2015年09月05日

【合作】魔王「覚悟はいいか」 暗黒騎士「例え魔王であろうと、構わぬ!(1/2)

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1425399140/

※自分がプロット担当、生キャラメルさんが文章を担当した合作です

2 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:13:37 ID:Ncmbc8/o

――――――――――――――――――――――――――

公国領地のとある町外れ


喪女「はふ…。遠いなぁ、生命の樹…」


丘を登っているのは、ふもとの町に住む娘―― 喪女
16年前、町の外れの草原で拾われた赤子だった


喪女「でも頑張らなくちゃ! それが拾ってくれた義父さんへの恩義ってものだもの!」ムンッ

自分に渇を入れ、重たい足を引きずって歩く

喪女(昨日は朝から井戸で水汲みをして、馬にブラシをかけ、洗濯と繕い物を済ませた後で朝食を作り、
   片づけをした後に家の掃除と庭の手入れを終わらせて、昼食の用意と片づけを済ませてから買い物に行って、
   そのあとようやく生命の樹の木の実を取りに行って、家に帰ってから殻を剥いてたらすっかり遅くなってしまい、あまり眠れなかったし…)


ぶっちゃけ、喪女は拾われた家でコキ使われていたのだった
それでも死に絶えるだけだった赤子を拾い、育ててくれている一家への恩義は忘れない


喪女(むしろそれだけがモチベーションとも言えるのよね)

3 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:15:20 ID:Ncmbc8/o

生命の樹は、この丘のてっぺんにある
その樹になる実は回復アイテムとして非常に珍重されており、一家の生計の一端を担っていた

そしてその木の実を取り、回復アイテムとして使用可能な状態にするのが喪女のほぼ毎日の仕事になっている


喪女(あの実… イガだらけで剥くの痛いんだよね…。 ちゃんと皮手袋持ってきたっけ…?)


もちろん木の実は、それだけでも取引される貴重な代物だ
だがそれを即時使用可能な状態にしておくことにより、より高価で買い取ってもらえるようになる

なにしろそのイガというのは、皮手袋をはめても指まで貫通してくるほどの強固な実だからだ
そうして“上乗せされる金額”こそが、喪女の生活水準を支えているとも言えた

4 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:15:54 ID:Ncmbc8/o

喪女「よぉしっ! 今日も元気に、木の実をあつめましょう!」


そしてもちろん、木の実集めと言うのは… 木に登って行うものである
その姿は、まるで柿の木に登る猿のようだった


喪女(くすん。毎回思うけど、我ながらヒドイ格好。いいもんいいもん、こんな仕事をしてたら、色気なんて…)

グイ

喪女「っと。あれ? この木の実はまだ熟れてないのかな… ずいぶん、固…」


ズル。

喪女「!」

バキンッ!


喪女「や、っと、っと、と… あわわわわわ!? お、落ち…」

5 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:16:27 ID:Ncmbc8/o

こんな時、絵物語だったら 素敵な王子様が現れてそっと支えてくれるのだろう
そんな素敵なシーンを、私は大木から落下する最中、ひっくりかえった空をみながら妄想していた


ドサッ! ガチャン!

冷たく固い感触が、背中と太もものあたりにぶつかった

喪女「痛い……。 うぅ、生きてる。よかったぁ…」


「そうか。間に合ってよかった」

喪女「っ!?」


目を開けると、超至近距離に男の顔があった

仏頂面の、いかめしい顔立ちの男だ
……どうやら、木から落下したところを見事にお姫様抱っこで受け止めてもらったらしい


喪女「あwせdrfty」

6 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:17:01 ID:Ncmbc8/o

言葉を失っていると、その男はゆっくりと私を降ろした


「驚かせたか。まあ、休憩を取ろうとした瞬間、空から女性が降ってきて俺も驚いた。おあいこだ」


男はそういうと、樹の根元に放り出された兜を拾い上げ、付いた土を払った

よく見ると、兜こそ外しているものの その全身は真っ黒な甲冑につつまれている
腰に携えた長剣からして騎士なのだろうとは思うが、それにしても異様ないでたちだった


暗黒騎士「……暗黒騎士という。この全身鎧姿が、そんなに物珍しいか」

喪女「あっ ご、ごめんなさい!!」


いつの間にか凝視していたらしい
慌てて手を振り、悪気があった訳ではないと伝える


暗黒騎士「――怪我をしたのか?」

喪女「え?」

7 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:17:32 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士は兜を脇に抱えると
私が振っていた腕をおもむろに掴み、掌を検分した


暗黒騎士「傷だらけではないか。樹からおちる時にどこかに擦ったのか? 手当てをせねば…」

喪女「ち、ちがうんです!! これはその、元々で!」

暗黒騎士「元々?」


丁度近くに落ちていた木の実を指差す
イガだらけの木の実を見れば悟ってくれるだろう


暗黒騎士「なるほど、あの木の実のせいで木登りの最中に既に怪我をしていたのか」


悟ってくれなかった



仕方なく私は木の実を剥くのを実演してみせる
そうして掌の傷は決して今回の怪我ではないことを説明した

8 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:18:26 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「つまり、今すぐに治療するべきような怪我はしていないと?」

喪女「はい…。あの、ご心配おかけしてすみません…。これは慢性的な古傷みたいなもので…」

暗黒騎士「……」ハァ


喪女「ぅ… (呆れたかな。心配させちゃって…悪いことしたなぁ)」

暗黒騎士「この掌が痛々しいことに代わりはないが、今回の怪我でないなら仕方ない」

喪女「……え?」


暗黒騎士は私の掌を取り
労うようにそっと反対の手を重ねて包んだ


暗黒騎士「目の前で女性に怪我をされては後味が悪い。怪我が無くてよかった。だが…」

喪女「?」

暗黒騎士「女であれば、身体は大事に扱え。その細指にその傷跡は 痛々しすぎて似合わん」

喪女「……っ//」

暗黒騎士「ではな」

9 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:19:14 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士は 慣れた手つきで兜を嵌め、あっという間に立ち去ってしまった
その後姿が見えなくなったときになって、ようやく礼を言っていなかったことに気がついた


喪女(助けてもらっておいて、いの一番にお礼の言葉も出てこないなんて…)


思わず膝をついてうなだれるほどに後悔する


喪女(でも……こんな私でも…)



喪女(あの人は、女の子として扱ってくれたんだな…)


力強く受け止められた腕の感触を思い出し、一人赤面した
思い出しながら顔がニヤけてしまう私は、きっと相当にキモちわるかったと思う


……ちょこっと、反省。でもやっぱり嬉しくて、ニヤけるのは止まりそうにない



・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

10 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:19:54 ID:Ncmbc8/o

――――――――――――――――――――――


別の日、生命の樹の根元


喪女「さぁって…! 木の実、今日もがんばって取りますか!!」


ガシッ!


喪女「はっ!?」 

喪女「い、いつも手をかける枝が無い!? そっか、このあいだの時に折っちゃったのか…」

喪女「って!! ど、どうしようっ!?」アワワ


暗黒騎士「危なっかしくて見てられないな…。君にこそ全身甲冑を着させるべきだ」ハァ


喪女「うひゃっ!?」

11 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:20:26 ID:Ncmbc8/o

突然掛けられた声に、おどろいて変な悲鳴をあげてしまった
ガッシリと片足を木にかけた状態で首だけでふりむくと、そこには……


喪女「って…… 暗黒騎士さん!?」

暗黒騎士「また、会ったな」


あまりの醜態。
登るのは諦めて木を降りる

ズルリズルリとずり下がる私に、暗黒騎士は手を貸してくれた
無事に着地した私は、服についた細かな木屑を払い衣服を整える

……整えたところで、たいして代わり映えはしなかった
ともあれまずは、そんな私を見ている暗黒騎士に疑問を投げることにしよう


喪女「あ、あの なんで…」

暗黒騎士「数日の間、このあたりを視察に回っている。この丘は見晴らしがいい」

喪女「そ、そうでしたか」

12 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:20:57 ID:Ncmbc8/o

質問を言い切る前に、回答される
聞かれる事はあらかじめ予測がついていたようだ


喪女(……きっと、頭もいいんだろうなぁ)


そんな思いで一人関心していると、
暗黒騎士は苦笑しながら予想外なことを言った


暗黒騎士「ついでだ、手伝おう。……君よりはまだ、俺のほうが木登りが似合うだろう?」クス

喪女「あ、あwせdrft」


ごめんなさい、あなたより私のほうが、きっと木登りは似合うと思います……
でもそんな言葉すら、スラスラいえたりしない

正直、男性と話してるってだけで緊張する。
止める事もできないでいるうちに、暗黒騎士はスルスルと気の上に登っていってしまった

13 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:22:55 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「これでいいか?」


私ではなかなか登れない、樹の高い場所にある大きくよく熟れた木の実を示される

ブンブンと首だけを縦に動かして充分だと伝えると、
暗黒騎士はさっと実を捥いで、投げる仕草をした


暗黒騎士「放るから、受け取ってくれ。カゴを持って登るのを忘れた」

喪女「あ」


カゴは私の腰に巻きつけてあるまま。すっかり渡すのを忘れていた

その直後に、見事なコントロールで私の手の中に木の実が飛んできた
私もそれを見事に取り落とし、暗黒騎士に『一度手の中に飛んできたものを落とすなんて。才能があるな』と笑われた


私も、笑うしかなかった

自嘲じみた乾いた笑いに溜息を吐き出しているとき
樹上では暗黒騎士が、楽しそうに次の実を選び始めていた


・・・・・・・・・
・・・・・
・・・

14 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:26:12 ID:Ncmbc8/o

――――――――――――――――――――――――


その日から、私たちはよく会うようになった

慌しい毎日で、浮いた話のひとつも無い私にとって
私を女性として扱ってくれる暗黒騎士と過ごす時間は、とろけそうなほど幸せだった

もっともっと、女の子として見て欲しい―― そう願ってしまうほどに




暗黒騎士「また木登りをしているのか? ……っと」


丘を登ってくる声に、振り向くと
暗黒騎士が、いつもよりもゆったりとした歩調で近づいてきた


喪女「あ! 暗黒騎士さん! 視察、おつかれさまです!」ニコッ

15 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:26:44 ID:Ncmbc8/o

昨日は雨だったから 私も仕事も少なくて、ゆっくり眠れた
肌の調子もいいし、元気だって有り余っている

『ちょっとでも可愛いところを見て欲しい!』なんて欲目が出ていた私は
鏡の前で猛練習したとびきりの笑顔をつくってみせた


喪女(こ、これなら少しは『見られるレベル』になってるはず……!!)


意気込みすぎて、もしかしたら少し顔が引きつってしまったかもしれない


暗黒騎士「おつか…… ああ。確かに少し疲れていたかもしれない。だが、疲れも吹き飛んだな」

喪女「?」


暗黒騎士の反応がおかしい

16 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:27:20 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「目の保養にはよさそうだが… スカートで木登りとは。随分とワイルドな色仕掛けをしてくれる」

喪女「うぎゃ!?」


浮かれすぎて、本末転倒な失敗をしてしまった

喪女(さ、さすがに勝負パンツなんて履いてきてないのに! 見られた!?) 

喪女(っていうか、そうだ! ベージュのカボチャパンツだったはず! 私、最悪!)


喪女「~~~~~~っ//」


樹にしがみつきながらも、必死にスカートを脚の間に挟みこんでパンツを隠す
暗黒騎士は兜をかぶって、バイザーを降ろした


喪女(……お、降ろしたって、それ、見えてるよね? 絶対)アワワワ!

喪女(隠したのは、兜の中で笑いを堪えている暗黒騎士の表情だけなんじゃないですかああ!?!?)パニック!!

17 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:28:05 ID:Ncmbc8/o

そう思っていると、暗黒騎士は私に向かって両腕を伸ばしてきた


暗黒騎士「今日の分の仕事は代わろう。降りてこい、ほら」

喪女「……//」


差し伸ばされた腕に向かって飛び込む
暗黒騎士は 力強く、それでもやわらかく、膝や腕のクッションを使って受け止めてくれた


暗黒騎士「あまり無茶をするなと言っているだろう」コツン

喪女「み゛ゃゥ」


こういう時、とっさに可愛い声で「きゃんっ」とか、なかなか出ない

ちょっとこういうシチュエーションは憧れてたのに……自己嫌悪
なんだろう、今の轢かれた猫みたいな声。

18 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:28:45 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「ほら。かごを外して、渡せ」

喪女「……うん!」


それでも暗黒騎士は、私のことをいつも暖かく見守ってくれる


しんどいとさえ思っていた木の実集めも、
たくさんの仕事を早くこなせるように頑張ることも、全てが楽しいものに代わっていった

全部が全部、暗黒騎士に会う為なら がんばれるような気がした


・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

19 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:29:23 ID:Ncmbc8/o

――――――――――――――――――――

さらに別の日 生命の樹の根元



喪女「…それで、こうやって皮手袋を二重にしてイガが刺さらないようにしてたら…」

暗黒騎士「想像に難くない。思うように指先が動かせなくなったな?」


今日は、暗黒騎士とゆっくりおしゃべりをしている
必要なだけの木の実あつめも、仕事も、すっかり済ませておいたから

私、やれば出来る子。



喪女「なんでわかっちゃったんですか! そうなんです、だから結局、刺さらないように慎重にやるしか…」

暗黒騎士「そんなもの、刃で引き裂いてしまえばいい」

喪女「ふふ。中の実が傷ついたら、使い物にならなくなっちゃいます。だからみんな手で剥くんですよ!」

暗黒騎士「俺であれば、イガだけを剣で剥いて見せることも可能だな」

喪女「自信過剰っていうんですよぉ、ソレー」アハハ

暗黒騎士「言ってくれる。なら試しにひとつ……  っ!」

20 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:30:05 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士の表情が変わり、視線を丘の向こうへと流す

ザッザッ…
私もつられて耳を澄ますと、行進のような足音が聞こえた
ついで、8つほどの兜が見えてくる


喪女「あれ? あれは…もしかして公国の騎士団ですかね? こんな田舎町に一体何を…」

暗黒騎士「ちっ…。悪いが今日はこのまま帰る」


暗黒騎士は兜を手に立ち上がり、そのまま私に背をむけて――


喪女「え!? ちょ、暗黒騎士さん!?」

暗黒騎士「! 声が大き――…


思わず引き止めてしまった私の声に反応したのは
暗黒騎士だけではなかった


「見つけたぞ! あそこだ!!」

21 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:31:08 ID:Ncmbc8/o

喪女「え? え…? こっちに来る?」

暗黒騎士「見つかったか…… 厄介な」


公国の騎士団といえば、自警のための組織
特別悪いことをしたわけでもなければ、気にすることは無いはず

こんにちは!と声をかければ、にこやかに挨拶を返してくれる
喪女の知る限り、公国騎士団というのはそういった存在だった

だが



公国騎士C「誰かいます… 娘です! 人間の娘と一緒にいます!」

公国騎士A「娘も共に捕らえろ! 人間に扮している可能性もある!」


喪女「え、ええ? どういうこと…??」


私の頭は、すっかりパニックをおこしてしまった
おろおろして、思わず暗黒騎士の腕に掴まってしまうほどに

22 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:31:45 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「……」


暗黒騎士(このまま俺が逃げてはこの娘が尋問される。だが連れて逃げたところで…後日、調査が入るだけだ)


暗黒騎士は、私と話す為に外していた兜を被りなおした

悠々とした動作のその間に、あっさり公国騎士団によって囲まれてしまう
だけれど、私を軽く抱いた暗黒騎士さんは、怖気た様子も無く堂々と立っったままで…


騎士団長「目撃情報は確かだったか。…貴様、暗黒騎士だな」

暗黒騎士「……なんだ。素知らぬふりでもしてやろうかと思ったのにな。既に情報を持っていたならつまらん」


世間話をするくらいの気軽さで、話を始めた

23 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:32:26 ID:Ncmbc8/o

騎士団長「その漆黒の全身甲冑、すぐにお前だとわかる。身を守る為のものの筈が… 逆に仇になったな」ニヤリ

暗黒騎士「コレは、いざとなればこの身が盾となり主君を守れるよう、硬度を必要として着込んでいるだけ」

暗黒騎士「はなから我が身を守るつもりでは着てないさ」


そういうと暗黒騎士さんは私を後ろへと押しやった
その更に後ろにあるのは生命の樹。ここなら背後を狙われることも無い


騎士団長「ふ。さすがは魔王軍幹部。腕にも自信はあるようだな」

暗黒騎士「……」

喪女(! ……魔王軍… 幹部!?)

24 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:33:18 ID:Ncmbc8/o

騎士団長「公国軍騎士団の誇りにかけて貴様を捕らえさせてもらう。覚悟はいいか」


スラッ… ジャキン!

騎士たちは一斉に抜剣し、構えをとった
戦闘知識なんてない私にもわかるほど、ピリリと空気が張り詰める


暗黒騎士「お前は戦いの度に、いちいち覚悟を決めているのか?」


軽口をたたきながらも、暗黒騎士は剣を引き抜き、片手で構えを取る
見えないけれど、きっとその口元も兜の中で微笑しているんだろうと思う

これだけの刃に睨まれているのに、恐怖なんてしていないようだった


騎士団長「ちっ。気取るな、外道騎士が」


騎士団長が剣を振りかざすした次の瞬間、暗黒騎士は意外にも前に躍り出た

暗黒騎士の剣と騎士団長の剣。激しい剣戟の響きが続く
そこに次々と、他の騎士たちも加勢していった

25 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:34:06 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士は公国騎士達の剣を全てかわしているけれど
少しづつふもとの方へ追いやられているようにも見える


喪女(暗黒騎士さん一人に、こんな大勢で…… わ、私も加勢しなきゃ!)


もっていた剥きかけの木の実を思い切り投げてみる

木の実は公国騎士の鎧に当たり、転がり落ちただけ
それでも、公国騎士はピクリと反応し 手が、止まった


喪女(やった!)


だが


騎士団長「邪魔をするな娘。邪魔をするならば、貴様も魔王軍の手のものと判断し、お前から捕縛させてもらうぞ…」ギロ

喪女「っ」

26 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:34:56 ID:Ncmbc8/o

ほんの一睨み
でもその眼は、私を震え上がるのには充分すぎる威圧感を放っていた

怖さのあまりへたりこみそうになったけれど
生命の樹にだきつくようにして なんとか私は身体を支えた

そんなやりとりを聞いた暗黒騎士は
他の騎士たちの剣を一蹴してから、一言だけ呟く


暗黒騎士「……勘違いしないでもらいたいな」



公国騎士「何……?」

喪女(……暗黒騎士さん…?)


暗黒騎士「このように艶やかさも色気も足りぬ小娘、情報収集の手段として利用していたに過ぎぬ」

喪女「!!」

27 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:35:55 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「この娘、どうやら男に不慣れらしい。すこし撫でてやれば操るのも簡単なものだ」クク


公国騎士「……騎士の風上にも置けぬ輩めが。やはり、外道騎士であったか」

暗黒騎士「……なんとでも?」


喪女「暗黒…騎士、さん…。そんな」


考えてみれば、当たり前のこと
やっぱり、あんなに格好いい暗黒騎士さんが、私のことなんて女として見てくれるはずはなかったんだ


喪女「暗黒騎士さん……!」


呼びかけたが、暗黒騎士は僅かに覗くその目すらあわせてくれない
兜に覆われたその顔は、ただ無機質なまま冷え切ってそこにあるだけ


喪女「う……」


あまりのショックに涙がこぼれた

28 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:36:32 ID:Ncmbc8/o

本当なら、思い切った平手打ちでもしたい
でも―― 実際には私は あの騎士達が剣を構えて争うその場にすら、恐ろしくて向かっていけない

明らかに異質。ここに私の居場所は無い


喪女(ううん。私には 暗黒騎士さんの隣なんて…… 最初から、場違いだったんだ)


悔しさのあまり、走ってその場から逃げ出した


そのすぐ後に、激情した騎士団長が剣撃を繰り出す
激しい戦闘音を横目にすりぬけ、私は一目散に丘を降りた



丘の中腹ほどまで走った頃に、ふと気がついた


喪女(……視線…?)

29 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:37:16 ID:Ncmbc8/o

立ち止まり、振り向く

騎士団長の攻撃を避けながら、あるいは受けながらも
暗黒騎士のその目は 時折、私を追っている


私の逃げ道が安全であるかどうか、確認してくれているのだ


喪女(あ…… もしかして)


全ては、私を安全に逃がすためだった?


喪女(追いつめられるふりで私から離れて距離をとろうとしてた…?)

喪女(私が、暗黒騎士さんの仲間と思われないために、わざとあんなことを言った…?)


そう考えるほうが、自然。


暗黒騎士は、他の騎士たちの剣を軽々と一蹴したんだ
なら、追い詰められて丘を後退するなんておかしい

あのタイミングで
わざと騎士団長を怒らせて事態をこじらせるなんて、おかしい……!!

30 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:41:05 ID:Ncmbc8/o

喪女(私…… 卑屈に、なりすぎて。自分のコンプレックスに負けて…)

喪女(守ろうとしてくれた暗黒騎士を、見捨てようとしてる…?)


少し遠くなった金属音。
恐怖を飲み込み、私は丘を引き返そうとした


でも暗黒騎士はそれに気付いて
公国騎士に悟られぬよう、私へ合図を出してきた


『行け』


喪女「--っ」


暗黒騎士さんが合図を送るために生んでしまった一瞬の隙
ほんの少し、空降らせてしまったかのようなカモフラージュ

そこに、騎士団長の一撃が入る。剣ではなく、足蹴の一撃

31 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:42:06 ID:Ncmbc8/o

これは暗黒騎士も予想外だったのか、みぞおちに容赦ないダメージをくらった


暗黒騎士「ぐ・・・っ」

喪女「!!」


悔しいけれど、このままでは私はただの足手まとい
私は丘を登ろうとしていた足をとめ、再度 踵をかえした。


そしてそのまま―― 逃げ出す、フリをした



そうでないと、暗黒騎士はうまく戦えない
でも…見捨てるだけなんて、やっぱり出来ない


丘を迂回し、生命の樹の陰にはいるようにしてそっと近づいていく


騎士団員は皆、暗黒騎士に注目している
もしかしたら気付いている人もいるのかもしれないけど、私なんかには注視していない

32 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:43:11 ID:Ncmbc8/o

迂回している間に、暗黒騎士はさらに一手くらわされていたようだった
みぞおちのあたりを片手で押さえつつ、その手甲からも血が滴るのが見える

『喪女を逃がすための時間稼ぎ』――
その為に負ってしまった怪我とダメージに、本当に思うように戦えなくなってしまったようだった


喪女(私が・・・ 私の、せいだ)


見上げた先にあるのは、生命の樹
その奇跡の果実


喪女(これがあれば・・・。せめてこれを渡すことが出来れば、暗黒騎士さんは・・・!)


思うよりも早く、身体が動いていた
樹に手をかけて一心不乱に登った

33 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:44:15 ID:Ncmbc8/o

綺麗なハイヒールなんて履いてなくてよかった
豪奢なドレスも、重たい装飾品もつけてなくてよかった


喪女で、よかった。


だって、そんな風に着飾っていたら
こうして・・・


貴方の為に、全力になることなんて出来なかったから




樹の上で、慌しくイガにつつまれた木の実を剥く
慎重になどしてられない。手に突き刺さるイガも気にせず、手早く剥き終えた

34 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:44:48 ID:Ncmbc8/o

深手を負った暗黒騎士は
今度こそ“身を守るために”、生命の樹に背を預けようと近づいてきていた


丁度いい
ここからなら、私でも おもいっきり投げればきっと届く
暗黒騎士なら、きっとうまく受け取ってくれる


喪女「暗黒騎士さん!!!」


私は精一杯、声を張り上げた

見つかって、魔王軍の仲間と思われて捕らわれてもいい
あなたに居なくなられたら・・・ ようやく出来た私の居場所も、なくなってしまう


私の声に、暗黒騎士はすぐに気づいてくれた


喪女「受け取って―――!!」

35 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:48:23 ID:Ncmbc8/o

木の実を投げ渡そうとした

だけれど、暗黒騎士は何を思ったか、受け取るための動作をとらず…
私のいる樹の根元へ、一直線に駆け寄ってきた


喪女「――何を・・・!」

暗黒騎士「何をしている!? こうなったらもう、君を抱えて逃げるくらいしか――


騎士団長「暗黒騎士ィィ!!!」

暗黒騎士「っ!」


騎士団長「窮地にあるからといって、背を見せて逃げ出すとは! その腐った根性ごと斬ってやろう!!!」


暗黒騎士を見ていた騎士団長は、樹上の私が見えていないらしい


暗黒騎士に隙が生まれた理由には気づかず
背後からここぞとばかりに 大振りの一手を―――……

36 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:50:16 ID:Ncmbc8/o

喪女「だめえええええええええええええええ!!!!!!!!」



騎士団長「なっ!? くっ……!」


私はその瞬間、手を広げて樹から飛び降り… 
暗黒騎士の上に、覆い被さった


ザシュッ!!!


喪女「っ… あ…」

暗黒騎士「喪女!!」

騎士団長「なっ!?!」


騎士団長「これは・・・ 先ほどの娘!? 馬鹿な、斬り合いの最中に飛び込むなど!」

喪女「ぐ、ぅぅっ!」

暗黒騎士「喪女!! 喪女!!?」

37 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:50:47 ID:Ncmbc8/o

騎士団長「やむを得ぬ…! 暗黒騎士、一時休戦を申し込む!!」

騎士団長「救護兵、手当てを! 一般人が負傷した!」

救護兵「はっ!」


騎士団長が呼びかけると、どこにいたのか 救護兵と呼ばれた白服の男が駆け寄ってくる
だけれどその人が近づくよりもずっと早く、暗黒騎士は私を抱きしめてくれた


暗黒騎士「喪女! 大丈夫か、今・・・!」

喪女「あ… あんこく…きし… さ」


ズルリ。

甲冑を叩き斬る勢いの一撃は、
私の肩口から背にかけて 大きく斬り裂いていた

腕も上がらない
僅かに残された力で、肘を曲げ… 手に持っていたものを、差し出す

38 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:51:20 ID:Ncmbc8/o

喪女「これ・・・ 回復、アイテ…」

暗黒騎士「まさか…… それを俺に届ける為に、戻ってきたのか!?」

喪女「えへへ…」ニコ

暗黒騎士「なんて無茶を……!」


喪女「あり・・・ が、と」

暗黒騎士「何を! 感謝をするのはむしろ・・・ 



私は 暗黒騎士の言葉を最後まで聞き取ることも出来ないまま……

そのまま、死んでしまった


・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

39 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:54:15 ID:Ncmbc8/o

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ふわふわと、心地よい

うっすらと記憶に残るのは 暗黒騎士の冷たく硬い鎧の感触
それと、兜の下にある 強面だけれど、感情豊かな漆黒の瞳

あまり抑揚もないけれど、意地悪で自信過剰な 優しい声音


最期が 好きな男の人の腕の中だなんて
私にはきっとそれだけで充分に生きた価値があるんだとおもう


私を守るために、見事な嘘をついてくれた暗黒騎士は
最後まで私を守ろうとしてくれて。

私は、そんな彼の役に立つために動いて、守るために死んだ


こんな死に方、最高だと思う
こんな人生、本当に…… 私には 出来過ぎてるよ


・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・

40 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:56:50 ID:Ncmbc8/o

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目が覚めると豪華な部屋の一室だった


「ここは…? あれ? 天国・・・?」


身を起こしてあたりを眺め見ると、大きくて立派な扉があった

あの先には閻魔大王でもいるのかな?
私は審判でも受けるんだろうか?


「……ダイジョブ。生前に悪いことなんて、なにも……」

「……」

「そ、そんなには、してないはず!」

ガチャ、と
勢い込んでドアを開けた

その先に居たのは、小柄なメイド服の女の子だった


メイド「ひ・・・!?」

「わぁ、すごいなぁ……。イマドキ、天国でも天使がメイド服を着たりするんだ…」ウンウン

41 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:58:23 ID:Ncmbc8/o

メイド「姫様!?!?」

「え?」


――姫様?




その後は、怒涛のように時間が過ぎた

何よりも混乱している私は、冷静さを失って歓喜している周囲にもみくちゃにされた
情報を得れば得るほどに余計に混乱してしまい 理解するのに時間がかかった


てっきり私は死んだと思っていたのだけれど、どうやら…


16年間眠り続けたままだという『魔王の“娘”の身体』に、
どういうわけか、憑依してしまっていた……らしい


・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・

42 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 01:59:23 ID:Ncmbc8/o

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魔王城 姫の部屋


姫(元・喪女)「…………これが、私…」


思わずお決まりの台詞を口にしてしまう
鏡を見る度に、そこに映るのは美しい少女の姿

自分で言うのは気恥ずかしいけれど
ほんのすこし 目元は喪女であった自分に似ている気がする

とはいえ、美しく細長い指先や 痛みのない長い髪などは比べようもない
喪女であった自分には持ち得なかったものばかりだ


それになにより・・・

コンコン


姫「は、はい! 開いています、どうぞ!」

43 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:00:18 ID:Ncmbc8/o

魔王「姫―! おっはよーーー!」バターン!!


姫「ま゛ッ!!!」 


目が覚めてから何度も…というか、四六時中そばにいたけれど
やっぱりその姿を見ると心臓が飛び出しそうになる


そう。私は『魔王の娘』の身体になっているのだから…
ここは魔王城で。当然、魔王がいるわけで。


魔王「…あ、あれ。身支度の途中だった? 出直したほうがいいかな」ショボン

姫「え、えっとっ…! だだ、大丈夫です!」


父親である魔王は、娘の身体である私を 何も知らずに溺愛してくれた
16年間眠り続けた娘の目覚めを何よりも喜んだのは間違いなくこのヒトだ


魔王「そう? よかったー」ニコニコ

44 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:02:31 ID:Ncmbc8/o

魔王というくらいなんだから、もっとこう
『ゴゴゴ』みたいなのを想像してたんだけど。見た目は普通の人だった


姫(あ、訂正。やっぱり普通の人…ではないかな。よく見るとマントの下に尻尾生えてるし)

姫(角も生えて…… っていうか、角なのかなぁ、あれ)

姫(二箇所だけ、髪型がモコっとしてるところあるんだよね… 髪に埋もれてよく見えないけど……)


姫「……やっぱり、あれは耳なのかな…」ボソ

魔王「!? 耳じゃないよ! ちゃんと角だよ!?」


魔王が髪を掻き分けると、中から角が見えた
くるくる丸まった、ヒツジみたいな角だった


姫(……っていうか、口に出てた!? あの『魔王』に対して、私って命知らずすぎる!!)

姫(娘さんの身体じゃなかったら、きっと余裕で死んでたとこだよ!!)

45 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:03:25 ID:Ncmbc8/o

姫「お、おはようございます! 魔・・・じゃなくって。 と、父様!!」

魔王「うんっ おはよー! よく眠れた、姫?」ニッコリ


挨拶すると、魔王は嬉しそうに微笑んで近寄ってきた
横に立って、私の頭を愛しそうに撫で回す

こんなに暖かい掌、喪女だった時には知らなかった


メイド「失礼します」ペコリ

メイド「魔王様? 女性の部屋の扉は、開けたならば閉めていただかなくては」ニッコリ


魔王「えっ、開いてた!? ごめん!」

姫「あ、いえ。…私は別に構いません」

メイド「姫様なのですから、構っていただかなければ困ります」クスクス

46 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:05:08 ID:Ncmbc8/o

メイド「姫様、おはようございます。よくお眠りになられましたか?」

姫「うん。 じゃなくて、えっと… はい」


メイド「ふふ。お身体こそ立派に成長なされましたが、まだまだ幼さの残る振る舞いですね」

メイド「さすがに16年も眠り続けられたのですから、仕方のないことですが」クスクス

姫「ご、ごめんなさい(本当はこれが地のまま、この年になりました…)」ショボン

メイド「…ふふ。そのように肩を落とさずとも、大丈夫ですよ」


メイド「ゆっくり、ゆっくり。みんなついていますから・・・ 一緒に ひとつづつ時間を埋めていきましょうね」

魔王「俺もついてるよ」

魔王「姫は起きたばかりなんだ… 今はゆっくりと生活に馴染むことだけ考えていていいからね」ニコ

姫「……」


これまで、ないがしろにされつづけてきた自分は 
こうして皆に愛されることなど初めてで・・・ それこそ、“持ち得なかったもの”だった

47 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:08:01 ID:Ncmbc8/o

何もかもが夢の中なのではないかと錯覚しそうになる

メイドに、実は自分は町に住む喪女なのだと話してみたりもしたが
彼女は愉快そうに『それはそれは、随分と忙しい夢をご覧になっていたのですね』と笑っただけ


姫(喪女としてすごした16年こそが… 昏睡の中で見ていた、夢だったりして…?)


暗黒騎士との出会いだって、思い返してみると夢物語のように思える

貧しい生活の中でがんばって暮らしていて。
ある日偶然であった素敵な騎士に助けられるなんて、夢みたいな話で。
お互いに守りあって、最後には命をおとしてしまうなんて出来すぎた悲恋で。


姫(……本当に… 夢、だったのかも…)


そんな風にしか思えない『喪女としての自分』
それでも16年間のその記憶は確かに自分の中に残っている

私は夢とも現実ともわからないまま、それでも少しづつ
姫として… 魔王城に馴染んでいった


・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・

48 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:09:19 ID:Ncmbc8/o

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しばらくたったある日
魔王城 庭園
 

魔王「姫ー! お茶にしようよ! はやくこっちにおいでー!」ブンブン!

姫「はーい!!」


案内されたのは、花々の咲き乱れる庭園だった

若干、というか 全体的に黒い花が多いけれど
それでもあちらこちらに色々な花が咲いて賑やかな庭園


姫「うわぁ・・・! 綺麗・・・!」

魔王「姫は花が好き? そうだ! 似合いそうな花を選んで、摘んであげるよ!」

姫「えっ そんな! い、いいですよ!」

魔王「ん~~ これなんてどうかなぁ?」


姫(聞いてないし!!)

49 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:10:51 ID:Ncmbc8/o

魔王が選んで指をさした花は
大きな葉の茂る、黄色い巨大な花だった


姫「わ、わぁ」


それはヒマワリとかの、そういう元気な花ではなくて。
なんというか、いかにも『毒花の鮮やかさと妖艶さ』を併せ持っている花だった


姫「……さすが魔王城って感じです!」

魔王「えっと…。 これじゃだめかな。 気に入らない・・・かな?」


姫(……あ。すっごい不安そうにしちゃってる…)


魔王「ご、ごめん。あんまりこういうセンスはなくて・・・ 一番おっきくて、色もハッキリしてて、綺麗だとは思うんだけど・・・」


姫(ふふ。こんな魔王だなんて。花を選ぶのに必死になるなんて……)


姫「いいえ。すごく、すごく気に入りました! ありがとうございます、父様!」ニコッ

魔王「!」パァッ

50 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:12:07 ID:Ncmbc8/o

私の言葉は嘘なんかじゃなかった。
こんな風にして選んでくれた花を、気に入らないなんてありえない


姫「でもそれ、随分と大きな葉が茂っていて・・・ 切花にするのは難しそうですね?」

魔王「んー…… なら、一回抜いちゃえばいいんじゃないかなぁ」

姫「抜け……ますかね? 結構大きいし、根も深いんじゃないですか?」


魔王「うんこらしょーって、一緒にやってみよっか! あはは!」

姫「あはは。それならなんとかなるかもです! やってみましょう!!」


魔王は葉を掻き分けて、その茎の一番太い部分を両手でつかむ
私はその魔王の肩の当たりにつかまって、ひっぱった


魔王「よっこらしょー♪」グイー

姫「ど、ど… ど…っこい、しょぉー…ッ!」ググググ

51 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:12:55 ID:Ncmbc8/o

魔王は力を入れてるのか入れてないのか、花は抜けない
私ばかり、本気を出しているような気もする


魔王「もっともっと力いれてー♪ せーの、うんこらしょー、どっこいしょー♪」

姫「す、すっとこどっこいしょーぉぉッ!!!」フンヌー!!

魔王「ちょっ、なんか違うよ!?」

姫「ふぬぅぅぅう!!」ムギギ


つい、こういうのって熱くなってしまう
私は魔王のツッコミも無視して、引っ張り続けた


姫(ハイヒール! 超、邪魔!!!)


魔王「あはは。姫、そんなに引っ張らなくて大丈夫だよ。ちょっとした冗談だから」

姫「えっ」

魔王「多分、俺一人でも片手で抜けるよ、これ。あはは」

姫「 」

52 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:15:04 ID:Ncmbc8/o

あっけに取られて、魔王の肩から手を離す

本気をだしてしまったのが少し恥ずかしいけれど
考えてみればこのヒトは魔王なのだし、花が抜けないなんてこと、あるわけもなかった


がっくりとしていた私の背後を
通り過ぎようとした人影が、足を止めた


暗黒騎士(あれは… 魔王様? それに…)ジー


魔王「んじゃ抜くよー。見ててね、姫! できれば応援もね!」

姫「あ、はい…。 がんばれー父様―…」ハァ


暗黒騎士「!?!?」ギョッ


暗黒騎士「魔王様! 姫様! いけません、それは・・・!!!」ダダダッ


魔王・姫「「え?」」


暗黒騎士「くっ…… 御前、失礼!!」

53 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:16:23 ID:Ncmbc8/o

いきなり剣を抜いて振りかざし、こちらに駆け寄る暗黒騎士
離れた場所から高々と飛び上がり、花の上から一直線に・・・

ザクッ!!!!


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』


姫「ひゃぁぁぁぁっ!?」ビクッ!!

魔王「これは・・・!」



暗黒騎士「姫様! ご無事ですか!?」

姫「あ、頭が・・・ぐらぐらします・・・っ!?」


魔王「ちょ、暗黒騎士! 俺の心配は!?」

暗黒騎士「魔王様がアルラウネごときの叫びにやられるわけはないでしょう!」

魔王「いやまぁ、確かに ちょっとうるさかった程度だったけど…」

暗黒騎士「ですが、攻撃に対する耐性の弱い姫様が もし本当にアルラウネの叫びを聞いていたらどうなっていたか…」

魔王「アルラウネって、何??」

54 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:18:16 ID:Ncmbc8/o

暗黒騎士「……魔王様。いくら自分には影響しない魔物だからと言って、勉強不足すぎます。危険生物の把握くらいは、しておいてください」

魔王「なんでそんなもんが俺の庭に生えてるの?」

暗黒騎士「不審者用の警備の一環にきまっているじゃないですか! それをわざわざ姫様の前でお抜きになるなんて!!」

魔王「え゛」


その後、魔王は土下座の勢いで謝ってくれた

でも私は、一度こぼれだしたら止まらなくなってしまった涙を抑えられず
両手で顔を覆って、その場にへたりこんでしまっっていた


姫(暗黒騎士・・・ 夢じゃない・・・ 本当に、本当に 暗黒騎士は居たんだ・・・!)


魔王も暗黒騎士も、恐怖ゆえだと勘違いして 優しく慰め続けてくれた
だから私は余計に、その嬉し涙を堪える事が出来なくなっていた

また、暗黒騎士に会えたのが…… たまらなく、嬉しかった


・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・

55 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:19:29 ID:Ncmbc8/o

―――――――――――――――――

その夜、姫の自室


姫(………暗黒騎士さん…)

私は部屋でひとり、ぼんやりと鏡台に向かって座り、髪を整えていた
1日中くくっていたはずの長い髪は、髪飾りを外すと するりと解ける

鏡の中にいる、美しい姫君の姿

わずかにうねった髪も、その艶は失わないままで
かえって艶めかしさを増した雰囲気をかもし出している


姫(・・・・・・今の、私なら)


喪女ではない、『本当の姫』の事を思うと 心が痛んだ

暗黒騎士は本当に実在した
なら、喪女だった私はも実在したのだろう

今の私は、『偽者の姫』
なら、この身体の持ち主である『本当の姫』もいるはずなんだ

56 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:20:57 ID:Ncmbc8/o

なのに


鏡の中の、この 姫君なら
きっと、あの凛々しい暗黒騎士ともよく釣り合うとおもった


姫(……どうして、私がこんな身体になっちゃったのか わからないけど……)


姫(…ごめん、なさい。あなたの身体を……もう少し、貸していて…)


もうすこし
もうすこしだけ。


私に あの日の夢の続きを、見させてください――……


・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・

57 :生キャラメル ◆XksB4AwhxU:2015/03/04(水) 02:25:27 ID:Ncmbc8/o
眠くなってしまったので、今日はここまでにしときます
なるべくソッコーで完結するようにがんばります

58 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/03/04(水) 05:35:06 ID:OCOoiCig
どこかで見た名前だなー生キャラメル

59 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/03/04(水) 06:27:23 ID:zvKgM3Zg


60 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/03/04(水) 08:25:30 ID:svUwQFs.
暗黒騎士のひとかと思ったらアンタかあああ

おかえりって言っていいのかな?
てか、もっとゆっくりしてもいいのよw



61 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/03/06(金) 00:04:51 ID:VpFkgq1g
期待

62 :以下、名無しが深夜にお送りします:2015/03/06(金) 03:27:19 ID:bNTwV6QU
あく

2/2へ続く
posted by ぽんざれす at 10:14| Comment(0) | ss | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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