2015年11月06日

【スピンオフ】姫「王子の代わりに戦う使命を負った」

姫「王子の代わりに戦う使命を負った」1/2 2/2のスピンオフです



山賊ボス「グッ…よくも、やってくれたなぁ…!」

山賊のボスは追い詰められていた。
十数人いた下っ端達は皆やられ、残す所は彼1人。

しかも、その彼を追い詰められている者というのは――

「……」

女だった。年の頃は若く、中性的な顔立ちの美女。
剣を構える姿は凛々しく、まるで戦女神を彷彿とさせる立ち姿だ。

山賊ボス「うわあああぁぁ!!」

ボスは女に襲いかかる。
丸太のような腕で降る大剣はかなりの殺傷力を秘めており、細身の女など一瞬で真っ二つにできそうなものだ。

しかし――

シュッ

山賊ボス「ぐあっ!?」

刃が女をかすめたと同時、女の剣がボスの手を強く打った。
女はそのまま跳躍し――ボスの鼻を思い切り蹴飛ばす。

山賊ボス「ぐおッ!? こ、この…っ!?」

立て直そうとした、その時――

首筋に冷たい感触――刃だ。
女の持つ剣が、彼の命を奪うスレスレの所で止まっていた。

「投降するか死ぬか――選ばせてあげるわ」

山賊ボス「…っ!?」

ボスの顔が真っ青になる。
この女の目――本気だ。

山賊ボス「な、何者だ、お前……」

「私? 私は――」


姫「姫――魔王を討った者、と言えば、十分でしょう」









王子「や、ややややったなぁ」ガタガタ

姫「そうですね」

縄に繋がれ、護送車に詰め込まれる山賊たちを見送りながら、姫は涼しい顔で言った。
解決したというのに、王子はまだ怯えが抜けていないようだ。

姫「数が多いだけで大した相手ではなかったです」

王子「だ、だなぁ!? お、俺がボスの相手しても良かったかもしれないなあぁ!?」

姫「……じゃあ、次からは私は出なくていいですね」

王子「んなああああぁぁぁぁ!?」

ここ最近、王子はイメージアップの為、こうして悪者退治に繰り出しているのだ。
…なのだが根は箱入りのヘタレの為、姫を毎回同行させている始末。

王子「すまんかったあぁ!! じっ、次回も来てくれ、頼むこの通りだ!」

姫(…やれやれ)

呆れたけれど、こうして自分に頭を下げられるようになっただけ、王子は成長したのかもしれない。
…といっても、決して人前ではしないのだが。

姫(まぁ、いいでしょう)

それでも、それで許すことにした。
だって、そうでもしないと『彼』に――


飴売り「いよっす~♪ 山賊退治お疲れさーん! 糖分摂取に飴はいらんかねー」

丁度姫が少し離れていた時、その『彼』が来た。
飴売りは姫に気付いていない様子だ。

王子「飴売りぃ~! 10種類の飴、全部1個ずつくれ!」

飴売り「へい、毎度あり! 王子ぃ、今日の戦果はどーよ?」

王子「あぁ…順調だったが、結局ボスは姫が倒した。くそぅ…」

飴売り「いやまぁ、姫さんの強さは規格外だから仕方ねーって!」ハハハ

王子「それはそうなんだが…くそ、姫に頭が上がらん……」

飴売り「頭が上がらない? あははは、そりゃ俺もそうだってぇ! 姫さんの怖さは大魔神級だもんよぉ、逆らうなんてとても」

姫「へぇ~? それでそれで?」

飴売り「」

姫「続きを聞かせて頂きたいですね、飴売り?」ニコニコ

飴売り「姫サンハ…気高クテ素敵ナ方デス……」汗ダラダラ

王子(まるで蛇に睨まれた小動物……)





結局その後30分間、飴売りは正座で説教される羽目になった。

飴売り「足がビリビリぃ~…」フラフラ

姫「あら、大魔神級のお叱りの方が良かったかしら?」

飴売り「勘弁して下さいッ!!」

姫「愛想がいいのは貴方の長所ですけど、口が軽すぎるのはいいとは言えませんね」

飴売り「姫さんと正反対だよね~。だから、いいんじゃない?」

姫「…どういう意味です?」

飴売り「正反対の方が互いに補い合えていいんじゃないかなぁ…夫婦って!」ニヒッ

姫「……」

姫「切る」

飴売り「ストップ、ストオオオォップ!! あ、足が痺れて、逃げられねえぇ!!」

姫「言い残したことはありますか?」

飴売り「姫さんッッッ、揚げいも奢るから許してっ、なっ、なっ!?」

姫「いいでしょう」





姫「あぁ美味しい」

飴売り「だねぇ」

公園のベンチに座り、揚げいもを食べる王族2人だった。

飴売り「ふんふん♪」

姫「どうしたんですか」

飴売りは私の方を見てニコニコしていた。

飴売り「いやぁ…美味しそうに食べるから、可愛いなぁって」

姫「っう!?」

慌てて顔を引き締める。

飴売り「照れなくていいのに」

姫「…」プイッ

飴売り「何で怒るのー」

姫(わかってはいるのよ…)

飴売りは気持ちの伝え方がストレート。彼のこういう所も、気に入ってはいる。
飴売りの言う通り、私と彼はタイプが正反対だし、私はもっと素直になるべきだと思う。

わかっては、いるのだけど…。

飴売り「大丈夫だよ姫さん、俺は素直じゃない姫さんも好きだからね?」

姫「~っ! 嫌い!」ポカポカ

飴売り「あはは、痛い痛い」

姫(しかも見透かされているし…あぁ~っ、もうっ!!)

何だか負けた気分だった。…こう思うのも、私の悪い所なんだろうけど。


姫「…あら?」

と、気配が近づくのを感じて私は空を見上げた。

翼人「ご機嫌よう、魔王子様、姫様」

飴売り「おぉ~、翼!」

飴売りの側近の翼人だ。
今は魔王城で兄王子の下で働いており、時々こうやって飴売りの元に来ることがある。

飴売り「翼~、揚げいも食う? 城では食えないB級グルメだぞ~♪」

翼人「お気持ちは嬉しいのですが…魔王子様、少しややこしい事態になっていまして」

飴売り「あ? どしたよ」

飴売りはあまり深刻でない様子で答える。
彼は悪口を言う人ではないから直接聞いたことはないが、それでも兄を軽く見ている所は感じ取れる時がある。
今回も「どーせまた兄貴が~」程度に思っているようだ。

だが、対して翼人の顔は深刻で…。

翼人「その…あやかしの国の方が、魔王子様に直接お会いしたいと…」

飴売り「あ、姫さん、あやかしの国ってのは異世界にある国の1つだ。次元魔法によって、互いの国の交流をはかっている」

姫「なるほど」

異世界の存在は聞いたことがあるが、こちらに直接影響したことはないのでお伽話のようなものだと思っていた。
でも流石は魔王の一族、異世界とも交流があるとは。

飴売り「で、そのあやかしの国の者が俺に何の用だ?」

翼人「実は…あやかしの国の姫君、妖姫様が魔王子様を気に入ったらしく」

飴売り「……はい?」

姫「へーえ?」ギロリ

翼人「是非、あやかしの国に婿入りしてほしいと……」

飴売り「ちょ、ま、ま、待ーっ!?」

飴売りは、ものすっごく慌てていた。

飴売り「そもそも妖姫さんとか知らんし、何で向こうは俺を知ってるのかなぁ!?」

翼人「はい…実は魔王子様の肖像画を見られてですね」

飴売り「あー、俺イケメンだからなー…。じゃなくてぇ!! 断るに決まってんだろそんなん!」

翼人「それが…妖姫様は厄介な方でして」

飴売り「何? 厄介って…」

翼人「大変わがままな方らしく、欲しいものが手に入らないと癇癪を起こすようで…」

飴売り「俺の苦手なタイプじゃねーか……」

翼人「魔王子様と結婚できないのなら、我々の国に攻め入るとまで言っているとか……。それで、兄王子様が頭を抱えております」

飴売り「兄上、完全になめられているな…。どうしろってんだよ……」

姫「………」ジー

飴売り「も、勿論断るよ姫さん!? 俺は姫さんがいいって心に決めてるんだよ!!」

姫「なら、貴方が直接断ってくるべきですね」

飴売り「やっぱ、そうなりますよねー」

翼人「問題は、妖姫様を逆上させないかということですが……」

飴売り「そこだよなー……」

姫「狂戦士の仮面は、まだ使えるんですよね?」

飴売り「え? ま、まぁ」

姫「なら逆上されても大丈夫。返り討ちにしてきなさい、飴売り」

飴売り「…姫さーん? 発想が物騒すぎやしませんかねー?」

翼人(妖姫様よりこちらの姫様の方が恐ろしい…)


こうして飴売りは、一旦里帰りすることになった。





翼人「魔王子様がさらわれました」

翌日、そんな知らせがやってきた。

姫「…負けたの飴売り。何て無様な……!!」

王子「開口一番それかよ!?」

姫「狂戦士の仮面をつけた飴売りが負ける程だったの?」

翼人「妖姫様は、長い髪の毛を触手のように操る技を持っていまして。その技で仮面を剥がされました」

姫「仮面のない飴売りの実力は、たかが知れていますからね」

王子「おい…。一応お前の恋人……だよな?」

姫「飴売りは今、あやかしの国に?」

翼人「はい」

姫「なら…」ピィー

笛を吹くと、獣人が駆けつけてきた。

姫「獣人、あやかしの国に攻め入るわ。すぐに準備を」

獣人「ハッ」

翼人「あやかしの国には私が案内しましょう」

姫「支度は3分で済ませます」スタスタ


王子「………」

王子「迷いも心配する素振りもねーのかよ……どんだけ男前だよ」

翼人「頼もしいお方ですね」





>あやかしの国


空は暗い赤色、カラスに似た怪鳥が空で奇声を発している。
空気が濁っているのを肌で感じる。

これが、異世界か――

姫「不気味な場所ですね…」

翼人(おや。初めての異世界で、流石に恐怖を覚えているのだろうか?)

姫「飴売り、今頃怯えているでしょうね…。妖姫とやら、私を怒らせたらどうなるか…後悔させてあげる」ゴゴゴ

翼人(…そんなわけなかった)

獣人「姫様…周囲に、何者かが潜んでおります」

と、獣人が言ったと同時――

姫「!」

周囲から魔物(この世界では、あやかしと呼ぶそうだ)が出てきて私達を取り囲んだ。
相手は約20匹…とても面倒だ。

あやかし「招かれざる客人よ、あやかしの国に何の用だ」

姫「この国に、私達の世界の者がさらわれた。だから迎えに来た、それだけだ」

あやかし「今すぐ立ち去れ。あの男は妖姫様が見初めた婿殿…返すわけにはいかん」

姫「馬鹿言ってるんじゃありませんよ」

私はゆっくり剣を抜く。
穏便に済むならそうするつもりだけど、どうもそうはいかないらしい。

姫「妖姫に伝えておきなさい。彼は、私のものだとね」

あやかし「妖姫様の邪魔をするかッ!!」

あやかし達が一斉に襲いかかってきた。
なら――仕方あるまい。

姫「先に仕掛けてきたのは…そっちですからね!」

真正面のあやかしを一刺し。すぐに剣を抜き、横にいた2匹をひと振りで切る。
背後から一擊が襲ってきたが――跳躍し、これを回避。ついでにあやかしの脳天に蹴りを叩き込んでやった。

姫「はあぁ――っ!!」

1匹、また1匹と確実に仕留める。
こいつらは魔王城の魔物と大差ない。ということは――

姫「全員、倒せる…!」

獣人「姫様、あまり飛ばしすぎぬよう」

かく言う獣人も、既に5匹ものあやかしを叩き潰していた。

翼人「流石、魔王様を討たれた姫君――ですが」

姫「!」

気配を察知し後ろに跳ぶ。
すると地面から、わらわらと複数のあやかしが生えてきた。

姫「…まだいたわけ」

翼人「魔物もあやかしも、有象無象程数が多いものです」

獣人「まともに全員相手してられませんね」

姫「そうね」

襲いかかってきたあやかしを真っ二つにすると同時、私は獣人の背中に飛び乗った。

翼人「私についてきて下さい」

襲いかかってくるあやかしを跳ね飛ばし、獣人は真っ直ぐ駆けた。
向かうは飴売り、一直線。今頃ひどい目にあっていなければいいが…。





>あやかしの城


飴売り「……」

食卓に座らされた飴売りだが、用意された豪華な食事に手をつけようともしなかった。
この国に来てから提供された食事には手をつけず、持っていた飴だけで凌いでいた。

それは飴売りをここに連れてきた元凶――食卓を挟んだ向こう側にいる、彼女への抵抗だった。

妖姫「のう、少しは手をつけたらどうじゃ?」

飴売り「……」プイ

妖姫「つれないのう。そんなに嫌かえ?」

飴売り「あー、嫌だね!」

妖姫からかけられる言葉には、全て拒絶で返す。

飴売り「俺には心に決めた人がいるって言っただろ。好きでもねー女に好意向けられても、迷惑なんだけど?」

妖姫「おやまぁ」

妖姫は目を大きく見開いて、驚いたような顔をした。

妖姫「そう言われたのは初めてじゃ。あやかしの国の妖姫といえば、国中の男の憧れじゃぞ?」

飴売り「……」

妖姫は可愛らしい少女だ。実年齢は飴売りより上と聞いたが、容姿も声も幼く、背丈も小さい。
だが玉のような白い肌に施した薄化粧は、どこか妖艶な雰囲気を漂わせる。黒く流れる長い髪の毛はそれに対比し、清楚でもあった。

妖姫「のう、お主の想い人は、わらわより美しいのかえ?」

飴売り「あぁ、比べるまでもなくな」

飴売りは迷わず答えた。

姫は確かに中性的で、男装をしても違和感がない程だ。女らしさならば、確かに妖姫の方が上かもしれない。
だとしても――

飴売り「姫さん以上の人はいねーよ」

それだけは揺らがない。

飴売り(姫さんは――)

国の為に戦い続けてきた。彼女は強く、気高く、孤高な人間だ。男である自分より、ずっと男前な気質の持ち主でもある。
そんな内面の気高さがにじみ出ている姫は、美しい。
それだけではない。姫には可愛らしい一面も沢山ある。自分はそんな一面を知れば知る程、彼女に心を奪われていった。

飴売り「俺は姫さんが好きだ。軟禁されたとしても、俺の気持ちは変わらねーから」

妖姫「っ、わらわでは、入り込む隙間もないと申すのか」

飴売り「当たり前だろ。例え俺が独り身だったとしても、お前にはなびかねーよ」

妖姫「!!」

飴売り「俺、ガキっぽい女は趣味じゃねーんだよ」

妖姫「ガ、ガキ…!?」

飴売り「その上、ワガママで癇癪持ちとか、ゼッテー好きにならねータイプだわ」

妖姫「…っ」

飴売り「っつーわけだ諦めろヒステリー女。お前の顔見るだけで不愉快になってきたわ~」

妖姫「!!!」

妖姫はワナワナと震えていた。
逆上されるだろうか…だが、嫌われるには十分だろう。

飴売り(さー怒れ怒れ。それとも、もっと言ってやろうか)

…だが。

妖姫「…ぐすっ」

飴売り「……へ?」

妖姫「びえええええぇぇぇぇ!!」

飴売り「!!?!?」

唐突な奇声に飴売りはただただ驚いた。
妖姫の泣き様は子供…いやもう、幼児並だ。
顔は涙と鼻水に濡れ、可愛らしかった容姿はクッシャクシャになっている。

飴売り「お、おい!?」オロオロ

妖姫「うあああぁぁん、ひどいこと言ったぁ、びええええええぇぇ!!」

飴売り「あのぅ!? いや、先にひどいことしたのそっちじゃん!?」

妖姫「わらわは、魔王子のごどずぎなのにいいぃぃ、うああぁぁああぁん!!」

飴売り(ええぇ!?)

相手の言い分はただのワガママだが、こんなに泣かれては罪悪感が少し芽生える。
こういう時は頭でも撫でてやって宥めるべきかもしれないが…。

飴売り(駄目だ駄目だ駄目だ! 仏心出したら駄目だっ!)ブンブンッ

妖姫「うあああぁぁ、魔王子のばかあぁぁ、ごんなに、ごんなにずぎなのに、びええええええぇぇぇ」

飴売り(無視、無視!)

妖姫「グスッ…良いわ、こうなったら力ずくでものにしてやる!!」

飴売り「…へっ?」

その時、飴売りの体に何かが巻き付いた。
これは…妖姫の髪の毛だ。
振りほどこうとした時にはもう遅く、飴売りの体は拘束されていた。

飴売り「くっ!?」

妖姫「既成事実さえ作ってしまえば、お主はわらわのものじゃ」

飴売り「き、既成事実って……」

冷や汗が流れる。
既成事実というのは勿論、あれのことだろう…。

飴売り(いや、ちょっと待て…姫さんとも致したことないんだぞ!?)

というか、人生で1度も致したことがない。だというのに、こんな形で奪われるなど…。

飴売り「ちょちょちょっ、待て!? は、はは話し合おう!?」

妖姫「ほうれ、近う寄れ」ズルズル

飴売り「イヤアアァァ、ヤメテエエエエェェェ!!」

妖姫「そう甲高い声をあげるでない。男前が台無しじゃぞ? まずは接吻から…」

飴売り「ヤダアアアァァ!! ダメ、ダメ、キャアアアアァァァ!!」

じたばた暴れて抵抗する。飴売りはほとんど錯乱状態だ。
だが抵抗虚しく、妖姫の顔はどんどん近づいてきて…。

妖姫「さぁ…!!」

飴売り(姫さあああぁぁぁん!!)



――シュバッ


妖姫「――っ!」

飴売り「あ…あわわ」


妖姫はバッサリ切られた髪を見ながら呆然としていた。
そして、彼女の蜜事を邪魔したのは――


姫「全く…どこの乙女の悲鳴かと思いましたよ」

飴売り「ひ、ひめひゃぁん」

姫はその腕に、しっかりと飴売りを抱えていた。
一方で気が抜けた飴売りは、呂律も上手く回っていなかった。

姫「よしよし飴売り。あとは私に任せて下さい」

翼人「魔王子様、ご無事で何より」

飴売り「怖かったよ~…」


妖姫「お主が魔王子の想い人かえ…!」

姫「えぇ、そうですよ」フフン

妖姫「よくもわらわの髪を……」ワナワナ

姫「あら、髪の毛だったんですか? お行儀の悪い触手かと思いましたわ」

女2人は早速睨み合っていた。
片や憎々しいと言わんばかりに、片や余裕を浮かべながら。

妖姫「美しいと言うからどんな女かと思ったが、男前な出で立ちじゃのう。色気がない」フン

姫「でも、彼に愛されていますし」

妖姫「ぐっ! ま、魔王子は見る目がない男じゃのう!」

姫「負け惜しみとは見苦しいですわ、妖姫さん?」フフ

妖姫「キエエエエェェイ!!」


翼人「姫君の方が一枚上手のようだな…」

飴売り「あぁ姫さん…相手を蔑むような態度の姫さんも素敵だ」ウットリ

獣人「どっちが姫なのだか、わかったものではないな…」


妖姫「この色気なし女があぁ! わらわを侮辱しおって、許さぬぞおおぉ!!」

妖姫は髪の毛を伸ばし、姫に襲いかかった。

姫「ハアァッ!」

一擊で髪を弾く。

妖姫「なかなかやるのう…では、これはどうじゃ!!」

今度は四方八方から襲いかかってきた。
姫は跳躍してこれを回避、この程度の攻撃なら見切るのは容易い。

姫(飴売りの狂戦士の仮面は思考能力が落ちるから、こんな攻撃に対処できなかったわけね)

妖姫「クッ、おなごの癖にやるのう…!」

妖姫は悔しさからかブルブル震えた。そして…

妖姫「この、雌ゴリラが!」

獣人「あ」

飴売り「え?」

姫「……」

禁句だった。


姫「……誰がゴリラだって?」ゴゴゴ


獣人「…やってしまったな」

飴売り「ひ、姫さんコワ~イ…」

獣人「もう俺は知らんぞ」

翼人「な、何だ…!?」


妖姫「ゴリラ女にゴリラと言って何が悪い! 喰らうがいい!!」

妖姫は再び、四方八方から髪の毛の束で襲いかかったが…。

姫「だあああああぁぁっ!!」ザシュザシュッ

妖姫「」

姫は全て、切り払った。
そして姫は――ギロリと妖姫を睨みつけた。

妖姫「ひぃっ!?」

姫「知ってます? ゴリラってあれで温厚な動物なんですよ」

一歩一歩、詰め寄っていく。

妖姫「え…えっ!?」ブルブル

姫「ですから…」

姫はそう言ってニッコリ笑い……

姫「私はゴリラのように優しくありませんよ?」

妖姫の髪の毛を根元からガッシリ掴んだ。

妖姫「な、何をするっ!? や、やめっ…ひゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ」


<イヤアアァァァ

獣人「俺は何も見ていない」

飴売り「オ、オレモデース」ガタガタ

翼人(……妖姫様、相手が悪かった)





妖姫「うえっ、ひっく…」

姫「まぁ~、お似合いです」

泣きべそをかいている妖姫と対照的に、姫は上機嫌だった。
妖姫の髪の毛はバッサリ切られ、おかっぱ頭になっていた。

妖姫「何てひどいことを……」

姫「妖姫さん、貴方がこの国でどんな横暴を働こうと私の知ったことではないわ。でもね」

そう言って姫は妖姫の耳を引っ張り、耳元で囁いた。

姫「今度、飴売りに手を出してみなさい…今度は丸坊主ですよ」

妖姫「ヒイィ」


姫「帰りますよ。妖姫さんもわかって頂けたようです」

飴売り「ハーイ」

獣人「はい」

翼人(言いたいことは山ほどあるが…何も言うまい)





>中央国


飴売り「ふぅ~…平穏はいいもんですなぁ」

姫「飴売り、もっと鍛えなさい。またこんなことがあったら困りますよ」

飴売り「いや、またこんなことはないと思うけど…。でも、そうだな」

そう言うと飴売りは両手を手をぐっと握って構えた。

飴売り「今回の俺、めっちゃカッコ悪かったもんな。もう2度とあんな無様な姿晒さないように、頑張るか!」

姫「あ、見てあれ」

飴売り「ん?」クルッ

姫「てやっ」チョップ

飴売り「ウッ」

姫「まだまだですね」

飴売り「のわああぁぁん、姫さんがいじめるうううぅぅ!!」

姫(面白い)

飴売り「うー、どうせ俺なんて」イジイジ

姫「ふふ。でもまぁ」

飴売り「っ!」

私が手を握ると、飴売りはびくっと肩を鳴らした。

姫「あんなに可愛らしい女性に迫られてもなびかなかったことは、褒めておきましょう」

飴売り「なーに当たり前のこと言ってんだよ。…あ、もしかして姫さん、不安だった?」

姫「まさか。貴方が私に惚れ込んでいるのは知っていますから」

飴売り「はいはい、姫さんも素直じゃないな~。両思いじゃん、俺ら?」

姫「知りません」プイ

飴売り「つれないな~。そんな姫さんも好きだけどさぁ」

姫「ふん」

正直、返答に困っていた。
妖姫さんになびかれる不安はなかったけど、それでも嬉しい気持ちはあった。

姫(…けどそれを口にするのは癪ですね)

こんな時でも素直になれない自分がもどかしい。

と、その時、上空に気配があった。

姫「あら翼人」

翼人「ご機嫌よう」

飴売り「お、翼。今日はどうした~?」

翼人「実は…妖姫様がまた、こちらの世界へ来られました」

飴売り「は」

姫「あら」

翼人「そして姫様についてお調べになっていらっしゃいました」

姫「ほう? 再戦をご所望かしら?」

飴売り「わー、姫さん好戦的ぃー」ボウヨミ

翼人「そして中央国へ向かったように思ったのですが…」

姫「こちらに来た様子は……」

と、その時。

獣人「姫様ーっ!」ダダッ

姫「あらどうしたの、獣人」

獣人「はい…妖姫が来てですね……」

姫「!」

飴売り「!」

翼人「!」




>城


王子「来るなーっ!!」ダーッ

妖姫「ホホ、男前じゃのう。可愛がってやるぞい?」ダーッ

王子「うわああぁぁぁ」ダーッ


姫「…何やってるんですか?」

獣人「はっ…いきなり城に来て、王子に嫁入りしたいと」

姫「何で?」

妖姫「おぉ、姫ではないか! 先日は失礼したのう」

姫「あ、いえ。それよりも何故、王子を追い回しているのですか?」

妖姫「なぁに。お主について調べておったら、双子の兄の存在を知ってのう。お主の双子の兄なら男前じゃろうて、嫁入りに来たわけじゃ」

姫「なるほど」

飴売り「俺には意味がわかりません」

翼人「妖姫様は確かあやかしの国の王位継承者では…」

妖姫「そんなもの兄弟に継がせればええ。わらわは顔のいい男と添い遂げたいのじゃ!」

姫「そうですか」

飴売り「全く意味がわかりません」


妖姫「というわけじゃ! 照れるでない、わらわの婿にしてやるぞ!」ダーッ

王子「俺は人間の子と結婚したいんだあああぁぁぁ!!」ダーッ


飴売り「…いいの、姫さん?」

姫「何も問題はありません」

王子「あるわああぁぁ!!」

姫「王子、自力で振り切って下さい。これも修行です」

王子「えええええぇぇぇ!?」

姫「では私はこれで。行きますよ、飴売り」グイッ

飴売り「えっ、でもっ……」

王子「待てえええぇぇ!?」

妖姫「待てえええぇぇ」




飴売り「い、いいの姫さん?」

姫「自力でどうにかできないのなら、この国の王の器ではありません」

飴売り「手厳しいなぁ。助けてやりゃいいのに」

姫「いいんです」クルッ

飴売り「…?」

私は飴売りの顔をじっと見つめる。

姫「私は貴方の王子だから――今は、私のお姫様だけを守っていたいんです」

飴売り「…姫さん」

と、ワンテンポ置いて。

飴売り「って、ちょっと待ておかしいだろおぉ!? 俺が王子で姫さんがお姫様だってば!!」

姫「フン」

飴売り「え、ちょ!? 何で怒ってるの!?」

姫(「私の」姫って言ったでしょうに)


せっかく素直に言ってあげたのに気付かないなんて、鈍い人。


姫「まぁいいです。揚げいもで許してあげましょう」

飴売り「な、何かよくわかんねーけど、食いに行こうか! 揚げいもデ~ト~♪」

姫「…単純なんだから」


飴売りは鼻歌を歌い始め、とてもご機嫌だ。
この明るさは彼の最大の魅力で、私はこういう所が――


姫「――…ですよ」

飴売り「ん? 何か言った?」


言葉は鼻歌にかき消されていた。


姫「…何でもありません。それより早く行きましょう」

飴売り「はいよ~」

まだ素直に言えないけれど。
いつか素直に言える自分になりたい。



――大好きですよ、飴売り



Fin


あとがき

リエルト様よりリクエスト 姫「王子の代わりに戦う使命を追った」のその後です(´∀`)

当初はもっと戦闘を長引かせる予定でしたが、姫様の男前さを際立たせたらこうなってしまいました。
そして飴売り姫…君は立派なヒロインだ!(つーか女々しすぎた)

このカップル、何気に私のssでは珍しい男女逆転カップルなんですよ。だから今回そこが際立ってしまったというか…あれ、作者のイメージと読者さんのイメージって一致してるか??(オイ

後日談を書く場合、主人公達に訪れるであろう悩み等に焦点を絞って書くことが多いのですが、この男前な姫様と前向きな飴売りのカップルはそんなに悩みとかないだろうなぁとか思い(酷)、新規で強烈なキャラを生み出してしまいました。
新しいssを書く時に、出してみたい子です妖姫ちゃん。
posted by ぽんざれす at 19:40| Comment(2) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんとこちらのリクエストも応えていただいて、もう本当に感激です…!
もう飴売り姫がかわいすぎます(*´ω`*) 新キャラの妖姫のお話も面白そうですね!
また作者さんのお話楽しみにしてますー!
Posted by リエルト at 2015年11月09日 17:22
飴売り姫、女々しすぎて大丈夫かなぁと思いましたが…w
応援宜しくお願いしますッッッ←
Posted by ぽんざれす@作者 at 2015年11月09日 17:33
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