2015年12月28日

【スピンオフ】姫「魔王子との政略結婚」

姫「魔王子との政略結婚」(1/3) (2/3) (3/3)のスピンオフです





魔王子「イエエェェイッ、エクストリイイィィムッ!」ズザザザアァァッ

姫「ふふ。魔王子様、楽しまれていますね」

魔王子「だぁ~ってホラ、雪だよホラ!! うっひょおおぉぉ、テンションMAXだぜぇ!」ザックザック


季節は冬。
魔王子と姫は雪降る街へと旅行にやって来た。

魔王子「いよーっし、でっかい雪だるま作っちゃうもんねー!!」

姫(元気ねぇ)フフ

最近忙しかった魔王子は、久々の休日に物凄くハシャいでいた。

魔王子「できたっ!」

姫「まぁ大きい」

魔王子が作った雪だるまを見上げる。
かなり体を鍛えている魔王子だからこそ作れた、巨大雪だるまだ。

魔王子「フッフッフ。姫様~、見ててくれよ」

姫「?」

魔王子「魔王子エクストリームクラッシャー!!」ズゴオオオォォン

そしてその雪だるまは、魔王子の一擊によって粉砕された。

魔王子「この一擊、どうよ!」

姫「魔王子様はお強いですね!」

魔王子「こんな俺、どうよ!」

姫「素敵ですっ!」

魔王子「姫様ぁーっ!」ギュウッ

抱き合う夫婦。冷風も2人の周囲を冷やすことはできない。
その愛に満ち溢れた姿は、誰の目から見ても――

モブ「馬鹿だ」





姫「ふぅ、ふぅ…」

魔王子(寒さに身を震わせながらココアをフーフーする姫様も可愛いなぁ)

姫「ここはウインタースポーツが盛んみたいですねぇ」

雪山では観光客達がボードに乗って遊んでいる。
そういう遊びがあるのは知っていたが、箱入り娘の姫には馴染みのない遊びだ。

姫「魔王子様、ウインタースポーツのご経験は?」

魔王子「達人クラスよ。見てろよー!」ダダッ

姫「頑張って魔王子様ーっ!」


魔王子「ほれーいっ!」ザザーッ

姫「わぁ~、お上手!」


魔王子「でりゃーっ!」ジャーンプ

姫「まぁ凄い!」


魔王子「ほらよっとぉ!」クルンッ

姫「きゃー、素敵ぃ!」


姫「凄いですねぇ魔王子様」ニコニコ

魔王子「…あの、姫様」

姫「はい?」

魔王子「俺が滑ってるの見てるだけじゃ、つまんなくない?」

姫「いいえ? 魔王子様の素敵なお姿をずっと見ていられるんですもの、退屈なんてしません」

魔王子「」

魔王子「うらあああぁぁぁぁ!!」ズザザザザザアアアァァァァ

姫「魔王子様!? どこへ行かれるんですか!?」

魔王子(ニヤケが止まらねえぇ!! こんな気持ち悪いツラ、姫様に見せられるかああぁぁぁ!!)ズザザザザザアアアアァァァァァ

ズザザー…

魔王子「姫様、一緒に遊ぼう」キリッ

姫「どんな遊びでしょうか?」

魔王子「それは……」



姫「こ、怖いですね」ブルブル

魔王子「大丈夫大丈夫。坂もゆるいし、そんなにスピード出ないから」

姫と魔王子は2人でそりに乗り込んだ。
魔王子は平気だと言うが、坂を滑るなんて、経験のない姫には怖い。

魔王子「じゃ、行くよ」

姫「まま、待って下さい!」

魔王子「ん」

姫「……」ドキドキ

魔王子「……」

姫「い、いいですよ」

魔王子「それじゃ…」

姫「や、やっぱり待ってえぇ!」バタバタ

魔王子(可愛い)


そんなこんなで10分後…


姫「い、い、いいですよ!」

魔王子「ほんとにー?」

姫「ほ、ほんとにっ! 行きましょう、魔王子様っ!」

魔王子「そいじゃ」

そう言って魔王子は地面を思い切り蹴った。
そりはその勢いで動き、坂道の斜面を滑り始め……

姫「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

魔王子(そ、そこまで!?)

姫「いやあああぁぁ、きゃあ、きゃあああぁ、ひゃああぁぁぁぁ」

魔王子「大丈夫だから、姫様、大丈夫だから!」

姫「いやぁ、いやぁ、きゃあああぁぁ、いやああああああぁぁぁぁぁぁ」

魔王子(聞こえてねぇ)

ザザー…

姫「」ドキドキ

魔王子「お、終わったね?」

姫「」ドキドキ

魔王子「姫様ぁ?」

姫「ふぅ、ふぅ…」ドキドキ

魔王子「ご、ごめんな? もうやめようか?」

姫「も……」

魔王子「も?」

姫「もう1回……」

魔王子(マジで!?)


姫「きゃああぁっ、きゃあっ、きゃあああああぁぁっ」

魔王子(…やっぱコレ、悲鳴だよな?)


魔王子(と、こんな感じで30回くらい滑った)

姫「ふぅふぅ…楽しいですね、魔王子様」

魔王子「こ、怖くない?」

姫「怖いから楽しいんですよ!」キラキラ

魔王子「あー…まぁ、そうだな」

姫「それに…」

魔王子「それに?」

姫「魔王子様が後ろからぎゅっとしてくれるから…安心できるんです」

魔王子「」

魔王子「うああああぁぁぁ!!」ズボオォッ

姫「ど、どうされたんですか魔王子様!? 雪山に顔を突っ込んで!?」

魔王子(言われたら意識しちゃうッ!! 顔があっちぃよおおぉぉ!!)ジタバタ





魔王子「あー楽しかった」

姫「雪の降る地方は、陽の落ちるのが早いですねぇ」

魔王子「宿屋に戻るか。行こう、姫様」スッ

姫「はい」

魔王子が差し出した手を取る。
手袋越しで体温はわからないけど、大きな手は包み込むようで安心できる。

姫(寒くてもポカポカだなぁ)

魔王子「姫様、雪道あんま歩いたことないんだっけ?」

姫「はい。旅行で雪のある地方へ行くことはありましたが、ほとんど室内にいたもので…」

魔王子「本当に箱入りのお姫様だなぁ。もー、守ってあげたくなっちゃう」

姫「ふふ、魔王子様った――……」

魔王子「!?」

体が傾いた。凍った道で足を滑らせたのだ――と気付いた時には遅い。

どすんっ

姫「~っ……」

魔王子「うぬー……」バタンキュー

姫「ま、魔王子様!?」

転んだ…と思ったら、何故か魔王子が下敷きになっていた。

姫(わ、私を庇って!)

姫「ご、ごめんなさい魔王子様! お怪我はありませんか!」

魔王子「はは、平気だよ。姫様は軽いしさ」

姫「でも…」

魔王子「気にするなって」

魔王子は姫の頭に手を置いて、ニッと笑った。

魔王子「守るって言ったじゃん?」

姫「魔王子様……」

魔王子「にひっ」

見つめ合う2人。街灯が照らす氷の舞台。
いつでも互いを思いやり、慈しみ合う、そんな2人が見せる夫婦の形は――

モブ「どいたどいた! 道の真ん中でボーッとしてんな!」

魔王子「わわっ、わりっ! 姫様、行こう!」

姫「は、は、はい!」





魔王子「ふぅー…」

宿屋に着くなり、魔王子は上着を脱いで布団に倒れ込んだ。
取った宿は王族御用達のVIPルーム…ではなく、ごく普通の宿だ。

姫「和製仕様とは、趣がありますねぇ」

姫にとっては、こういう質素な場所は新鮮で面白かったりする。
お忍びでなければ、絶対に泊まれなかった宿だろう。

魔王子「独身の頃はさ~、勝手に城を飛び出してこういう所に泊まったりしてたよ」

魔王子はケラケラ笑った。
独身の頃の彼はかなりの放蕩王子だったと聞いたことがある。
思えば結婚前の顔合わせの日も、顔合わせを忘れて遊びに行っていた程だ。自分の秘密基地を持っていた子供時代から、かなりのやんちゃ者だったのだろうと思う。

姫(でも…)

魔王子は大分落ち着いた、と城の者に言われている。
問題行動はしばしばあるが、それでも公務には真面目に取り組んでいるし、剣の鍛錬もサボらずに行っている。

姫(今日は魔王子様にとっては久しぶりの、お忍び旅行だものね。解放されたような気分だろうなぁ)

魔王子「見て見て姫様。お布団いもむし~」ゴロン

姫「まぁ魔王子様ったら」フフ

姫(はっ。お義父様に『あまり魔王子を甘やかさないように』って言われてたんだったわ!)

魔王子「い~も~む~し~、う~にうに~」

姫(ここは、心を鬼にして…)グッ

姫「魔王子様!」

魔王子「ん? どしたの?」

姫「お布団は、お風呂で体を綺麗にしてからです!」

魔王子「あー、そっか。そうだったな!」

姫(わかってくれたわ)ホッ



魔王「今、不意に突っ込み不在の恐怖を感じた」

側近「魔王様は気が高ぶっているのでしょう」



姫「ここのお宿は、お部屋付き露天風呂があるんでしたね」

魔王子「姫様、先いいよ」

姫「いえ。運動をしてお疲れでしょうし、魔王子様がお先にどうぞ」

魔王子「…ほんとにいいの?」

姫「はい。私はもう少し体を休めていますので」

魔王子「そっか。悪いね、それじゃあお先」

姫「………」



魔王子「ふぅ~」

魔王子(今日は楽しかったなぁ)

こんなに自由な日を過ごしたのは久しぶりだ。
公務で溜めていたストレスを、綺麗さっぱり吹っ飛ばせた。

魔王子(まさかこの俺が、こんなに真面目になるとはなぁ)

独身時代の自分には考えられないことだ。あの頃はよく公務をサボって遊びに行って、父親に叱られていたものだ。
きっと自分の性分は死ぬまで変わらない…そう思っていたのだけれど。

魔王子(やっぱ…俺がちゃんとしないと、姫様に苦労かけるしなぁ)

人間と魔物の間に今より壁があった頃嫁いできた姫は、きっと国に馴染むだけで苦労したことだろう。
それに嫁いできた直後に事件もあったし、それで大分心労もかかったと思う。
にも関わらず姫は自分を支えようとしてくれるし、当たり前のように尽くしてくれる。

魔王子(いい奥さんだよなぁ…俺には勿体無いくらい)

可愛らしくて、控えめで、品があって、けど芯が強い所もあって…夫の贔屓目にしても、良い所ばかりの妻である。
だから、こんな欠点だらけの自分には勿体無い…と時々思うのだけれど。

魔王子(でも姫様は絶対に手放さないもんね! 俺の力で姫様を幸せにするんだ!)

姫を幸せにする為の公務だと思えば、苦にもならなかった。

魔王子(よぉーし! リフレッシュしたら、また頑張りますかっ!)

姫「魔王子様」ガラガラ

魔王子「」

思考停止。

魔王子「ひ、ひ、姫様?」

姫「あのぅ…」モジモジ

姫はバスタオル1枚だけ巻いて、露天風呂に出てきたのである。

姫「ご一緒しても…よろしいでしょうか?」

魔王子「え、えーと……」タジタジ

姫「…へくしゅっ」

魔王子「あ、か、風邪ひいちゃうね! とりあえず入って!」

姫「では……」チャポン

魔王子「……」ドキドキ

姫「……」ドキドキ

魔王子(って、奥さんと風呂入ってるだけじゃねぇか!! 何緊張してるんだよ、俺っ!!)

姫「あのぅ、魔王子様…」

魔王子「は、はいっ!?」

姫「月が綺麗で」

魔王子「ストオオオォォップ!!」

姫「えっ?」

魔王子(うわああぁぁ!! それ位で照れてるんじゃねぇ、俺えええぇぇ!!)バシャーン

姫「大変、魔王子様が溺れてしまったわ!! 助けないと!!」

魔王子「だだ、大丈夫っ!!」ゼーハーゼーハー

姫「……?」

魔王子(タオル1枚の姫様に触られたら、俺マジで死にかねんから!!)

魔王子「……」ドキドキ

姫「……」

姫「ねぇ魔王子様」

魔王子「は、はい?」

姫「今日はとても楽しかったです。また、どこかに連れて行って欲しいな、って」

魔王子「そ、そうだな。楽しい所は沢山知ってるし、また休みが取れたら行こうか」

姫「えぇ。魔王子様といると、どこでも楽しいです」

魔王子「そっか。思い出、一杯作ろうな」

姫「はい。作りましょうね……家族での思い出を、沢山」

魔王子「うん。家族の……」

――ん?

魔王子(『家族』。俺と姫様は『夫婦』。『家族で』ってことは、俺と姫様プラス――……)

魔王子「」

姫「魔王子様?」

魔王子「うわあああぁぁぁぁ」バシャバシャッ

姫「魔王子様ぁーっ、どこへ行かれるんですか!?」



魔王子(これが成人済みの既婚者の反応かああぁぁ!! ヘタレ、このヘタレッ!!)ベシベシ

急いで寝巻きを羽織った魔王子は布団の上で悶絶していた。

姫「魔王子様、具合が悪いのですか?」

追いかけるように姫が来た。勿論、服はちゃんと着ている。

魔王子「ハハ、大丈夫だよ……」ドキドキ

風呂から上がり、ちょっとは冷静さを取り戻した。

魔王子(でも、そうだよなぁ…姫様も、新しい家族が欲しいよなぁ)

姫「?」

一応、夫婦生活はそれなりにある。勿論この魔王子のことなので、毎回極度の緊張に陥るわけだが。

魔王子(まぁ、まだ結婚して1年ちょいだし、授かりもんだとしか思ってなかったけど……)

魔王子(増やさなきゃ、駄目かな? 回数……)

魔王子「ウゥーン……」

姫「魔王子様? どうされたんですか?」

魔王子「姫様、ごめん!」バッ

姫「え? え?」

突然頭を下げたことに、姫は戸惑っているようだ。
だけど――魔王子は決心した。

魔王子「俺は――姫様を愛している!」

姫「――っ!」

魔王子「この気持ちに嘘偽りはない! だけど、その気持ちが大きすぎて…駄目なんだ、俺」

姫「え…っ?」

魔王子「姫様は何よりも大事で、尊い存在だから――」

いざという時に勇気が無くなる。
手を出すのが怖くなる。
心はこんなにも、情熱的に燃え上がっているのに――

魔王子「けど頑張るから、俺! ちゃんと『父親』になる覚悟も決める!」

姫「魔王子様……」

魔王子「だからっ、その――……」

魔王子「……」

魔王子(だあああぁぁ、何で夜の話に言及しようとすると言葉が出ないんだ、俺ええぇぇ!!)

姫「あのぅ、魔王子様」

魔王子「ハイッ!!」ビシィ

姫「すみません、魔王子様がそこまで考えていらっしゃるとは存じませんで……」

魔王子「……え?」

姫「やはり世継ぎ問題もありますし、お急ぎですよね…。悠長に考えていました、すみません」

魔王子「……あー、世継ぎ問題ね」

姫「え?」

魔王子「え?」

………

魔王子「あー…ちょっと噛み合ってないみたいだから、状況を整理しよう」





魔王子「えーとつまり、俺の早とちりってわけね」

発端は姫の言った「家族で」との言葉だったが、姫はそういうつもりではなかったらしく。

姫「すみません、紛らわしい言い方をして」

魔王子「いやー…まさか『家族』が親父のこととはね…アハハ……」

あの堅物親父と一緒に遊びに行くなんて考えもしなかった。
奥さんの方が、ちゃんと義父のことを考えているとは。これは参った。

姫「あ、で、でも」

魔王子「んー?」

姫「子供は沢山欲しいですね!」

魔王子(姫様の方がずっと決意できてるよ……)


魔王子「ま…とりあえず安心したら眠くなってきた。今日はもう寝ようか」

姫「そうですね」

灯りを消す。瞼が重くなりゴソゴソと――ゴソゴソ?

魔王子「ってええぇ姫様ぁ!?」

姫「寒いので一緒に寝たいなって…駄目ですか?」

魔王子「駄目じゃ…ない……」

姫「ふふ、良かったぁ♪」

姫は魔王子にぴったりくっつく。
寝づらくないだろうか…と思ったが、すぐにすぅすぅ寝息が聞こえてきた。

魔王子(姫様って積極的なのか、天然なのか……)

安心しきったような寝顔が愛おしい。
自分の側にいることで安心感を覚えてくれているようで、それが「愛されている」って実感になって――

魔王子(……)

魔王子(俺が寝れねぇ!!)ドキドキドキ


新しい家族を迎えられるのは…もっともっと、先になりそうだ。


Fin




魔王城執政官(見習い)様よりリクエスト、魔王子と姫の日常でした(´∀`*)
結婚して結構たつのに、今だにヘタレるって魔王子お前…w
しかしバカップルぶりが加速してて、魔王の言う通りツッコミ不在の恐怖でした。地の文でツッコみたい衝動に何度も耐えました(`・ω・´)
posted by ぽんざれす at 20:31| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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