2015年12月24日

【クリスマススピンオフ】魔術師「勇者一行をクビになりました」

魔術師「勇者一行をクビになりました」のスピンオフです。





悪魔「――魔術師ちゃん」

後ろから悪魔さんが私を呼び止める。
いつもと違う低い声が、私をその場から動けなくさせた。

振り返るのが怖い。こんな声を出す悪魔さんの目つきは、きっと――

悪魔「こっち向きな」クイッ

魔術師「!!」

――私の心を、魅了して離さないだろうから。

悪魔「魔術師ちゃん…チミは俺様のもんだよな」

魔術師「ぁ…や…」

悪魔「――愛してるぜ、魔術師ちゃん」

魔術師「―――!」



魔術師「ちょっ、悪魔さん、心の準備がああぁぁ……あれ?」

チュンチュン

魔術師「……夢、かぁ」ドキドキ

刺激の強い夢だった。あまりもの刺激に、余韻がまだじわじわ残っていた。


悪魔『こっち向きな』クイッ

悪魔『魔術師ちゃん…チミは俺様のもんだよな』


魔術師「……」ボッ

魔術師「違う違う違う違う、悪魔さんそんなことしない」ブンブン

悪魔「おっはよぉ~ん、魔術師ちゃぁん!」バァン

魔術師「きゃっ!? 悪魔さん!?」

悪魔「魔術師ちゃん、なかなか起きてこないからァん! 心配しちゃったんだぜぇ~」

魔術師「ぁのぅ…いつもより10分程度寝坊しただけなんですけど……」

こっちはまだパジャマのままだというのに…。
悪魔さんはあまり人の都合を考えない。

だけど…

悪魔「寝起きの魔術師ちゃんもカワイイぜェ~。あぁもう、ナデナデしたくなっちゃうゥ~ん♪」ギュウゥ

魔術師「もぉ~」

悪魔さんは甘えてくる人だ。さっき見た夢みたく、強引に迫ってくる人じゃない。

悪魔「魔術師ちゃ~ん、ちゅっちゅして、ちゅっちゅ~♪」

魔術師「……」

キスする時は、いつもこうやっておねだりしてくる。

魔術師「たまには悪魔さんの方から…」

悪魔「え?」


魔王「悪魔王様ーっ、どちらへ行かれたんですかーっ」

悪魔「あー、今行くー! チッ、あの野郎邪魔しやがって」

魔術師「ぁはい……」

悪魔さんは部屋を出て行った。
季節は冬、まだまだ布団の中が恋しい。

魔術師「…あ、今日はクリスマスイヴだった」

私はカレンダーを見て気がついた。





悪魔「イャハハハハ!! どぅお、この格好ォ~」

暗黒騎士「阿呆だと思う」

悪魔さんはサンタさんの格好をしていた。
と言っても前開きで袖まくりしてアクセサリーをジャラジャラつけて、サンタさんのイメージから遠くなっているのだけど。

魔術師「ぇと、悪魔さん、クリスマスパーティーをするんですか?」

悪魔「いやァ、国のガキどもに何かしてやろうかと思ってな!」

暗黒騎士「で…具体的に何をする気だ?」

悪魔「まず雪を全部生クリームにすンだろ? あと空からコンペイ糖を降らせてだな…」

暗黒騎士「国中の児童を糖尿病にする気か!!」

悪魔「ガキなんて甘いモン与えておきゃいいンだよ!!」

暗黒騎士「そんな思考でサンタを名乗るなあぁ!!」

魔術師(暗黒騎士さんの方が正論すぎるよぅ……)

悪魔「じゃあ、どうしろってンだー? ガキにプレゼントやるのは親の役目だろ~」鼻ホジホジ

暗黒騎士「そうだな…雪像造りなんてどうだ」

悪魔「あ? 雪像?」

暗黒騎士「児童の間で流行っているダークヒーローがいるのだ。この本なのだが…」

悪魔「デビルナイトォ~? ふーん、児童書のヒーローねぇ。ヘッ、ガキは単純でいいねェ~」ペラペラ


>10分後


悪魔「デビルナイト☆スラ~ッシュ、ズバババッ! おい魔王、倒れろよ!!」

魔王「ぐ、ぐはぁ……」

魔術師「すっかりはまっちゃいましたね……」

暗黒騎士「奴の脳みそは児童並か」

悪魔「おっしゃあ、国の村や町を回って雪像造りしてくンぜッ!! 悪魔サンタ、出動しまーっす☆」キラリン

魔術師「ぁ、悪魔さん! …行っちゃった」

暗黒騎士「国中を回ったら20近くは造らねばなるまい…。途中で飽きなければいいが」

魔術師「わ、私ちょっと悪魔さんを追っかけてきますっ!」





魔術師「ふぅー、寒いなぁ」

厚着をしているのに寒くて、息が白くなる。
私は悪魔さんの魔力を追っていた。

途中立ち寄った村では、悪魔さんが造ったという雪像が建っていた。
村の人に話を聞くと悪魔さんは雪をかき集め、自分の力で雪像を造っていったらしい。

魔術師「よくやるなぁ」

デビルナイト自体は割とシンプルなデザインなのだけれど、それでも綺麗に造られた雪像に私は感心した。


そして2件目の村。

魔術師「あれ、ここのは剣を持っていないんだ」


3件目

魔術師「ポーズがただの直立になってる」


4件目

魔術師「うーん…全体的にデフォルメされてきたなぁ…」

段々疲れてきているのが見て取れた。


魔術師「大丈夫かなぁ悪魔さん。…次は5件目だけど……あ、いた。悪魔さーん!」

悪魔「ザクザクっと。お、魔術師ちゃん。いよーっす!」

魔術師「あ、出来上がったんですね」

立っていたデビルナイトはちゃんと剣を持ってポージングしていて、最初のクオリティに戻っていた。
…ってあれ? だったら悪魔さんは今、何を造っているのか…。

魔術師「悪魔さああぁぁぁん!? な、な、何造ってるんですかあぁ!?」

悪魔「見てわかるだろ♪ 勇者だよ、ゆーしゃ!」

確かに、その見慣れた顔は、ちょっとデフォルメされてるけど勇者さんだ。
けど、その格好が…。

魔術師「どうしてその格好なんですか!?」

悪魔「イャハハハハ!! そりゃ全国放送された姿だしィ~!! あ、でもココはもっと小さかったな」

「キャハハ、フルチンだフルチンだ~」
「ちっせー! 勇者のちっせー!」
「チン丸出しィ~♪」

魔術師「ああぁ…子供達が悪い影響受けてる…」

悪魔「デビルナイトばっかで飽きてきたっていうかァ~」

魔術師「だからって何でよりによってこれなんですか!?」

悪魔「ガキなんてバカだから下ネタで喜ぶんだよ!」

魔術師「もうサンタさんなのは格好だけですねぇ…」

悪魔「そンじゃ次の村に行くかな~」バサッ

魔術師「あ、悪魔さん、私も行きますっ!」

悪魔「アラ魔術師ちゃんたら、俺様と一緒にいたいのねェん…キャッ♪」

魔術師「もぉ~……」





こうして私は悪魔さんと一緒に各地を飛び回った。

悪魔「見てろよガキども、テメーらの為に悪魔王様が立派な雪像造ってやっからよォ!」

ワーワー

魔術師「人気者ですねぇ悪魔さん」

悪魔「そりゃ俺様、魔物達のカリスマだしィ? イャーッハッハ、俺様に感謝しろよガキどもぉ!!」

魔術師(そうだよねー、悪魔さんは伝説の悪魔王なんだものね)

そんな悪魔王が、こうやって子供達の為に頑張っている。
悪魔さんは魔物の王になっても気取らないし飾らない。前と変わらず、自然なままだ。

悪魔「勃起の爪で雪を掘る~、前を後ろを掘る掘る~♪」ザクザク

魔術師「その歌やめて下さい!!」


とにかくそんな調子で順調に進み…。


悪魔「ヨッシャ、最後の雪像が完成したぜェ~」

魔術師「お疲れ様です悪魔さん」

「わーデビルナイトの像だー」
「悪魔王様ありがとー!」
「わーい、サンタさんからこの村への贈り物だー!」

魔術師「ふふ、悪魔さん。皆喜んでますよ」

悪魔「ちょい待って……今、賢者タイム…」

魔術師「何で!?」

悪魔「ふぅ…。ってもう夕方かよ! 今日はいつもより働いたンじゃね~」

魔術師「サンタさんも楽じゃないですねぇ。じゃあ帰りましょうか悪魔さん」

悪魔「ヤダヤダ、ただ帰るだけじゃつまんなぁ~い!!」ジタバタジタバタ

魔術師「えぇーと…」

ちょっと考える。…すぐに答えは出た。

魔術師「…デートして帰りましょう、悪魔さん」

悪魔「イエエエェイッ!! 魔術師ちゃんとクリスマスデエエェ~トッ!!」

悪魔さんの顔に元気が戻った。





私と悪魔さんは空を飛んでいた。

悪魔「寒くねーかァ、魔術師ちゃん」

魔術師「悪魔さんとくっついてるから、あったかいですよ」

悪魔「イャハハ、そりゃ良かったぜェ」

悪魔さんは私が凍えないように、大きな体で私を冷風から守ってくれていた。
さりげない優しさに、心も体もポカポカ。

悪魔「今日はイルミネーションやってるとこ多いから、上空からの景色が最高だなァ」

魔術師「えぇ、綺麗ですねぇ」

暗闇で光る様々な色が国中を照らしている。これがクリスマス独特の美しさ。今日だけの特別な景色。

魔術師「悪魔さんと一緒に見れて良かったです」

悪魔「そーだなァ。きっと一緒に見るから、特別なんだな♪」イヒヒッ

魔術師「ふふっ…特別ですね」

悪魔「魔術師ちゃ~ん♪」

魔術師「何ですか?」

悪魔「こういう雰囲気だからやっぱり…ねぇ? ンー、ンー」

魔術師「……」

キスをねだる甘えた声と仕草は、いつもと同じ。

だけど、今日は特別な日だから――

魔術師「たまには…」

悪魔「ん?」

今日の夢みたいに…

魔術師「悪魔さんの方から…して下さい」

悪魔「んへっ」

予想外だったのか、悪魔さんは呆気にとられていた。

悪魔「えーと…マジでいいの?」

魔術師「えぇ…お願いします」

私は目をつぶる。

悪魔さんがいつも受け身なのは、私のタイミングでさせてくれるように。
私の好きなキスでいい、私がイヤならしなくてもいい、って。そうやって気遣ってくれているのだ。

だけど、私は――


魔術師「悪魔さんのキスが、欲しいです」


好きな人には、奪われてみたいのだ。


悪魔「そいじゃ、遠慮なく…」

悪魔さんは私の頭に手を回す。いつも強引な悪魔さんだけど、こういう時は紳士的で優しい。
目をつぶっていても、悪魔さんとの距離がわかった。彼の吐息が頬を撫でて、私の気分を高揚させて――


悪魔「――っ」

魔術師「ん――」


いつもより強めのキス。ちょっと苦しいけど情熱的で、脳がしびれるくらいに刺激的。

魔術師(あぁ――)

私はきっと、これを望んでいたんだ。


悪魔「…ぷはっ。魔術師ちゃん、苦しくなかったか?」

魔術師「いえ。…良かったです、とっても」

悪魔「そっか」

悪魔さんは嬉しそうに微笑んだ。
滅多に見れない悪魔さんの健気な一面に、私はまたときめいた。


魔術師「さ…そろそろ帰りましょう。お城でパーティーの準備してますよ」

悪魔「そだな~。やっぱ悪魔王様がいねェと、パーチー始まらねぇだろうな」

魔術師「えぇ。今日の夕飯、私も下ごしらえ手伝ったんですよ」

悪魔「マジで!? 早く帰って食いてェ~、腹ペコペコ~」

魔術師「皆さんも待ってますよ、きっと」

特別な非日常から、日常へ。
この時間を惜しいと思いながらも、私達は帰る。特別な時間は貴重だから、特別たりえるのだから。

悪魔「そォ~だ。悪魔王サンタから下の奴らに言うことあったんだ」

魔術師「何ですか?」

悪魔「すうううぅぅっ……」

悪魔さんは思い切り息を吸い込んでから、叫んだ。


悪魔「メリークリスマス、ヤロー共っ!! 特別な日を楽しめよ、イャハハハ!!」



Fin





あとがき

というわけで悪魔サンタからのメリークリスマスでした。
本当このカップルはキスばっかして…いいぞもっとやれ(`・ω・´)
posted by ぽんざれす at 18:39| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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