしれないが、すぐに手に入れてやる」

少女「手に入れる……何をですか?」

魔王「世界を征服した先に手に入れる――本当の意味で、お前が穏やかに過ごせる時間だ」

少女「師匠……はいっ!!」


魔王「行くぞ、者共! 欲しいものは全て、己の手で勝ち取るのだ!!」

ワアアァァ……


Fin

73 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/08/07(日) 17:41:25.59 ID:oVY1bby+0
ご読了ありがとうございました。
決して打ち切りではなく、魔王の体臭が消えたので、ここでキリがいいかなと思いました。

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/07(日) 18:13:16.25 ID:jZSrQuaMO

笑いながら読んでたわ

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/07(日) 18:21:52.43 ID:0VT9FFjXO
乙です。
この後は蛇足か……。

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/07(日) 18:24:47.99 ID:9CX2Ha6Wo
乙乙、面白かった


posted by ぽんざれす at 18:41| Comment(4) | ss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月03日

新作スレ立てのお知らせ

SS速報VIPにて魔王「俺の体臭がやばい」投下開始致しました
完結は1週間以内、100レス未満の予定。

あらすじ/
500年の封印より解かれた魔王の体臭はひどい悪臭になっており、彼の生活は一変する。

明らかに出オチなタイトルですが、この作者なのでギャグに突き抜けられませんね
ヒロインもいますがさほどスイーツではなく、読みやすいんでないかなと。
中途半端って言うな。
posted by ぽんざれす at 19:16| Comment(0) | スレ立てお知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月07日

【スピンオフ】魔術師「勇者一行をクビになりました」【七夕】

魔術師「勇者一行をクビになりました」の七夕スピンオフです。





勇者「ここにぶら下げて、と」

悪魔「いよおおぉぉッ!! 勇者クン、チィース!!」

勇者「!!!」ビクウウウゥゥゥッ

悪魔「イャハハ!! 七夕なんで、悪魔王様がハッピーをお届けに来たぜえェッ!!」

勇者「クリスマスじゃないんだぞ」

悪魔「細けェことはいいんだよ! ところで勇者、短冊に何書いたんだ?」

勇者「あっ!!」


『彼女ができますように 勇者』


悪魔「………」

勇者「………」

悪魔「ごめんなさい」

勇者「謝るなよ!!」

悪魔「イャハハハハ、ぶゎっ、ぶゎっ、うひゃひゃひゃ、ぐぁーっはっはっはっは!!」ジタバタ

勇者「笑い者にするのもヤメロ!!」

悪魔「ヒィ、ヒィ……つか勇者。テメェんとこ、ハーレムパーティーだったろ? 他の子達はどうしたよ?」

勇者「……各自、彼氏を作りました」

悪魔「うわー……」

勇者「わかっている、あの頃の俺は調子こいていた…! 女の子に囲まれて、自分はモテていると錯覚してたんだ!!」

悪魔「租チンのくせにね」

勇者「それを言うなああぁぁ!!」

悪魔「ま、頑張って」

勇者「えっ!? ハッピーを届けに来てくれたんじゃないの!?」

悪魔「だってテメー、俺様ンとこの国民じゃねぇし」

勇者「恥かき損かよチキショウ!! 頼むよ、助けてくれよ悪魔王!!」

悪魔「んー…じゃあアソコを引っ張って伸ばして、サイズアップする?」

勇者「するか!! 想像しただけでタマがヒュンとなったわ!!」

悪魔「下ネタ言ってんじゃねえェッ!!」バキィッ

勇者(えええぇぇーっ!!)ドサッ

悪魔「ったくよぉ…勇者ともあろうモンが、七夕の日にモテたいだのタマヒュンだの」

勇者「いでで……な、何か問題でも?」

悪魔「知ってっか! 七夕は1年に1回、彦星と織姫ちゃんが会える日なンだよ! 可哀想なカップルの記念日なンだよ!!」

勇者「お、おう…!」

悪魔「勇者、テメェは落ちぶれても勇者。人類の希望だろ?」

勇者「希望…そうだ、俺は希望を背負った勇者なんだ!」

悪魔「ならば…救ってみたいと思わねェか、悲劇のカップルをよォ」

勇者「救いたい! めっちゃ救いたい!」

悪魔「その言葉が聞きたかったアァ!! よし、俺様と一緒に来い!!」

勇者「この俺が、救ってみせよう!!」







>魔王城・魔術師の部屋の前


悪魔「魔術師ちゃ~ん、出ておいでェ~」

魔術師「もー知りませんっ! 悪魔さんイヤッ!!」

悪魔「ゴメンてば~! 今の魔術師ちゃんを最ッ高に愛してるから、ね、ね!?」


勇者「……?」

暗黒騎士「あー…まだやってたのか」

勇者「なぁ、一体何をやっているんだ?」

暗黒騎士「この短冊を見ろ」

勇者「?」


『魔術師ちゃんのバストが成長しますように 悪魔』


勇者「………」


悪魔「勇者、救って」

勇者「いや無理」



おわり



あとがき

魔術師ちゃんが怒ったら、流石の悪魔王様でもどうもできないってことで。
七夕スピンオフでやる意味? そこをツッコんではいけない。
posted by ぽんざれす at 11:43| Comment(2) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月06日

魔法使い「男は嫌い…」

1 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:01:59.34 ID:sm7FpiKv0
百合有り。苦手な方はお気を付け下さい。

2 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:02:24.96 ID:sm7FpiKv0
私は昔から、男が嫌いだ。


勇者「君たちが、俺と冒険を共にしてくれる子達か。宜しくな」ニコ


今日から旅と共にする勇者も、その例外ではない。


魔法使い(騙されないわよ、その笑顔の下に隠された下心!)ジト


そして男嫌いの一方で――


武闘家「いい人そうで良かったね、魔法使いちゃん♪」

魔法使い「……えぇ、そうね」


私は一生、叶わない恋をしている。

3 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:02:51.95 ID:sm7FpiKv0
人間と魔王との戦が始まって約10年。
争いで沢山の人が死に、人間の国々は疲弊していた。

そんな中現れたのが、この剣の申し子たる勇者なのだが――


勇者「皆可愛くてびっくりしたよ! これなら毎日頑張れそうだ!」

僧侶「ふふ、ありがとうございます」

盗賊「頼りにしてるです、勇者君」

魔法使い(騙されるんじゃないわよ、こんな二面性タラシに!!)

武闘家「魔王を倒した人って、姫様と結婚できるんだっけ?」

魔法使い「そうだけど……」


勇者「ねぇ、彼氏いる?」ニコニコ

僧侶「いえ、お付き合いしている男性はいません」

盗賊「い、いないのです~」

魔法使い(うわー、早速品定めしてる)


僧侶「では、早速ですが魔王城までの経路について話し合いませんか? 私、これについては少し詳しいので、色々とプランを考えてきたのですが…」

勇者「僧侶にお任せするよ、それより皆で遊びに行かない?」

魔法使い「却下!」


4 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:03:20.10 ID:sm7FpiKv0




>宿・女部屋


僧侶「では改めて皆さん、今日から宜しくお願い致します」

盗賊「仲良くやるです!」

武闘家「こちらこそ! ね、魔法使いちゃん」

魔法使い「そうね」

僧侶「武闘家さんと魔法使いさんは、お友達同士でしたっけ?」

武闘家「うん、幼馴染み! 魔法使いちゃんは、しっかり者のお嬢様で、頼りになるんだ~」

盗賊「わわっ、どうしよ! ボク育ち悪いから、色々と引かれちゃうかもしれんです……」

魔法使い「気にしないわ、手のかかる子は武闘家で慣れてるもの」フッ

武闘家「魔法使いちゃん、辛辣~!」

魔法使い「まぁ私、女の子には優しいから。特に貴方達みたいな、可愛い子には」フフ

僧侶「……へぇ」

魔法使い「?」

僧侶「魔法使いさん、案外気さくなんですね。顔合わせの際は無口だったので、そういう方なのかと思っていましたが…」

魔法使い「あー…それは……」

武闘家「魔法使いちゃんは男の人がいるとああなんだよ~」ハハハ

僧侶「そうなんですか」

魔法使い「……えぇ。私、男嫌いなの」

5 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:03:49.59 ID:sm7FpiKv0
魔法使い「父には8人の妻がいるのよ」

盗賊「8人!」


魔王との戦いで死んだ者のほとんどが男。
そのせいで、この世界の男女比は現在約2:8と言われている。
世界中で年々人口が減り続ける状況の為、ほとんどの国で一夫多妻制が導入されていた。


魔法使い「勇者もきっと、姫様の他にも何人かの妻を娶るでしょうね」

盗賊「そうかも。でも、複数の女の人を養える地位なら問題ないのです」

僧侶「世界を救った勇者様となれば、十分にその権利はありますし……」

魔法使い「そういう問題じゃないのよ…」

僧侶「と言うと?」

魔法使い「私達…その妻候補なのよ」

盗賊「……」

僧侶「……」

武闘家「えーっ!」

6 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:04:19.95 ID:sm7FpiKv0
魔法使い「私、聞いたのよ! あれは勇者の仲間募集のビラを見て、それについての質問をしに城を訪れた時……」


~回想~

魔法使い(あ、あれは勇者と騎士団長さん……。あ、集まった応募用紙を見てるみたい)


騎士団長『早くも志願者が集まりましたね。ほら見て下さい、レベル50越えの猛者も…』

勇者『不採用』

騎士団長『え?』

勇者『ゴツい男なんか御免だね。それより女の子、女の子!』

騎士団長『えーと…女性志願者は少ないですが、今のところ彼女と彼女と……』

勇者『この僧侶ちゃんと盗賊ちゃん採用』

騎士団長『え!? …お言葉ですが、もっと優秀な志願者は沢山……』

勇者『仲間の強さとかどうでもいいよ。どうせ俺が活躍するんだし。それより……』

騎士団長『それより?』

勇者『可愛い女の子のハーレムパーティー作って、ウハウハしたいんだよおぉ!! これぞ男のロマン!! 吊り橋効果イヤッホー!!』


魔法使い『……さいってー』

7 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:04:48.78 ID:sm7FpiKv0
魔法使い「不純、不潔! あんな勇者に、私は絶対心を許さないわ!!」

僧侶「なるほど…。ですが、女性に囲まれることで勇者様の士気が上がるのなら効率的ですよ」

盗賊「そうそう、男の子ってそんなものだと思うです。魔法使いちゃんはちょっと過敏なのです」

魔法使い「いーえ! 男は女の子のこと、せ、せ、せ……」

僧侶「せ?」

魔法使い「せ…性欲解消の対象としか、見てないし……」モジモジ

僧侶「うーん。そういう男性もいるかもしれませんが、『としか』ではないと思いますよ」

魔法使い「じゃあ男は『そういう行為』なしで女の子と付き合えるんですかー!! 無理でしょ、男ってそういう生き物!!」

僧侶「流石に極論ですよ」

魔法使い「極論でもなんでも、男のそういうとこが嫌いなの! 私は勇者に心を許さないから!」

僧侶「男性が苦手な理由はわかりましたが…」

盗賊「何で、勇者パーティーに志願したです?」

魔法使い「……」


だって――


武闘家「仕方ないなぁ、魔法使いちゃんは。でも、必要なコミュニケーションはちゃんと取ってね」

魔法使い(武闘家に…志願しようって誘われたから……)

8 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:05:38.84 ID:sm7FpiKv0
>子供時代


約2:8に偏った男女比のせいか、その繁殖能力のせいか――人間社会は男性優位だ。

女好きの父親、威張る男たち、精神発達の遅い男児――周囲はそんな男ばかりで、私は自然と男嫌いになっていた。
男性優位の社会において、私のように勝気な女子は周囲から浮きがちだった。

そんな中、私と仲良くしてくれたのが――


いじめっ子『ぎゃあー、鬼ババが怒ったー』ダッ

魔法使い『今度この子をいじめてみなさい、焼くわよ!』

武闘家『ぐすん……』


近所に住む同い年の女の子、武闘家だった。
彼女は頭の回転の悪さ故か、それとも小柄な体のせいか…とにかく、いじめられることが多かった。


魔法使い『そんなに泣いてたら、ますますあいつら喜ぶわよ。全く、何でやられっぱなしなのよ』

武闘家『ぐすっ…女の子は弱くて守られている存在だから、男の子に逆らっちゃ駄目なんだって』

魔法使い『あんた、あんな奴らに守られたいの?』

武闘家『……』

魔法使い『私は冗談じゃないわ。自分の身くらい、自分で守るわよ』

武闘家『…私も、強くなりたい。魔法使いちゃんみたく、強くなりたい』

魔法使い『そう。応援するわよ』

武闘家『強くなるのに、どれくらいかかるかわからないけど……』

魔法使い『……大丈夫よ』ポン


――あんたが強くなるまで、私が守るから

9 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:06:30.03 ID:sm7FpiKv0
>そして今現在


武闘家「どっせえええぇぇい!!」バキイイィィッ

魔物達「「ギャース!!」」

盗賊「凄いです! 魔物を蹴り殺し、更にその死体で魔物達が将棋倒しに!」

魔法使い(強くなりすぎよ!!)


そう、宣言通り強くなった。…肉体の力だけで男を凌駕する程に。


勇者「凄いな武闘家。その小さな体で、そんなパワーが出るなんて」

武闘家「筋肉があれば、できないことなんてないんだよ!」ムキッ

勇者「おおぉ、固いな~。でも、柔らかいところは柔らかいんだな」サワサワ

魔法使い(うぐぐぐぐ、男がその子の体に触るんじゃないわよ!!)ギロリ


非常に面白くない。武闘家本人が触らせているとはいえ。


武闘家「ふぅ、汗びしょびしょ~」ペロッ

魔法使い「!! ちょっと、武闘家!! 何、服をめくってるのよ!!」

武闘家「だってー、こうした方が背中拭きやすいんだもん。それに、出したのもお腹だけだよ?」

魔法使い「いやお腹だけでも…あーもう、こっち向きなさい! タオル貸して!」

武闘家「? …ひゃんっ、あはは、くすぐったい~」

魔法使い「じっとする! もう、ほんとあんたは無頓着なんだから…」フキフキ

武闘家「いつもありがとー、魔法使いちゃん。ごめんね、世話の焼ける友達で」

魔法使い「別に…ヤじゃないし。世話、焼けなくなる方が寂しいし……」ボソボソ

武闘家「ん? ごめんね、聞き取れなかった。何て言ったの?」

魔法使い「何でもないわ! それより汗拭いたから、行くわよ!」

武闘家「はーい」

10 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:07:05.67 ID:sm7FpiKv0
>宿屋


魔法使い「……はぁ」

魔法使い(武闘家の体…ちょっと固いけど、でもやっぱり女の子だった)


まだ感触が手に残る。思い出しては、ため息。


魔法使い(武闘家は私に無防備……。女の子同士だから。……"そういう対象"じゃないから)


勿論、それが普通のこと。変なのは、私の方だ。


魔法使い(勇者に…いや、どんな男にも、武闘家を触らせたくない)


いつ頃からかはわからないけど、武闘家は私にとって"友達"で収まる存在じゃなくなっていた。
ちょっとおバカで、ドジで、だけど元気で可愛くて、懷っこくて――そんなところが愛おしくて、守ってあげたくなる。彼女はそんな子。


魔法使い「……はぁ」

武闘家「たっだいまー♪ いいお風呂だったよー!」バァン

魔法使い「わわっ! お、お帰り!」

武闘家「どうしたの、慌てて? あ、あのね、盗賊ちゃんボインボインなんだよ!」

魔法使い「ふ、ふーん」

武闘家「魔法使いちゃんも一緒に入れば良かったのに~」

魔法使い「いえ、私は…同性でも、裸を見られるのに抵抗あるから。後で入る」

武闘家「そうだったね。細くてスタイルいいのに勿体無~い」


言った理由は嘘。本当は、私は変態だから。


魔法使い(美少女達と一緒にお風呂とか…刺激が強すぎるのよ!)ドキドキ

11 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/06/30(木) 21:07:32.95 ID:sm7FpiKv0
今日はここまで。

本編に上手く入れることができなかったので、女の子4人の容姿を簡単に紹介します。

魔法使い→背が高くて大人びている。Dカップ。
武闘家→チビでやや筋肉質。Aカップ。
僧侶→清楚系、肌が白い。Cカップ。
盗賊→童顔、健康的な褐色肌。Fカップ。

18 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:09:18.31 ID:5MZvt89P0
>ある日


魔法使い「よし、移動魔法を習得したわ!」

僧侶「お疲れ様です。これで、旅が大分楽になりますね」

勇者「あ、じゃあ城下町に戻れないかな?」

魔法使い「いいけど…何か忘れ物でもした?」

勇者「いやぁ…姫様と文通してはいるけど、そろそろ顔を見せないと寂しいかなと思ってね」フッ

魔法使い(いつの間に、そんな仲に…てか、流石タラシ男はマメね)


旅を始めてから約1週間。私の勇者への不信感はぐんぐん上がっていた。


僧侶「勇者様…もうっ」プイッ

勇者「そんな顔するなよ…可愛すぎて困るよ」

魔法使い(お堅い聖職者を1週間で落とすって、どんなテクニックよ!? ていうか落とされてるんじゃないわよ僧侶!!)

武闘家「姫様の好感度上げとかないとねー」

勇者「武闘家…妬いてくれないんだね、ちょっと寂しいよ」ポン

魔法使い(てめええぇ、沢山の女に触れたその汚れた手で!! 武闘家に触るんじゃねぇわよ!!)ゴゴゴゴ

勇者「魔法使い、移動魔法を頼む」

魔法使い「言われなくてもわかってるわ!!」

勇者「……何で俺、怒られたの?」

武闘家「んー、勇者が嫌われてるからだと思う!」

勇者「ははっ、魔法使いは相変わらずだなぁ。でも、それでこそ落としがいがあるよね♪」

魔法使い「うっさい! きもい!」

<ワーワー

盗賊「……」

19 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:09:49.07 ID:5MZvt89P0
>城下町


僧侶「私は礼拝堂にいます。最近、ゆっくりお祈り出来ていなかったので…」

魔法使い「私はどうするかなー」

武闘家「ね、ね、魔法使いちゃん! ケーキのビュッフェ行こっ、可愛いお店があるんだ~」

魔法使い「あんた、そういうの好きよねぇ。いいわよ」

武闘家「やったぁ♪ あ、盗賊ちゃんも行こうよ!」

盗賊「……え?」

魔法使い「ん…もしかして、気が乗らない感じ?」

盗賊「あ、えーと…ボク、ダイエット中なのです」

武闘家「そっかー、残念だなぁ。けど、女の子にとって体型維持は大事だもんね!」

魔法使い「毎日三杯飯のアンタが言ってもね……」

武闘家「良質な筋肉を作る為には沢山食べなきゃ駄目なんだよ! 消費カロリー以上食べてプロテイン飲んで……」

魔法使い「筋肉の話はいいわ。じゃあ盗賊、また後でね」

盗賊「はいです……」

20 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:10:21.28 ID:5MZvt89P0
>1時間後


武闘家「はぁ~、食べた食べた~」

魔法使い「凄まじい食べっぷりだったわね。お店潰れなきゃいいけど……」

武闘家「え、潰れるの!? 大変!! 筋トレ仲間にお店を宣伝して、お客さん増やそう!」

魔法使い「その連中も沢山食べるんでしょ、トドメ刺す気か!」

武闘家「追々考えるとして…ねぇ、食後の散歩に"天使の庭園"行こうよ!」

魔法使い「天使の庭園…? …あ、聞いたことはあるような……」

武闘家「城の一流庭師が創り上げた庭園らしいよ~。とてもロマンチックで、定番デートスポットらしいんだ~」エヘヘ

魔法使い「相変わらず乙女趣味ねぇ。けど私も興味あるわ、行きましょう」

武闘家「うん! へへっ、魔法使いちゃんとデートぉ♪」ギュッ

魔法使い「ちょっ」

魔法使い(女同士でよくあるじゃれあいだけど…あんたにやられると、冗談じゃ済まないのよ)ドキドキ

21 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:11:21.43 ID:5MZvt89P0
>天使の庭園


魔法使い「へぇ~…綺麗ねぇ」


途端、視界に広がる優美な庭に目を奪われる。
丹念に刈り揃えられた緑の道と、それを彩る鮮やかな花々。舞踏会の娘達のように咲き誇る姿が、煌めいて可愛らしい。
天使をかたどる白い噴水は、水飛沫に輝き涼しげな音を奏でていた。


魔法使い「流石、天使の庭園って感じ。ね、武闘……」

武闘家「わぁーい!」タッタッタ

魔法使い「あら、ランニング?」

武闘家「あのね、全身で庭園の空気を感じているの!」

魔法使い「? 空気なんて、そこにいるだけで感じられるでしょ……」

武闘家「勢いつけて走った方が、強く感じられるんだよー」

魔法使い「よくわからないわね」

武闘家「えっとねー…えいっ!」ムギュッ

魔法使い「!!?!?」

武闘家「ねっ? 勢いよく抱きついた方が、私のこと強く感じられるでしょ?」

魔法使い(武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる武闘家とくっついてる)

22 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:11:57.13 ID:5MZvt89P0
魔法使い「ちょ、は、離れなさい! 人に見られたらどうするの!」アタフタ

武闘家「あ……そうだね。ここ最近、法律も厳しくなってきたもんね」パッ

魔法使い「……」


あっさり離れてくれて良かったのだけれど、ちょっと残念。
だけど冗談じゃなく、人に見られたらマズイ。


魔法使い「同性愛者への最も重い罰は…鞭打ちだったわね」

武闘家「この前も、同性のカップルが捕まったよね…可哀想」


国々は人口減少への対策に追われ、一夫多妻制を導入しただけではなく、同性愛の厳罰化を決定した。


魔法使い「厳罰化したからって、同性愛者が異性を好きになるわけじゃないのにね」

武闘家「好きじゃなくても子供を作れってことでしょ? 何か…そういうの、やだよね……」

魔法使い「……そうね」

23 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:12:26.58 ID:5MZvt89P0
権力者には男が多い。この法律を作ったのも男。
男なんてのは女を性欲の対象か、子供を産む道具にしか思っていない。だから、男は嫌い。


魔法使い(……だけど)

武闘家「あ、オシャレなベンチがある! ね、座ろうよ!」


例え、そんな法律が無かったとしても――


武闘家「久しぶりだよね、魔法使いちゃんと2人きりは!」

魔法使い「そうね。旅を始めてからは、仲間の誰かがいたものね」

武闘家「皆いい人だから好きだけど…でも、やっぱり魔法使いちゃんと一緒だから幸せ」ヘヘ

魔法使い「……羨ましいわ、あんたのそういう性分」

武闘家「え?」


私はきっと、武闘家に想いを伝えられない。


魔法使い「幼いとこよ。いつになったら手がかからなくなるのかしら~?」

武闘家「えぇー。見捨てないでよ、魔法使いちゃーん」ギュゥ

魔法使い「あーもうっ、わかったから離れなさいよ!」


武闘家はさっき、勢いよく抱きついた方が"彼女"を感じられると言ったが――私にとっては、逆。
昔からの距離感。友達という距離感。その変わらない距離感で一緒にいる方が、彼女を強く感じていられる。
その距離を詰める必要なんてない。だって私の気持ちは、秘めていなければならないもので――


魔法使い(いつか…離れちゃうんだろうな)

24 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:13:09.22 ID:5MZvt89P0
<わいわい


魔法使い「ん…誰か来る? ……まぁそうよね、定番デートスポットだもんね」

武闘家「ねぇ…聞いたことある声だと思わない?」

魔法使い「え?」



勇者「それでですね……」

姫「まぁ」フフフ



武闘家「あ、ほら。勇者と姫様だ」

魔法使い「こっちには気付いてないわね。邪魔しちゃ悪いし、そろそろ引き上げる?」

武闘家「そうだね。楽しかったねー♪」

魔法使い「えぇ……」

<ふぅ……

魔法使い「……ん?」


盗賊「……はぁ」

武闘家「盗賊ちゃん? どうしたの、そんなとこに隠れて」

盗賊「わわっ! 魔法使いちゃんに武闘家ちゃん……」

魔法使い(私達に気付いてなかった? …それに、盗賊が見てたのは……)



勇者「…ですよね」

姫「えぇ、そうですね」



武闘家「もしかして、盗賊ちゃん。あの2人を見てたの?」

盗賊「……」

魔法使い「…話は後よ。とりあえず、ここを去りましょう」

25 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:14:01.61 ID:5MZvt89P0
>宿屋


盗賊「恥ずかしい姿をお見せしました……」

武闘家「ううん、一途でいいと思うよ。ね、魔法使いちゃん」

魔法使い(どいつもこいつも、あのタラシに引っかかりやがって……)ゴゴゴ

盗賊「いいと思っているようには見えんのです……」ブルブル

武闘家「けど盗賊ちゃん、2人を見てて辛そうだったね。どうしたの?」

盗賊「それは……。お恥ずかしい話ですが……」

武闘家「うん」

盗賊「……姫様って、綺麗で、品があって、教養があって…だから、自分が惨めで」

武闘家「うん?」

盗賊「ボクは…卑しい身分に生まれ、底辺で育ってきたです。言葉を覚えるのも遅くて、今でも言語に自信ないです」

武闘家「そう? 気にしたことないけど……」

盗賊「ボクは気にしてるです。…同じ人間で、同じ女なのに、ボクと姫様は何もかもが違いすぎる」

魔法使い(……相手はあの姫様だものね)


容姿、頭脳、品格――全てに秀でている、正に「高嶺の花」。
盗賊じゃなくたって、あの姫様と並べる女性なんてそうそういない。


魔法使い(まーでも、勇者は可愛い女なら受け入れる感じだし)

魔法使い「気にしない、気にしない。盗賊には盗賊のいい所が、沢山あるわよ」

武闘家「そうそう! それに、魔王を倒したら盗賊ちゃんは"英雄"だよ! ほら、姫様と並べるよ!」

盗賊「2人とも……」

26 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/01(金) 19:14:32.28 ID:5MZvt89P0
盗賊「へへ…ありがとうです、ボクはいい仲間を持ったです」ギュッ

武闘家「当たり前だよ。だって私達、盗賊ちゃんのこと大好きだから!」ナデナデ

盗賊「ありがとう、武闘家ちゃん…魔法使いちゃんも!」

魔法使い(くぅ…大きな胸が押し付けられて、なんかやばいわ)ドキドキ

僧侶「只今戻りました…あら?」

盗賊「あ、僧侶ちゃん! お帰りなさいです!」

僧侶「私のいない間に仲を深められたようで…少し妬けますね」

盗賊「僧侶ちゃんも大好きなのです!」ギュー

僧侶「あらあら…私も好きですよ、盗賊さん」

魔法使い(勇者に落とされた女の子同士で友情を確かめ合っている……)


仲が良いのはいいのだけれど、それでも非常に面白くない事態だった。

29 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:24:29.26 ID:5HfrqQBu0
それから勇者は、3日に1回くらいの割合で城下町に戻った。


魔法使い「今日もアイツはデート!! いい加減にしろっつーの!!」

武闘家「姫様に相当入れ込んでるよね~」

魔法使い「バッカじゃないの、魔王を討伐してこその勇者でしょーがっ!!」

僧侶「まぁ、猶予はあると思いますよ。最近世代交代した魔王は、先代より比較的穏健派ですし」

魔法使い「そうなの? でも、まだあちらこちらで火花が散ってる状態よね?」

僧侶「魔王にも色々なしがらみがあるのですよ」

武闘家「僧侶ちゃん詳しいよねー。旅も僧侶ちゃんのプランに従って進んでるからか、今のとこ順調だしね!」

魔法使い「そうね。頼りにしてるわ」

僧侶「恐縮です」

魔法使い「そうだ…詳しいついでに聞きたいんだけど、『魔王が進めている恐ろしい研究』って何だか知らない?」

僧侶「あぁ…一部の権力者の間でのみ広まっている、あの話ですね」

魔法使い「何か研究しているのは聞いたけど、肝心の内容がわからないのよね。僧侶は知らない?」

僧侶「……はっきりはわかりませんが、どうやら『生物の常識を覆し、人間社会に悪影響を与える』ものらしいですよ」

魔法使い「随分とぼんやりしてるけど…阻止しなきゃいけないものだってことだけはわかったわ」

僧侶「…そうですね」

30 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:25:06.83 ID:5HfrqQBu0
盗賊「ただいまです……」フゥ

魔法使い「あら、お帰り。デートの尾行は終わったの?」

盗賊「ハイです。姫様、お忍びに町娘の格好をしていたけど…それでも気品に溢れていたです」フゥ

魔法使い「あの姫様だもんね~。あれ程の女性は稀だから、気落ちする必要ないわよ」

魔法使い(あれ程の人が勇者と結婚するなんて…あぁ勿体無い)


勇者「たっだいま~♪」

魔法使い「ここ女子部屋。男は入ってくるな、シッシッ」

勇者「魔法使いは相変わらずつれないなぁ。姫様からのお土産だよ、手作りクロワッサンだってさ」

武闘家「わぁ~い♪ 姫様ってパンまで焼けるんだ~♪」モグモグ

盗賊「あの方は、何でもできるです…」ハァ

僧侶「……」プイ

勇者「何だよ僧侶~。あ、妬いてるんだろ?」

僧侶「妬いてません。どうぞお好きになさって下さい」ツーン

勇者「本当、僧侶は可愛いなぁ…ますます妬かせてやりたくなるよ」

僧侶「性格悪いですね」

勇者「可愛い女の子には意地悪したくなるものさ…心配しなくても、俺は僧侶のことだって……」サワッ

僧侶「ストップ」

勇者「?」

僧侶「婚前に、度が過ぎたスキンシップはしない主義なんです。いくら勇者様相手でもね」

勇者「…あぁ、そうだったね。ゴメンゴメン」チッ

魔法使い(うわ舌打ち聞こえた)「よそでやれ、よそで!! つか出てけ!!」

勇者「わぁ。じゃあ皆、明日からも頑張ろう♪」

武闘家「うん!」モグモグ

僧侶「フン」

盗賊「……ハァ~」

魔法使い(何であんな最低男を許容できるのよ…私がおかしいの!?)グヌヌ

31 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:25:39.87 ID:5HfrqQBu0
それでもとりあえず、魔王城には着実に近づいていった。


魔法使い「うーん…」

僧侶「どうしました?」

魔法使い「いや。何か、魔物達の攻撃がヌルくない? 魔王城に近づいてるんだから、もっと刺客を送ってきてもおかしくないと思うんだけど……」

勇者「俺に恐怖してるんだろ」フッ

僧侶「以前も言いましたが、魔王は比較的穏健派ですから。気にしなくていいと思いますよ」

魔法使い「うーん…」

魔法使い(いくら穏健派でも、敵を放置するなんて有り得るの…? それとも何か企んで……)

武闘家「ねぇねぇー!」

魔法使い「うん? どうしたの、武闘家」

武闘家「何と! 遂に、腹筋が6パックに割れました~♪」バッ

魔法使い「こらーっ、お腹を出して見せるな!!」

勇者「おぉ、見事な筋肉だ」サワサワ

魔法使い「女の子のお腹を気安く触ってんじゃないわよ!!」

勇者「武闘家…実は、俺の筋肉も凄いんだぞ。見てみたいか?」

武闘家「ホント!? 見たい見たーい!」

勇者「それじゃ今晩、俺の部屋に……」

魔法使い「断固阻止する!! 武闘家、こっち来なさい!!」


魔法使い「あんたね、もうちょっと警戒心ってもんをね…」クドクド

武闘家「えー、でもー」


勇者「……厄介な女」

勇者「こうなりゃ、順序を変えるか……」

32 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:26:06.72 ID:5HfrqQBu0
>夜


武闘家「それじゃ、お風呂入ってくるね~」

魔法使い「行ってらっしゃい」

魔法使い(さて…魔術書でも読むか。と言っても、もうほとんどの魔法は覚えちゃったわけだけど……)

<トントン

魔法使い「はーい?」

勇者「やぁ、こんばんは」ガチャ

魔法使い「…何。皆なら、お風呂に行ったけど」

勇者「知ってる。魔法使いに用があって来たからさ」

魔法使い「私に? 何よ、さっさと言いなさい」

勇者「…はぁ。魔法使いは本っ…当~に俺のことが嫌いみたいだね」

魔法使い「嫌いよ、大嫌い」

勇者「ふふ…そのツンケンしたところが可愛くもあるんだけどね」

魔法使い「そういう軟派な所が嫌われてるんだって自覚はあるかしら?」

勇者「魔法使いは固いよなぁ。でも今のご時世、男は沢山の女を口説いてナンボだよ?」

魔法使い「そうね。だから私、今のご時世の男は大嫌いなの」

勇者「流石に凹むよ」スタスタ

魔法使い「!!」ビク

33 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:26:40.24 ID:5HfrqQBu0
勇者「どうかした、魔法使い?」

魔法使い「べ、別に…ってか、こっち来ないでよね!」

勇者「どうして? …まさか、魔法使いって……」クスクス

魔法使い「な、何よ」

勇者「男が怖いのかな?」

魔法使い「!!」


男は嫌い。嫌いだけど――


魔法使い「あ、あんたなんか怖いもんですか! 変なこと言わないで!」

勇者「へぇ。じゃあ何で、そんなに緊張しているのかな?」

魔法使い「嫌いだからよ、男なんて――女のこと、性欲の対象にしか見てない生き物は!」

勇者「それが怖いってことじゃないの?」

魔法使い「……っ!」

勇者「やっぱり。怖いんでしょ、性的な目で見られるのが」ククッ

34 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:27:52.60 ID:5HfrqQBu0
魔法使い「そ、そこまで自意識過剰じゃないわよ!」

勇者「へぇ、そう? 俺は、魔法使いのことそういう風に見てるよ?」クスッ

魔法使い「…っ!!?」

勇者「美人だし、スタイルもいいし…ツンケンしたとこも、男が怖いからだと思えば可愛く見えるよ」

魔法使い「や、やめて……」


そんなこと言わないで。私を、そんな目で見ないで――


勇者「魔法使いは、男を知らなすぎるんだよ。ちゃんと愛されてみれば、男が好きになると思うよ…?」

魔法使い「ぅ…やだ……」


クラクラする。勇者が一歩一歩近づいてくる度に、体が硬直していって……。


勇者「そういうお嬢さんは案外、荒療治でコロッと変わったりするんだよね……」スッ

魔法使い「!!!」


勇者に触れられた途端、全身に鳥肌が立った。


魔法使い「ゃ、やだ……」ガタガタ

勇者「大丈夫…俺は魔法使いのこと、ちゃんと愛するよ……」

魔法使い「――っ!!」

35 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:28:19.30 ID:5HfrqQBu0
バァン


武闘家「魔法使いちゃーん!」

魔法使い「!!」

勇者「ぶ、武闘家……」

武闘家「魔法使いちゃん、お風呂におサルが来たよ!」グイッ

魔法使い「あっ!?」

武闘家「早く来て、ねぇねぇ!」

バタバタ…

勇者「………ちっ」

36 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:28:53.29 ID:5HfrqQBu0
魔法使い「……」

武闘家「田舎って凄いよね~。あ、でも餌付けするのは駄目みたいだよ。あとね……」

魔法使い「…武闘家」

武闘家「え、何? ……って」


急に全身の力が抜けて、私は武闘家にもたれかかった。
だけど彼女は嫌がらずに、背中をさすってくれた。


武闘家「よしよし、怖かったね~」

魔法使い「……ぐすっ」

武闘家「もう、あんなことないようにするからね。私が守るから」

魔法使い「グス…変なの。あんたが私を守るなんて……」

武闘家「あはは、そうだね。小さい頃からずっと、魔法使いちゃんが私を守ってくれてたもんね」

魔法使い「ほんとよ…。あんたって幼いし、すぐ泣くし……」

武闘家「でも私、そんな自分を変えたくて体を鍛えてきたんだよ。だから今度は、私が魔法使いちゃんを守る番」

魔法使い「……やだ」

武闘家「何で!?」ガーン

魔法使い「そんなの生意気。私だって、あんたのこと守るし……」

武闘家「えー。私の方が強いよー?」

魔法使い「それでもよ! 私は、守られるだけなんてイヤ!」

武闘家「……くすっ」

37 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:29:27.12 ID:5HfrqQBu0
武闘家「嬉しいよ、魔法使いちゃん。…うん、そうだね。私も、まだまだ頼りないもんね」

魔法使い「そうよ。あんたってば今でも1人で行動できないし、道には迷うし、脳筋だし……」

武闘家「あ、あははー。ほんと世話の焼ける友達だよねー」

魔法使い「別に、いいわよ。世話の焼けるあんたで」

武闘家「ほんとに? 欠点なのに?」

魔法使い「何を今更。…私がカバーするだけだし」

武闘家「ありがとうっ! 魔法使いちゃん、大好きっ!」ギュッ

魔法使い「っ!!」


大好き。きっと私の思う"好き"とは違う。
違うけど――


魔法使い「……ありがとう」

武闘家「? 何に対してのお礼?」

魔法使い「別に……何となく」

武闘家「あはは、何それー。変な魔法使いちゃん」

魔法使い「あんたに変だなんて言われたくない」

武闘家「もー、ひどいなー」アハハ



――ありがとう。私と一緒にいてくれて。

38 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/02(土) 17:29:59.19 ID:5HfrqQBu0
僧侶「あの、そろそろいいでしょうか」

盗賊「うー。友情が眩しいです」

魔法使い「わわっ、2人とも!?」

僧侶「言っておきますが、武闘家さんに忠告したのは私ですよ。勇者様の行動が怪しい、と……」

魔法使い「そ、そうだったの。ありがとう…って、何で?」

盗賊「男の人を苦手としてる魔法使いちゃんに、下心を持った勇者君が近づこうとしている。これは由々しき事態なのです」

僧侶「そういうことです。……まぁ、私としても勇者様の関心が他の女性に向くのは好ましくありませんし」

盗賊「僧侶ちゃんは素直じゃないのです。魔法使いちゃんのこと本当に心配してたのに」

僧侶「……そんなことありません」プイ

魔法使い「盗賊、僧侶……」

僧侶「……何ですか?」

魔法使い「2人とも、男の趣味は悪いけど……何て、いい子達なのっ!!」ギュッ

盗賊「えっ?」

僧侶「っ!」

魔法使い「こんな私のこと心配してくれるなんて、嬉しくて嬉しくて……」

僧侶「そ、それは…仲間、ですし……」

盗賊「そうなのです。それにボク達、魔法使いちゃんのこと好きですよ」

武闘家「うぅー、いいなぁ。私なんか魔法使いちゃんからギュッとして貰ったことないのにー」

僧侶「ま、まぁ…。とにかく、魔法使いさんはしばらく単独行動をやめましょう」

盗賊「と、いうことで~…一緒にお風呂入るのです!」

魔法使い「え、ええぇーっ!?」

武闘家「行こう行こう!」

僧侶「裸の付き合いも大事ですよ」

盗賊「絶対に逃がさないです~♪」

魔法使い(ちょっ……普通にヤバいってー!!)


その後、風呂場で煙幕魔法を使うという手段でとりあえず乗り切った。


41 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:32:38.45 ID:pUUG/5wW0
>後日


勇者「……そうして手に入れたのが、この"戦女神の剣"というわけです」

姫「まぁ、流石勇者様ですわ」フフフ


魔法使い「話を盛ってるわー。あれは盗賊の探索能力のお陰だったじゃない」

武闘家「それにしてもびっくりだね。まさか、私達がお茶してるカフェにデートで来るなんてね」

魔法使い「何で入口側の席に座ってるのよ…。店を出ようにも、あの位置からじゃ気付かれるじゃない」ハァ

武闘家「気付かれたら、何か気まずいもんねー…あ、立ち上がったよ。お店を出るみたい」

魔法使い「そうね。じゃあ私達も出ましょう」

42 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:33:08.28 ID:pUUG/5wW0
盗賊「…はぁ~」

魔法使い「盗賊、相変わらずストーキングしてるの?」

盗賊「うぅ…姫様は本当に素敵です……」

武闘家「ん、勇者と姫様が……」



姫「では今日は、これで失礼しますわ」

勇者「おや…もう一件、行きたい所があったのですが……」

姫「少し用事がありまして…。それに、勇者様の旅も終盤でしょう? あまり、時間を取らせるわけにはいきませんわ」

勇者「姫様…俺にとって、貴方と過ごす時よりも大切な時間はありません」

姫「そんなことを言ってはいけませんわ。貴方は世界の希望を背負った勇者様なのですから」

勇者「そんな、俺は……」

姫「では勇者様、ご機嫌よう。城はすぐそこなので、1人で帰りますわ」ニコ



武闘家「うーん、流石姫様。ガードが固いねぇ~」

魔法使い「あーあ。姫様、もっとガツンと言って下さって構わないのに」

盗賊「勇者君と姫様、くっついちゃうんでしょうか……」

魔法使い「そうなんじゃない? でも、勇者は女好きだし、盗賊も第二第三夫人なら……」

姫「ねぇ」ニコニコ

魔法使い「!!?」ビクッ

武闘家「わぁ!?」

盗賊「ひ、ひひひひ姫様!?」

姫「ふふ、ご機嫌よう。勇者様のお仲間様」

43 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:33:35.43 ID:pUUG/5wW0
盗賊「ご、ごごごご機嫌麗しゅう……」ガチガチ

魔法使い「き、奇遇ですねぇ~」

武闘家(うわぁ…近くで見ると、本当に綺麗)

姫「ねぇ…貴方」

盗賊「ボ、ボク!? は、はいです!!」

姫「貴方…私と勇者様の逢瀬、たびたび見ていらっしゃったわね?」

盗賊「!!!」

魔法使い(あちゃー…気付かれていたか)

武闘家(姫様、意外と勘がいいんだなぁ)

盗賊「そ、そ、それは……」

姫「ふふっ…言い訳しなくていいのですよ。ねぇ、盗賊様…でしたわね?」

盗賊「そ、そんな、呼び捨てでいいです! 敬語も必要ありません!!」ブンブン

姫「では、盗賊…少し、2人きりで話しましょう?」

盗賊「!!!」

魔法使い(まさか……私刑!?)

武闘家(大変だあぁーっ!!)

44 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:34:03.40 ID:pUUG/5wW0



僧侶「で、盗賊さんは姫様と、この庭園に入って行かれたと」

魔法使い「万が一盗賊がひどい目に遭いそうになったら、助けなきゃ!」

武闘家「あ……2人がいたよ!!」



姫「私と勇者様でここを歩いていた時からずっと、陰で見ていたわね……?」

盗賊「は、はい、です……」

姫「うふふ。どうしてそんなに緊張しているの?」

盗賊「だ、だって……」



魔法使い「怯えてるのかしら…あんなに緊張して」

武闘家「そんなに怖いかなぁ?」

魔法使い「そりゃそうでしょ。威厳というか、オーラが違うわ」

僧侶「うーん……」

魔法使い「どうしたの、僧侶?」

僧侶「怯え、にしては…何か、様子がおかしいような……」

魔法使い「え?」



姫「勇者様から聞いていた感じと違うわね。盗賊は明るくて純朴な女の子、って聞いたけど」

盗賊「あ、ううぅ。だ、だって……」モジモジ

姫「私が相手だから?」

盗賊「!!!」

姫「ふふ、わかっているわ――」スッ


そして姫様は、盗賊の頬にそっと触れ――


姫「貴方――私のこと、好きなのでしょう?」


魔法使い「え?」

武闘家「え?」

45 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:34:32.89 ID:pUUG/5wW0
盗賊「そ、そそそそれは……」

姫「気付いていたわ…貴方が私に送ってくる熱い視線に。どうなのかしら?」

盗賊「……はい、です」コクリ

姫「ふふ、やっぱり……」

盗賊「み、見てるだけで良かったのです! 同性愛は禁止されているし、それに……」

姫「それに?]


盗賊「……ボクみたいに卑しい身分の者は……姫様に近づくことすら、おこがましいから……」

姫「そんなことないわ」ギュッ

盗賊「!!! ひ、姫様――」

姫「盗賊……貴方、可愛い」

盗賊「っ!?!!?」

姫「可愛い。そうやって弱気になっちゃうところも、一途なところも――」ナデナデ

盗賊「ぁ……ひ、姫様、そこは……っ」

姫「ふふ、ひと目見た時から、貴方が欲しいって思っていたの。そう簡単には、離さないわ……」

盗賊「ひ、姫、さまぁ……」



魔法使い「……退散」

46 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:35:02.76 ID:pUUG/5wW0
僧侶「見てはいけないものを見てしまいましたね……」

武闘家「凄かったねー」

魔法使い「……」ドキドキ

魔法使い(まさか盗賊の尾行の目当てが姫様の方だったなんて……。でも、今思い返せば……)


盗賊『……姫様って、綺麗で、品があって、教養があって…だから、自分が惨めで』

盗賊『ボクは気にしてるです。…同じ人間で、同じ女なのに、ボクと姫様は何もかもが違いすぎる』


魔法使い(……うん。姫様と自分が釣り合わないと思っての発言ね)

僧侶「それにしても、どうしましょうね…。このまま黙認しているのも……」

魔法使い「まさか僧侶……通報する気!?」

武闘家「駄目! それは駄目だよ!」

僧侶「武闘家さん……?」

47 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:35:36.66 ID:pUUG/5wW0
武闘家「2人の仲を無理矢理引き裂くなんて、そんなの駄目! 可哀想だよ!」

僧侶「だけれど…私達が黙認していたとしても、2人は結ばれることが許されぬ仲…」

魔法使い(そう、同性愛は御法度。だからこそ盗賊も苦しんで……)

武闘家「社会が許さなくても、私が認めるもん!」

魔法使い「……え?」

武闘家「今の法律の方が間違ってるよ…だから私、法律を変える! 魔王を倒して、偉い人になって……何年かかるかわからないけど、そんなことで罰せられることのない世の中にしてみせるよ!」

魔法使い(武闘家……)

僧侶「……まぁ、通報しては十中八九、盗賊さんが重い罰を受けます。私としても、それは避けたい事態です」

魔法使い「そうね。とりあえず黙認して…他の人にバレないようにしないとね」

武闘家「魔法使いちゃん、僧侶ちゃん…わかってくれるの?」

魔法使い「そりゃ、ね。私も今の法律が間違ってると思うし……」

武闘家「……へへっ」

魔法使い「な、何よ? 人の顔をジッと見て」

武闘家「嬉しいなぁ~って。魔法使いちゃん、私と同じだね~♪」

魔法使い「何で嬉しいのよ。変な子ね」

僧侶「……」

48 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:36:06.09 ID:pUUG/5wW0
>その晩


盗賊「姫様…あぁ姫様」ポー

僧侶「……くれぐれも、ボロは出さないようにして下さいね?」


魔法使い「ちょっと、勇者」

勇者「うん、何だい魔法使い」

魔法使い「旅も終盤、気を引き締めないといけないわ。だから魔王を倒すまで、城下町に戻るのはナシよ」

武闘家「そうそう。今まで息抜きしすぎだったと思うよ」

勇者「うーん…。あ! じゃあ魔法使い、しばらく君が姫様の代わりを務めるというのは」

魔法使い「死ね」ギロ

勇者「死ねはないだろ……」

武闘家「魔法使いちゃーん、行こう行こう~」

49 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:36:37.21 ID:pUUG/5wW0
魔法使い「これでいいわ。城下町に戻れば盗賊と姫様が会ってボロを出すこともないだろうし……」

武闘家「うん。少なくとも、魔王を倒すまでの間は誤魔化せるね」

魔法使い「折角姫様と通じ合えたところで盗賊には気の毒だけど……あ、見て武闘家」

武闘家「ん、何……わぁ、綺麗な星空だねぇ~!!」

魔法使い「えぇ。久々に見たわ、こんな満天の星は」

武闘家「魔法使いちゃん…あのね、星占いによるとね、盗賊ちゃんと姫様の相性はバツグンなんだよ」

魔法使い「そう。2人とも幸せになれるといいわね」

武闘家「そうだね! こういう星空の下を、2人で堂々とデートできるようになれるといいよね!」

魔法使い(本当そうね……っていうか)


星空の下を、2人でデート……それは、今の私と武闘家じゃないか。


魔法使い(…なんて、バカよね。盗賊達とは違うんだから、デートにならないって)

武闘家「……ねぇ、魔法使いちゃん」

魔法使い「ん?」

武闘家「あれ……僧侶ちゃんと勇者じゃない?」

魔法使い「本当だ…あんなところで、コソコソ何やってるのかしら」

50 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:37:03.74 ID:pUUG/5wW0
僧侶「……困ります」

勇者「そんなこと言わないで。僧侶だって俺のこと、好きだろう?」

僧侶「それとこれとは、話が別です……」

勇者「姫様との逢瀬を禁止されてしまった。……俺にはもう、僧侶しかいないんだよ」

僧侶「…でも……」

勇者「誰にも愛されてなかったら、俺、駄目なんだよ。こういう状態で魔王を倒せる気がしない……」

僧侶「……わかりました」

勇者「!! 本当!?」

僧侶「ですけれど…キスも婚前交渉も駄目ですよ」

勇者「えー…。それじゃ意味ないじゃん」ハァ

僧侶「……胸くらいならいいですよ」

勇者「えっ? 触ってもいいってこと?」

僧侶「えぇ…そこまでなら譲歩できます」

51 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:37:32.14 ID:pUUG/5wW0
魔法使い「何あいつ!! 最低、燃やしてやるわ!!」

武闘家「ストップ、ストップ! 魔法使いちゃん、押さえて!」

魔法使い「止めないで武闘家! 僧侶にそんなことさせられないわよ!!」

武闘家「でも、僧侶ちゃんは勇者のこと好きなんだよね?」

魔法使い「……そうみたいね」

武闘家「それに僧侶ちゃんは、イヤなことはハッキリ断れる子だよ。勇者の誘い方が気に入らないのはわかるけどさ……」

魔法使い「……わかった、見逃す。合意の上なら仕方ないわね」

武闘家「うん。見つからない内に行こう」

魔法使い(それにしても……)


勇者「僧侶…君の肌は綺麗だね。純潔を守る君らしい白さだ……」

僧侶「ん……っ」


魔法使い(僧侶…ほんとに、何で勇者なんかに惚れたの?)

52 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/03(日) 19:38:11.58 ID:pUUG/5wW0
その日からは、魔王城に一直線だった。


武闘家「どりゃっ、せええぇぇいっ!!」バキィ

魔法使い「巨神兵の鎧をブチ破る程になったわ…。恐ろしい子」

武闘家「筋肉に、できないことなんてないんだよ!」

勇者「あ、ははは。武闘家は凄いなぁ~」

魔法使い(恐れてる恐れてる)


勇者は武闘家や、彼女と常に一緒にいる私にチョッカイをかけてくることはなくなった。


盗賊「隠し通路を見つけたです! これで、魔王城まで大分近道になるですよ!」


盗賊の様子に変わりはない。内心は姫様に会えなくて寂しがっているだろうけど、それを表に出すことはない。


勇者「僧侶…ちょっといいかな?」

僧侶「……はい」

魔法使い(またやってるわ……)


僧侶と勇者は、奇妙な関係を続けている。覗き見ているわけでないので、何をしているかは知らないけど……。


魔法使い「今日もお疲れー。あぁ疲れた」ドサッ

武闘家「魔法使いちゃん、一緒に寝るー?」ドサッ

魔法使い「バッ…バカじゃないの!? 子供じゃないんだし、1人で寝なさい!!」

盗賊「でも、この宿のベッドは大きいのです。これは皆で寝ないと損なのです」

魔法使い「意味がわからないわ」

僧侶「皆さん、魔法使いさんを取り押さえますよ」

魔法使い「ちょっ」

武闘家「えーい♪」ギュッ

盗賊「やー! なのです!」ギュッ

僧侶「ふふっ、たまにはいいでしょう」ギュッ

魔法使い(色々とヤバいわあああぁぁ!!)ドキドキドキドキ


私達女子4人は、仲良くやっていた。

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/03(日) 20:23:23.91 ID:5fhWv8E1O
このNTRはむしろGJ

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 12:48:30.58 ID:xyEwQ5m1O
百合にもNTRにも食指は動かんがこれは認めよう

認めよう

58 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:40:30.12 ID:6bFq7v+S0
>そんで


武闘家「遂に来たね……」

魔法使い「これが魔王城……」

盗賊「何か、ヤな気配がするです~…」

僧侶「……」

勇者「皆、緊張しちゃってんの~? 今の俺たちに敵なんかいないって~♪」

魔法使い「油断するな、足元すくわれるわよ」

勇者「魔法使いったら、本当に怖がりだね~♪ か~わ~い~い~」

魔法使い(こいつ、魔王と相打ちにならないかな)

僧侶「何が待ち受けているか、わかりませんよ」

勇者「そんな警戒しなくていいだろ、道中だって大したことなかったんだしさ」

僧侶「それなら勇者様、先頭を歩いて下さいませんか?」

勇者「任せろ。俺が君たちを守る」グッ

魔法使い「はよ行け」

勇者「おう…開け、魔王城の扉よ!!」バァン


ドガアアアァァァン


魔法使い「うわ、早速やられた」

盗賊「扉を開いたと同時に衝撃波とは、予想外なのです」

武闘家「先に行ってもらって良かったねー」

僧侶「勇者様あぁ――っ!!」

59 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:40:59.44 ID:6bFq7v+S0
?「フ…よくぞ来た、勇者とその一行の者共よ。待ちわびていたぞ……!!」


盗賊「…! だ、誰なのです!?」

魔法使い「あの女…尋常じゃない魔力の持ち主よ!!」


?「フフフフ……何者と問うなら応えてやろう」



魔王「我が名は魔王! 魔物達を統べる王である!!」


盗賊「魔王……あの人が!?」

武闘家「結構細身だねー。私の方が力はありそう」

魔法使い「油断するんじゃないわよ武闘家。何せ、勇者を一擊で葬った奴なんだから……」


勇者「何て美しい女性だ!」

魔法使い「あ、生きてた」

勇者「魔王……不毛な戦いなんてやめにしないか? 勇者と魔王、手を取り合って…和平の為に愛し合」

魔王「死ね」ゴオオォォッ

勇者「ぎゃばー!!」

魔法使い「勇者が死んだわよー。さぁ皆、構えて構えて」

勇者「いや…生きてる」ボロボロ

魔法使い「あそう。じゃ、剣構えて」

勇者「鬼か!!」

60 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:41:25.98 ID:6bFq7v+S0
魔法使い「まさか初っ端から魔王が出迎えてくれるとは思わなかったわ」

魔王「無駄に犠牲者を出すことは好まん。ならば、私が相手するのが良かろう」

盗賊「おぉ。部下思いの魔王なのです」

武闘家「それでも人間の敵だよ。魔王との争いで、人間達は数を減らしたんだから」

魔王「あぁ、先代は血の気が多い方だったからな…。しかし私も、歴代魔王の業を背負った身。言い逃れなどせんよ」

魔法使い「潔くて結構。穏健派と聞いて戦うことに戸惑いはあったけど、これなら思う存分戦えるわ」

武闘家「行くよ…全てを終わらせるんだ!」

盗賊「戦闘準備、オッケーなのです!」


勇者「俺が置き去りだよぅ……」

僧侶「今、回復魔法かけますから」

61 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:41:52.40 ID:6bFq7v+S0
魔王「喰らえ、黒雷!!」バチバチッ

魔法使い「シールド!!」

魔王「ほう、私の攻撃を魔法で防げる人間がいるとはな」ニヤリ

魔法使い「防御だけじゃないわよ! 煙幕っ!」

魔王「視界を曇らせるか…しかし気配を追えば、こんなもの……」

シュッ

魔王(投げナイフ……!?)サッ

盗賊「おぉ、煙幕と投げナイフのコンボを最初から回避したのは、魔王が初めてなのです! でも、諦めないです!」

シュッシュッ

魔王(くっ……素早い奴だ。気配を追うので精一杯だ!)サッサッ

武闘家「私を忘れてもらっちゃ困るなぁ~」

魔王「!! いつの間に……」

武闘家「喰らええぇ――っ!!」


――バキィ


魔王「――っ」

62 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:42:31.48 ID:6bFq7v+S0
魔王「人間にしては、力強い一擊だ……この"邪神の加護"がなければ、骨を折られていただろう」

魔法使い「何…? 魔王が纏っている魔力が、ダメージを吸収した?」

僧侶「あれは代々魔王に伝わる、邪神の加護。あれがある限り、彼女に致命傷を与えることはできません」

魔法使い「何それ、初耳なんだけど!? そんなの相手にどうダメージを与えるのよ!?」

僧侶「攻略法はあります。邪神の加護を打ち破ることができるのは"戦女神の剣"であり――」

勇者「その剣を扱える俺が、救世主ってわけだ」フフン

魔法使い「あら勇者、復活したの」

勇者「見てろよ皆…この俺が、魔王に纏っている加護を打ち破ってみせよう!」

魔法使い「うん、わかったからとっとと行って」


勇者「魔王よ…お前の時代は終わりだ。大人しく降伏して、俺の女になるがいい!!」ビシッ


魔法使い(何言ってんのあのバカ)


魔王「面白い。来るがいい、勇者よ」

勇者「はあああぁぁ――っ!!」ダダッ

武闘家「無駄のない走り、これなら行ける――」

勇者「喰らえ――」


僧侶「……肉を破れ。"堕天使の咎"」

バリバリバリッ

勇者「ぎゃあああぁぁっ!?」

盗賊「!? 勇者君の全身から血が……」

魔法使い「今の魔力は……」バッ


僧侶「……ふふ」

魔法使い「僧侶……あんたの仕業!?」

僧侶「はは……はははははっ!!」

63 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:42:58.53 ID:6bFq7v+S0
僧侶「回復魔法のついでに、『勇者』の体内に仕掛けをしたのですよ。面白い程に引っかかりましたね」

勇者「う……」ピクピク

僧侶「戦女神の剣……預からせて頂きます」

魔法使い「何で…? 裏切ったの、僧侶!?」

僧侶「いいえ、裏切ったわけではありません……。だって最初から、私は『魔王様』側の人間ですから」

魔法使い「何ですって……!!」


魔王「よくぞやった、僧侶よ……。勇者一行を欺くことに成功したようだな」

僧侶「えぇ魔王様、全ては貴方の為に――」

魔法使い「どういうことよ! 僧侶、私達を騙してたの!?」

僧侶「えぇ、そうです。勇者一行に入り、貴方達が魔王様を討てぬように旅を誘導させて頂きました」

魔法使い「誘導…!? そう言えば――」



僧侶『では、早速ですが魔王城までの経路について話し合いませんか? 私、これについては少し詳しいので、色々とプランを考えてきたのですが…』

勇者『僧侶にお任せするよ』



魔法使い「私達、僧侶の考えたプラン通りに旅を進めてきたわ…。まさか、それが策略だったの!?」

僧侶「えぇ、魔物側にとって重要な戦力を潰されぬよう誘導しました。あとついでに、魔王様を倒す為に必要な武具や、その情報を得られないようにも誘導しました」

魔法使い「な……旅が変にサクサク進むと思ってたら……」

盗賊「くうぅ…戦女神の剣を入手したことで、舞い上がっていたのです……」

64 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:43:41.63 ID:6bFq7v+S0
勇者「うぐぐ…僧侶……」

僧侶「あら。随分しぶといんですねぇ」

勇者「どうしてだ僧侶……俺はお前のこと、好きだったのに……」

僧侶「……笑わせてくれますね」フフッ

勇者「!!?」

僧侶「言っておきますが、私は貴方を好いているように見せていただけですよ。本当は心の底から大嫌いだし、むしろ一刻も早く便所に流されろゴミクズと思っていました」ニッコリ

勇者「ゴ、ゴミクズ……」ガーン

僧侶「あははは、脳みそが下半身に、頭に精液が詰まってる男は単純ですよね!! あはは、あはははははっ」

勇者「く、くそ……。惨めだ…俺は、惨めだ!!」


魔法使い(1ミリも同情できないわー)

65 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:44:10.25 ID:6bFq7v+S0
僧侶「魔法使いさん、武闘家さん、盗賊さん」

魔法使い「な、何…」

僧侶「大人しく帰って頂けませんか。貴方達では、魔王様にかないませんよ」

魔法使い「……帰ったら、貴方達はどうするの?」

僧侶「研究を進めるだけですよ。もうじき、研究は完成する予定……」

魔法使い「それって――」



魔法使い『『魔王が進めている恐ろしい研究』って何だか知らない? 何か研究しているのは聞いたけど、肝心の内容がわからないのよね。僧侶は知らない?』

僧侶『……はっきりはわかりませんが、どうやら『生物の常識を覆し、人間社会に悪影響を与える』ものらしいですよ』



魔法使い「人間社会に悪影響を与えるっていう、あの研究!?」

僧侶「悪影響…そうですね、悪影響かもしれませんね。だけど研究を完成させることが、私達の悲願ですから……」

武闘家「何だかわからないけど…私達は、魔王の野望を阻止しに来たんだよ!」

盗賊「ここで諦めるわけにはいかんのです!」

勇者「あのー…回復アイテム持ってないですか」ボロボロ

魔法使い「ない! 隅っこ行ってろ!」


僧侶「…仕方ありませんね。痛い目に遭ってもらいましょうか」

魔王「下がっていろ、僧侶。脅すだけなら、これで十分――」

魔法使い「!! この莫大な魔力は……」

盗賊「い、隕石が上空に!!」

魔王「凶星よ降り注げ…"黒雲の審判"」


ドガアアァァン

66 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/04(月) 18:44:39.64 ID:6bFq7v+S0
魔法使い「み、皆…大丈夫?」

武闘家「う、うん…攻撃が外れたお陰で……」

魔王「今のはわざと外したのだぞ。だが……次はないぞ?」

盗賊「ひっ……」

魔法使い(何てこと…あんな魔法攻撃、防ぎきれないわ!)

僧侶「おわかり頂けましたか? 魔王様の攻撃を防ぐ防具も、魔王様が纏う加護を貫く武器もない貴方達に、勝つ方法なんて無いんですよ」


魔法使い「くっ…」

魔法使い(確かにその通りだわ…これだけの力を見せつけられたら、絶望的……)

盗賊「うぅ…打つ手がないのです……」

魔法使い「撤退…するしかないの?」

武闘家「駄目だよ」

魔法使い「武闘家…!? でも、僧侶の言う通り私達に勝つ手段は……」

武闘家「大丈夫!! 魔法使いちゃん、私、いつも言ってたよね」

魔法使い「え……?」

武闘家「筋肉に、できないことなんてないんだよ……!!」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 18:49:38.31 ID:K0mjP5QXo
レズもNTRも好きな身としては、誰と誰がくっついてもおいしい神展開

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 20:06:02.75 ID:fvUUryvwO
俺も僧侶のおっぱい揉みたい

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 16:02:55.81 ID:RFrXHIkwo
NLも百合も(薔薇も)それぞれ魅力あるよね

71 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:16:27.60 ID:iTyYYhYB0
魔王「ほう、人間…まだ私に立ち向かおうと言うのか?」

武闘家「私達は偉くなって、法律を変えなきゃいけないんだよね。その為に、絶対に貴方を倒すよ」

魔王「勇敢な小娘だな…だが、それだけで私には勝てぬぞ!」ゴゴゴ

盗賊「出たです、隕石!!」

魔王「降り注げ!! 黒雲の審判!!」

魔法使い「きゃああぁ、降ってくるぅーっ!!」

武闘家「すううぅぅ……」

魔法使い「どれくらい効果あるかわからないけど……シールd」

武闘家「はああああぁぁぁっ!!」


バキイイイィィッ


魔法使い「」

盗賊「な……」

武闘家「どう?」ニヤリ

魔王「馬鹿な……光速で降り注ぐ隕石を砕いただと!?」

魔法使い「え……。え?」

72 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:17:00.90 ID:iTyYYhYB0
魔王「何かの間違いだ! 喰らうがいい、爆炎、黒雷!」

武闘家「せあっ!!」ビュンッ

魔法使い「蹴りで…かき消した……」ポカーン

魔王「な…僧侶、何なのだ、あの人間は!?」

僧侶「ぶ、武闘家さんは、ただの怪力で……で、でも、あそこまでの力は……」

武闘家「あったんだなぁ、それが。今まで大した敵と戦ってなかったから、お披露目する機会がなかったけど」フフン

盗賊「そっか…魔物側の重要戦力との戦闘を回避させたせいで、僧侶ちゃんも武闘家ちゃんの戦力を正しく測れてなかったのです!」

僧侶「ま、魔王様…申し訳ありません!」

魔王「良い。それよりも、規格外の人間がいたものだな…面白い!!」

僧侶「ですが…きっとこのままでは、筋肉の力で邪神の加護も打ち破られるパターンです!」

魔法使い「パターンて言うな」

魔王「それならそれで……」ゴゴッ

魔法使い「!! この魔力の波動は……!!」

盗賊「くっ…吹き飛ばされそうなのです……!!」

魔王「距離を詰めなければ良いだけのこと。さぁ、どうする!?」

武闘家「…っ、厄介だなぁ」


勇者「」←吹っ飛ばされて壁に激突して気絶した

73 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:17:33.50 ID:iTyYYhYB0
武闘家「でも、行くしかないよね…! せりゃああぁぁっ!!」

魔法使い「無理矢理行った!!」

魔王「ほほー、やるな。だが……」クイッ

武闘家「!?」ヨロッ

魔法使い「!! 波動の向きが、向かい風から追い風に変わった!?」

盗賊「前方に勢いをつけていた分、追い風による前方へのよろめきが大きいです!」

魔王「隙ありだ」ドゴォン

武闘家「うわあぁぁっ!!」ドサァッ

魔法使い「武闘家ぁーっ!!」

武闘家「いてて…。大丈夫、とっさに防御姿勢取ったから!」

魔王「この程度の攻撃魔法では大したダメージも与えられぬか。見かけによらず、鎧のような筋肉だな」

僧侶「ですが魔王様、距離を空けたままダメージを積み重ねればいずれは……」

武闘家「めげるもんか! おらぁーっ!!」ダダッ

74 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:18:00.24 ID:iTyYYhYB0



武闘家「…はぁ、はぁ……」

魔王「かなりしぶといな。何発喰らわせただろうな?」

僧侶「しかし確実にダメージは蓄積しています。それに、体力も大分消耗してますよ」

武闘家「くっ、まだまだ……」

魔法使い「やめて武闘家、このままだと死んじゃうわ!」ガシッ

武闘家「!! 魔法使いちゃん……」

魔法使い「もう見ていられない! 武闘家がこれ以上傷つくのは、嫌よ!!」

盗賊「なのです…。ここは撤退して、出直した方が良いのです」

魔王「そうはいかんぞ」

僧侶「魔王様?」

魔王「勇者以外の虫けら程度、逃がしても支障はないと思っていたが…。事情が変わった。その筋肉娘は、確実に仕留める!!」

武闘家「…っ!」

魔王「これが私の全力だ……はああぁぁぁっ!!」

魔法使い「魔王の魔力が城中に蔓延して……危ないっ!!」


ドガアアァァン

75 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:18:53.49 ID:iTyYYhYB0
僧侶「……ゴホッ。城ごと吹っ飛ばすとは、正気ですか魔王様」

魔王「こうでもしないと倒せないと判断した。城は直せば良い」

僧侶「そう…ですね」

魔王「どうした僧侶。仲間だった者たちが気がかりか?」

僧侶「!! い、いえ、そんなことは……」

魔王「わかっている、お前は心優しい娘だ。仲間だった者たちに情がわかぬはずがない」

僧侶「……はい。あ、勇者のゴミクズはどうでもいいですけど」

魔王「すまない。お前には、辛い役目を任せたな……」

僧侶「魔王様の為なら、何だって……」

76 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:19:25.33 ID:iTyYYhYB0
魔法使い「う……」

魔法使い(いたた……。私、生きてる……?)

武闘家「良かったぁ、魔法使いちゃん。大した怪我はないね?」

魔法使い「!! ぶ、武闘家……」

武闘家「大分、吹っ飛ばされちゃったね? すっごい威力だったぁ~…」

魔法使い「あんた、す、凄い怪我じゃない!!」

武闘家「大丈夫だよ、見た目は派手だけど大したことないから」

魔法使い「嘘おっしゃい! あんたが嘘ついてたら、わかるんだからね!!」

武闘家「へ、へへ…やっぱり、魔法使いちゃんにはかなわないなぁ」

魔法使い「……私を庇ったんでしょ」

武闘家「………」

魔法使い「どうしてこんな無茶したのよ…!! 私のせいで、あんたが……」グスッ

武闘家「そんな、泣かないでよ魔法使いちゃん。私、ちゃんと生きてるんだよ?」

魔法使い「バカ……女の子なんだから、傷跡が残るとか、考えなさいよ……」

武闘家「あはは! 魔法使いちゃん、こんな時にずれてるー」

魔法使い「笑い事じゃないわよ……私にとっては、とってもとっても大事なことで……」グスグス

武闘家「うん、うん。ありがとう魔法使いちゃん。……ごめんね、泣かせて」ポンポン

77 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:19:52.19 ID:iTyYYhYB0
武闘家「さて、魔王のとこ戻ろうか」

魔法使い「!! あんた、その体でまだ戦おうっての!? やめなさい、逃げるわよ!」

武闘家「大丈夫。今ので、いい作戦思いついたんだ。あのね……」

魔法使い「あんたが思いつく作戦なんかで、あの魔王を打ち破れるわけないでしょ!」

武闘家「ひどいなぁ」プクゥ

魔法使い「せめて…体を治してから再戦するのよ! 僧侶が向こうについちゃったから、今は回復手段がないんだからね!!」

武闘家「それじゃ駄目だよ。今の魔王こそ、魔力を大きく消費してて、倒すチャンスでしょ?」

魔法使い「魔王以上にあんたが消耗してるのよ! それくらいわからないの、バカ!!」

武闘家「そりゃまバカだけど。どうして、そんなに止めるのさ」

魔法使い「……あんたに死なれたくないからに決まってるでしょ!!」

武闘家「魔法使いちゃん……」

魔法使い「負けてもいいし、世界がどうなってもいいのよ! あんたが生きてさえいれば……私は、どんな世界でだって笑って生きていけるんだから!!」

武闘家「……」

78 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:20:37.11 ID:iTyYYhYB0
武闘家「へ、へへへ……嬉しいなぁ」

魔法使い「人の気も知らずに……」グスグス

武闘家「あー、ごめんね魔法使いちゃん。泣かないで、ね?」

魔法使い「泣いてない! バカ! いいから帰るわよ!」

武闘家「魔法使いちゃん、言ったよね……? 体を治してから再戦なら、いいって」

魔法使い「言った、けど……」

武闘家「じゃあ――そうするね」クイッ

魔法使い「えっ、何――」


チュッ


魔法使い「――」

武闘家「……」


柔らかいものが、私の唇を塞いでいる。目の前にあるのは、彼女の顔で――


武闘家「……ぷはぁ」

魔法使い「……」ポカン

武闘家「へへ…ごめんね、魔法使いちゃん♪」

魔法使い「………え?」

79 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/05(火) 19:21:13.84 ID:iTyYYhYB0
武闘家「さて回復したよ! 行こうか!」

魔法使い「ちょっ、あんた……っ、わわわ、私のファースト……」

武闘家「話は後! 魔王の魔力が回復する前に行かなきゃ!!」

魔法使い「ちょっ……いや、行ったところで勝てるわけ……」

武闘家「言ったじゃない、作戦があるって」

魔法使い「……どんな作戦よ?」

武闘家「それはねー……」

83 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:16:43.79 ID:8wdOIHkV0



盗賊「ううぅ……」

魔王「おや、1人見つけたぞ。良かったな僧侶、生きていたぞ」

僧侶「えぇ…"回復魔法"」

僧侶(魔法使いさんと武闘家さんも…できれば、逃げていて下されば良いのですが……)


武闘家「魔王ーっ!!」

僧侶「!! 武闘家さん、魔法使いさん……」

魔王「ほほう、あれを喰らってピンピンしているか。面白い!」

僧侶(な、何で逃げてくれなかったんですか! 殺されますよ!)

武闘家「行こう魔法使いちゃん! 協力して魔王を倒すんだ!」

魔法使い「えぇ!」ゴオォ……

魔王(あれは攻撃魔法の類か……だがあの程度の魔力、恐れるに足りん)

魔法使い「はああぁ――っ!!」

魔王「フンっ!!」ビュン

僧侶(流石、魔王様。人間の中でもトップクラスの使い手である魔法使いさんの魔法を、片手でかき消した!)

84 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:17:25.95 ID:8wdOIHkV0
魔法使い「まだまだ! でりゃあぁぁっ!!」

魔王「何発打ち込もうが無駄だ! 全て、かき消してやる!」ゴォッ

魔法使い(来た…魔力の波動による向かい風!!)

魔法使い「私の魔力で押し返す!!」ゴゴッ

魔王「ほう抵抗するか…しかし、脆弱だな」

武闘家「十分だよ!」ダッ

魔王「来るか、筋肉娘!!」

武闘家「うらぁーっ!!」ダダッ


僧侶「魔法使いさんの波動による後押しにより、魔王様の波動への抵抗力が強まっている! このままでは、距離を詰めれれる――」

魔王「それならそれで構わん」クイッ


武闘家「!!」ヨロッ

魔法使い(出た――また、向かい風を追い風に変えた!)


魔王「よろめいた一瞬の隙――今度こそ、仕留める」スッ


魔法使い「……っ!!」

魔法使い(作戦通り!!)

魔法使い「でりゃああぁ――っ!!」ドゴオオォォン

魔王「――っ!?」

85 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:17:52.46 ID:8wdOIHkV0
~先刻~


武闘家『魔法使いちゃんの魔法で、何とか魔王による波動を引き出してほしいの。そこからが勝負だよ』

魔法使い『波動って…あの技はシンプルだけど厄介よ。魔王も、いいタイミングで向かい風を追い風に変えてくるし…』

武闘家『うん、そこを狙うんだよ。私がよろめいた一瞬の隙――そこが魔王にとっての隙でもある』

魔法使い『まさか、そこを攻撃魔法で突けっての? それは無理よ。私の攻撃じゃ、魔王が纏っている加護を貫けないわ』

武闘家『そうじゃない。魔法使いちゃんが狙うのは魔王じゃなくて、私』

魔法使い『……え?』

武闘家『私を魔法で吹っ飛ばして。魔王の懐まで』

魔法使い『!!?!?』

86 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:18:26.18 ID:8wdOIHkV0
魔王「な――っ」

武闘家「へへっ……リーチ入りました♪」

魔法使い「攻撃ブチ込め、武闘家!!」

バッ

僧侶「させません!!」

魔法使い「!! 僧侶が間に……」

盗賊「邪魔させないのですっ!!」ガバッ

僧侶「!!! 離っ……」ジタバタ

魔法使い「盗賊……ナイス!! あとは……」


武闘家「でりゃああぁぁ――っ!!」

魔王「――っ!!」


幾つもの打撃音が、その場に響き渡った。

87 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:19:27.57 ID:8wdOIHkV0
魔王「う……」バタッ

僧侶「ま、魔王様……」


武闘家「ふぅ…倒したっ!」

魔法使い「信じられない……本当に筋肉の力だけでやりやがったわ」

盗賊「あれ? 魔法使いちゃん、武闘家ちゃんを信じて協力したんじゃないですか?」

魔法使い「そんなわけないでしょ! 武闘家がワガママ言って聞かないから……」

武闘家「いつもありがと、私のワガママ聞いてくれて。魔法使いちゃん、大好きだよ」ギュッ

魔法使い「!!!」

盗賊「おやおやぁ~? 何かアヤシイですね、お2人さん」

<ふっふっふ……

盗賊「ん?」

88 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:19:53.78 ID:8wdOIHkV0
勇者「よくやったな!! 僧侶の妨害工作にもめげず魔王を打ち破るとは、流石勇者パーティーだ!!」

魔法使い「うわ。あんた、何でピンピンしてるの」

勇者「10分寝たら回復した」

魔法使い「生命力だけは勇者ね。ゴキブリの称号を与えたいわ」

勇者「さて、魔王。敗者には審判が下される、それが戦いのルールだ」

魔王「ぐ……」

勇者「魔王よ……俺の女になれ!!」


武闘家(ないわー)

盗賊(何かシャクなのです)

魔法使い(ものすごく魔王を助けたい)


魔王「くっ、誰が……」

勇者「随分と反抗的だな……だが、思い知らせてやるよ。お前が、女だということをな」クイッ

魔王「!!」

ゴゴゴゴゴゴ

勇者「!?」

魔法使い「なっ!? この魔力は……」

89 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:20:26.19 ID:8wdOIHkV0
僧侶「魔王様に触れるな……このゴミクズが……」ゴゴゴゴゴ

勇者「ひぇえぇ!?」

魔王「やめろ、僧侶! それはお前の命を削る最終奥義!! 今は使うべき時ではない!!」

僧侶「いいえ、魔王様! そんなゴミクズに貴方が汚されるくらいなら、私はゴミクズもろとも死ぬことを選びます!!」

魔法使い「ゴミク…じゃなくて勇者! ヤバいから魔王から離れなさい!」

勇者「う……」パッ


僧侶「あぁ魔王様、大丈夫ですか! あの性病菌まみれの手で魔王様に触れるなんて、うううぅ」

魔王「大丈夫だ……僧侶、そこまで追い詰めてすまない」ギュッ

僧侶「魔王様…魔王様ぁ……」グスグス


魔法使い「…ねぇ、この2人の関係性って……」

武闘家「……うん、そうだよね」

盗賊「間違いないのです」ウンウン

勇者「え、えっ?」

90 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:20:55.13 ID:8wdOIHkV0
魔王「しかし、私は敗者確定だ……。お前と結ばれることは永遠にかなわん」

僧侶「そんなの、死んだ方がマシです……」シクシク

魔王「それが敗者の宿命というものだ。お前には、辛い思いをさせる。本当にすまない」

僧侶「いいえ魔王様! 私、諦めません! たとえ時間がかかっても……」


魔法使い「何か…可哀想よね」

武闘家「うん……僧侶ちゃんは、愛を貫いただけなんだよね」ホロリ

盗賊「見逃してあげたいけど……」


勇者「ファーッハッハッハ!! 百合だか何だか知らんが、諦めて俺の女になるんだな!!」

魔法使い&武闘家&盗賊(こいつのアレ、もげればいいのに)


僧侶「私達の意思を継いだ魔物達が、研究を完成させるでしょう! その時こそ、私は魔王様と……」


魔法使い(研究……そうだ、研究って何だったの?)


僧侶「魔王様の子を、産んでみせますとも!!」


魔法使い「……は?」

武闘家「え?」

盗賊「子……えっ、えっ?」

91 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:21:21.46 ID:8wdOIHkV0
魔王「完成間近だったのだがな…"同性同士で子を作れる研究"は」


魔法使い「」ピクッ


僧侶「きっと邪魔されます……だってあの研究は、"生物の常識を覆し、人間社会に影響を与え"ますから! 完成すれば"男優位の社会"が崩れ去ります!!」


武闘家「」ピクッ

盗賊「」ピクッ


魔王「そうだな…人間社会の偉い奴らは男ばかり。そんな研究、認めないだろうな」

僧侶「うぅ……私、魔王様との子が欲しいです……」


勇者「な、何て恐ろしい研究だ! 生殖の常識を覆すとは、生命への冒涜!! そんなの、俺たちが許すわけ……」

魔法使い「……皆、いいわね?」ゴゴゴ

武闘家「うん」ググッ

盗賊「やっちゃうのです」ビュンビュン

勇者「………え? 皆、戦闘準備なんかして何を…って、何で俺を見て……うわやめろ、何をする――」


ウゴヴァアアアアァァァァァ……



こうして私達は闇落ちしたのだった。

92 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:21:47.66 ID:8wdOIHkV0
それから1年……


武闘家「魔法使いちゃん、魔法使いちゃん!」ドンドン

魔法使い「ふゎあ~…何よ、うるさいわね」

武闘家「遂に人間社会で制定されたよ…"同性同士の婚姻"制度が!!」

魔法使い「本当!?」ガバッ


闇落ちした私達は、魔王城に居ついて研究を手伝っていた。
その一方で全世界の同性愛者、女性人権団体などと手を組み、人間社会で革命を起こした。
色々あったけどそれらが全部上手くいって、今に至る。


武闘家「今日、婚姻届出そうよ!! ほら、私はもう全部記入済みだよ!!」

魔法使い「後で書くから、二度寝させて……いつもならまだ寝てる時間……」

武闘家「魔法使いちゃんたら、寝坊助なんだから~」ゴソゴソ

魔法使い「ん……何ぃ、布団入ってきて」

武闘家「一緒に寝よう♪」イヒヒ

魔法使い「………」

93 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:22:14.18 ID:8wdOIHkV0
魔法使い「もー…どうしてあんたって、そんなに可愛いのよ……」ギュッ

武闘家「甘えたいんだもん」スリスリ

魔法使い「昔から本当、変わらないわね……」ナデナデ

武闘家「これでも我慢してたんだよー? 魔法使いちゃん、なかなかデレてくれないから……」

魔法使い「そりゃ……同性愛禁止だってのに、デレるわけにはいかないでしょ。本当にバカね……」

武闘家「両思いってわかってからも、同じじゃん! 魔法使いちゃん冷たいよ~」

魔法使い「あー、うん。ごめんね」

武闘家「絶対に許さないもん! 罰としてキス跡つけてやるっ!」

魔法使い「ちょっ、バカ! あーもう毎日毎日、このキス魔!」ポカッ

武闘家「ぎゃふっ」

魔法使い「ったく…ずっと焦がれてたのは、私の方もだっての。もう離さないわよ」ギュッ

武闘家「えへへ~……」

94 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:22:43.76 ID:8wdOIHkV0
生き物の常識は変わる。それは神の意思に反しているのかもしれないけれど。


僧侶「魔王様…あの、私、身篭ったみたいです」

魔王「何、本当か!! よくやったなぁ!!」ギュッ

僧侶「魔王様…愛しています」

魔王「私もだ! お前と産まれる子を、永遠に愛すると誓おう!」


私達は、それでも愛を貫くと決めた。


姫「盗賊、このドレスがいいんじゃないかしら?」

盗賊「ぼ、ボクには高貴すぎるのです…」

姫「結婚式用だもの、これくらい華やかな方がいいわ! もう盗賊ったら、可愛いんだから~!」チュッ

盗賊「姫様ぁ、まだお昼ですぅーっ!」


この愛を、永遠のものにすると決めたのだ。


武闘家「さて引越し完了! 今日から始まるんだね、私達の夫婦生活が!」

魔法使い「夫婦って…何をすればいいのかしらね?」

武闘家「とりあえず2、3年はイチャイチャしようよ! 子供作るのはそれからで……」

魔法使い「そうねぇ、武闘家が産みたくなってからでいいわよ」

武闘家「産むのは魔法使いちゃんだよ?」

魔法使い「え?」

武闘家「え?」

95 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:23:33.47 ID:8wdOIHkV0
魔法使い「どう考えても、甘えん坊なあんたの方が奥さん役でしょ!」

武闘家「私の方が力強いよ! 奥さん役は魔法使いちゃんだよ!」

魔法使い「あんたが産む子供の方が、絶対愛嬌あって可愛いわよ!」

武闘家「魔法使いちゃんの子供なら、頭の良い子になるよ!」

魔法使い「……」

武闘家「……」


きっと、新しい家族が増えても幸せでいられる。
この子となら、どんな世界でだって笑っていられる。


魔法使い「し、仕方ないわねぇ。……順番に、ってのはどう?」

武闘家「う、うん…そうだね」


Fin

96 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:24:10.27 ID:8wdOIHkV0
おまけ・勇者のその後


>酒場


勇者「うぅ…姫様にも仲間にも、キープしてた子達にもフラれたよぅ。チキショウ、女なんて、女なんて!」

ガチムチ「ニィちゃん、気の毒だなぁ。ほら、飲め飲め」

勇者「ありがとうございます…うぅ、酔いが回ってきた……」

ガチムチ「とことん酔いつぶれちまいな! イヤなことを忘れるには、それが1番だぜ!」

勇者「はい!!」グビグビ

ガチムチ「ニヤリ」





>1時間後


ガチムチ「ハァハァ、勇者、勇者ぁ……ひと目見た時から、良いと思ってたんだよ!」ズッコンバッコン

勇者「らめぇ、裂けちゃう! 肛門裂けちゃう!!」

ガチムチ「孕めやあぁァッ!! せやっ!」パンパンパンッ

勇者「アッー!!」


勇者はその後、5人の子供を産んだ。

97 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/07/06(水) 19:24:45.42 ID:8wdOIHkV0
ご読了ありがとうございました。
魔王を倒した時の作戦は、VS戸愚呂兄弟戦のパクry

勇者は物語の時代背景を考えるとそこまでモラルに反したことはしてないので、救済しておきました(´∀`)

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 19:27:53.64 ID:EuIZEeCZO
毎度ながら楽しかった乙

そうか最後のは霊○だったか

posted by ぽんざれす at 19:36| Comment(7) | ss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月30日

新作スレ立てのお知らせ

SS速報VIPにて魔法使い「男は嫌い…」投下開始致しました。

男女比1:4の勇者パーティーに属する魔法使いは男嫌い。一方で、仲間であり幼馴染である武闘家に想いを寄せており…。

まさかの百合。百合だからこその葛藤やら関係性やらを、上手く書けるといいな!!

スイーツ作者による百合ってどこに需要あるんだよ。

完結には1週間程度を目安として考えています。
posted by ぽんざれす at 21:12| Comment(0) | スレ立てお知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

【父の日】魔王子「僕が美しすぎて世界征服とかどうでもいい」

魔王子「僕が美しすぎて世界征服とかどうでもいい」の父の日スピンオフです。





魔王「側近よ、魔王子の様子はどうだ」

側近「はっ。非常に馬鹿…あ、いえ、魔神の姿が人間共に与えた影響は計り知れず、馬鹿にしては…ではなく、他国と上手くバランスを取っているご様子です」

魔王「成程な。だが、あいつは甘いところがあるのが心配だな」

側近(心配なのは甘いところで終わりませんて…。こないだも服を着忘れたことに気付かないっていう馬鹿っぷりを披露しやがったし)

魔王「だが最近…湯治のお陰か、腰の痛みも和らいできた」

側近「!! では、魔王様……」

魔王「あぁ…我の復帰も近いぞ……!!」

側近(遂に…魔王様が復活なさる!!)


バタバタ


魔王子「パパ~ン! パパ~ン!」

魔王「どうした魔王子」

側近(馬鹿が来た)

魔王子「今日はパパンに感謝を伝える日なんだってさ」

魔王「ほう。お前は我に何を感謝していると言うのだ」

魔王子「ありがとう、僕をこんなに美しく産んでくれて…恐ろしい顔のパパンと僕は似ても似つかないけど、でもパパンは美しい僕の父親だ! だから…誇っていいよ?」

魔王「お前は馬鹿か」

側近(すみません魔王様、貴方の息子は馬鹿です)

魔王子「パパン! 見てよ、美しい僕の華麗なる奥義…」ヌギッ

側近(あ、脱いだ)

魔王子「ビューティフルフラワーシャワー!!」

ばらばらっ

魔王子「黄色い薔薇は父の日の花…。薔薇が僕に降り注ぐ景色、美しいだろう?」

魔王「ほう、魔法で花を生み出すか。脆弱な技だな」

魔王子「花は儚いからこそ美しいんだよ、パパン。それにこの技は、実用的でもあるんだ」

魔王「例えば?」

魔王子「パパンの湯治に使っていた薬草は、この技で生み出したんだよ」

魔王「………」

側近「………」

魔王子「それじゃあ僕は国中に薔薇を降り注いでくるね! グッナイ、パパ~ン!」ダッ

側近「去って行きやがった、あの馬鹿……」

魔王「……側近よ」

側近「は、はい!」

魔王「腰の調子が…悪化してきた」

側近「魔王様ぁ――っ!?」


こうして魔王は復活が叶わず、世界は平和が続いたそうな。


終わり




あとがき

父の日ssなのに父の腰を悪くしてどうする! あとヒロインが1度も出てきてないぞ!
ツッコまれる前にセルフでツッコんだから責められまい、フハハハハ!!
posted by ぽんざれす at 06:52| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月02日

ブログオリジナルss一覧

ブログオリジナルは基本的に暗黒騎士ss

→あらすじ
☆作者コメント

魔女「世界から弾かれた私と彼」
→人間側にも魔物側にも属せない魔女は、世界から弾かれた者が集う森で生活していた。いつも通りの日常を過ごしていたところで暗黒騎士と出会い――
☆俺様系×弱気っ子ですね。完全にスイーツです。甘々をお求めの方は是非。

元勇者「嫁にして下さい」 暗黒騎士「は?」
→人間に裏切られた元女勇者は、暗黒騎士の元に闇落ちしに来る。
☆ふざけてます、えぇ! でも大丈夫、読み進めればスイーツだから!
posted by ぽんざれす at 22:06| Comment(0) | ブログオリジナルss一覧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

元勇者「嫁にして下さい」 暗黒騎士「は?」

>暗黒砦


元勇者「実家に絶縁言い渡して、嫁入り道具も持ってきました! さぁ、この婚姻届に印鑑を!」

暗黒騎士「いや待て。お前、勇者としての使命はどうした」

元勇者「勇者交代したんだよねー。まぁ簡単に言うとお役御免ですわ」

暗黒騎士「早いな。まだ旅立って3ヶ月じゃなかったか?」

元勇者「おのれ、人間どもめ…この私を闇落ちさせたらどうなるか、思い知らせてやる…!!」ゴゴゴ

暗黒騎士「事情がわからん」

元勇者「お、聞きたい、聞きたい!? よーし、聞かせてあげましょう!!」

暗黒騎士「手短にな」


元勇者「そもそも私は"勇者一族"の末裔なの。そして私には、双子の兄がいるの」

暗黒騎士「ふむ」

元勇者「だけど兄は7歳の頃に行方をくらまし、発見された頃には意識を失っていた。それから10年間、眠り続けたままだった」

暗黒騎士「あぁ…聞いたことがあるな」

元勇者「それから、この私が勇者一族の跡取りとして育てられることとなった」

暗黒騎士「女だてらに苦労したな」

元勇者「そして魔王が目覚め、私が旅に出ることとなった。ところがっ!!」

暗黒騎士「ところが?」

元勇者「私が旅立って3ヶ月というタイミングで、兄が目を覚ました!! 私はこの寝坊助に、勇者の座を奪われたってわけよ!!」

暗黒騎士「いくら男とはいえ、10年も寝ていた奴に勇者なんて務まるのか?」

元勇者「この10年、兄の魂は天界の神と共にあったそうな」

暗黒騎士「……ほう?」

元勇者「神の下で修行を詰んだ兄の剣技は、そりゃもう見事なもんです。えぇ、私なんて瞬殺される程に」

暗黒騎士「……」

元勇者「ふ、ふふふ……」

暗黒騎士「どうした?」

元勇者「うがああぁぁ――ッ!!」ダンダンッ

暗黒騎士「!?」

元勇者「ふざけんなよクソが!! 私の10年間は何だったんだ!! 神のバッキャロー!!」ダンダンッ

暗黒騎士「……まぁ気持ちはわかる」

元勇者「というわけで闇落ちすることに決めたわけ。嫁にして、暗黒騎士」

暗黒騎士「何故そうなる」

元勇者「だって暗黒騎士だって、人間サイドから闇落ちして魔王の配下になったんでしょ? 色々教えて下さい、パイセン!」

暗黒騎士「俺に何のメリットもないな」

元勇者「B87、W58、H88」

暗黒騎士「体をアピールしてどうする」

元勇者「闇落ちの基本は陵辱でしょ」

暗黒騎士「陵辱する前から堕ちる気満々でどうする。そもそも俺にそんな趣味はない」

元勇者「じゃあどうしろってんだよォ!!」ダンダンッ

暗黒騎士「逆ギレするな」





悪魔「お茶だぜェ~」

元勇者「ありがとう」

暗黒騎士「で、元勇者よ……」

元勇者「その呼び名はヤダ」

暗黒騎士「そうか。何と呼べばいい?」

元勇者「そうだな~…"暗黒の花嫁"とかどう?」

暗黒騎士「勇者と呼ばれる前は何と呼ばれていた?」

元勇者「むぅ。"嬢"だよ、勇者一族のお嬢さん」

暗黒騎士「そうか、お嬢。とりあえず帰れ」

元勇者→嬢「えぇー、何でー。闇落ちさせてよ闇落ちー」

暗黒騎士「一時の感情で闇落ちなんてするものじゃないぞ。これは先輩からの忠告だ」

嬢「一時の感情じゃないもん! 人間にしっぺ返しする気満々だもん!」

暗黒騎士「闇落ちを気楽に考える阿呆なぞ邪魔なだけだ。帰れ帰れ」

嬢「むううぅ~……」



暗黒騎士「ふぅ、帰ったか」

悪魔「ヒャヒャッ。暗黒騎士ぃ、良かったのかー。利用価値ありそうな小娘だったじゃんよォ」

暗黒騎士「あんな阿呆娘を利用するほど落ちぶれていない」

暗黒騎士(それに、あの阿呆娘の動機といい境遇といい……)

暗黒騎士(俺と、色々重なるところがある。…だからこそ、受け入れたくなかった)





俺は元々、聖都の聖騎士団――人間側で、騎士団を率いていた。
だが元老院は魔王側と和平を結ぶことを決定し、その際に聖騎士団を切り捨てた。今までの魔王との諍いの原因は聖騎士団にあると、聖騎士団に罪を被せてきたのだ。

元老院が俺に下した処罰は、斬首刑――

裏切られた怒り。死にたくないという想い。
この2つの気持ちから、俺は、人間を裏切ることを決めた。


暗黒騎士「う……」


しかし今でも、あのことは夢に出てくる。
俺は脱獄の際に――


『ああぁ――ッ!』
『た、たすけ……』
『う……ッ』


元老院の人間を1人残らず――殺した。


暗黒騎士「……ハッ!」

ベッドの上で飛び起きる。また、あの夢だ。

暗黒騎士(魔王軍に寝返ったことを後悔しているわけじゃない。だが…それでも嫌なものだ。人を切る、という感覚は)

嬢「どったの暗黒騎士? 悪夢でも見た?」

暗黒騎士「」


<うわあああああぁぁぁぁぁぁ

悪魔「暗黒騎士の声!?」ガバッ


悪魔「どしたっ!!」ダダッ

暗黒騎士「何でここにいるんだ! この、このっ!」バシバシ

嬢「夜這いだよ夜這い~。ねぇねぇ、どぅお~?」

暗黒騎士「寄るなぁ!!」バシバシ

悪魔「おわちゃー。ビバ☆肉食系女子って感じィ?」

暗黒騎士「警備兵はどうしたぁ!!」

悪魔「廊下で倒れてたぞ」

嬢「全滅させた☆ あ、気絶させただけだから殺してないよ」テヘペロ

暗黒騎士「何て恐ろしい女だ……!!」

嬢「You、もう娶っちゃいなよ!」

暗黒騎士「…ついて来い!」グイッ

嬢「あらヤダ暗黒騎士ったら大胆なんだからぁ」

暗黒騎士「ここに立て」

嬢「わぁ真っ暗! そっか暗黒騎士って電気消すタイプなんだね~」


ガチャン


嬢「ガチャン? ん? なに、この鉄格子?」

暗黒騎士「そこに入ってろ!」

嬢「えっ、もしかして監禁プレイ!? やだー、レベル高~い!」

暗黒騎士「無視だ、無視」スタスタ

悪魔「おやすみィ~♪」



>翌日


暗黒騎士「いつあいつが牢獄を破ってくるかという心労から、全然眠れなかった……」

悪魔「牢屋の中にいるから大丈夫だぜ~。元気に三杯飯も食ったし!」

暗黒騎士「あいつの処遇をこれからどうするか……」

猫耳「暗黒騎士ぃー!」バァン

暗黒騎士「猫、どうした」

猫耳「砦に人間が近付いてきてる! 間違いない…あいつ、新勇者だ!」

暗黒騎士「!!」

悪魔「おやァ。妹を助けに来たのかねェ?」

暗黒騎士「あー…非常に厄介だな」

悪魔「ほっとくわけにはいかねぇだろ」

暗黒騎士「そうだな……」



>砦前


勇者「嬢は、この砦に囚われているのか…。待ってろよ、助けてやるからな!!」

暗黒騎士「よくぞ来たな、勇者よ」スッ

勇者「その鎧…元聖騎士長、現魔王軍幹部の暗黒騎士だな! まさか砦のボス自ら現れるとは……」

暗黒騎士「お前の目的は、あの元勇者か?」

勇者「そうだ! 妹を返してもらう!」

暗黒騎士「いいだろう」

勇者「え?」


悪魔「連れてきたぞー」

嬢「!! お兄様……」

勇者(嬢…!? いや…これは罠か!?)

暗黒騎士(さっさと連れ帰ってくれ)

嬢「お兄様ぁーっ!」ダダッ

勇者「嬢……!」

暗黒騎士(よし行ったか)

嬢「お兄様ぁ、私、私……」ダダッ

勇者「安心しろ嬢、俺が守ってや……」

嬢「どっせええぇい!!」バキイイィッ

勇者「」

暗黒騎士「」

悪魔「ナイスヒット!」グッ

勇者「ガハ……」ピクピク

嬢「さぁ暗黒騎士! どうする、殺る!? それとも魔王に引き渡す!?」

暗黒騎士「待て」





猫耳「勇者、帰ったよ~」

暗黒騎士「そうか、良かった」

嬢「何で無事に帰すの? やる気ないの?」

暗黒騎士「こちらの尊厳に関わるんだ!」

嬢「尊厳? ハンッ、私らの尊厳を踏みにじったのは人間の方じゃんか! 外道な手段もバンバンやっちゃいましょうぜ!」

暗黒騎士「お前のような極悪人と同類にはなりたくない。とにかく余計なことはするな、わかったか!」

ガチャン

嬢「ちぇー、また監禁アンド放置プレイかー」

悪魔「わりーね。あいつ、聖騎士団を率いていただけあって、卑怯者になりきれないんだよなぁ」

猫耳「まぁボクらで良ければ話し相手にはなるよ、暇だし」

嬢「ねぇねぇ。暗黒騎士ってここの砦の番人…貴方達の上司でしょ? 上司に対してフレンドリーだね?」

悪魔「あー、魔王軍は割と上下関係がユルいからな。アットホームが売りの職場よ!」

猫耳「魔王様も基本無礼講な人だしにゃ~」

嬢「あ、そーなの。てっきり怖い人かと思ったわー」

悪魔「ま、怖いっちゃ怖いよ。暗黒騎士が勇者を見逃したのも、魔王様が怖いからだろうし」

嬢「ん? どゆこと?」

猫耳「魔王様は好戦的だからにゃ~。口には出さないけど、自ら勇者と戦いたがってるんだよね~」

悪魔「オレらが勇者を倒しちまったら、それこそ魔王様の逆鱗に触れるんだよなァ。だから、オレらは適度にサボっておくのが1番いいわけ」

嬢「ヌルい職場だね~!」


<あはははは


暗黒騎士(えぇい、和気藹々とするな……!!)



>翌日


嬢「でさ~!」

魔物たち「ワハハハハハ」

暗黒騎士「おい!!」

嬢「あ、暗黒騎士! 求婚しに来たの?」

暗黒騎士「違う! おいお前たち、仕事をサボって談笑するな!!」

悪魔「いいじゃん。可愛い女の子と喋れる機会って、そうそう無いんだからさ~」

猫耳「嬢と話すのは面白いにゃ~」

暗黒騎士「お前たち……男所帯のせいで、女に対して異様に甘くなったのか……。ちなみに、どんな話をしていたのだ?」

猫耳「今は国王暗殺計画のパターン14について」

暗黒騎士「そんな話をする女にほだされるな!!」

嬢「真剣な恋バナなんだよ。国王の首を持って来れば、暗黒騎士は私を好きになってくれるかなぁ…って」チラッ

暗黒騎士「物騒な女は願い下げだ。俺は淑やかな女が好きなのでな」

嬢「舞踊とか、お茶とかお花なら心得があるよ。通信教育で!」

暗黒騎士「何故通信…というのは、どうでもいいか。教養の問題ではなく、日頃の言動がだな……」

悪魔「おやおや~。『俺の理想はこうだ』って教えてやるってことは、嬢ちゃんにそうなれってことかな~?」

猫耳「やったね嬢、チャンス大ありだよ!」

暗黒騎士「!!」

嬢「暗黒騎士様…私、貴方様の為に精進致しますわ」

暗黒騎士「えぇい気色悪い! もう来ないからな!」

<ヒソヒソ

嬢「私って魅力ないのかなぁ……」シュン

悪魔「そんなことねーって! 嬢ちゃんは可愛いって!」

猫耳「そうだな~。髪伸ばして、可愛い服着たら大変身しそう」

嬢「そっかな~。ちょっと伸ばしてみよっかな」

<ワイワイ

暗黒騎士(あー…何てゆるい雰囲気だ)





魔物――敵対していた頃は恐ろしい相手だった。
人間側にいた頃、魔物に対抗する為に日夜修行を続けていた。
修行に相当な時間を費やし、私生活のほとんどを職務に捧げてきた。


だというのに――


悪魔「んぎゃー、猫テメェー!! オレのプリン食ったなあぁ!!」

猫耳「こないだボクのクッキー食べたから、その仕返しだもんね~」

悪魔「プリンとクッキーじゃレベルがちっげーだろが! よっしゃテメェ、表出ろやァ!」

猫耳「はんっ、やなこった。何故ならボクが100%負けるからね!」

悪魔「てめぇコラアアァァ!!」ゴオオォォ

暗黒騎士「下らないことで魔法を発動させるなーっ!!」

暗黒騎士(何て幼稚な奴らだ……)


あれだけ恐ろしく思えていた魔物は、身内となれば阿呆の集まり。
こんな奴らの為に自分はあれだけ頑張っていたのかと思うと、何だかむなしくなる時がある。


暗黒騎士(まぁ…人間は精一杯の努力をして、ようやく魔物に並べるのだろう)





猫耳「暗黒騎士~、嬢から伝言~」

悪魔「伝言~」

暗黒騎士「…一応聞いておこう。何だ」

猫耳「息が詰まるから出して欲しいって」

暗黒騎士「却下。あいつを野放しにしたら、俺の貞操が危険だ」

悪魔「へぇー。暗黒騎士は女の子に貞操奪われちゃう程度の男なんだ~?」

暗黒騎士「ただの女じゃないだろう、あれは」

猫耳「童貞なんてとっとと捨てちゃえって~」

暗黒騎士「余計なお世話だ!」

悪魔「そう言うと思って、嬢ちゃんから手紙預かってきたんだよ。見ろホラ」

暗黒騎士「……」カサ


"ごめんなさい、本当すみません。こんな私のようなクズで良ければ、まずはお友達から…あ、それすらおこがましかったですね。まずは下僕にして頂けませんか? それともこんな小汚い女はイヤでしょうか。 嬢"


暗黒騎士「何でこんなに卑屈になっているんだ」

猫耳「ほら、日光に当たらないとメンタルやられるって言うし」

暗黒騎士「……わかった、出してやれ。悪魔、猫耳、お前たちが監視しておけよ」

悪魔&猫耳「ウーッス」



嬢「あぁ…シャバの空気は美味しいわ……」フラフラ

暗黒騎士「……少し見ない間にやつれたな」

嬢「あぁ暗黒騎士様、私のようなゴミクズに声をかけて下さるなんて!」パアァ

暗黒騎士「本当にお前どうしたんだ」

悪魔「大丈夫だって、ちょっと嬢ちゃん連れて中立街に行ってくるわ!」

猫耳「中立街は人間と魔物が共存してるんだよ~。ボクらが一緒にいても誰も気にしないから!」

嬢「私なんかと一緒にいてくれるの…? 嬉しい」ポロポロ

ばっさばっさ

暗黒騎士(……あの2人、堂々と仕事をサボりやがった……)



>3時間後


嬢「ただいまダーリン♪ お帰りのキスして~!」ギュッ

暗黒騎士「えぇい、ひっつくな! この数時間の間に何があったのだ!」

悪魔「日光に存分に当たった」

猫耳「甘いもの一杯食べた」

暗黒騎士「いやちょっと待て、元気を取り戻すメカニズムが単純すぎるぞ」

嬢「さてパイセン! 改めて…私を闇落ちさせて下さいッ!!」ガバッ

暗黒騎士「数日日光に当たらなかっただけでやつれる奴が闇落ちできると思っているのか!」

悪魔「いやでも暗黒騎士、放置してたら勇者とか国王とかを殺しに行きかねないぞ」ヒソヒソ

暗黒騎士「……そうだな」ハァ

嬢「!! 闇落ちさせてくれるんですか!?」

暗黒騎士「砦の警備兵達に飲み物を差し入れしてこい。下っ端の仕事は雑用からだ」

嬢「了解!」タタッ

悪魔「お前、適当こいたろ?」

暗黒騎士「マトモに相手してやる義理はない。都合良く使える下っ端がいれば便利だし、嫌になれば帰るだろう」

悪魔「まぁ、そうだろうけどね~……」


<ゴポゴポ……ドカアアァァン

暗黒騎士「!?」

悪魔「な、何だ!? 厨房からだな!」

猫耳「あれ、厨房はさっき嬢が向かったハズ……」



嬢「うわちゃー……ゴホゴホ」

暗黒騎士「な、何だこの黒コゲは!?」

嬢「コーヒー作るの失敗しちゃった~」

暗黒騎士「コーヒーもまともに淹れられないのか…インスタントだぞ、これ」

嬢「うぅ……。悪かったですね、何も教わってこなかったんだもん……」グスグス

暗黒騎士「泣くなよ……」

猫耳「ボクが教えてあげるから、ね? 泣かないで、嬢」

嬢「うん……」グスッ

悪魔「見張ってねーといけねぇな。色んな意味で」

暗黒騎士「そうだな……」





それから数日…


悪魔「勇者だが、北の山を突破したそうだぞ」

暗黒騎士「そうか。結局、砦を攻めてきたのは1度だけだったな」

暗黒騎士(妹が心配ではないのか。それとも殺さないと思って、後回しにしているのか?)

悪魔「あと中央国軍と、東の砦が交戦を始めた。軍師の読みでは、決着がつくのは何週間かかかるっぽい」

暗黒騎士「その内、増援として呼ばれるかもしれんな。とりあえずこちらは、砦をしっかり守っておくか」

嬢「暗黒騎士様~、悪魔くーん!」タタタッ

悪魔「お?」

嬢「コーヒー淹れましたよ。暗黒騎士様はブラック、悪魔君はミルク多めだったよね!」

悪魔「さんきゅー」

暗黒騎士「ようやくマトモにコーヒーを淹れられるようになったな」

悪魔「掃除の仕方やら、包丁の使い方やら、猫に色々と教わってるんだって?」

嬢「闇落ちの為、日々、頑張ってます!」ビシィ

暗黒騎士(それは闇落ちでなくて主婦業だ。疑問を持たないのか……)

悪魔「嬢ちゃん頑張ってるから、中立街でケーキ奢ってやるよ」

嬢「ケーキ! いいの!?」キラキラ

悪魔「可愛い女の子にケーキ奢るのが好きなんだよね~」

嬢「ありがとう悪魔君!」

暗黒騎士「……」

暗黒騎士(俺にひっついてくることはなくなり、魔物たちと上手くやっているようだな。このままでは家に帰らないだろうが…まぁ、いいか)


悪魔「タクシー鳥を用意しといたぜ~。行くか!」

猫耳「わーい、街だ街だ~」

暗黒騎士「お前たち、サボるにしてももっとコソコソとやれ」

悪魔「どうせ砦は暇だ。お前もたまには羽を伸ばせば~?」

暗黒騎士「結構だ」

嬢「あら暗黒騎士様。優れた戦士はきちんと休養も取るものですよ」

猫耳「いいこと言った、嬢! 暗黒騎士ったらずっと休んでないもんね!」

暗黒騎士「サボり魔の部下をカバーしているからなぁ?」

悪魔「お前がサボったら誰かがカバーしてくれるって。よし暗黒騎士、お前も行くぞ!」グイ

猫耳「連行決定!」グイ

暗黒騎士「おい!」

嬢「わーい、皆で遊びましょう!」

猫耳「休息、休息!」

悪魔「労わってやるからよぉ、生真面目な上司サマ!」

暗黒騎士(全く……)





>街


猫耳「並んだ甲斐あったね! 美味しいよ、これ!」

暗黒騎士「…別に構わんが、労わると言いながら俺の奢りか」

猫耳「いいじゃな~い、上司なんだから~」

暗黒騎士「そういえば、あの2人はどこに行った。行列は嫌いだから別行動すると言っていたが……」

猫耳「さぁね~。仲良くデートしてるんじゃない?」

暗黒騎士「そういう関係なのか?」

猫耳「冗談だってば。…あ、トイレ行きたくなってきた」

暗黒騎士「行ってこい、待っててやるから」

猫耳「行ってくる~」タタタ


暗黒騎士「ふー…」

悪魔「おーい、暗黒騎士ィ~」

暗黒騎士「ん、悪魔か……」クルッ


暗黒騎士「――っ」

嬢「っ!」ビクッ

暗黒騎士「……」

嬢「……」

悪魔「おぉー。な? 嬢ちゃん。暗黒騎士の奴、嬢ちゃんに見惚れてんぜ」イヒヒ

暗黒騎士「断じて違う。ただ…様変わりしたな」

悪魔「だろ? 髪伸びてきたからセットして、服はオレが見立てた。シックなデザインのドレス可愛いだろ、な?」

嬢「………」

悪魔「ん、どした? 嬢ちゃん」

嬢「……うううぅぅ~」

暗黒騎士「?」

嬢「やっぱ恥ずかしい! 私には似合わないよ、こういう女の子な格好は~」モジモジ

暗黒騎士(な、何だ? こいつの分際で恥じらっているのか?)

悪魔「なにをー。それはオレの見立てのセンスが悪いってことかぁ~?」

嬢「そういうことじゃなくて!! 自分で違和感が凄いんだよ~」

悪魔「慣れてねーだけだって、堂々としてな!」

嬢「無理! やっぱ元の服に着替えてくるぅ!」

悪魔「待て待てーィ!」ガシッ

嬢「やーだー!」ジタバタ

暗黒騎士「人前で騒ぐな阿呆共が」

嬢「だって……」モジモジ

悪魔「お前からも言ってやれよ、可愛いぞって!」

暗黒騎士「言えるか」

嬢「ですよねー」ショボン

暗黒騎士「…あー、その、何だ」

嬢「?」

暗黒騎士「服飾については疎いので、無責任に評価はできないが…悪くないと思うぞ」

嬢「………え?」

悪魔「ひねくれものー。『いい』って言えばいいものを」

暗黒騎士「そうとは言ってないが」

悪魔「お前の言う『悪くない』は『いい』って意味なの! 良かったなぁ、嬢ちゃん!」

嬢「……うん」コクン

暗黒騎士(勝手な解釈を……。しかし、この阿呆お嬢、また様子が変わったな?)

悪魔「猫の方がまだマトモな感想言いそうだな…そいや猫はどこへ…」


モブ「おい、あんた。魔王軍の暗黒騎士だろ?」

暗黒騎士「ん?」

悪魔「そうだけど何か?」

モブ「隠れた方がいい。魔王軍幹部が来てると聞きつけた中央国軍の奴らが、探してるぞ」

暗黒騎士「情報が伝わるのが早いな…」

悪魔「面倒だし、物陰に隠れようぜ。サンキューな、名もなきモブ!」



兵士A「……」

兵士B「……」


悪魔「うわー、この中立街で、鎧姿で堂々と闊歩してやがるぜ。ちょっとは忍べよな」

暗黒騎士「権威を見せつけているつもりか。だが、お陰で事前に遭遇を回避できた」

悪魔「よこすなら勇者をよこせっつーの。名もなきモブ兵なんかにやられる暗黒騎士じゃねぇぞ~」

嬢「多分、勇者は来ないよ。勇者一族と、中央国の方針は違うんだ」

悪魔「へぇ?」

嬢「勇者一族は、最短ルートで頭…魔王だけを討つことを目的としているけど、中央国は、反乱分子を根絶やしにするという方針なんだよね」

暗黒騎士「なるほど。方針の違いで揉めたりはしないのか」

嬢「表だって揉めはしないけど、やっぱり互いに不満はあるかな。でもそれぞれ、方針通りに動いてるから」

悪魔「フーン…っておい、兵士が一般人に絡んでやがるぜ」

暗黒騎士「悪魔、声を拾えるか」

悪魔「あいよ~。聴力増強魔法!」ギュゥーン


兵士A「チッ、誰に聞いても知らぬ存ぜぬ。中立街と言いつつ、ここの連中は魔物寄りなんじゃねぇか?」

兵士B「中立街の連中は揉め事を嫌うからな、仕方ない」

兵士C「取り巻きがいない今が、奴を討つチャンスなんだがな。コソコソ逃げ回りやがって、臆病者なのかもな」ハハハ


悪魔「うわ腹立つわー」

暗黒騎士「好きに言わせておけ。実際、揉め事を起こすわけにはいかないだろう」

嬢「仕掛けてきたのはあっちですよ」

暗黒騎士「揉め事を起こして中立街から弾かれるのは、人間にとっては大したことないかもしれないが、我々にとっては痛手なんだ」

嬢「ふむ?」

暗黒騎士「魔物側の商業的文化は人間より遥かに劣る。この中立街は魔物にとって貴重な商業地なんだ」

嬢「なるほど」

悪魔「ま、適当にやり過ごして………ッ!!」

暗黒騎士「どうした、悪魔」

悪魔「あれ…見ろ!」

嬢「え……?」

暗黒騎士「!!」


猫耳「んにゃあぁ~、痛い痛い! 耳引っ張らないでぇ~!!」

兵士D「魔王軍の魔物を見つけたぜ」


暗黒騎士「猫……! くっ、捕まったか!」

悪魔「野郎共、猫に何する気だ……!」


兵士A「魔王軍の魔物つっても下っ端だろ? 捕虜としての価値もねぇ」

兵士B「おい小僧、暗黒騎士の野郎はこの街にいるんだろ!」

猫耳「いないよ! ここへはボク1人で来…」

兵士C「嘘つくんじゃねぇぞ!」バチン

猫耳「うぶっ」

兵士D[本当のこと言えよオラァ!!」ドカッ

猫耳「ぐっ。嘘じゃない…!!」


悪魔「野郎…!!」

暗黒騎士「抑えろ。猫が耐えているのを無駄にできない」

悪魔「けど、このままじゃ猫が殺されちまうぞ! 見捨てるのかよ!」

暗黒騎士「出ていけば戦闘は免れないだろう。そうすれば我々の軍だけでなく、魔物全体が中立街に弾かれる可能性もあるぞ」

悪魔「クソ。中央国軍の奴ら、よりによってこんな場所で!」

暗黒騎士「中立街に弾かれるのは魔物にとって痛手。それも奴らの狙い通りだろう」

悪魔「ぐぐ…。暗黒騎士、オレはこのまま大人しくしていられる自信ねぇぞ…!」

暗黒騎士(俺だってそうだ…)ギュッ

自分の立場としての"最善"は、暗黒騎士個人としては不本意な手段だった。
こうして猫耳がやられている間、増幅する人間への憎しみ。後で倍にして返す。その為に今は、ひたすら耐えるしかない。


だが――


「やめろーっ!!」


暗黒騎士「!?」

悪魔「!!」


失念していた。ここに、イレギュラーな存在がいたことに。


猫耳「うぅ…嬢……?」

嬢「今すぐやめろ! 猫君は、私の友達だ!」

兵士A「元勇者殿…!?」

兵士B「確か、暗黒騎士に囚われていたのでは……」


悪魔「うわあぁ~…嬢ちゃん、それは自分の立場悪くするだけだぞ~…」

暗黒騎士(あの阿呆娘が……!)


兵士C「友達とおっしゃったか? こいつは我々の敵…魔王軍の魔物ですよ?」

嬢「そんなの関係ない、友達は友達だから!」

兵士C「どうやら彼女は、ストックホルム症候群にかかっているようだな」

兵士D「あぁ。これはすぐに保護する必要性があるだろう…力づくでもな」チャキ

猫耳「嬢! ダメだ、逃げ――」

兵士A「黙れ!!」バキィ

猫耳「!!!」

嬢「猫君っ!!」

兵士B「さぁ元勇者殿、帰りましょう。皆心配していますよ」ポン

嬢「……帰らない」

兵士B「え?」

嬢「私の人生メチャクチャにしたのは、その"皆"だろ――ッ!!」バキィ

兵士B「!!!」


悪魔「うわあぁー! 嬢ちゃんを止めないと…!」

暗黒騎士「待て! 我々が出ていくわけにはいかん!!」

暗黒騎士(それに…もう手遅れだ)


嬢「"勇者"として生きろと言われて、私はやりたいこと全部諦めてきた!」

嬢「もっと女の子らしいことしたかった! 友達も欲しかった! 恋人も欲しかった! だけど全部ダメだって、私には自由がなかった!!」

嬢「なのに、真の勇者が現れたら私はあっさりと見捨てられた! その証拠に、勇者以外誰一人として私を助けに来なかったじゃんか!」


暗黒騎士「………」

悪魔「兵士4人ともブッ倒しやがった…。中立街的には、人間サイドの内輪揉めと片付けられるだろうけど……」


兵士A「ク…暗黒騎士に凌辱されて堕ちたという噂もあったが、本当だったか」

兵士B「これは立派な反逆罪だ。国王に報告だ! 撤退するぞ!」

ダダッ……


嬢「猫君、大丈夫?」

猫耳「ううぅ~……」

暗黒騎士「…やってしまったな、阿呆娘」

嬢「……だって」

暗黒騎士「話は街を出てからだ。ここでは目立って仕方がない」

嬢「……はい」

悪魔「ほら、おぶされ。クソ人間どもめ、ゼッテー許さねぇぞ!」

猫耳「ありがとにゃ~……」





>暗黒砦


嬢「……」ソワソワ

暗黒騎士「おい、阿呆娘」

嬢「暗黒騎士様! 猫君は……」

暗黒騎士「見た目は派手な怪我だが、命に別状はない」

嬢「良かった~…」ホッ

暗黒騎士「良くはない、阿呆娘」コン

嬢「つっ」

暗黒騎士「これで、俺がお前を凌辱して闇落ちさせたというデマが拡散される。とんだ風評被害だ」

嬢「それは私が流した噂じゃないですし~……」

暗黒騎士「それに、これでお前は反逆者と認定されてしまった」

嬢「あら、心配してくれているんですか?」フフ

暗黒騎士「帰る場所がなくなったお前がここに居着くだろうと思うと、頭が痛いんだよ!」ゴンッ

嬢「いだぁ!!」

暗黒騎士「阿呆だ阿呆だと思っていたが、ここまで阿呆だとは…」クドクド

嬢「ひぃー…」

暗黒騎士「……でも、まぁ」ポン

嬢「!」

暗黒騎士「…猫を助けたこと、それだけは感謝する」ポンポン

嬢「……」ホケー

暗黒騎士「? どうした」

嬢「えへへ…暗黒騎士様に感謝されちゃった」

暗黒騎士「阿呆」グリグリ

嬢「あだぁ~!」

暗黒騎士「全く…自分の状況がわかっているのか」

嬢「わかっていますよ。初めてここに来た時に言った通り、私は闇落ちする気満々なんですから」

暗黒騎士「……」



嬢『"勇者"として生きろと言われて、私はやりたいこと全部諦めてきた!』

嬢『もっと女の子らしいことしたかった! 友達も欲しかった! 恋人も欲しかった! だけど全部ダメだって、私には自由がなかった!!』

嬢『なのに、真の勇者が現れたら私はあっさりと見捨てられた! その証拠に、勇者以外誰一人として私を助けに来なかったじゃんか!』



あの時の言葉は本音なのだろう。
今までの言動を振り返ってみても、それは頷ける。


嬢『舞踊とか、お茶とかお花なら心得があるよ。通信教育で!』

こいつの"やりたかったこと"は、堂々とできなかったのだろう。


暗黒騎士『コーヒーもまともに淹れられないのか…インスタントだぞ、これ』

嬢『うぅ……。悪かったですね、何も教わってこなかったんだもん……』グスグス

日常生活に必要なことは、ほとんど教えられずにきたのだろう。


嬢『やっぱ恥ずかしい! 私には似合わないよ、こういう女の子な格好は~』モジモジ

きっと"女"の部分を抑圧されて育ってきたのだろう。


暗黒騎士(7歳から、10年間か……)

人間の寿命を考えれば、10年という歳月は長い。若い時ならば、それは尚更だ。
彼女はその歳月を勇者として教育されてきた。そして、あっさり見捨てられた。


嬢「何を考えていらっしゃるんですか?」

暗黒騎士「…笑うな」

嬢「え?」

暗黒騎士「辛い気持ちを表に出すな、というのも教育の賜物か?」

嬢「えと…別に私、辛いなんて」

暗黒騎士「辛いとも思わないくせに、闇落ちしに来たのか?」

嬢「……」

暗黒騎士「どうなんだ」

嬢「…はは。そうですね。やっぱり私…辛いのかも」

暗黒騎士「初めからそう言え。強がる女は嫌いだ」

嬢「へへへ…。じゃあ暗黒騎士様。強がるのやめるので、私を側に置いて下さいますか?」

暗黒騎士「お前の望むようにはしない」

嬢「そんなぁ~!」

暗黒騎士「……お前は、あれだろう。俺の配下になりたいのだろう」

嬢「…? はい、まぁ」

暗黒騎士「俺は女を配下にしない主義なんだ」

嬢「ええぇ! 私、男に負けない自信ありますよ!」

暗黒騎士「関係ない。強かろうと、女を戦わせるのは嫌いだ」

嬢「ううぅ~…」

暗黒騎士「……俺がいいのか?」

嬢「……え?」

暗黒騎士「俺以外の幹部なら、お前を配下として使うかもしれん。それでも、俺がいいのか?」

嬢「はい!」

嬢は迷わずに答えた。

嬢「最初は、同じ人間だからという理由で貴方の元に来ました! けれど私は、実直で硬派な、暗黒騎士様が好きです!」

暗黒騎士(……好き?)

それはどういう意味で…と気にはなったが、あえてスルーする。
とりあえず、この嬢は元いた場所よりも他の場所よりも、自分の側を選んだ。

暗黒騎士「俺の側で闇落ちしたいなら、お前の役割はひとつ――」

嬢「……?」

暗黒騎士「――俺に、守られろ」

嬢「!!」

暗黒騎士「守るものが多い方が、俺は強くいられる。守られていろ、女ならな」

勇者として戦っていた――もしかしたら自分より強いかもしれない女を相手に、阿呆なことを言っているかもしれない。
だけどやっぱり、女は女であって、それはどうしても譲れない。

嬢「…ふふっ」

暗黒騎士「? どうした」

嬢「守ってもらえるなんて…まるで、物語のヒロインみたいですね。私、ずっとヒーローだったので」

暗黒騎士「…嫌か?」

嬢「まさか。上手く言えないけど…キュンとしました!」ヘヘッ

暗黒騎士「それは困る」

嬢「暗黒騎士様の意地悪~っ!」





守られろ、とは言ったが。


猫耳「コタツでみかんは最強だにゃ~…」ヌクヌク

悪魔「コタツから一歩も出れねー…」ヌクヌク

嬢「ダンジョンにコタツ置いてたら、もうそれがトラップだよねー…」ヌクヌク

暗黒騎士(平和だな)


相変わらず砦に攻めてくる敵もなく、平和に日々を過ごしていた。

ただひとつ、前より変わったことと言えば――


暗黒騎士「コタツから出ろ、戦闘訓練の時間だぞ」

悪魔「いやでーす」

猫耳「やーだー」

暗黒騎士「せめて『後でやります』と嘘でも言え。力ずくで引きずり出すぞ」グイッ

悪魔&猫耳「ギャース!!」

嬢「頑張ってね、2人とも。訓練後に、おやつと飲み物用意しとくから」

猫耳「ありがたやー」

悪魔「マイエンジェル~。それに比べてコイツは、悪魔のような男だな!」

暗黒騎士「悪魔に悪魔と言われたくない。…おい、嬢」

嬢「何ですか?」

暗黒騎士「風呂の準備も頼む。訓練後すぐに汗を流したい」

嬢「わかりました。頑張って下さい」フフ


嬢の名前を呼べるようになった。
嬢が自分の側にいることを受け入れたことで、心の距離が縮まったように思える。


暗黒騎士「ハアァッ!!」

悪魔「あだーっ!」

暗黒騎士「動きがワンパターンだ。折角の素早さを活かしきれてないぞ」

悪魔「へいへーい。あ、訓練終わりの時間だぜ~」

暗黒騎士「そうだな。各自、疲れを取っておけ」

悪魔&猫耳「うぃーっす」



暗黒騎士(さて風呂だが……)ガラガラッ

嬢「どうぞいらっしゃい♪」

暗黒騎士「……」ガラガラッ←閉めた

暗黒騎士「疲れているのかな」

嬢「暗黒騎士様ーっ、どうして出て行っちゃうんですかーっ!」ガラガラッ

暗黒騎士「薄着でスタンバっている痴女がいれば、そりゃあ逃げる」

嬢「お背中を流させて頂こうと思いまして…」

暗黒騎士「本音は?」

嬢「筋肉美たまらんわ~。手が滑ったフリして撫でつ触りつ」

ポイッ

嬢「暗黒騎士様ぁ~、窓から放り投げるなんてひどすぎます~っ! 寒い寒い!」

気安い仲になったこと自体は良いのだが…。

暗黒騎士「砦に押しかけて来た頃に逆戻りするな、阿呆娘が!!」





暗黒騎士「いい風呂だった。何かハプニングもあった気はするが忘れた。少し涼むか」

嬢「寒いよぉ~」ブルブル

暗黒騎士「嬢、どうしてそんな薄着で外にいるんだ? 風邪を引くぞ」

嬢「本気で忘れないで下さいよ!!」

悪魔「暗黒騎士ィ~」

暗黒騎士「悪魔、どうした」

悪魔「魔王様より通信だぜ。ハイヨ、魔鏡」ヨッコイセ

暗黒騎士「すまないな悪魔」

嬢(この鏡に魔王の姿が映るってわけ…。そういえば魔王の顔も知らなかったな)

暗黒騎士「魔王様、俺です」

もやもや…


魔王『暗黒騎士、久しぶりね』


嬢「ブフッ!」

悪魔「どうした嬢ちゃん?」

嬢「こ、この美人でセクシーなお姉様は……」

悪魔「魔王様だぜ?」

嬢「女の人だったのおおぉぉ!?」



魔王『勇者が着実に近づいてきているみたい。強いわね、彼』

暗黒騎士「招集命令はまだですか、魔王様。この砦は退屈でたまりません」

魔王『その時が来たら呼ぶから、焦らないの。貴方って本当に生真面目よねぇ』

暗黒騎士「魔王軍幹部として当然のことをしているまでです」

魔王『ふふ、頼もしい。でも私の性分は知っているでしょう? 勇者とは是非、一騎打ちでやりたいところよ』

暗黒騎士「…いくら貴方といえど、勇者相手に確実に勝てるとは思えません」

魔王『それはそれで仕方ないわ。私の方が弱いというだけなのだから』

暗黒騎士「しかし…」

魔王『私、思うのよ。これは私のご先祖様が始めた争いだから、私が責任を持つ。だけど貴方達にまで同じものを背負わせる必要はないんじゃないか…って』

暗黒騎士「我々の命は魔王様のものです。同じものを背負わせてもらえないというのは、酷というものです」

魔王『も~、暗黒騎士ったら真面目すぎて扱いに困るわ~。でもありがとう、時が来たら招集をかけるわ。それじゃあね』


プツン


暗黒騎士「悪魔、もう鏡を下ろしていいぞ」

悪魔「オウ」

嬢「暗黒騎士様……」プルプル

暗黒騎士「ん?」

嬢「何なんですかあぁ!? 暗黒騎士様は魔王が好きなんですか!? びえええぇぇぇん!!」

暗黒騎士「……は?」

悪魔「暗黒騎士、抱きしめて囁いてやれよ。『そんなことはない、お前だけだ』って」

暗黒騎士「断る」





嬢「暗黒騎士様のばかー」イジイジ

猫耳「どうしたの、嬢?」

悪魔「あぁ、かくかくしかじか」

猫耳「なるほどにゃー」

嬢「ううぅ、あんなに綺麗なお姉さん相手に太刀打ちできないよぅ…」

猫耳「まぁ確かに暗黒騎士にとって魔王様は特別な人だから」

嬢「びええええぇぇん!!」

悪魔「泣かせんなよ」

猫耳「本当のこと言っただけだもん」

悪魔「ったく。おい嬢ちゃん、暗黒騎士の闇落ちの経緯は知ってるな?」

嬢「うん、グスッ。聖騎士長をやっていたけど元老院に罪を被せられて、それで元老院を殺したんだよね?」グスグス

悪魔「そうそう。お陰で聖都は力を失っちまった」

嬢「私は元老院が悪いと思うな」

悪魔「いくら悪とはいえ、世界に影響を与えていたような偉い連中だ。だから、そいつらを殺した暗黒騎士は、もう人間側に戻れない」

嬢「うん……」

悪魔「魔王様は、行き場を失っていた暗黒騎士を自らの足で探し出し、迎え入れた。暗黒騎士にとって魔王様は、救世主なんだよな」

嬢「そうだね…。今の暗黒騎士様があるのも、魔王のお陰なんだもんね」

悪魔「そう、だから"特別な人"。わかるだろ?」

嬢「うん、わかる…。そうだね、魔王は救世主で、守るべき存在であって、道しるべであって」

猫耳「最愛の人」

嬢「……えうううぅぅ」ボロボロ

悪魔「おいクソ猫」

猫耳「てへっ」





>数日後


暗黒騎士「では行ってくる。砦を頼んだぞ」

勇者が魔王城付近の山地に足を踏み入れたことから、幹部に招集命令がかかった。
魔王は自分が討たれても仕方ないというスタンスではあるが、魔物達にとってそうはいかない。護衛は邪魔であっても、万が一の為に備えておく必要がある。

悪魔「おう、行ってこい! 頑張れよ暗黒騎士!」

猫耳「死んだりしないでよね~」

暗黒騎士「……」

悪魔「どうしたよ、暗黒騎士」

暗黒騎士「いや。あの阿呆娘は見送りに来ないのか、と」

悪魔「おやおや? 寂しいのかね?」

暗黒騎士「そういうわけではないが、いつもと違うと不吉な予感がしてな」

悪魔「やだ暗黒騎士ったら照れちゃってぇ~。素直に嬢ちゃんに見送りしてほしいって言えよォ」

暗黒騎士「ところで、そこに木があるな?」

悪魔「ん? うん」

暗黒騎士「……」ドンッ

嬢「ぎゃぅん!」ドスーン

悪魔「……」

暗黒騎士「木の上で待ち伏せて何をしようとしていた、ん? これが不吉でないとしたら何だ?」

嬢「暗黒騎士様、こわぁ~い……」汗ダラダラ

猫耳「邪魔しちゃいけないよね、ボク達は去ろう」

悪魔「これから始まるのはラブロマンスじゃなくて、主に説教だけどな」


暗黒騎士「お前は素っ頓狂な行動が目立って油断も隙もないな」クドクド

嬢「ううぅ」

暗黒騎士「まぁ、こちらも慣れてはきた。だがもう少し普通にできんのか、普通に」

嬢「『普通』がわからないんですよぅ……」

暗黒騎士「そうか。なら、落ち着いた行動を取れ。グイグイ来られると困る」

嬢「はい……」シュン

暗黒騎士「……? 今日はやけに聞き分けがいいな?」

嬢「だって…負けたくないんだもの」ボソ

暗黒騎士「負ける?」

嬢「何でもありません! とにかく全部、暗黒騎士様の言う通りにします!!」

暗黒騎士「……おい」

嬢「はい?」

暗黒騎士「いくら『普通』がわからないからって、全部俺の言うことを聞くというのは、お前らしさが死ぬぞ」

嬢「~っ…じゃあどうすればいいんですかーっ! 暗黒騎士様を困らせたら嫌われるじゃないですか!」

暗黒騎士「阿呆」ポン

嬢「!」

暗黒騎士「確かに困る。…だが、嫌いにはならん」

嬢「っ!!」

暗黒騎士「そういうわけだ。では行ってくる」サッ

嬢「~っ……」

飛龍に乗って飛んでいく暗黒騎士の姿を、嬢は姿が見えなくなるまで見送っていた。

嬢「どうすればいいのか、ますますわかんなくなったよ…暗黒騎士様の、ばか」





>魔王城


術師「感じる…感じますよ…! 勇者とその一味が、どんどん近づいている……!!」

暗黒騎士「来る者を拒むあの山道をものともしないか。流石は神に選ばれし勇者だな」

魔王「ふふ、面白くなりそうね」

暗黒騎士「魔王様、楽観視しすぎです」

魔王「逆よ。危険を感じるからこそ楽しんでいるの。この私の相手になる敵なんて、そうそういないからねぇ」

暗黒騎士「魔王様……」

魔王「あぁ、大丈夫よ。私の道楽で皆を路頭に迷わせるわけにはいかないからね。私が負けそうになったら加勢しなさい」

幹部一同「「はい」」

暗黒騎士(それも我々にとっては不本意であるが…魔王様にとってもそうだろうから、互いに譲歩だな)



暗黒騎士(しかし魔王城に来るのも久々だな。様子に変わりはないな)

暗黒騎士(思い出すな…初めてここに訪れた頃を。あの頃の俺は人間不信になっていた。そんな俺に希望を与えて下さったのが魔王様だ)

暗黒騎士(……同じなのだろうな、あの阿呆娘も。自分の境遇に絶望して、俺にすがりに来た)

暗黒騎士(もし自分の兄が討たれたら、あいつは平然としているのだろうか。わずかに気がかりではあるが…)

暗黒騎士(魔王様は俺が命を捧げたお方。あいつには悪いが、手加減はできない)

術師「暗黒騎士、ここにいましたか」

暗黒騎士「どうした、勇者達が来たか」

術師「いえ、違います。確かに勇者も近づいてきていますが……」

暗黒騎士「?」


悪魔「あ…暗黒騎士……」ヨロヨロ

暗黒騎士「悪魔!? どうした、その怪我は!!」

悪魔「中央国軍が…他国と連合を組んで、暗黒砦に攻めてきた……!!」

暗黒騎士「!!」

悪魔「すまねぇ、オレは逃げてくるので精一杯だった…。他の奴は、殺されてるかも…クッ」

暗黒騎士「そんなことは気にするな」

暗黒騎士(しかし、よりにもよってこのタイミングで…)

狙っていたとしか思えないタイミングだ。
とはいえ、まさか他国と連合まで組んで攻めてくるとは想定外。

暗黒騎士(動揺するな…。勇者のことに考えを集中しろ…!)

暗黒騎士「悪魔、お前は体を回復させろ。俺は当初の予定通り、魔王様と共に勇者を……」

魔王「待ちなさい」

暗黒騎士「魔王様……!」

魔王「話は聞かせてもらったわ。すぐに砦に戻りなさい、暗黒騎士」

暗黒騎士「…! いえ魔王様、今戻ったところで手遅れでしょう。それに勇者が近づいている今、砦が攻め入られることなど些細な……」

魔王「駄目。戻らないと、本当に手遅れになるかもしれないわよ」

暗黒騎士「!」

魔王「貴方1人が欠けたことが致命傷になるほど、魔王軍幹部は弱くないわ。命令よ、即刻戻りなさい」

暗黒騎士「……ありがとうございます、魔王様!」ダッ

暗黒騎士は飛龍に飛び乗る。
魔王は読んでいたのかもしれない、暗黒騎士の気がかりを。

暗黒騎士(間に合え……!!)





>暗黒砦


暗黒騎士「くっ、この惨状は……」

砦の内部は死臭に満ちていた。
見たところ、死体は人間のものと魔物のもの、半々だ。

暗黒騎士(しかし、砦は制圧されているかと思ったが…軍隊は引き上げたのか)

暗黒騎士「俺だ、暗黒騎士だ! 生きている者はいないか!」

「ううぅ…」ガラッ

暗黒騎士「!! 誰だ!?」

猫耳「にゃあ……暗黒騎士、戻ってきてくれたの?」ブルブル

暗黒騎士「猫! 隠れていたのか!」

猫耳「ごめんね暗黒騎士……」

暗黒騎士「何を謝る必要がある。よくぞ生きてた!」

猫耳「ボク、ボク…嬢を守れなかった……」

暗黒騎士「……!!」

血の気が引いた。
まさか、大量の死体と共に、嬢も――

猫耳「嬢は生きている。…多分」

暗黒騎士「多分、とは?」

猫耳「人間どもに連れて行かれたんだ。多分、奴らの目的は嬢だったんだ……」

暗黒騎士「……そうか」

意外性のない目的に、驚きはしない。
それよりも、自分が今すべきことは1つ――

暗黒騎士「猫。すまないが、生存者の治療を頼む」

猫耳「うん…。暗黒騎士はどうするの?」

暗黒騎士「決まっている」

暗黒騎士は迷わず、飛龍に飛び乗った。

暗黒騎士「守ると約束したんだ――あいつを」





>同時刻――中央国、城


嬢は兵士たちにより、王の前に組み伏せられていた。

王「すっかり"女"の顔になったな、裏切り者よ」

嬢「……」

王「さぞ、暗黒騎士に可愛がってもらったのだろうな? 勇者一族としての誇りなど、もう残っておるまい」

嬢(私から誇りを奪ったのは彼じゃない…お前たちだ)

王「唐突に勇者の役目を奪われたことに怒っていることは知っている。だがお主も勇者一族の者ならわかっているはずだ、人間の為の自己犠牲精神も必要なものであると」

嬢(確かに、そう教えられた…だけど、自己犠牲なんて冗談じゃない!!)

王「我々に何も告げずにお主の兄を連れ去った神を恨むか? 神を恨むなど、恐れ多いだろう」

嬢(私が恨んでいるのは、神と人間だ!)

王「……その反抗的な目をやめぬか。お主を許してやっても良いのだぞ?」

嬢「……許しを請うようなことなんて、していない」

王「そう言うな。大臣たちはお主を極刑にせよと言っておる。だが…」スッ

嬢「!!」

王「それを許すと言っておるのだ…わしの言うことさえ聞けばな」

嬢「触るな……!」

嬢(王の秘めた望み、それは勇者一族の懐柔…その為に……!)

王「わしの側室になれ。我が王家に、勇者一族の血を……!!」

嬢「冗談じゃない!!」ペッ

王「…っ!」

嬢(ふざけんな…! 私が子を産む相手に決めたのは……)





暗黒騎士「城が見えてきた…!」





嬢「誰がお前の女になるもんか! 今度私に触れたら、お前のことを殺……」

王「おい、兵を増員して押さえつけろ。それと、舌を噛まないように布をくわえさせろ」

兵士A「はっ」

嬢「!!」

王「威勢はいいな。だが子でも孕めば、反抗する気力も失せるだろう」

嬢「……っ!!」

王「諦めるのだな…わしの子を産むのが、お主の役割だ」

嬢(や、やだ……)

王「王家に勇者一族の血が混ざれば、傲慢な勇者一族の権威も多少は薄れるだろう。ククク……」

嬢(いや……)





暗黒騎士(馬鹿でかい城だな、嬢はどこに……!?)





勇者をやめてから、初めて好きな人ができた。
その好きな人と、まだ両思いにすらなれていないのに。

嬢(こんな奴が初めての男で、こいつの子を産むなんて……死んだ方がマシ!!)

王「よく見るとお主、良い体をしているなぁ?」サワッ

嬢「!!」ゾワワァ

王「頭の中でせいぜい、泣き叫ぶのだな。その顔が男の嗜虐心を刺激するのだと知っておけ…!」

嬢(嫌あぁ――っ!!)



ドオオオォォン


嬢「!?」

王「…っ! 天井が……」

ガラガラッ

王「ぐあっ!!」

嬢(な、何……!?)


「やはり、ここか」

嬢「!!」



暗黒騎士「叫び声が聞こえたような気がした。間に合ったようだな、嬢」

嬢「――っ」


叫んでなんていない。
なのに駆けつけてくれるなんて――こんなのって、奇跡なんて言葉じゃ説明できない。


兵士A「くっ暗黒騎士! 動くな!!」

嬢「!」

嬢を押さえつけていた兵士達が、一斉に嬢に刃を向けた。

兵士A「こいつを助けに来たのだろう! だがそうはさせん、大人しく投降しろ!!」

暗黒騎士「ほう?」

嬢「……?」

暗黒騎士に動揺は見られない。
それを察してか、兵士たちに焦りの様子が伺える。

兵士B「わざわざ、魔王を見捨ててまで助けに来た女だろう!」

兵士C「こいつがどうなっても良いのか!」

暗黒騎士「やってみろ」

迷わず答えた暗黒騎士に、兵士たちは驚愕した。
だがすぐに理由が見つかったのか、兵士の1人がそれを口にする。

兵士D「奴にとってはたかだか女。自分の身の方が可愛いのだろう」

兵士E「そういうことか…やはり魔王側に堕ちた者は、どこまでも自分勝手だな」

暗黒騎士「やってみろ、と言っている」

暗黒騎士は一歩踏み出す。
それを合図にしたように、兵士たちも動いた。

兵士A「言う通り、やってやる!!」

兵士B「元勇者よ、死ね――」



ズザザッ



兵士A「――え?」


ドサッ――


暗黒騎士「やってみろとは言ったが…」

暗黒騎士は、倒れる兵士たちを横目で見た。
腕にはしっかりと、嬢を抱えて。

暗黒騎士「こいつの命をやる、とは言っていない」

兵士B「バカ、な――」


王「あ、ああぁ……」

暗黒騎士の圧倒的な力を見てか、王は瓦礫を隠れ蓑にして引きつっていた。
暗黒騎士はそんな王の様子を一瞥し、嬢に目を向けた。

暗黒騎士「おい、何もされなかったか?」

嬢「平気…です」

暗黒騎士「そうか。…悪かったな、遅れて」

嬢「どうして…来てくれたんですか?」

暗黒騎士「…阿呆」

嬢「――」

これ以上阿呆なことを口にさせるかと――暗黒騎士は自らの唇で、嬢の言葉を塞いだ。


暗黒騎士「守りたいからだ――お前を」

嬢(あぁ――)


夢かと思うくらいに幸せで、嬢は暗黒騎士に身を委ねていた。





王「ク、クク…貴様は終わりだ!」

暗黒騎士「自分の置かれている状況がわからんのか、お前は」

暗黒騎士の手によって縛り上げられた王は、不敵に笑った。

王「暗黒騎士、貴様は魔王の護衛を抜け出して来たのだろう…勇者は魔王を討ち、この地に戻ってくるだろう!!」

暗黒騎士「かもしれんな。時間的に、決着がついた頃だ」

王「勇者は移動魔法ですぐに戻ってくる、貴様に逃げる時間などないぞ! 勇者相手に、貴様がかなうまい!!」

暗黒騎士「そうだな。魔王様を倒した相手となれば、俺などでは敵にもならん」

魔王が負けたとは思わないが、確信はない。
それに、王の言う通りだとしたらまずい。

暗黒騎士「逃げるぞ嬢。今後のことを考えるのは、安全が確保されてからだ――」


「その必要はない」


暗黒騎士「!!」

嬢「……っ!!」

王「おぉ……!!」


勇者「只今戻りました、陛下」


勇者の姿を確認したと同時、王と共に縛り上げられていた兵士たちは歓声を上げた。
勇者が戻ってきた。それはつまり――


暗黒騎士(魔王様……!!)


魔王との戦いは、勇者の勝利。そういうことだ。
主の敗北。暗黒騎士の胸に鈍器で殴られたような痛みがはしる。


王「勇者よ、この者らを討つのだ!! 見ての通り、我らに仇なす者だ!!」

嬢「させない…!! こんなとこで諦めたりしない!!」

暗黒騎士「……」

嬢の言う通り、諦めたりはしない。
現実的な思考など今は邪魔だ。魔王を討った相手に勝てる可能性が低いという事実など――


勇者「……」

暗黒騎士「……?」

しかし妙だった。勇者は戦う素振りを見せない。

王「どうしたのだ、勇者よ……?」

勇者「陛下。事実確認をよろしいでしょうか」

王「何だ?」

勇者「貴方の命令により、妹がここに連行され…何かしらの危害を与えようとした、というのは。事実でしょうか?」

嬢「!!」

王「…その娘は、魔物側に堕ちた者だ。だから相応の罰を与える為に連行するのは……」

勇者「理由なんざどうでもいい」

勇者は王をギロリと睨んだ。

勇者「嬢は俺の妹だ。危害を加えようと言うのなら、例え貴方といえど許さない」

王「……!!」

嬢「勇者……?」

嬢は呆気にとられていた。
まさか自分が裏切った兄が、そんなことを言うなんて…。

勇者「嬢。お前は俺の代わりに役目を果たそうとしてくれた。だから感謝もしているし、申し訳ないとも思っている」

勇者は嬢を真っ直ぐ見据えて言った。

勇者「だから、お前が俺を裏切ったとしても――俺はお前を尊重する」

嬢「勇者……」

暗黒騎士(そう来たか……)

全く想定外の事態だ。
自分たちにとっては好都合だが――

王「いい気になるな、勇者よ」

中央国と勇者一族の確執は、ますます深まるだけで――

王「お主が魔王を討ったとはいえ、権威は王家にある! 貴様の思い通りには……」

勇者「なるんだよ」

王「……何だと」

勇者「もう入ってきていいよ」

「えぇ」

暗黒騎士「……!!」


魔王「ご機嫌よう、国王陛下」

暗黒騎士「魔王様!?」

王「魔王…だと!? どういうことだ…まさか勇者!!」

勇者「……」

王「魔王と手を組んだ…とでも言うのか?」

勇者「だとしたら何だと?」

王「なっ……」

暗黒騎士「手を組んだ…!?」

全く予想外の展開についていけない。
魔王が生きていたというだけでも驚いたのに、まさか手を組んだなど――

勇者「うんざりなんだよ、俺も」

勇者は口早に説明を始めた。

勇者「俺は勇者になるという運命を強要された――勇者になる為に、何年を修行に費やしたと思っている」

嬢「10年――7歳から、10年……」

嬢が口にした歳月。それは彼女が犠牲にしてきた歳月で――

勇者「年相応の子供らしく過ごしたかった。家族と共に居たかった。だけどそんな苦しみ、勇者という大きな役割の前には――」

暗黒騎士(勇者も…だったのか……)

勇者も、嬢と同じ期間を犠牲にした。
裏切られた嬢と違い、勇者は報われていると思っていた。だが、違った。

勇者「うんざりなんだよ、運命に振り回されるのも、期待されるのも!」

彼も、納得していなかったのだ。

勇者「俺は、この世界に戻ってきて、勇者の名を与えられたその時から――ずっと、計画していた」

勇者はそう言って魔王の側まで歩み寄り――その手を取った。

勇者「魔王が話のわかる奴で良かった。俺は魔王と手を組み…人間を支配する」

王「な…!?」

魔王「あら、人間の支配者が変わるだけよ。人間と魔物の争いもこれで終結。最も平和的な手段だと思うわよ?」

勇者「そういうことだ」

王「待て…!! 認めぬぞ、人間の統治権は我ら王族に……」

勇者「馬鹿言ってんじゃねぇよ」

勇者はハンッと鼻で笑った。その目は完全に、王を見下している。

勇者「文句ある奴は俺を倒しに来ればいい…全員、ねじ伏せてやるからな?」ニヤァ

王「うぅ……っ」


嬢「……」ポカーン

暗黒騎士「まさか、あれが勇者の本音とはな……」

嬢「見事な闇落ちっぷりだわ……」

暗黒騎士「本当にな」

あれに比べれば嬢など遥かに可愛いものだったと、苦笑せざるを得なかった。





それから――


猫耳「このお菓子美味しい!! 人間の食品加工技術は凄いねーっ!」

悪魔「見ろよ、この上着。シャレてるだけでなくて、防御力も高いんだとよ。人間の装備品開発技術も侮れねぇ」

猫耳&悪魔「人間っていいな!」

暗黒騎士「ステルスマーケティングかと思う程に不自然だな」

嬢「あはは~。人間の文化に馴染みがない人たちには新鮮なのかもしれないですね」


人間と魔物は共存することとなった。
とはいえそれは表面上のもので、決して人々の賛同を得られているわけではない。

暗黒騎士「だが、人間達が持ち上げていた勇者の下した決断だからな…正面から批判できる人間はそうそういないだろう」

嬢「この形だけの和平、いつまでも続くとは思えないけれど……」

暗黒騎士「勇者はそれでも構わないのだろう」

嬢「そうでしょうね」

勇者は歪んでしまった。彼をさらった神は、それすらも計算通りなのか否か。

暗黒騎士(何にせよ…その形だけの和平に救われた身としては、何も言うまい)


嬢「暗黒騎士様ぁ」ギュッ

暗黒騎士「何だ」

嬢「素っ気ないですーっ! せっかく両思いなんだから、一杯甘えたいのにーっ!」

暗黒騎士「阿呆。俺が甘やかす男に見えるのか」

嬢「暗黒騎士様の、意地悪」イジイジ

暗黒騎士「何だと言うんだ、一体」

嬢「心配なんだもん。暗黒騎士様の口から、聞きたいんだもん……」

暗黒騎士「?」

嬢「現状は、いつまで続くかわからない和平で…いつ、世界がまた争いに包まれるかわからないから……」

暗黒騎士「……あぁ」


心配とはそういうことか――察して嬢の頭に手を置いた。本当に阿呆だ、と思いながら。


暗黒騎士「例え世界が再び争いに包まれようと――俺が守る、お前を」

嬢「……!!」

暗黒騎士「……どうした?」

嬢「暗黒騎士様、素敵っ! 愛してるっ!」ギュッ

暗黒騎士「だからひっつくな、阿呆」

嬢「やだやだ、ひっつく! 阿呆でもいい!」ギュゥー

暗黒騎士「…ったく」

つくづく厄介な女だと思った。
だけど、それも悪くない。自分もこの女に、落ちているのだから。


暗黒騎士「ずっと守られていろ――俺の側で」


Fin




あとがき

ご読了ありがとうございました。

作者の近況がスイーツからかけ離れていたので序盤はふざけ気味でしたが、後半でスイーツを取り戻せました。やったね!

え、世界はどうなるかって? 知らん←
自分の作品のオチが「主役2人は幸せ、その他の問題は投げっぱなし」なんてのは今に始まったことじゃない!!(改める気ゼロ


今作はブログオリジナルで、スレやまとめブログで感想を頂けないので、こちらのコメ欄に感想を頂ければ嬉しいのです(´∀`)ノ
posted by ぽんざれす at 21:52| Comment(6) | ブログオリジナルss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月09日

勇者「魔王を倒しに行く」 介護ヘルパー「60年前に倒したよ~」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462793059/

1 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:24:19.70 ID:bUEcKGDH0
>グループホーム"ふぁんた爺"


==============
・介護記録
勇者 様

9:30 起床後、光の装備一式に更衣されていたので、声かけにてトレーナーに着替えて頂く

12:00 魔王を倒しに行くと言われるが、昼食の為席について頂く

14:50 再度魔王を倒しに行くと言われ、おやつの為席について頂く

15:30 風船バレーの風船が魔物に見えたらしく、風船を一刀両断されご満悦の様子

16:30 入浴。「今日は一杯戦ったから血と汗を流さないとね」と笑顔見られる

18:00 明日の旅支度をされてから入床

18:30 巡回。入眠確認
==============

ヘルパー「勇者さんの様子いつもと変わりなし、と」

勇者(76)「すやすや」

ヘルパー「勇者さん、入所したばかりでまだ落ち着かないけど、その内馴染んでくれるといいなぁ」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462793059
2 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:24:41.29 ID:bUEcKGDH0
>翌日


ヘルパー「あら勇者さん、どこに行くのかな~?」

勇者「ちょっと装備品を揃えに行くの」

ヘルパー「あら~。この街の武器屋さんは、お菓子屋さんになっちゃったんだよ~」

勇者「そうなのかぁ」

ヘルパー「そうだ。買い物なら、皆の分のおやつ買いに一緒に行こうか!」

勇者「それもいいねぇ」

3 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:25:22.22 ID:bUEcKGDH0
>翌日


ヘルパー「あら勇者さん、お出かけ?」

勇者「街の人たちから情報を集めようかと思ってね」

ヘルパー「それはねー、勇者さんの特技の"思い出す"を使うといいよ!」

勇者「えーと…『魔王は闇の力を使うから、光の装備を揃えるといい』『北の神殿には魔王軍の幹部がいるそうだよ』『天界のオーブを揃えるのだ』」

ヘルパー「わぁ凄い、勇者さん記憶力とってもいいねー!」

勇者「ところで、あんた誰だっけ?」

ヘルパー「私はモブの介護ヘルパーだよー! さぁ、お風呂入ろうか!」

勇者「いいねぇ風呂」ニコニコ

4 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:25:49.66 ID:bUEcKGDH0
>翌日


ヘルパー「あれ勇者さん、どこか行くの?」

勇者「仲間を探しに行くの」

ヘルパー「ここにいる皆も仲間だよ~。皆で折り紙折ろうよ!」

勇者「わし、こういうの得意でなくてねぇ」

ヘルパー「じゃあ一緒に折ろうか~。はい、こうやって折って~」

勇者「うーん、難しいねぇ」

ヘルパー「そうだね。でも一緒に苦難を乗り越えてこそ、本当の仲間だよね!」

勇者「よし頑張る」

ヘルパー「その意気だよ勇者さん!」

5 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:26:17.83 ID:bUEcKGDH0
>翌日


勇者「えぇーと」キョロキョロ

ヘルパー「勇者さーん!」タタタッ

勇者「あ、あんたか。迎えに来てくれたの?」

ヘルパー「ごめんねぇ、バタバタしてて外に行ってたの気付けなくて。怪我とかない?」

勇者「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」

ヘルパー「勇者さん、迷子になってたの~?」

勇者「魔王を倒しに行こうとして、道がわからなくなってねぇ」

ヘルパー「そうなんだ~。あのね、魔王は60年前に倒したよ!」

勇者「……そうだっけ?」

ヘルパー「そう! 勇者さんが倒したんだよー!」

勇者「…あぁー!」

7 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:26:40.64 ID:bUEcKGDH0
勇者「そういえば魔王を倒した後、わし結婚したんだったね」

ヘルパー「そうそう。仲間の賢者さんとね!」

勇者「それで2人の子供に恵まれて…」

ヘルパー「よく会いに来てくれるし、親孝行なお子さんだよね~」

勇者「で、小説家と音楽家と画家の孫がいて……」

ヘルパー「凄いよね~、皆、芸術家だよ!」

勇者「すっかり忘れてたよ」

ヘルパー「うんうん良かったねぇ、思い出せて」

勇者「……はぁ」

ヘルパー「?」

8 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:27:10.22 ID:bUEcKGDH0
>翌日


勇者「……」

ヘルパー「あら勇者さん、今日はお出かけしないんだ」

勇者「うん、もう魔王は倒したからね」

ヘルパー「あら」

ヘルパー(入所して1ヶ月くらいになるし…。勇者さん、施設に馴染んできたのかな?)

勇者「……」ボー

ヘルパー「勇者さん? 皆と一緒にお歌歌わない?」

勇者「そういうの得意でなくてねぇ。わしは聞いてるよ」

ヘルパー「うんうん、それじゃホールの方に行こうか!」

勇者「……はぁ」

ヘルパー「……」

9 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:27:37.26 ID:bUEcKGDH0
==============
・介護記録
勇者 様

7:00 巡回時臥床中。開眼しているものの離床されず

8:00 トレーナーに更衣された後、朝食

12:00 お部屋で過ごしていたところをお呼びし、昼食

14:00 レクにお誘いするも気乗りしないようで、お断りされる

15:00 ティータイム。話を振るも会話に参加されず、食べ終わるとすぐに自室へ戻られる

16:30 「全然汗かいてないから」と入浴をお断りされる

17:00 「お腹すいてないの」と夕食を半分残される

18:00 入眠確認
==============

ヘルパー「うーん。勇者さん、外出願望と共に元気が無くなったなぁ」

ヘルパー「老人性のうつかなぁ? 病院行って診てもらった方がいいかも」

10 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:28:04.76 ID:bUEcKGDH0
>翌日


勇者「わしは病気じゃないよ」

ヘルパー「それを証明する為に、行ってみない? ちょっと先生とお話しするだけだから、ね?」

勇者「わしがそういう病院に行ったら、変な噂がたつじゃない」

ヘルパー「そんなことないよ~」

勇者「…わしはもう、噂にもならないんだね」

ヘルパー「え?」

勇者「魔王を倒したから、あとは忘れられていくだけなんだ」

ヘルパー「……勇者さん、ちょっとお出かけしない?」

勇者「病院?」

ヘルパー「ううん、病院は行かない。街をぶらぶらしようよ、ね?」

勇者「うん、それならいいよ」

11 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:28:35.56 ID:bUEcKGDH0
勇者「町並みもすっかり変わったねぇ」

ヘルパー「昔はどうだったの~?」

勇者「武装してる人が沢山いて、冒険者向けの店が立ち並んでいてね」

ヘルパー「へぇ~。私の世代だと、絵画とかで見たことある光景だわ~」

勇者「その頃は、皆武装していたもんだよ」

ヘルパー「時代が時代だからねぇ。勇者さんの世代は強い人が多いよね~」

勇者「その頃、芸術家というものは軽んじられていたんだけど…時代は変わったもんだねぇ」

ヘルパー「そうだね~。今お孫さん達、大活躍だもんね!」

勇者「もう、戦いを生業としている人は、ほとんどいないんだねぇ」

ヘルパー「平和だからね~」

12 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:29:01.46 ID:bUEcKGDH0
ヘルパー「勇者さんにとっては、魔王討伐の旅をしていた頃が1番輝かしい時代だったんだね」

勇者「わかるの?」

ヘルパー(1番戻りたいって思う年齢に戻るのも、認知症の症状だからね)

勇者「人々が魔王に恐怖していた時代が懐かしいなんて、勇者失格だねぇ」

ヘルパー「そんなことないよ。勇者さんが輝いていた時代だもん」

勇者「その輝いている時代が過ぎて、もう"勇者"の価値はなくなったねぇ」

ヘルパー「……」

勇者「子育てが終わって、おっ母も見送って…余生が長いなぁ」

ヘルパー「ねぇ勇者さん、街を歩いていて気付かない?」

勇者「ん」

ヘルパー「勇者さんが存在している価値は、この街の光景にこそあるんだよ」

勇者「え?」

13 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:29:36.57 ID:bUEcKGDH0
ヘルパー「勇者さんが魔王を倒したから、人々は武装をといてお洒落を楽しめるようになった」

ヘルパー「勇者さんが平和をくれたから、冒険者向けのお店じゃなくて、皆が楽しめるお店が街に並ぶようになった」

勇者「……」

ヘルパー「街の光景だけじゃないよ。勇者さんが魔王を倒さなかったら、お孫さん達は夢を叶えられなかったじゃない?」

勇者「……」コクン

ヘルパー「ほらね、勇者さんは私達の世代に"今この時"をくれた。魔王を倒したらそれで終わり、じゃないよ」

勇者「終わりじゃない……?」

ヘルパー「まだまだ『余生』には早すぎるよ。勇者さんが勝ち取った"今この時"を生きていかないと、もったいないよ」

勇者「今、この時……」

14 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:30:04.03 ID:bUEcKGDH0
>その後


勇者「できたよ~」ニコニコ

ヘルパー「あら勇者さん! 鶴、綺麗に折れたね~」


あれから、勇者さんは沢山笑顔を見せてくれるようになった。


勇者「ちょっと魔王倒しに行ってくる」


それでも、勇者さんが1番輝かしかった時代に戻ることは度々あるけれど。


ヘルパー「じゃあ、私もパーティーに入れて。一緒に行こうか~」

勇者「うん」ニコニコ


そういう時はこうやって、一緒に街を歩くのだ。


勇者「…あぁ、この街は平和だねぇ」

ヘルパー「うんうん。平和って素晴らしいね~」

勇者「そうだねぇ」ニコ


自分がもたらした平和だと知ってか知らずか、勇者さんは街の光景を見ると穏やかになるのだ。

そして私達も忘れてはいけない。この平和をくれた勇者さんに対する感謝の心を。


ヘルパー「さて帰ろう勇者さん。皆が勇者さんを待ってるよ」

勇者「うん、帰ろうか」



終わり

15 : ◆WnJdwN8j0. [saga]:2016/05/09(月) 20:30:54.53 ID:bUEcKGDH0
勇者の老後ってこんな感じでしょうかね。

実際の介護現場は、外出願望に余裕のある対応ができない所がほとんどだと思いますね。
現場環境の改善は難しいでしょうが、せめて自分が要介護者になった時、ヘルパーさんに迷惑をかけないようにしたいものです。

(関連作品省略)

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 21:18:50.00 ID:4PJhkowto
ヘルパーさんが患者の骨折りまくってるのを見ると最強は介護ヘルパーなのかなと…大腿骨折り過ぎ

18 : ◆WnJdwN8j0. [sage]:2016/05/09(月) 21:21:18.88 ID:bUEcKGDH0

>>17
・ヘルパーが最強というより、お年寄りが弱い
・その弱いお年寄りと接する機会が多いので、怪我をさせてしまう機会も多い
んじゃないかなぁと思います、確信はありませんが


posted by ぽんざれす at 21:23| Comment(0) | ss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする