2015年11月02日

【スピンオフ】魔術師「勇者一行をクビになりました」

魔術師「勇者一行をクビになりました」のスピンオフです



悪魔さんが魔王さんを倒し、悪魔王として君臨して半年。


暗黒騎士「悪魔、貴様あああぁぁぁ!!」

悪魔「いっけね、バレたっ☆ よし、レッツ逃避行!!」バッサバッサ

魔王「邪神の咆哮よ鳴り響け…"審判の檻”」ガシャーン

悪魔「イヤーン、ケダモノオオォォォ!! アタシをこんな檻に閉じ込めて、いかがわしいことでもするつもり!?」

暗黒騎士「誤解を招くことを言うな!! 悪魔王に君臨してから、毎日のように貴様はぁ…」ガミガミガミガミ

悪魔「そんなに言葉責めされると、アンッ、ハァッ…」ビクンビクン

暗黒騎士「は・な・し・を、聞けええええぇぇぇ!!!」


魔術師(あぁ…今日もやってる)


悪魔さんはしょっちゅう問題を起こしていた。


暗黒騎士「どういうつもりだ!! 雨の代わりに飴を降らせるなどと、正気か貴様ぁ!!」

悪魔「それだけじゃねぇ、なな何と!! 雨雲はわたあめなんだゼエェ!! これがホントの飴雲、なんつって~♪ イャハハハハ!!」

暗黒騎士「下らないなぁ、ああ下らない!!」

悪魔「マジかよ~。これがギャグセンスのジェネレーションギャップってやつか!!」

暗黒騎士「ギャグとかどうでもいい、本当に天気の神と交渉してきたのか!?」

悪魔「イャハハハハ!! アイツもノリノリだったぜ!!」

暗黒騎士「天気の神もグルかあああぁぁ!!」


魔術師(悪魔さん、反省してない……)

各地で飴が1メートルくらい降り積もったらしく、しかも気温が上がって飴が溶け始めた影響で、あっちこっちベタベタだとか。
ここ数日大雨が続いていて、災害一歩手前という所でこんな事態になった。大雨災害の心配は去ったけれど、こんな事態は前例がなく、学者さん達が頭を抱えていた。

悪魔「わかったわかった。反省文書くから、な?」

暗黒騎士「そういう次元の話じゃねえええぇぇ!!」

悪魔「暗黒騎士ぃ、あんまうるさく言うと…オーク☆ミ」

暗黒騎士「と、とにかく、何とかしろ……」


本当にどうするつもりなのか…。


魔王「邪神よ、魔境への道を開け…"虚無への扉”」

悪魔「飴が吸い込まれていくゼエェ~。邪神が糖尿になるんじゃねぇの、イャハハハ」

暗黒騎士「元凶は貴様だ!」

魔王「悪魔王様、戯れるなとは申しません。ですが魔物の王が戯ればかりでは、魔物達に示しがつきません」

悪魔「アァン? 逆だよ逆、魔物の王だから戯れが許されンだよ」

暗黒騎士「どういうことだ」

悪魔「イャハハハ、た~んじゅんなおハナスィ~」

悪魔さんはニヤッと笑った。

悪魔「どうせなら短い人生、目一杯楽しみてェだろォ。俺様みてェに好き勝手やりたきゃ、強くなりやがれ雑魚共が!! っつーことだよ」

呆れたのか、魔王さんも暗黒騎士さんも何も言えずにいるようだった。
だけど…

悪魔「魔術師ちゃーん、怒られちった~。えーんえーん、慰めて~」

魔術師「ぁはい…。ヨシヨシ…」ナデナデ

悪魔「えへへ、俺様立ち直ったヨ♪ ついでにアソコも勃っ」

魔術師「人生を楽しめ、かぁ…」

それが悪魔さんの行動の根本にあるものだと、私は感じていた。

魔術師(短い人生……)

悪魔さんからそんな言葉を聞くと――時々ふと、不安になる。

悪魔「スルーしないでよォ魔術師ちゃァん」クネクネ





>ある日


王国の使い「というわけで、我が国で保管している呪いの杖を引き取って頂きたく…」

悪魔「いいぜ」

人間の国の使いが来て、悪魔さんにそんな依頼をしていった。

魔王「いいのですか悪魔王様。話を聞けば、歴代の所持者に様々な厄がふりかかるという杖だとか…」

悪魔「はァ~ん? 俺様が呪いなんかにヤられるわけねーだろ」

王国の使い「それでは、頼みましたよ」ニヤリ



魔王「気に入らんな。魔物の王に直接依頼するなど、何と無礼な」

悪魔「人間の手に余る品物なンだろ、これだから下賎な人間ちゃんはァ。仕方ねぇなァ~」

魔王「向こうは自分達のリスクをゼロにしたいだけです。もしかすると、あわよくば悪魔王様に厄がふりかかることを狙って…!!」

悪魔「カタいこと言うなって魔王~、そんならそれでいいジャン!」

魔王「何と懐の深い」

魔術師「悪魔さん、人間が好きって言ってましたものね」

悪魔「あまりにも目に余ること仕掛けてくるようなら、食ってやりゃいいんだしな!」ケラケラ

魔術師「好きって、食べ物としてですか!?」

悪魔「LOVEもあるぜェ~♪」ギュッ

魔術師「きゃっ」

悪魔さんは私を後ろから抱きしめて、腕全体に包み込んできた。

悪魔「人間を嫌ってたら、魔術師ちゃんとラブラブになれなかったンだしィ。そんな恐ろしいことねーよ、なァ~?」

魔術師「あ、悪魔さぁん…。魔王さんの前で…」

悪魔「イャハハハ、見せつけてやってンだよ!!」

魔術師「えううぅぅ」

悪魔さんは人目を気にしなさすぎる。私はとっても恥ずかしかった。
魔王さんは「ふぅ」とため息をついて、視線をそらしてくれていたけど。

暗黒騎士「悪魔、人目をはばかれよ。ほら、呪いの杖を預かってきたぞ」

悪魔「おぉ~、これがッ!」

布に包まれた杖を受け取って、悪魔さんは目を輝かせている。
一体、その杖の何が悪魔さんの心をくすぐっているのか。

悪魔「ヨッシャアァ! 今から全世界のイケメンの家を襲撃するぞォ!!」バサッ

魔術師「何する気ですか!?」

暗黒騎士「やはり悪戯に使うつもりかァ!!」

悪魔「ジョーダンデース」チッ

魔術師(本気だ!!)

悪魔「呪いの杖かァ、どォんな形してンのかねェ? その姿を見せやがれッッッ!!」

そう言って悪魔さんは、杖を包んでいた布を派手に剥いだ。
すると――

悪魔「――っ!」

魔術師「どうしました…?」

布にくるまれていた杖は、少し特徴的な形をしていた。
だけどそれを見て、悪魔さんの顔から笑みが消えた。

悪魔「……呪術師」

魔術師「え?」

悪魔さんが小さく呟いたその声を、私は聞き逃さなかった。


魔王「これは、呪術を扱っていた者が使用していた杖だな。使用者の魔力が纏わりついている」

杖を見るなり、魔王さんがそう言った。

魔王「元々呪力のある杖が、使用者の死後、更にその力を強めたものだろう。悪魔王様、下手に解呪しても危険と思いますが」

悪魔「…問題ねェよ」

魔王「何と」

悪魔「これは俺様が持ってる。…こんなモンに呪われる程、俺様は甘くねぇ」

魔術師(悪魔さん…?)

珍しく真剣な悪魔さんの様子に、私は戸惑っていた。

悪魔「ちょい、この杖の観察してみるわ。部屋入ってくンなよ、危ねーから」

そう言って悪魔さんは部屋に戻っていった。

魔術師(悪魔さん…どうしたんだろう)

暗黒騎士「あの杖…」

魔術師「?」

暗黒騎士「どこかで見たことがあるような気がするな……」





>図書室


暗黒騎士「すまんな、手伝わせて」

魔術師「いいえ~」

私は暗黒騎士さんについてきて、図書室の文献を漁っていた。
暗黒騎士さんはあの杖を、本で見たのかもしれないと言ったのだ。

暗黒騎士「俺はあまり本を読まないから、すぐ見つかるとは思うのだが…」

暗黒騎士さんが読んだことのあるという本が机に積まれ、その一冊一冊に目を通す。
歴史や文化の文献がほとんどで、わかりやすく挿絵も沢山入っている。

魔術師(結構特徴的な形してたよね~…)

そう思いながら本をパラパラめくる。すると…

魔術師「あれ…? あ、あった!」

暗黒騎士「お」

その本の挿絵に目が行った。一瞬、見逃しそうになっていた。
その絵は、ローブを着た人間の女の子が杖を持っている姿を描いたもので、杖も小さく描かれていた。

暗黒騎士「あぁ…そうだった。何度も読んだ本だから杖の形も記憶にあったのか。その本で見たということは忘れていたが…」

魔術師「何の本ですか」

と、何気なく本のタイトルを確認して、私は驚いた。

魔術師「あ、悪魔王の資料!?」

暗黒騎士「あぁ。あいつのことを綴った本だな」

悪魔さんは歴代最強の魔王と言われている存在だから、こういう本があるのは当たり前のことだった。
だとしても、私は普段それを全然意識していないものだから、こう改めて悪魔さんの本があると驚いてしまうのだけど。

魔術師「それで、この杖の持ち主は…」

私は挿絵の説明文を読んだ。

魔術師「悪魔王の…相棒? 名は、呪術師……」

暗黒騎士「…そうか。悪魔の奴、だから杖に見覚えがあったんだな」

魔術師「悪魔さんの相棒ってのは……」

暗黒騎士「本の内容を要約すると、確か…悪魔は悪魔王になる前、ただのチンピラだったそうだ。呪術師は、その頃のあいつと組んでいた奴らしい」

魔術師(……この子と?)

絵ではフードをかぶっていたので顔の全体像は見えなかったが、どう見ても10代前半くらいの女の子である。





>夜


魔術師「うぅ~ん」

私は図書室からその本を借りて読んだけれど、呪術師さんについての記述は少ない。
暗黒騎士さんから聞いた以外の情報だと、呪術を使っていたけど腕前は三流だった、悪魔さんが悪魔王になってからも親交があった、そして30代前半で病死した――それ位である。

あと本に書かれているのは、悪魔さんの武勇伝がほとんどだ。

魔術師「むむぅ~…」

悪魔「魔術師ちゃあぁん! 開けて開けて、開けてええぇぇ!!」ドンドン

魔術師「きゃっ、悪魔さん!?」

私が部屋のドアを開けると、悪魔さんが飛び込むように入ってきた。

悪魔「魔術師ちゃぁ~ん、ちゅっちゅして、ちゅっちゅ~!!」

魔術師「唐突ですね!?」

悪魔「日中ほったらかしてゴメェン。愛してるから、ねっ、ねっ?」

魔術師「もぅ…悪魔さんったら」

悪魔さんの気分がコロコロ変わるのはいつもの事なので、それに関しては慣れてきた。

魔術師(それに…悪魔さんのこういう所、可愛いかも、って)

だから――断れないのだけど、いつもは。

魔術師「あれ…? 悪魔さん、魔力を大分消耗していますね?」

悪魔「あ? うん、まぁ」

今日は、そんな些細なことが気になってしまって。

魔術師「まさか悪魔さん…魔力が欲しくて?」グスッ

悪魔「違う違う違う!! 魔術師ちゃんへの下心以外でちゅーを求めたことは一切ねーから!!」

魔術師「グスッ…。ところで、魔力どうしたんですか?」

悪魔「杖の解呪で使ったんだよ~ン」

魔術師「良かった…悪魔さん、呪いにかからなかったんですね」

悪魔「そっ! そりゃー俺様最強だしィ、呪いなんて怖かねーけどォ? 城にいる奴らに呪いがふりかかったら大変ジャーン、俺様ったら下僕想い~」

魔術師「凄いなぁ…流石、若くして邪神の力を授かった悪魔王さんですね」

悪魔「イャハハ、惚れ直したァ? …って、ン? その文献は…」

私が机の上に置いていた文献が目に入ったようだった。

悪魔「おやおやおやァ? 魔術師ちゃん、俺様のことが気になっちゃったわけェ? 魔術師ちゃんにならぁ、年中24時間いつでもどこでも好きな時に俺様の丸裸の姿を見せるのにィ」クネクネ

魔術師「ぁ、いえ…調べてるのは悪魔さんのことじゃなくてぇ…」

悪魔「ぬゎにいいぃぃぃ!! 俺様以外に魔術師ちゃんが興味持ってることってなにィ!! やだやだ、魔術師ちゃんの中の1番は俺様じゃなきゃヤダー!!」ジタバタ

魔術師「ぁ、あのぅ…さっきの杖の持ち主さんなんですけど…」

悪魔「うにゃりん?」

魔術師「呪術師さん…って方ですよね」

私なりに勇気を出して言ったのだけれど。

悪魔「そうよん。いやー、なっつい名前だわぁ」

悪魔さんは事も無げに、あっさりそう答えた。


魔術師「……」

魔術師(呪術師さんって私と同じく人間で、魔法の使い手で、でも魔法得意じゃなくて、小柄で……)

魔術師(もしかして悪魔さんの昔の恋人だったりして……)

魔術師(それで、私は呪術師さんと被るところがあるから悪魔さんは……)グスッ

悪魔「何で泣くのォ!? よしよ~し魔術師ちゃん、悪魔王はチミを愛してるよォ」ギュッ

魔術師「グスッ…悪魔さん、グスッ、呪術師さんってどんな方ですかぁ…」

悪魔「呪術師…? どんな奴も何も……」

悪魔さんは次の瞬間、とんでもなく凶悪な顔になった。

悪魔「アイツはとんでもねぇヤローだ! 生きてたらブン殴りてぇ位だ、ファック!!」

魔術師「ひえええええぇぇぇ」ビクウウゥゥッ

悪魔「あ、わり」コロッ





俺様は悪魔王になる前、ただのチンピラだった。


悪魔「イャハハハ!! 群れて喧嘩して、たった1人に負けるなんてカッコ悪ぃの!」

ボス「く…」

三下A「ま、まさか…ボスさんが、やられるなんて……!!」

三下B「アイツ…まさか、隣町で噂の!?」




魔術師「悪魔さん、その頃から強かったんですねぇ。文献にも書いてありました」

悪魔「イャハハ、まぁな~」




ボス「何だ!? あいつに聞き覚えがあるのか!?」

三下B「はい…あいつは通称『切り裂きの悪魔』。疾風の如く、喧嘩相手の懐に潜り込み…」




魔術師(うんうん)




三下B「爪を勃起させ、パンツを切り裂くという!!」




魔術師「何で!?」

悪魔「あぁ、あの頃は複数の奴を相手にすることが多かったからな。律儀に全員ボコるのはめんどかったんで、代わりにパンツを切り裂いていた」

魔術師「だから何で!?」

悪魔「ちなみに上の回想、喧嘩相手みんなフルチンだから」

魔術師「言わなくていいですーっ!!」




とにかくまぁ、俺様は『切り裂きの悪魔』として名をあげていたんだが…。


呪術師「喰らえぇ、呪いだぁ!」バッ

ボス「うわあああぁぁぁぁ」

呪術師「は、はははーっ、ま、ま、ま、参ったかぁーっ」

悪魔「…おい、何やってンだ」

呪術師「ふ、ふふふっ…悪魔ぁ、やったね! 『うちらの力で』また、この町でも名を挙げられたよぉ~」

悪魔「なーにが『うちらの力』だよ。俺様の喧嘩中は隠れてコソコソしてた奴が」

呪術師「ふ、ふふふふふ…だけどうちらが有名になったのは、うちの力のおかげだよ……」





魔術師「何というか…」

悪魔「卑怯だろ?」

魔術師「……ちなみに、どんな呪術を?」

悪魔「アソコにモロにかけたらな…」ブルブル

魔術師「すみません、言わなくていいですっ!!

悪魔「文献じゃ脚色されて相棒ってことになってるがよォ、ただの犬のフンだっつーの! アイツがボコられてたのを助けてから、ずっと俺様にひっついて来てたんだよ!」

魔術師「そ、そうなんですか……」

…でも、呪術師さんの方は悪魔さんを好きだったのでは…。
それに悪魔さんも本気で鬱陶しかったら、呪術師さんから逃げることだってできた…。

魔術師(ってことはやっぱり…悪魔さんも実は心の底では……)

悪魔「そんなことより魔術師ちゃん、イチャイチャしようぜェ~!! 膝枕して膝枕ぁ!」

魔術師「ぁ、悪魔さん…その……」

悪魔「おねがいー、あくまたん、魔術師ちゃんのことだいちゅきー! ちゅっちゅちて、ンー、ンー!」

暗黒騎士「馬鹿か貴様は」

悪魔「どわぁ!?」

悪魔さんはドアを背中にしてて見えていなかったようだけど、部屋の入口付近に暗黒騎士さんが立っていた。

悪魔「暗黒騎士テメェ!! このノゾキ! 変態! スケベ!」

暗黒騎士「貴様がドアを開けっ放しにしていたのだろう。廊下中に貴様の恥ずかしい声が響き渡っていたぞ」

<クスクス、悪魔王様ったら、やだー、ウフフフ

悪魔「イヤァ~ン」クネクネ

魔術師「全っ然、恥ずかしがってませんね」シクシク

暗黒騎士「貴様、悪魔王としての自覚はあるのか」

悪魔「平和だからいいジャーン」プー

暗黒騎士「悪魔王としての威厳を持て! そんなでは、反乱が起こるぞ!」

悪魔「反乱ねぇ…」鼻ホジホジ

暗黒騎士「貴様が君臨してから城全体の雰囲気がたるんでいるのだ、もう少しなぁ」

悪魔「はいはいオークオーク」鼻クソペトッ

暗黒騎士「やめろーっ!!」ゴシゴシ

悪魔「じゃあ聞くけどよ、具体的にどうしろってんだよ?」

暗黒騎士「そうだな…魔王様の時は定期的に演説を行っていた」

悪魔「演説ゥ~?」

暗黒騎士「そうだ。魔王様の演説は、魔物全体に威厳を見せ、また畏怖の感情を与えていた。そうすることにより、魔物全体をまとめあげていた」

悪魔「わかった、じゃあ俺様も演説する!」

魔術師「できるんですか!?」

悪魔「伝令を出せ! 明日な!」

魔術師「もっと準備期間が必要なんじゃありませんか!?」

悪魔「任せろ魔術師ちゃん! 悪魔王のカリスマ性を見せてやるぜッ!! イャーハッハッハッハ、ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

暗黒騎士「嫌な予感しかしない……」

魔術師「同感です……」

悪魔「ギシャシャシャシャ、イヒャ、イヒャ、まっ魔術師ちゃん、3秒数えぶゎはははは!!」

魔術師「3、2、1…」

悪魔「ハァ…」ズーン

魔術師「笑う力を使い果たすタイミングが掴めている!?」

暗黒騎士「何てどうでもいい…」





>翌日


ワーワー


魔王「流石、歴代最強の悪魔王様。急な知らせにも関わらず、悪魔王様の演説を聞くべく、沢山の魔物が集まったな」

暗黒騎士「…認めたくはないが、奴のカリスマ性は本物ですね」

魔王「あぁ。ところで悪魔王様は…」

暗黒騎士「あ、出てきました」


悪魔「はいはいどーも皆さん、お待たせしましたァ~!!」

<ワアアアァァァァ


魔術師(大丈夫かなぁ…)

バルコニーの、悪魔さんが立っている後ろの方で私は見守っていた。


悪魔「俺様が悪魔王に再び君臨してから半年。人間と揉め事も起こらず、俺様はひじょ~~に嬉しい!」

<悪魔王様ああぁぁ!!
<平和バンザアアアァァイ!!
<キャー、悪魔王様素敵いいぃぃ!!


魔術師(凄い人気だなぁ)


<ワアアアアアアアァァァァァ

悪魔「……」

悪魔「うゥるせええええぇぇぇぇッ!!!」

<シーン

魔術師(ええええぇぇぇぇ)


悪魔「本題はこっからだ。魔物っつーのは本来、血の気が多い生物…。現状に不満を持ってる奴も沢山いるだろ?」


魔王「お?」

暗黒騎士「ん?」

魔術師「え?」


悪魔「今日はそんなテメェらをスッキリさせるイベントを用意してやったぜ…」

<ワアアアアアァァァァ


魔術師「え、えっ!?」

暗黒騎士「スッキリさせる…だと!?」


悪魔「喜べ…思いっきり暴れられぞおおおぉぉぉ!! イャーッハッハッハ!!」


魔王「まさか戦争でも仕掛けようという宣言か…!?」

魔術師「悪魔さんに限って、それはないはず…」

暗黒騎士「では……?」


悪魔「題して……」

悪魔「第1回、魔王争奪喧嘩祭りじゃああああぁぁ!!」

<ざわざわ


悪魔「ルールは至ってシンプル!! ここで1番強い奴が魔王になれる、ただそれだけだ!!」

暗黒騎士「な…!? おい、待……」

悪魔「行くぞ野郎どもおおおぉぉ!! 俺様から魔王の座を奪ってみろやアアアァァ!!」バサッ

<ワアアアアアァァァァァ


魔術師「ひえええぇ……」

悪魔さんは観衆の中に飛び込んでいき、演説会は一瞬にして喧嘩祭りの会場となった。
沢山の魔物達が暴れる光景はそれだけで心臓に悪く、とても見ていられない。

暗黒騎士「馬鹿共が…収集がつかんぞ!!」

魔王「まぁ、良いではないか暗黒騎士」

暗黒騎士「しかし…!」

魔王「これが悪魔王様のやり方だ。見ろ、悪魔王様の様子を」


悪魔「イャーッハッハッハ!! 雑魚共がァ、ぬるいんだよおおぉぉ!!」


暗黒騎士「…余裕ですね」

魔王「うむ。力を誇示するには、最もわかりやすい方法だ。魔物達も悪魔王様に直接殴られれば、反抗心を持てぬだろう」

暗黒騎士「何て奴だ……」


悪魔「雑魚一掃、鳴神ィ!!」バチバチバリイイィィッ


<ぎゃああぁ
<アアアァァン


悪魔「俺様の優勝ォ~♪」バッサバッサ

魔王「お見事です、悪魔王様」

悪魔「魔術師ちゃぁん、お祝いのちゅっちゅ~、ンー、ンー!」

魔術師「人前ですよぉ!?」

悪魔「そいじゃデートしようぜェ!」ヒョイッ

魔術師「きゃっ!?」

悪魔「イャハハ、出発進行ォ~」バッサバッサ

魔術師「ちょっ、悪魔さあああぁぁん!?」


魔王「…自由なお方だな」フッ

暗黒騎士「魔王様…少しは否定の念を抱いて下さい……」





>花畑


悪魔「着いた着いたァ~♪」

魔術師「悪魔さんたら…強引なんだから」

悪魔「ゴメンゴメェン魔術師ちゃん、許して、ね、ね?」

魔術師「もう……」

きっと反省なんかしていない。だけど両手を合わせてスリスリされては、怒る気も無くなっちゃう。

魔術師「悪魔王ともあろうお方が、こんなに自由でいいんですか?」

悪魔「俺様はずっとこうだぜェ~。悪魔王になったからって変わらねーよイャハハハハ」

魔術師「…」

私は昔の悪魔さんを知らない。人間は、そんなに長い期間生きることはできない。

魔術師「悪魔さん言っていましたよね…人生は楽しめ、って」

悪魔「そうだなぁ。限りある時間、楽しまなくてどーすンよ?」

魔術師「…えぅっ」

悪魔「………へ?」

魔術師「うええぇぇ、グスッ」

悪魔「ちょおおぉぉぉ!? な、何で泣くウウゥゥ!?」

魔術師「グスッ…悪魔さんにとっては、私といる期間なんて、一生の内ほんの少しですよね」

悪魔「んあ?」

悪魔さんは首を傾げた。

魔術師「人間の寿命なんて…悪魔さんに比べたら、遥かに短いんですよ……」

悪魔「…あぁ~、そうだな」

魔術師「悪魔さんは…悪魔さんは……」


わかっている。こんなことを言うのは性格が悪いんだって。
それに、既に人間との「お別れ」を果たしている悪魔さんにこんなこと言うなんて――

魔術師「悪魔さんは…私が――」

なのに、言葉を止めることができなくて。

魔術師「私がおばあちゃんになったら――他の女の子に行くんですか……」

悪魔「いかねーよ」

魔術師「………えっ」

そして返答はあまりにもあっさり返ってきた。

悪魔「よくわかンねぇなぁ? ンなこと言ったら、俺様なんて今現在ジーチャンよジーチャン?」

魔術師「で、でも体はいつまでも若いですし……」

悪魔「俺様の愛を疑うのか魔術師ちゃ~ん!!」ギュウッ

魔術師「きゃっ!?」

悪魔さんは力強く抱きしめてきた。
逃れようにも腕はがっちりしていて、逃がしてくれそうにもない。

悪魔「俺様はこんなに、こォんなに魔術師ちゃんのこと好きなのにさぁ~」

魔術師「だって、だってぇ……」

悪魔さんのことを疑っているわけじゃない。
だけど時々不安に思うこともある。

魔術師「私、悪魔さんより早く死んじゃいますよ…?」

悪魔「そん時ゃ俺様も死ぬよ」

魔術師「何言ってるんですかぁ……」

悪魔「本気。邪神に残り生命力を捧げるンだ」

魔術師「そこまでしなくたっていいですよぅ…グスッ」

悪魔「いーや。でもそん代わりとして、邪神に頼むンだよ」

魔術師「何を…ですか?」

悪魔「決まってンじゃん」

悪魔さんはニヤッと笑った。

悪魔「何度生まれ変わっても、魔術師ちゃんの側にいられますように――って」

魔術師「――っ」

想像もしていなかった言葉だった。というか、信じられるわけがない。

悪魔「だから生まれ変わって魔術師ちゃんが人間になっても、魔物になっても。絶対に俺様と巡り合う――そういうの、どうよ」

魔術師「それだけじゃ…不安です」

悪魔「心配ねーよ」

悪魔さんは私を抱きしめる手を頭に回して、優しく撫でてくれた。

悪魔「例え何に生まれ変わったとしても――俺様と魔術師ちゃんが恋に落ないわけ、ねーだろ。『ずっと一緒』って、約束しただろ?」

魔術師「悪魔さん……」

未来は不確定だからわからない。
だけど、悪魔さんがそう言ってくれることがただ、嬉しくて、心強くて――

悪魔「とーこーろーで、魔術師ちゃん?」

魔術師「はい……?」

悪魔「ずっと、ちゅっちゅがお預けなんだけどォ?」

魔術師「…くすっ、もう悪魔さんったら」

私は悪魔さんの首に手を回して背を伸ばす。

魔術師「んっ――」

悪魔「――っ」

私は強く強く、唇を押し付けた。



悪魔「ところでさァ」

魔術師「はい…?」

お花畑でまったりしていた時、悪魔さんが話を切り出した。

悪魔「昨日の呪術師の話には続きがあってよォ。その~…あんま言いたくねェンだけど」

魔術師「っ!」ピクッ

やっぱり悪魔さんと呪術師さんの関係は――と思っていた時だった。

悪魔「俺様、102年眠ってたジャン?」

魔術師「は、はぃ……」

悪魔「それ…あのヤローのせいなんだよおおおぉぉぉ!!」

魔術師「………え?」

悪魔「あのヤロー『悪魔王ならどんな呪いも大丈夫でしょ』って俺様を呪いの実験台にしやがってよォ! バッチリ効いた挙句、どこぞの誰かに封印されたじゃねーかよッ!!」

魔術師「そ、それは…お気の毒に」

悪魔「クッソー。せめて奴の子孫がわかれば…あ、無理か。あのヤローが結婚できるわけねぇ」

魔術師「…本当に散々でしたね。眠っていたせいで、呪術師さんにお別れも言えなかったんですものね」

悪魔「…まぁな」

悪魔さんは否定をしなかった。

魔術師「…やっぱり何だかんだで、呪術師さんのこと……えっと」

悪魔「あぁ、好きだったのかもな」

魔術師「!」

悪魔「…悪魔ってのは人間に嫌われるモンでよォ。俺様、人間から散々な目に遭ってきたんだぜ。けど…アイツは悪魔である俺様に懐いて、ついてきた」


呪術師『うち、絶対いつか恩を返すから…! それまで、悪魔から離れない!』


悪魔「…正直鬱陶しかったけど、まぁ…人間が嫌いじゃなくなったのは、アイツのお陰かもな。杖を通してアイツの魔力に再会できて…何だかんだで、懐かしかったなァ~」

魔術師「……」

もしかして呪術師さんの悪魔さんへの想いが――あの杖を、悪魔さんの元へたどり着かせたのかもしれない。

魔術師「…私だって、悪魔さんのこと好きですよ」ムゥ

悪魔「お~? どったの珍しい~♪」ヒヒッ

魔術師「別に……」

こんなこと思っても仕方ないのだけれど。

魔術師「可愛い人ですもんね……呪術師さん」

悪魔「………あ?」

悪魔さんはポカンとした。
だけど……

悪魔「か、かわっ…イャハハハハ、げひゃひゃ、アイツが、アイツが…っ、ぶゎーっはっはっはっは!!!」

魔術師「あ、悪魔さぁん!? な、何で笑うんですか!?」

悪魔「だ、だって…ヒィ、ヒィ」

悪魔さんは笑う力を使い果たす前に一旦深呼吸をした。

悪魔「アイツ…男よ?」

魔術師「……………」

魔術師「えええええぇぇぇぇ!?」

悪魔「…ハハーン、魔術師ちゃん? さては、アイツが女の子だと思って嫉妬したなァ~?」

魔術師「そ、そそそんなことっ!?」

悪魔「いやぁ、嬉しいぜェ♪ そうかぁ、魔術師ちゃん俺様のことそんなに…」

魔術師「も、もーっ!」

だけど、ホッとしたのは確かだった。

悪魔「…でも、まぁ。アイツの呪いのお陰で魔術師ちゃんに会えたんだよな」

魔術師「…そうですね!」

それは呪術師さんに感謝しなくちゃ。本当に、ありがとうございますって。

魔術師「悪魔さん…」

悪魔「ン? 何だ?」

また1つ悪魔さんを知ることができた。
それでもまだ足りない。大好きな気持ちが止まらないから、もっともっと悪魔さんのことが知りたい。

魔術師「悪魔さんのこと…もっと教えてもらってもいいですか?」

悪魔「…いいゼッ♪」


悪魔さんは私の手を握りしめて、満面の笑顔を見せた。


悪魔「俺様の全てを知ってくれよ――これからもずっと、ずっと一緒なんだからさ」


Fin


リクエスト内容は悪魔さんを掘り下げる話…とのことで。何か普通に続編っぽくなってしまったが、これでいいのか←
リクエスト下さったリエルト様、ありがとうございました(´∀`*)ウフフ

今作を書くにあたって本編を読み返したのですが…悪魔さんって本っ当~…にウザいですね!!w
あのウザさをまた書けるか心配でしたが、やっぱり悪魔さんはウザいままだった!!m9(^Д^)9m

掘り下げれば掘り下げる程アレな部分ばっかだけど、そうじゃない悪魔さんは魅力半減ですよね。
posted by ぽんざれす at 22:13| Comment(4) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
リクエストに応えていただき感謝感激ですっ!
後日談でありながら過去の要素もあって、まさに悪魔さんを掘り下げるお話になってるまとめ方がさすがなぁと感動しました。
悪魔さんのウザさに磨きがかかってる上にイケメンなところまで磨きがかかってて、ギャップにやられそうになります(*´ω`*) 悪魔さんだけでなく魔術師ちゃんの可愛さも一層際立ってて、もうキュンキュンきちゃいますね!
改めてありがとうございます(ノ´∀`*)
これからも素敵なお話を楽しみにしております!
Posted by リエルト at 2015年11月05日 00:32
どうもですーσ(´ω`*)
悪魔さんのウザさは、書いててとっても楽しかったです( ´∀`)
またいつでもリクエストして下さいませ(( ˘ω ˘ *))
Posted by ぽんざれす@作者 at 2015年11月05日 07:00
よかった~
よかった~んだけど・・・
王国の使いのニヤリが気になっちゃって・・・
結局、なんてこたぁなかったんかのぉ
Posted by at 2015年11月30日 19:20
ご指摘ありがとうございます(´∀`)
作者はそこまで深く考えていなかったというのが正直な所です。
王国の使い手の心情を挿入するとしたら
王国の使い(我が国で持て余している杖をこうも簡単に引き取るとは。その杖は魔物達にも害を及ぼすのか…まぁ、我らには関係ないがな)ニヤリ
ってとこです。無意味に思わせぶりな描写を控えるよう精進します。
Posted by ぽんざれす@作者 at 2015年11月30日 19:38
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