2016年02月14日

【スピンオフ】その他ss【バレンタイン】

アンケートでランク外になった作品+アンケート開始時期には完結していなかったssのバレンタインネタを一挙放出します
投票上位3作品のよりは短いですけど、全部マトモに書いたらリア充にあてられて死んじゃいますから~

下のss名をクリックすれば、そのssのネタまで飛びますよ~
(スマホ版の誤タッチを考慮して行間明けました。スクロール大変でしょうがご了承下さい)

勇者「もう勇者なんてやめたい」

勇者の娘「お父様の仇を討ちます」

魔術師「勇者一行をクビになりました」

姫「王子の代わりに戦う使命を負った」

姫「魔王子との政略結婚」

王子「囚われの姫君に恋をした」

女勇者「勇者よりも、お姫様になりたかった」

魔女「不死者を拾いました」

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」

奴隷少女「私を、守って下さい…」執事「それが貴方の願いならば」

乙女ゲープレイヤー「魔王を攻略しよう」

神様「勇者も魔王もいなくなった世界で」

勇者「パーティーでのカーストが最下位でつらい」






勇者「もう勇者なんてやめたい」

勇者(クッキーを作ったけど…)モジモジ

暗黒騎士「ん? どうかしたか?」

勇者「い、いえ、何でもありません…」

暗黒騎士「そうか」

勇者「……」モジモジ

勇者(渡す勇気が出ない…。暗黒騎士様そもそもお菓子とか嫌いかもしれないし…うぅ、何で事前に聞かなかったのかしら。それにお菓子が好きだとしても、私の手作りなんか私なんか)ウジウジ

暗黒騎士「おい」

勇者「ひぅっ! は、はいっ!?」ビクッ

暗黒騎士「…さっきから待っているのだが、もしかして無いのか?」

勇者「……はぇ?」

暗黒騎士「そうか。お前のいた国ではバレンタインが存在しなかったか」

勇者「!!」

勇者「あ、ありますぅ! どうぞっ!」バッ

暗黒騎士「有り難く頂こう。待たせた分、期待は膨れ上がっているぞ?」ニヤ

勇者「だ、駄目ですっ! わ、わわ私なんか」

暗黒騎士「阿呆」コツン

勇者「ひゃんっ」

暗黒騎士「卑下するな。……お前は俺の妻なのだから」

勇者「…!」ドキッ

暗黒騎士「さて…ふむ、見た目はいいな」

勇者「……」ドキドキ

暗黒騎士「では頂くかな…」

勇者「………」ドキドキドキドキ

暗黒騎士「…それとも紅茶を淹れてからにするか」

勇者「……」シュン

暗黒騎士「なんてな」パク

勇者「!」ビクッ

暗黒騎士「美味いぞ」

勇者「!!」パアアァァッ

暗黒騎士「喋れ」コツン

勇者「はうっ」

あげたもの→手作りチョコチップクッキー(形は硬派に丸型)



勇者の娘「お父様の仇を討ちます」(1/2) (2/2)

魔姫「さて、選びましょう。まぁ、このお店有名店だし、ハズレはないと思うけどね~」

令嬢「……バレンタイン、やらないと駄目なんですか」

魔姫「何言ってるのよ、アンタ奥さんでしょ。こういうイベントはきちんとこなしなさい」

令嬢(ああぁ…何か気が乗らない)



王子「やぁ暗黒騎士! 今日はバレンタインだね!」

暗黒騎士「あぁ。…まぁ、あいつはこの手のイベントは苦手そうだしな」

王子「ほう? それは貰えなかった時の言い訳かな~?」

暗黒騎士「!! 馬鹿を言うな、そんな予防線など張るか!!」

王子「そうだよね~、いやいや楽しみだねぇ」

暗黒騎士(この野郎)


>夕飯時

令嬢「……」

暗黒騎士「……」

令嬢&暗黒騎士(切り出しにくい……)

令嬢(怯んではいけないわ! 私は勇者、私は勇者…)ゴオオォ

暗黒騎士(な、何だ!? 眉間にシワを寄せて…)

令嬢「これっ!」ヒュッ

暗黒騎士「!?」パシッ

令嬢「ちょ、チョコ…です」

暗黒騎士「あ、ありがとう」

暗黒騎士(一瞬、ナイフを突きつけられたのかと思った…)


>翌日

暗黒騎士「王子、令嬢にチョコを貰ったぞ」

王子「……」ズーン

暗黒騎士「? どうした」

王子「魔姫さんからチョコを貰ったんだけど……」

暗黒騎士「おぉ、良かったじゃないか」

王子「それと同じもの…3幹部達も持ってたんだよね……」ズーン

暗黒騎士(義理か……)


悪魔「美味いな~」

猫男爵「あぁ、美味い。…義理でも貰えるだけ有り難いな」

呪術師「どうせ独り身ですよ、ヒヒヒ…」

あげたもの→有名ブランドのウイスキーチョコ




魔術師「勇者一行をクビになりました」

魔王「独身男の口にチョコレートが詰め込まれる事件が相次いでいるだと!?」

魔術師「ひえぇ…このバレンタインの日に、なんて事件が…」

悪魔「たっだいま~」バッサバッサ

魔王「悪魔王様! 大変です、国中でチョコレート窒息事件が相次いでいるそうで…」

悪魔「あぁ、それ俺様」

魔王「……はい?」

悪魔「魔術師ちゃんにお菓子貰っちゃってさ~、しかも手作りの!」

魔術師「ぁ、悪魔さぁん、あまり見せびらかさないで下さいよぉ~」アワアワ

悪魔「俺様は世界で最も愛する魔術師ちゃんにバレンタイン貰ってチョオオォ~幸せだけどォ~」

魔術師「も、もー」

悪魔「そんな愛する女の子からチョコを貰えない気の毒な喪男が、国中に沢山いるだろォ?」

魔王「…ほう」

悪魔「そんな喪男の為に悪魔王様から幸せお届けェ~♪ 俺様とっても国民想いィ~」

魔王「…なるほど。国民への愛をチョコという形で表現したのですね」

魔術師「絶対違いますよ!?」

悪魔「魔術師ちゃんとちゅっちゅして魔力は有り余ってたしィ~。ねー、魔術師ちゃぁん?」クネクネ

魔術師「だから、言わないで下さいよぉーっ!」

悪魔「愛し合っていることを公表することが、そんなに恥ずかしいか?」キリッ

魔術師「あっ…あぅっ、えっと…」

悪魔「……なあぁんつってえぇ!! 恥ずかしがり屋な魔術師ちゃん、キャ・ワ・ウィ・ウィ~ッ! 今夜の俺様のちゅっちゅは、チョコレート味だぜェ?」

魔術師「も、もぉーっ!」


>一方…

オークA「あ、暗黒騎士様…」

オークB「この想いは秘めておくつもりでしたが…フヒッ」

オークC「悪魔王様に後押しされたので…これを」

暗黒騎士「…媚薬の香りがするな?」

オークA「これも悪魔王様に頂いたもので、フヒッ」

暗黒騎士「あの野郎…!!」

あげたもの→ハートのトッピングシュガーが可愛いチョコマフィン




姫「王子の代わりに戦う使命を負った」(1/2) (2/2)

「飴売りさんてかっこいいよね~」
「ねー、気さくで明るいしね~」

キャイキャイ

姫「……」



姫「まぁ飴売りは私に惚れ込んでいますから、心配はないでしょうけれど…」

獣人「手作りチョコの材料を揃えました姫様」

姫「こういうイベントの日くらい力を入れませんとね。誰が渡すものよりも美味しいチョコを差し上げます」


>で……

姫「……」

獣人「ぐっちゃぐちゃですね姫様」

姫「味も甘ったるいし!! 何で! 本の通りに作ったのに!」

獣人(…手先も不器用だからな姫様は)



姫(こんなチョコ渡せないわ…やっぱり市販のものを買いに行こう)トボトボ

キャイキャイ

姫「ん?」

飴売り「ごめん、受け取れないよ」

「えぇー、どうしてですかーっ」

飴売り「本当にごめんな。その…好きな人からのチョコしか受け取らない、って決めてるんだ」


姫(飴売り……)

翼人「おや姫様」バッサバッサ

姫「げ!」

飴売り「姫さん! …あ、その手に持ってるのはもしかして!!」

姫「~っ!! 駄目です、これ失敗チョコで…」

飴売り「姫さんの手作りかぁ」ヒョイパクッ

姫「あっ!!」

飴売り「…甘くて美味いな~♪ 俺、これくらい甘いのが好きだわ~」

姫「え……っ」

飴売り「貰ってもいいの? 姫さん」

姫「こ、こんなので良いのなら…」

飴売り「姫さんがせっかく作ってくれた本命チョコを『こんなの』って言っちゃダ~メ」

姫「そ、そんな…気を使ってくれなくても、別に…」

飴売り「あ、『本命』は否定しないんだ♪」

姫「~っ……、き、斬る!」ダッ

飴売り「いやーん、捕まえてみて~♪」ダッ

翼人「相変わらず仲のよろしいことで」

あげたもの→形は悪いが味はスイートな手作りチョコ




姫「魔王子との政略結婚」(1/3) (2/3) (3/3)

>厨房

魔王子「姫様~♪」

姫「きゃっ! ま、魔王子様、入ってきたら駄目ですっ!」

魔王子「な~に言ってんの。期待してるんだから、サプライズなんてしようっても無理無理~♪」

姫「も、もー。知らないフリをしていて下さい!」

魔王子「いいよ、俺は座ってるから気にしないで。俺の為のチョコを作ってくれている姫様の姿をじっくり見ていたいんだ~」

姫「そんなこと言われたら集中できないじゃないですかぁ…」モジモジ

魔王子「集中されたら俺、姫様の心を独占しているチョコに嫉妬しちゃうよ!」

姫「何をおっしゃっているんですか~…もう」

魔王子「いいからいいから♪」

姫(もう…そうだっ)

姫「魔王子様、チョコを固める前に味見して下さいませんか?」

魔王子「ん、いいよ。モグッ…うん、いい味だと思う」

姫「本当ですか?」

魔王子「うん、甘くて――……」

姫「――」チュッ

魔王子「……」ポカン

姫「本当だ…甘くていい味ですね♪」

魔王子「……」

姫「魔王子様?」

魔王子「んもおおおぉぉ、姫様の意地悪ぅーっ! 姫様の顔まともに見れない、恥ずかちぃーっ!」ダッ

姫「あらら…。でも、後は出来上がってからのお楽しみですよ、魔王子様♪」

あげたもの→特大ハート型スイートチョコ




王子「囚われの姫君に恋をした」

王子(今日はバレンタイン。姫様はバレンタインなんか知らないだろうとあまり期待していなかったが…何をしているんだ、姫様は)

姫「……」

姫(よくわからないけど、今日はバレンタインという日らしいです。そしてどうやらバレンタインとは、好きな人にチョコをプレゼントする日)

姫(世の女性たちは手作りチョコに気持ちを込めているとか…なら、私も! これの為に本も買いました!)

姫「セアアァッ!」バキィ

王子(えええぇぇ、カカオ粉砕して何やってるの姫様!? …ん、手に持っている本は…)

“カカオからチョコができるまで”

王子「……」

王子(一般的なお菓子作りの本じゃなくて、そっちの方法かよ!? いや嬉しいけど、嬉しいけど……)

姫「よいしょ、っと」

王子(職人が使うようなでっけぇ釜とかよく用意できましたねえええぇぇぇ!?)

姫「ひぃ、ひぃ、ふぅ」

王子(そりゃ熱いし重いし大変だよね! 姫様汗ダラダラじゃんか! えっ、俺このまま黙って見てるべき!?)

姫(やっぱり混ぜるだけで大変だわ…よし、ここは魔法で…)

姫「トルネード!!」

ビュンビュンッ

王子(すっげえええぇ、チョコの竜巻ができてるううぅぅ!!)

姫「よし出来た! 型に入れて…完成! よし鍋を洗いましょう」ヨッコイショ

王子(すげぇ…チョコを貰えることもそうだけど、この過程に感動したよ俺は……)


>で

姫「王子様、チョコレートです! どうぞ!」バッ

王子「ありがとうございます! 嬉しいなぁ!」ニコニコ

王子(うーん、ちょっと苦いかなぁ。でもビターチョコだと思えばイケるな)

姫「…」グゥー

王子「…姫様も食べます?」

姫「は、はい、では! もぐっ…うえぇ、苦くて美味しくないですね~」

王子「そ、そうですか? 姫様は甘い方が好きですか?」

姫「自分が食べて美味しくないものをあげるなんて…。ちゃんと味見すべきでした」シュン

王子「…姫様、来月にはホワイトデーっていう、男からお礼を返す日があるんですが」

姫「はい?」

王子「その日は一緒にお菓子作りましょうか。俺、結構自信ありますよ?」ニコッ

姫「…!」

姫「は、はい! 教えて下さいね、王子様!」ギュゥ

王子(めでたしめでたし、っと)

あげたもの→カカオから作ったほんのり苦いチョコ




女勇者「勇者よりも、お姫様になりたかった」

>街

勇者(精霊にあげるチョコを買いに街まで来たけど…)

キャイキャイ

勇者(チョコを求めて、どこの店でも女の子達が賑わっている…)

勇者(こういう女の子だらけのお店入ったことないから、入りずらいなぁ…)

精霊「ゆーしゃっ♪」

勇者「わわっ、精霊!?」

精霊「黙って出掛けたから、追いかけてきちゃった♪ それにしても今日は街が大盛況だね~」

勇者「そ、そうだね」

勇者(そうか精霊はバレンタインを知らないのか…)

精霊「ていうか、何か隠密行動? そんな大きな帽子かぶって…」

勇者「な、何でもない! それより買い物してくるから、待ってて精霊!」ダッ

精霊「あ、うん」


勇者(精霊の好きそうなチョコは…これがいいな! バレない内に買って、戻るっ!)ダッ


勇者「精霊!」

精霊「あ、お帰り。欲しいもの買えた?」

勇者「はい、これ! 精霊に!」

精霊「ありがとう。…チョコレート?」

勇者「きょ、今日はね…。その…女性から男性に、チョコを贈る日だから」

精霊「わあぁー、このチョコ可愛い。流石勇者、センスが可愛いっ!」ギュゥ

勇者「わわっ、人前で飛びつくな…」

パサッ

勇者(ああああぁぁ帽子が落ちたあああぁぁ)

「おや勇者様、ご機嫌よう」
「本当だ勇者様だ。おや、その子は?」

勇者(うわああぁ)

精霊「えへへ~。勇者にチョコ貰ったの♪」

勇者(ちょおおぉぉっ!! 精霊にバレンタインの意味説明しとくんだったあああぁぁ!!!)

「おやおや勇者様もバレンタインですか。もしかして、親戚の子ですか?」

精霊「えぇーと……」

勇者「……」グッ

勇者(何、コソコソしてるのよ私…。精霊は私の王子様じゃない!)

勇者「私の、彼氏です!」

「えっ」

精霊「…っ、うわあぁ、勇者あぁ~っ!」ギュウゥ

勇者「わわっ!」

精霊「俺のこと、皆に彼氏って…ありがとう、本当ありがとうぅ!!」

勇者(…噂が広まるだろうから、これからが大変ね…。でもま、いっか)

あげたもの→動物型チョコ




魔女「不死者を拾いました」

不死者(ん…何か甘ったるい匂いが…)

魔女「……」グツグツ

不死者(おぉツボの前で何かやってる。いかにも魔女、だな)

魔女「うぅーん…」ペロッ

不死者(味…を見ているのか? 何をやっているのか気になるところだが、声をかけて邪魔しちゃ悪いしな)

魔女「あぁーっ!!」

不死者「えっ?」

ドカアアアァァン

魔女「ケホケホッ。う~…。わぁん、ベタベタぁ~!!」

不死者「大丈夫かお嬢ちゃん」

魔女「わわっ、不死者さん!」

不死者「…って、これチョコか? 一体どんなチョコ作ろうとして…」

魔女「え、ううぅ…」グスッ

不死者「わわ、泣くなって! まずチョコまみれの体洗ってこいよ、な!?」ポンポン

魔女「ひっく、ひっく…今日は、バレンタインだからぁ…」グスグス

不死者「……あ、そうか」

魔女「魔女の間に伝わる、とっても美味しいチョコを不死者さんに食べてもらいたくて…でも、でもぉ…」グスグス

不死者「……」

不死者「どれ」ペロ

魔女「ひゃんっ!? ふ、ふ、不死者さん!? い、いい今ほっぺ…」アワアワ

不死者「あぁ…確かにスゲぇ美味い」

魔女「」ボッ

不死者「…けど全部舐めるのは流石に卑猥だからな。惜しいが、洗い流してきな」

魔女「は、ははははい!」

ピューッ

不死者「ツボに残ってら。ん…美味い」ペロ

あげたもの→とろけすぎる程とろける生チョコ




魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」

勇者「今日はバレンタインだよな~」ニヤニヤ

ハンター「気持ち悪いぞ勇者。それに魔姫に貰えたとしても義理だぞ?」

勇者「義理で結構! 俺は魔姫さんに頂けるものなら何でも有り難く頂く!」

ハンター「あーそうかい…」

猫耳「うにゃー……」

ハンター「ん、どうした?」

猫耳「魔姫ってお菓子作りに関しては壊滅的なんだよね~…。噛んだ瞬間、口の中に広がる生焼けの食感…あぁ思い出しただけで気持ち悪いや」ブルブル

ハンター「……」

勇者「そっかぁ、あの完璧な魔姫さんにも弱点ってあるんだ~。そういう所あっても可愛いよな~」ホンワカ

ハンター「お前は盲目的信者か!」


魔姫「皆ぁ~」

ハンター「げ、来た」

勇者「魔姫さ~ん! 待ってましたよ~!! さぁラブミープリイイィィズ!!」

猫耳「うにゃー……」

魔姫「はい、いつもご苦労様。3人同じものだから喧嘩するんじゃないわよ」

ハンター「…市販のチョコだな?」

魔姫「あら、その反応。さては…猫ぉ~、私の失敗談でも話してたんでしょ!」

猫耳「ふにゃーっ、ごめんごめん魔姫許してーっ!」

魔姫「もう。お菓子作りは下手だって自覚しているから、下僕を労う日に作ったりしないわよ」

勇者「俺はちょっと残念……あ、いやいや、魔姫さんが俺の為に選んで下さったんだものな! 有り難く頂きます」ハハー

ハンター「ちょっと待て、まずは下僕にツッコめ」

猫耳「にゃあ。包装が可愛くて開けるの勿体無いねぇ」

魔姫「あら、いいとこに目をつけたわね猫。チョコは市販のものだけど、包装したのは私よ」

ハンター「ほう」

勇者「えっ」

猫耳「にゃー♪ 流石魔姫、センスいいねぇ~」

勇者「あぁーっ、俺ろくに見ないで開けちゃったよ! ハンター、取り替えてくれーっ!」

ハンター「…嫌だと言ったらどうする?」

勇者「土下座でも何でもするからぁ~っ!!」

ハンター「わかったわかった。英雄にそんなことさせられるか…」

勇者「ありがとう、ハンター様ぁ!」

猫耳「勇者は騒がしいにゃー」

魔姫「ま、喜んで貰えて何よりよ。これからも奉仕宜しくね♪」

あげたもの→包装が可愛いオレンジ風味トリュフ




奴隷少女「私を、守って下さい…」執事「それが貴方の願いならば」

犬男「で、そこに生クリームを加えてだな…」

媛「こう…ですか?」

ガチャ

執事「おや、厨房にお揃いで…」

雉娘「ああぁーっ!」

執事「?」

猿少年「ウキーッ、執事は厨房立ち入り禁止!! シッ、シッ!!」

媛「ご、ごごごめんなさい執事さん! い、今は駄目なんですぅ!」

執事「? お嬢様がそうおっしゃるのでしたら。では失礼致します」

犬男「あー、サプライズがバレるとこだったな」

媛「…うぅっ」ポロポロ

雉娘「お嬢様、どうしたの!?」

媛「執事さんを傷つけちゃったかもしれない…。私、私ぃ…」グスグス

犬男「だだ、大丈夫だから! アイツそんなんで傷つく程繊細じゃねぇし!」

猿少年「それよりもホラ、美味しいケーキ作って喜ばせてあげよう! ほら、バナナ使えば絶対美味しくなるから!」

媛「はい…」ズズッ



媛「し、しし執事さん!」

執事「如何致しました、お嬢様」

媛「これっ、ケーキです! ば、バレンタインの!!」

執事「バレンタイン。……あぁ、確か地上の世界の行事でしたね。時代と共に廃れたとの事ですが…」

犬男「犬キィーック!」ドカッ

執事「つっ、何ですか犬」

犬男「お嬢様の様子を見ろっ!!」

媛「ううぅ…地上の世界のイベントなんて、やっぱり、やっぱりぃ…」グスグス

執事「…申し訳御座いません、お嬢様。バレンタインの意味を、たった今思い出しました」スッ

媛「ほぇっ。…し、執事さん……」

チュッ

媛「」

執事「お嬢様のお気持ち、身に余る程の光栄。…しかしこの行事、女性の方から想いを告げさせる点が気に入りませんね」

媛「」

執事「ですから私の想いは唇に込めて……お嬢様?」

媛「」

犬男「大変だーっ、不意打ちのキスでお嬢様がフリーズしたぞォーっ!」

執事「お、お嬢様! 呼吸が止まっている…ここは人工呼吸を!」

雉娘「トドメ刺す気かっ!」

媛(し、幸せぇ~……)ホヤァン

あげたもの→使用人に助けてもらいながら作ったチョコバナナケーキ




乙女ゲープレイヤー「魔王を攻略しよう」

乙女(右スティック回転、左スティック回転、次は…)

ゲーム機<「大成功、ヤッタネ!」

乙女「よし、チョコ作りゲーム成功! 早速配るわ!」ガッツポーズ

魔王「ゲームに熱中しているのか。全く、俺を目の前にしてけしからん奴だな」

乙女「今日は大事な日ですから!」

魔王「ゲームもいいが…。乙女、この世界では今日はバレンタインというものらしいな。当然、期待して良いのだろうな?」

乙女「いいですけど…期待していると口にすると、余裕がないと思われますよ?」

魔王「バレンタインはギャルゲーでしか知らんのだ、多少期待することを許せ」

乙女「仕方ありませんね。では少々お待ちを」



魔王(部屋に入ってなかなか戻ってこんな)

乙女「大変お待たせ致しました、ご主人様」

魔王「メイドか。そうか、今日は奉仕に積極的ということか」ニヤリ

乙女「こちら、ご主人様の為にご用意させて頂きました」

魔王「ふむ、チョコレートアイスか」

乙女「命名“乙姫特製・この氷は百年の想い、貴方の気持ちでチョコっと溶かしてシャーベット”です」

魔王「あ? 貴方の気持ちでチョコっと…?」

乙女「乙姫特製・この氷は百年の想い、貴方の気持ちでチョコっと溶かしてシャーベット、です」

魔王「お、おう? まぁ、頂こう」シャキッ

乙女「……」

魔王「うむ。濃厚なチョコが口の中に広がる。冷たくてさっぱりしていて、口触りも良い」

乙女「クール担当、乙姫ですから。アイスに関しては自信があります」

魔王「そうだな。店に出しても恥ずかしくないレベルだ!」

乙女「そうですか。ではお店に出します」

魔王「何ぃ!?」

乙女「冥土屋で1週間バレンタイン期間なので、各自メニューを考えておくよう言われていたんですよね」

魔王「だが、それはさせんぞ」

乙女「はい?」

魔王「これは俺のみに許された特別なシャーベットだ。他の客に出すなどと、許さんぞ」

乙女「…ふふ、そうですね。では別のメニューを考えておきましょう」

魔王「お前、その余裕…さては、俺がそう言うと予測していたな?」

乙女「えぇ、勿論ですとも」

魔王「流石は百戦錬磨の乙女ゲープレイヤーだ。男の属性を見極め、台詞を引き出すとは…侮れんな」

乙女「買い被りすぎですよ。貴方をよく見ているから、わかるんです」

魔王「この俺を手玉に取れるのは、どの世界を渡り歩こうがお前だけだろうな。だが、忘れるなよ」ツンッ

乙女「!」

魔王「この俺も…お前を攻略中なのだからな」

乙女「…ふふっ」

ゲーム機<「大成功、ヤッタネ!」

あげたもの→乙姫特製・この氷は百年の想い、貴方の気持ちでチョコっと溶かしてシャーベット




神様「勇者も魔王もいなくなった世界で」

少女「困りました」

神様「何を困りました?」

少女「悩みの性質上、神様に聞かれてはまずいことでして」

神様「では質問致します。私の助力なくして解決するお悩みでしょうか?」

少女「…いえ、解決しませんね。すみませんでした」

神様「謝る必要など御座いません。心に秘めておくこともまた1つの手段。如何致します?」

少女「話しておこうと思います」

神様「はい、お聞きしましょう」

少女「今日はバレンタインなのです」

神様「なるほど。世間から隔離されてなお、世間の風潮に流されるとは貴方らしい」

少女「ですが問題がありまして。私は神様の助力なくしてチョコレートを入手することができないのです」

神様「なるほど。では私の気持ちをお話し致しましょう」

少女「神様のお気持ち?」

神様「私はどのような形であれ、貴方からお気持ちを頂けるだけで嬉しいのです」

少女「…気持ち……」

神様「失敬。“気持ちを渡す”のは困難なことであると失念しておりました」

少女「困りました」

神様「では質問致します。貴方は私にどのようなチョコレートを渡したいのでしょうか」

少女「えーと…」

神様「味と形をよく想像してみて下さい」

少女「……はい、想像しました」

神様「では」ポンッ

少女「それは…私が想像していたチョコレートそのものです」

神様「はい、貴方の想像を具現化致しました。これを貴方からのチョコレートとして受け取りましょう」

少女「いいのでしょうか。神様が出されたチョコレートを神様に渡すなんていうので」

神様「その不安は私への気遣いの現れです。私はそれが素直に嬉しい」

少女「それでも答えが欲しいのです。神様は、味に満足頂けるのか」

神様「ご心配なく。私は嫌いなチョコレートなどありませんよ。それに貴方の気遣いが上乗せされ、特別なものとなるのです」

少女「そのお言葉で安心しました。神様に相談して良かった」

神様「それは良かったです。そうだ、ひとつ言い忘れておりました。チョコレート、ありがとうございました」

あげたもの→シンプルなブラックチョコ




勇者「パーティーでのカーストが最下位でつらい」

勇者(神界の騎士さん、喜んでくれるかなぁ)ドキドキドキドキ

神界の騎士「勇者~っ! チョコくれ!」

勇者「いきなりですね!?」

神界の騎士「そりゃ今日はバレンタインだし? 勇者からチョコ貰えないなら、お兄さんいっそ催促しちゃおうかな~って」

勇者「心配しなくても、ちゃんと用意してますよ。ハイ」

神界の騎士「マァ可愛らしい。あれか? 魔法使いとかに、流行りの店教えてもらったの?」

勇者「いえ、その…。手作り…です」

神界の騎士「うっそ、マジで!? お兄さん感激しちゃう!!」

勇者「気に入って頂けて何よりです」モジモジ

神界の騎士「あ~ん」

勇者「…え?」

神界の騎士「食わせて。ほら、あ~ん」

勇者「え、ええぇ!?」

神界の騎士「俺と勇者は一心同体だろ~?」

勇者「い、今は違いますよ~っ!」

神界の騎士「ほらほら、そういうプレイだと思ってやってみて」

勇者「余計やりにくい!?」

神界の騎士「じゃあ~…口移しとか」

勇者「あぁん、手で許して下さぁい!」

神界の騎士「お、食べさせてくれるのか~♪ あ~ん…」

勇者「あ~ん…」

神界の騎士「ぱくり」

勇者「!!!」

神界の騎士「わっり、勇者の手も食べちゃった。相変わらず小さい手だな~」スリスリ

勇者「きゃっ、もっもう、神界の騎士さんたら…」

>一方…

踊り子「今日はバレンタインだけど…」

僧侶「あげる予定はありませんねー…」

魔法使い「ああぁもーっ、何で私ら女3人でチョコ食べてるのよーっ、悲しい! 悲しすぎるわ!!」

あげたもの→つぶつぶイチゴの生チョコレート(手作り)






あとがき

当初予定していたネタをぎゅっと縮小したものですが、ssって本来こういうものなのではないかという気がしないでもない(遠い目

カップリングごとに違うチョコの個性を考えるのも楽しかったです。
何というか全てのカップルが尊くて泣けます。皆幸せになってしまえばいいんだよ!!
posted by ぽんざれす at 10:02| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【スピンオフ】魔王子「僕が美しすぎて世界征服とかどうでもいい」【バレンタイン】

魔王子「僕が美しすぎて世界征服とかどうでもいい」のバレンタインスピンオフです。





バレンタインデーの朝…

>シャワールーム


シャワアアァァ…

魔王子(ふふ…僕は何て美しいんだ)ウットリ

魔王子(罪なほどに美しい僕は、毎年抱えきれない程のチョコを貰っているが…)

魔王子(今年は姫様という本命がいる。バレンタインは僕にとって、特別な日となったのだ)

キュッ

服<お、シャワー終わったか

魔王子「ふふ、興奮してきた。だがそれを顔に出しては美しくないよね」フキフキ

服<顔に出てなくても股間に出てるぞオイ

魔王子「平常心、平常心…フフ、僕は美しい」

服<体冷えるぞー

魔王子「よし、いつもの僕だ…」キリッ

魔王子「では余裕を持って、行こうか!」バァン

服<……

服<おーい、着忘れてるぞー





メイドA「魔王子様、おはようござ…!」

メイドB「」

魔王子「おはよう。どうしたのかね?」

メイドA「あぁ、魔王子様…」メロメロ

メイドB「貴方は何と素敵なお方でしょう…」メロメロ

魔王子「おやおや…顔を見慣れている使用人までメロメロにしてしまうとは、湯上りの僕とは恐ろしいものだね」

魔王子「さて、正門前で姫様を待つかな」





姫「……」ドキドキ

姫(魔王子様、喜んで下さるかしら…)

姫が用意したのは、芸術の国の有名チョコ職人が造り上げた『美しき薔薇のチョコ』。

姫(見た目も味も一級品よ。何も卑屈になることはないわ…)

姫(お城が見えてきたわ…。これを魔王子様に渡すだけ!)

魔王子「おーい、姫様ー」

姫(! 魔王子様の声が…)

姫「魔王子さ……」

魔王子「やぁ、待ってたよ」キラリーン

姫「」

魔王子「うん? どうしたのかな姫様?」

姫「いっ……」

魔王子「い?」

姫「いやあああぁぁぁぁ!!」ダーッ

魔王子「なっ……逃げるだと!?」

魔王子(何故だ! 僕はこんなにも美しい、逃げられる要素など…ま、まさか…)

魔王子(バレンタイン当日に、フラれた…!?)ガーン





姫「はぁ、はぁ…」

姫(魔王子様…どうして服を着ていなかったの!?)

姫「……チョコ、渡しそびれちゃった…」





魔王子「あぁ…せめて理由を聞かせてよ姫様。僕が美しすぎるから!? 僕と共にその罪を背負うのが重くなってしまったのかい!?」

魔王子「それとも…」


女戦士「魔王子様…今日も美しいわ」ウットリ

魔法使い「チョコを渡しに来たというのに…」

僧侶「何ということでしょう! あまりの眩しさに近づくことすらできないなんて!!」


魔王子「毎年チョコを沢山貰っているというのに、今年は誰も来ない…」

魔王子「まさか!! 僕の美しさがランクダウンしてしまったというのか!?」

魔王子「ああぁ…確かめようにも鏡を見るのが怖い。美しくない僕なんて見たくないよ!」

人々は言う。『人は見た目ではなく中身だ』と。
それを否定する気はない。否定する気はないが――

魔王子「美しさとは僕そのものなんだよ! 美しくない僕は、僕じゃないんだ!!」

人々は言う。『花は儚いからこそ美しいのだ』と。
それも納得している。だけど、それは花の話。

魔王子「僕の美しさは時の流れなんかに奪える程度のものではなかったはずだ! それなのに、それなのに…ッ!!」


側近(ん? 魔王子様の叫びが……裸で何やってるんだあの馬鹿は)

魔王子「美しくない僕なんて、美しくない僕なんて…!!」チャキッ

側近「!?」

魔王子「せめて美しく、この胸に紅い花を咲かせて…」

側近「早まらないで下さい、魔王子様!!」バッ

魔王子「側近! 離してくれ、せめて美しく死なせてくれえぇっ!」ジタバタ

側近「貴方が自害を考えるなど、何があったのですか!?」

魔王子「僕は僕である意味を失ったのだ!! アァッ、僕の心は何て悲劇的で美しいのだっ!!」

側近「酔ってんじゃねーよ!」



姫(魔王子様…怒ってないかしら)

姫(魔王子様が服を着ていらっしゃらないのには、必ず理由があるはず…! まずは話し合いを…)

姫(……ん?)



側近「話を聞けつってんだろ、このナルシが!!」ゼェッハァッ

魔王子「アァ…僕を拘束するのならこんな荒縄じゃなくて薔薇にしてくれよ…」


姫(魔王子様!? し、縛られてる、何があったの!?)


側近「ハァハァ…。で、魔王子様。何故、自害など謀ったのですか?」

魔王子「気づいているんだろう側近! 僕の美しさは損なわれたのだ!」

側近「…すみません、いつもとの違いがわかりませんが。何故そう思われたのです」

魔王子「今年は…チョコを1個も貰っていないんだよ!」」

側近(毎年、義理チョコを数個貰える程度の私に対して嫌味か?)ビキッ

魔王子「僕の美しさが損なわれたから、誰もチョコをくれないのだ! 姫様も僕の姿を見て逃げ出してしまったし!」

側近(その発言、『僕の魅力は見た目だけです』って言ってるようなものだぞ)

魔王子「美しくない僕なんて…僕なんてえぇっ!!」


姫「…話は聞かせて頂きました、魔王子様」

魔王子「姫様!!」

側近「あ」

魔王子「…見ないでよ姫様。美しくない僕なんて…」プイ

姫「いいえ。魔王子様、この鏡をご覧になって」パッ

魔王子「え――っ」


反射的に鏡を見て、魔王子は驚愕した。
だって、そこに映っていたのは――


魔王子「う――…美しい!!」


いつもと変わらぬ、神々しいまでに美しい自分の姿だったのだから――


魔王子「教えてくれ、姫様! 何故…こんなに美しい僕から、逃げ出してしまったんだい!?」

姫「それは――裸だからです」

魔王子「はだ、か…?」


そう言われ、魔王子は自分の体に視線を移した。
そして――理解した。


魔王子「何てことだ…! 僕は…僕は、服を着忘れていたんだね!」

姫「そうです、魔王子様!」

側近(気付いてなかったのかよ…)

魔王子「きっと朝のシャワーの時だ…。はは、姫様のチョコに期待して服を着忘れるなんて、余裕のない証拠だね。僕としたことが、美しくな…美しくない僕なんてええぇ!!」

側近「それはもういいっつーの」

魔王子「でも参ったなぁ、これでは常時パーフェクトビューティ魔王子フラッシュ状態だ。側近、タオルを1枚持ってきてくれないかい?」

側近「いや股間隠せばいいってもんじゃねーぞ」





姫「…そういうわけで魔王子様、こちらがチョコレートです」

魔王子「ありがとう、姫様」

側近(やれやれだな)


キャイキャイ

魔王子「……ん?」


女戦士「魔王子様ーっ!」

魔法使い「チョコレートですぅ、受け取って下さぁい!」

僧侶「魔王子様の為に徹夜して並んで買ったんですよーっ!」


魔王子「ハハ、ありがとう」

姫「魔王子様ったらぁ」プクー

魔王子「嫉妬かい姫様。大丈夫、姫様のチョコを1番大切にするよ」

姫「他の女性からの本命チョコを受け取っちゃうなんてぇー」

魔王子「仕方ないじゃないか、だって僕は――」


不誠実と言われても仕方ないのかもしれない。
それが自分の背負った罪の代償。だって僕は、こんなにも――


魔王子「何者をも魅了する程に、美しいのだからね!」

姫「そうですね…仕方ないですね!」


それが、美しすぎるという罪なのだから――




側近「馬鹿じゃねーの」


Fin


あとがき

いやまぁ、ナルシスバカじゃない魔王子は魔王子じゃないから…。
本編以上に全裸でしたね。全裸でリア充とかどんだけ恵まれてるんだよ。

ちなみに本編は恋愛エンドでしたが、これギャグssですからね(言い訳
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【スピンオフ】魔道士「僕のお嫁さんを召喚するよ☆」【バレンタイン】

魔道士「僕のお嫁さんを召喚するよ☆」のバレンタインスピンオフです。





町娘「薄力粉と、チョコレートパウダーと…よし」

私はその日、街にチョコレートケーキ作りの為の材料を買いに来ていた。
もうすぐバレンタイン。やはり、日頃お世話になっている魔道士さんの為にお礼をしなきゃ。

町娘(しばらく作ってなかったけど、ケーキ作りは結構得意なのよね!)

町娘(私のケーキを食べたら、魔道士さんきっと…)


魔道士『アハーン町娘ちゃん…とろけるようにスウィ~トなケーキだね。まるでキスのようだ…』キラリン


町娘「……」

町娘(…って、そんなの期待してないし!! あぁもう、魔道士さんに感化されておかしくなってるわ!!)ブンブン



町娘「只今戻りました~」

魔道士「Oh…」ズーン

町娘「…魔道士さん?」

魔道士「あ…。チャオ☆ 町娘ちゃん帰ってたんだ」

町娘「ちゃんと私は挨拶しましたよ~」

魔道士「アハ、ゴメンゴメ…あれ、その手に持っているのは……」

町娘「あ…」

ケーキ作りの材料を見られてしまった。でも、魔道士さんはバレンタインの日くらい知ってるだろうし、隠さなくていいか。

町娘「バレンタインにはチョコレートケーキでも作ろうかと思って」

魔道士「……ワオ」

何だろう? 魔道士さんの笑顔がヒクついているような……。

町娘「あ…もしかして、チョコレートケーキ嫌いでした?」

魔道士「まさか★ そうかぁ、町娘ちゃんのチョコレートケーキ楽しみだなぁ~♪」

町娘「そうですか」

気のせいだったようだ。私はとりあえず材料をしまうことにした。


魔道士「……これは参ったぞ」

魔道士「バレンタイン…それは正しく危険日 ~デンジャラスデー~」



>その日の夜…


魔道士「ご馳走様…」

町娘「あら…おかず、多かったですか?」

珍しく魔道士さんが夕飯を残した。

魔道士「ゴメンね、ちょっと間食しちゃったものだから…。あ、明日食べるからしまっておいて」

町娘「わかりました」

魔道士「それと明日は出かけるから、お昼におにぎり1個作っておいて」

町娘「それだけじゃ足りなくないですか? お弁当作りましょうか」

魔道士「いや、いいからいいから! それじゃ、仕事に戻るね!」ソソクサ

町娘(…様子が変ね。間食しすぎたのを気にしてるのかしらね?)



>翌日


町娘(仕事済んじゃった。魔道士さんの昼食作りがないから、今日はいつもより動いてないかも)

魔道士「ただいま~」

町娘「お帰りなさ…って」

魔道士さんは汗だくになって帰ってきた。

町娘「何やってきたんですか魔道士さん!?」

魔道士「アハ~ン、ちょっとね。それよりもお風呂に入りたいな☆」

町娘「あ、はい。すぐ沸かしてきます!」

魔道士「急がなくていいよ★ あと、明日からしばらくお昼空けるから、おにぎりお願いね!」

町娘「わ、わかりました」

町娘(何かハードな仕事でも入ったのかしら…心配)


そして魔道士さんの言った通り、魔道士さんは家を空けることが多くなった。

魔道士「行ってきます☆」

町娘「行ってらっしゃい」


町娘(いつも汗だくで帰ってきて、一体何の仕事かしら。食欲も前より落ちたみたいだし…でも聞いても教えてくれないのよね)

町娘(何か、この家にずっと1人ってのも何か、こう……)

町娘「………」

町娘(べ、別に寂しくないし! しばらく楽ができると思っておけばいいのよ!)





>そんなこんなでバレンタイン当日…


町娘「これでよし、っと」

ケーキが焼きあがった。あとはデコレーションするだけだ。

町娘(どうデコろうかなぁ。魔道士さんセンスいいから、格好悪くはしたくないわね)

町娘(……バレンタインだし、やっぱりハート?)

町娘(…いやいやまさか!! そんなハートとかまるで私が魔道士さんのこと)ブンブン

コツコツ

町娘(ん? 足音?)


魔道士「…」コソコソ

町娘(あ、魔道士さん帰ってきたのか。でも、ただいまも言わないでコソコソして、どうかしたのかしら?)

魔道士「……」ブルブル

町娘(何か怯えている? 何をそんなに……ん、足元にあるあれは……)


…体重計?


魔道士「……」ソロー

魔道士「……」

魔道士「グッ……」

町娘「?」

魔道士「Great Success…! ダイエット成功だぁ~…!」グッ

町娘「…魔道士さん?」

魔道士「Ohhhhh!?」ビクウウゥッ

町娘「!?」

魔道士さんは体重計から飛び跳ねるように落ち、尻餅をついた。

町娘「ご、ごめんなさい驚かせて…。ところで、そのー…ダイエットって」

魔道士「オゥノオオオォォ!!」

町娘「え? あのー…」

魔道士「ごめんなさい! 仕事と嘘ついてダイエットしてました! 本当にごめんなさい!」

町娘「……え?」





町娘「…つまり、数日前に体重を計ったら増えていたと」

魔道士「Oh…それでバレンタインを迎えたら間違いなく、元通りのおデブのブーちゃんじゃないかアハーン…」

町娘「それならそうと言って下さったら、野菜多めのメニューにしたり協力したのに…」

魔道士「恥ずかしくて★」キャッ

町娘「女子か!!」

魔道士「そんなこと言ったら町娘ちゃん、気を使ってチョコレートケーキ作るのパスしちゃいそうじゃない」

町娘「だからってこんな短期間での無理なダイエットは…」

魔道士「町娘ちゃんのケーキ、食べたかったんだもん☆ お陰で2キロも落とせたよ♪」

町娘「あーはいはい」

町娘(全くもう、無茶する人なんだから…)

魔道士「チョコレートのいい香りが漂ってるね~。よーし、今日はお気に入りの紅茶を淹れよう!」

町娘「…魔道士さん。かっこいい体型を維持するのも大事ですけどね」

魔道士「ン?」

町娘「その…女の子は、あまり放っておいたら…駄目、ですよ」ゴニョゴニョ

魔道士「町娘ちゃん? ゴメンね、よく聞き取れないよ」

町娘「~~っ…あぁもう、何でもないです!! もうすぐ出来ますから、大人しく待ってて下さい!」

魔道士「What!? 何で怒られてるの!?」


ともあれ…


魔道士「絶品だなぁ★ 口の中で甘いチョコがとろけて、スウィ~トな気分になれるよ♪」

町娘「そうでしょう? 自信あったんですからね」フフン

魔道士「こんなに美味しいケーキなら毎日のように食べたいけど…それは我慢だね」

町娘「ダイエットするの大変ですからねぇ」

魔道士「いや…そうじゃない」

町娘「え?」

魔道士「バレンタインにしか食べられないからこそ…町娘ちゃんのケーキは、特別なんだから」

町娘「」

町娘「」ボッ

魔道士「今日は特別なケーキを堪能するぞ~♪」

町娘(魔道士さん、カッコつけて言ったの!? 天然で言ったの!? あああぁぁもう!!)

魔道士「どうかした、町娘ちゃん?」

町娘「何でもありません!!」


とにかくダイエットもケーキも大成功。
今日はハッピーなバレンタインとなりました…。


町娘「ところで体重増えたって、何キロ増えてたんですか?」

魔道士「恥ずかしいけど…0.5キロ」モジモジ

町娘「たったそれだけで!? 結果的に1.5キロ痩せてるじゃないですか!?」

魔道士「まぁでもチョコケーキ食べて増えると思うし…って、どうしたの?」

町娘(まずいまずい…あと何キロか痩せられたら私と体重が並ぶわ……よし、一杯食べさせよう!!)

魔道士「アハーン…? な、何か不吉な予感…☆」



Fin



あとがき

チャオさんがチャオって1回しか言ってなry
家事スキルの高い町娘ちゃんならケーキとか作っちゃうだろうなぁ。チャオさん体重増加が心配だなぁ。って感じでスピンオフssの内容は迷いませんでしたね。
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【スピンオフ】アラサー賢者と魔王の呪い【バレンタイン】

アラサー賢者と魔王の呪いのバレンタインスピンオフです。





>バレンタイン当日


賢者「それじゃあ、今日の授業は終わりまーす」

<ありがとうございましたー

賢者「さーて、明日の授業の準備してから帰ろうかな…」

生徒A「あー!」

賢者「あら?」

振り返ると生徒たちが、窓の外に手を振っていた。
彼らが手を振っている相手は…

賢者「あら、魔法戦士君」

魔法戦士「お久しぶりです」

生徒A「あれー魔法戦士、ちょっと見ない内に大きくなったー? あ、なってないね」アハハ

魔法戦士「そう簡単に伸びないから」

魔法戦士が田舎に帰ってくるのは、1、2ヶ月ぶりか。
騎士団も忙しいと聞いているが、やはり若いからか、魔法戦士は元気そうだ。

賢者「魔法戦士君たら。帰ってくるのなら、お手紙くれれば良かったのに~」

魔法戦士「……いやぁ」

賢者「?」


この時魔法戦士は、かなり複雑な心境でいた。


魔法戦士(こんなバレンタインの日を狙って帰ってくるつったら、チョコ用意しててくれ、って言うみたいじゃん)フン

魔法戦士(…他の男にはチョコやったのかな?)ムム

魔法戦士(いや別に! チョコなんて期待してないし!? 急に帰ってきた奴の為にチョコなんか用意してないよな!)ヘッ

魔法戦士(…先生、バレンタインは知ってるよな? 魔法以外のことに割と疎いし……)ムムゥ

魔法戦士(いやいやいやいや!! 知ってたとこで俺とは関係ないしいいぃぃ!!)グヌヌゥ


生徒B「どうしたのよ魔法戦士、さっきからコロコロと顔が変わってるけど」

魔法戦士(はっ、つい!!)

賢者「あ、わかった」

魔法戦士「せ、先生、違うんだ!! お、お俺、別にっ」アワアワ

賢者「思い出し笑いみたいなものでしょ~。魔法戦士君、騎士団でどんなことがあったのか聞かせてよ♪」

魔法戦士「……」

魔法戦士(先生…ナイス天然)グッ

生徒E「本当にどうしちまったんだ魔法戦士の奴? 激務で頭おかしくなったか?」

生徒F「そういう時は糖分だな。おい魔法戦士食うか、俺のチョコ…」

魔法戦士「チョコ!?」

生徒F「」ビクッ

生徒A「あーほら、今日バレンタインだからさ。チョコのやりとりがあったのよ」

生徒B「事前に帰ってくること言ってくれれば、魔法戦士の分も用意しといたのに~」

魔法戦士(そりゃそうだよな…だが問題なのは…)

賢者「?」

魔法戦士(先生からこいつらへのチョコはあったのか、なかったのか…!!)

生徒A「あ、そろそろ帰らなきゃ。魔法戦士、今度来る時は連絡よこしなさいよ! じゃあね~」

賢者「みんな、気をつけてね~」

魔法戦士「……」

賢者「魔法戦士君、どうしたの?」

魔法戦士「え、あ、いやぁ~! べ、別に実家帰ってもすることないし!」

賢者「?」

魔法戦士「せ、せっかくだし、明日の授業の準備手伝うよ先生!」

賢者「あら~、いいの? ここぞとばかりに力仕事頼んじゃうわよ~?」

魔法戦士「バッチコイ! 力仕事なら俺に任せてよ!」

賢者「まぁ、頼もしいのね。それじゃあ教材運びをお願いしちゃおうかしら」

魔法戦士「了解!」

賢者「ふふ、魔法戦士君が手伝ってくれるから、今日は早く帰れそうだわ♪」

魔法戦士「……」

魔法戦士(い、いや別に何の下心もないから! チョコなんて期待してないから!)





賢者「ありがと~っ、魔法戦士君! おかげで先生助かっちゃったわ」

魔法戦士「これくらい何てことないよ。つか先生、いつもこんな重いもん持ってたの?」

賢者「勿論、少しずつ持ってたわ。じゃないとおばさん、すぐ腰痛めちゃうから」

魔法戦士「いやいや、俺より若い体で何をおっしゃる」

賢者「子供にも肩こり腰痛はあるのよ」

魔法戦士「鍛え方が足りないなぁ~? 今からそんなんじゃ、体が成長した時…」

賢者「きゃあ、怖いこと言わないでぇーっ」ブンブン

魔法戦士(はは。つい、いじめたくなっちゃりして…)

賢者「さて帰りましょうか魔法戦士君。ねぇ、時間ある?」

魔法戦士(お?)「あるよ勿論」

賢者「それじゃあ手伝ってくれたお礼に、ちょっと寄り道しましょう♪」

魔法戦士「!!! ぜ、是非!!」

賢者「? えぇ」

魔法戦士(バレンタインデート…!! あ、いや、デートとか、そんなんじゃねーよな!! 期待すんな、俺!!)


それで…


魔法戦士「……」

賢者「はぁ、美味しいわねぇ。仕事終わりのコレが楽しみでねぇ」

魔法戦士「……そうだね」

賢者「遠慮なく食べてね魔法戦士君。先生贔屓のお店なの……ここの、牛丼屋」

魔法戦士「大盛りご馳走になりまーす!」

賢者「その食べっぷり、流石男の子ねぇ」

魔法戦士「そうだろ~そうだろ~」


そりゃ、期待すんなと自分に言い聞かせはしたが…


魔法戦士(よりにもよって田舎の牛丼屋かよ!!)

賢者「う~ん美味しい、幸せぇ~」ニコニコ

魔法戦士「良かったねぇ、先生」

魔法戦士(もう俺ゼッテー男として意識されてねぇよ…)ズーン


やはりバレンタインなどろくでもない…魔法戦士はそう思いながら肉の味を噛み締めた。





賢者「ふぅ、美味しかったぁ。よーし、明日も頑張るわよ~」

魔法戦士「牛丼くらいなら、俺も作れるよ」

賢者「まぁ~。それは食べさせてくれるって期待してもいいのかしら?」

魔法戦士「いいぜ。また帰ってきた時、時間とれれば俺の手料理振舞ってあげるよ」

賢者「あら。今回はそんなにゆっくりしていられないの?」

魔法戦士「そうだね。明日には帰るよ」

賢者「それじゃあ1泊する為にわざわざ?」

魔法戦士「……まぁね」

賢者「あぁ、でもずっと帰ってきてなかったものねぇ。たまに元気な顔を見せてくれると、先生は嬉しいわよ!」ポン

魔法戦士「はは…ありがとう」

魔法戦士(あぁ…やっぱ俺……)

いくら強がっても、やっぱり心のどこかで期待していた。

魔法戦士(先生からのチョコ、欲しかったんだろうなぁ……)


もし強がらずに、事前に帰ることを伝えていればチョコを貰えたのだろうか。
だけどそこまでしておいて貰えなかったら……

魔法戦士(ああぁーっ、俺の臆病者!!)


結局、怖かっただけか。


賢者「魔法戦士君、今回急に帰ってくるものだから…」


そう。
自分は「チョコを貰えなかったのは、急に帰ってきたせい」と予防線を張りたいヘタレなのだ。
それなのに、貰えるかもしれないという期待を捨てきれず帰ってきてしまう下心はしっかりあるのだ。


魔法戦士(こんな情けない男に先生が惚れるかっつーの!! あぁもう!!)

賢者「チョコ、そっちの下宿に郵送しちゃってたわよ」


魔法戦士「……」


……はい?


賢者「だってホラ、今日バレンタインじゃない。魔法戦士君と入れ違いになっちゃったかなぁ」

魔法戦士「せ、せ、先生!?」

賢者「あら、どうしたの?」

魔法戦士「ほ、ほ、ほんとに!? ほんとに俺にチョコを!?!?」

賢者「えぇ。日頃頑張ってる魔法戦士君に…あ、チョコ嫌いだった?」

魔法戦士「いやいや、大好きだよ!」

賢者「良かったぁ。帰ったら食べてね、魔法戦士君!」

魔法戦士「~っ……」

賢者「魔法戦士君?」


魔法戦士(生きてて良かったぁ~……!!)ググッ


賢者「あのチョコ、E君達も美味しいって言ってたから、男の子の口にも合うと思うわよ~♪」

魔法戦士(ですよねー!! 他の奴らにも同じのやってますよねー!!)





>下宿


魔法戦士(つっても、先生から貰えたチョコに変わりはないし)

魔法戦士「手作りじゃなくて市販かー…って、これうちの田舎で1番の高級店のチョコじゃん。心して食おう!」

魔法戦士「ん、何か入ってる。……手紙?」


~~~~~~~~~~~~
魔法戦士君へ

騎士団で強く立派に成長できることを願っています。

先生より♪
~~~~~~~~~~~~


魔法戦士「………」


自分は約束した。
強く一人前の男になって、賢者を迎えに行くと――


魔法戦士(強く立派に成長して、迎えに来てくれる日を待ってますって、そんな先生!!)←※そんなこと書いてない

魔法戦士(一人前になるまで本命チョコはお預けってことだな! よっしゃ待ってろよ本命チョコ!!)←※そんなこと書いてない


ともあれ、魔法戦士にとっては幸せなバレンタインとなった。





一方その頃、賢者は――


賢者「お菓子屋さん見てたら目移りして、ついつい自分も食べたくなっちゃって…」パカッ

賢者「あぁ、美味しい~♪ 甘いもの食べてる時って幸せ~♪」

賢者「うぅ。でもブランデー入りのチョコは苦く感じるぅ~。舌だけは大人に戻りたーい」


1人楽しく、自分用チョコを嗜む独身アラサーであった。


Fin




あとがき

あれ…?魔法戦士ってこんなにアホだったっけ…? まぁ、恋は人を狂わせますから。
賢者が色々と残念な人なんだからしっかりしろ魔法戦士!
posted by ぽんざれす at 09:59| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月03日

介護ヘルパーシリーズ×節分

介護ヘルパーシリーズの節分スピンオフです。


今日はデイサービスでの節分。

ヘルパー「私は家で豆まきとかやらないけど、やっぱりお年寄りにとってはこういう行事は刺激になりますよね」

施設長「そうだねぇ、介護サービスを利用しているお年寄りは家からあまり出ないから、楽しみも減ってるしね」

ヘルパー「それじゃあ皆さん来られたようなので、行ってきます。鬼役、お願いしますね!」

施設長「はいはい。鬼のお面(防御力:紙装甲)を装備!」



ヘルパー「皆さーん、今日は節分ですねー! 歳の数だけ豆を食べましょうか~」

勇者「それは頭がおかしくなるよ~」

魔王「…ふふっ」

女騎士「19粒だ!!」

ヘルパー「というのは冗談で、今日は豆まきをしましょう! 皆さん、豆を配りますねー!」

施設長「がおー」

ヘルパー「きゃー、鬼が来ましたよー。豆をまいてやっつけましょうー!」

勇者「ほう」

女騎士「フッ…」

魔王「ふがー!」

施設長「…え?」


ズバババババババババ


施設長「」


女騎士「フッ、大した相手ではなかったな」

勇者「戦いの後は風呂に入りたいねぇ」

魔王「ふがー、ふがー!」


ヘルパー「大丈夫ですか施設長?」

施設長「フフ…うちの利用者さんは皆元気で…いいことではない、か…」ガクッ

ヘルパー「看護師さーん、来て下さーい!」


ヘルパーから利用者への暴力は大問題になるが、その逆はなあなあにされる! それが介護業界である!
数々の理不尽にいかに折り合いをつけるか、それが介護業界の人手不足を解決する為の課題なのではないだろうか!



おまけ

女騎士「こんなものを咥えろというのか、こんなに太くて黒いものを口いっぱいに…!!」

ヘルパー「あ、恵方巻き大きかった~? ごめんなさいね。喉つまったら困るし、切るね~」

女騎士「かたじけない」


おわり



あとがき
これは強豪相手に紙装甲で挑んだ施設長の自己責任ですねキッパリ
posted by ぽんざれす at 06:50| Comment(1) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月31日

【スピンオフ】魔道士「僕のお嫁さんを召喚するよ☆」

魔道士「僕のお嫁さんを召喚するよ☆」のスピンオフです。





魔道士「アッハァ~ン。町娘ちゃん見て見て、傑作が出来上がったよ!」

町娘「どうしたんですか、朝から晩まで仕事部屋にこもっていたと思ったら」

魔道士「大仕事を達成したのさァ! 見てよ町娘ちゃん、僕のチャーミーな発明品を☆」

魔道士さんがそう言うと、ドアの向こうからギシギシ音を立てて何かがやってきた。
手乗りサイズの木製人形だ。外見は小人さんのようで、可愛らしい。

町娘「動く人形が今回の依頼の品ですか?」

魔道士「甘い甘い、その考えはスウィートだよ町娘ちゃん! さぁ、その真価を発揮しなよ! ミラクル★イリューッジョンッ!!」

魔道士さんの掛け声で、人形の口がパカッと開いた。
そして――

ガタガタガタガタッ

町娘「ひいぃ!?」

口がガタガタ鳴りながら高速で開いたり閉じたりする姿は、かなりのホラーだ。

魔道士「驚くのはまだ早いよ!」スッ

町娘「それは昼のポテトサラダ…!」

魔道士「これを人形の口に突っ込んでッ!!」

ガタガタガタ…ピュッ

町娘「…」

魔道士「ハイッ☆ 見事、玉ねぎが分離されました。名付けて『玉ねぎ分離人形おにおん離んぐ』君!」

町娘「何の意味が?」

魔道士「依頼主さんは玉ねぎが嫌いなんだってさ~。だから、分離機★」キラーン

町娘「…魔道士さん」

魔道士「ン?」

町娘「偏食の片棒担ぐようなもの作るんじゃなああぁぁい!!」

魔道士「Oh!?」ビクゥッ





町娘(えーと、お客様用のお茶菓子は…)

魔道士さんは相変わらずの売れっ子魔道士で、ここの所ずっと忙しい。
収入は大分増えたことだろうけど、使う時間もない。まぁ、暇があるからって贅沢する魔道士さんじゃないのだけれど。

町娘「お茶をどうぞ」

客「どうも」

今日のお客様はどこかの町の町長さんらしい。
長い歴史を持つ魔道名家の当主だけあって、こういうお偉い方もお客様として来るのだ。

魔道士「ふむぅ…なかなか特殊な仕事だね」

町娘(今度はどんな仕事なのかしらねー)

お茶出しを終えて速やかに退室する。
まぁ町長さんからの依頼なら、この間みたいな変な依頼にならないと思うけれど。



魔道士「バーイ☆ この僕が依頼を受けたからには、最高の輝きをプレゼントするよ★」キラリン

1時間くらいしてお客様は帰っていった。

魔道士「町娘ちゃん。明日から1週間くらい家を空けるよ☆」

町娘「あら泊まり込みですか、珍しいですね」

魔道士「町長殿が作業場兼宿泊場所に空き家を貸してくれるんだ」

町娘「それは高待遇ですね」

魔道士「というわけで町娘ちゃん、その間は休みでいいよ。お家に帰ってあげたらどうかなぁ?」

町娘「そうですねぇ……」

叔父さん叔母さんの経営する食堂は、借金を返済してからは従業員を雇う余裕も出てきて、もうお手伝いの手はあまり必要としていない。
弟君もよくこっちに遊びに来るから、会えなくて寂しがっているということもないだろうけど…。

町娘(でも、私がこの家に残ってても仕方ないものね。汚す人もいないし……)

……汚す人?

魔道士「さーて、荷造りしなきゃ~♪」

これはまずい。

町娘「魔道士さん!」

魔道士「ン~? どうしたのかな町娘ちゃん」

町娘「私も行きます!」

魔道士「Why?」

魔道士さんは頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
そして何を思ったか、ニコッと笑う。

魔道士「もしかして寂しいのかな町娘ちゃん? 君がデレるなんて、今日はハッピーデーだね★」キラリーンキラキラ

町娘「……から」

魔道士「え?」

町娘「魔道士さんのことだから借りた家を汚すでしょ!! だから私もついて行くんです、わかりました!?」

魔道士「Ohhhh!?」ビクウウウゥゥッ





>町


町娘「ここがその宿泊場所…」

ごく普通の一軒家に見えるが、看板が建っている。
どうやら、こういう宿泊施設らしい。

魔道士「こういう施設なら掃除する人もいるだろうし……」

町娘「魔道士さんの汚し方は尋常じゃないんですよ!」

魔道士「町娘ちゃん…そんなに僕のお世話をしたいのかな☆」

町娘「何かおっしゃいました?」ゴゴゴ

魔道士「ゴメン★」

早速中に入って設備を確認する。
台所には調理道具が一通り揃っている。掃除用具も、ちゃんと物置き部屋に必要なものはあった。

町娘「でも食材はないみたいですね。近くに市場があったから買ってきますね」

魔道士「町娘ちゃんはしっかりしているから頼りになるよ〜。いい奥さんになれるね☆」

町娘「あらそうですかー。結婚式にはお呼びしますよ魔道士さん」

魔道士「町娘ちゃん…君は本当に男心を弄ぶ小悪魔ちゃんだね★」

町娘「そういうことばかり言っているとどうなるかわかってます?」

魔道士「ごめんなさい…僕を捨てないで下さい…」ドヨーン

町娘「そこまで落ち込まないで下さい! だから何で中間がないんですか!?」

その後、何とか魔道士さんを宥め、魔道士さんは仕事の為に部屋にこもった。
私は食材の買い出しの為、市場に向かうことにした。


町娘(それにしても、ここはお洒落なお店が多いなぁ)

市場に行くまでの通りには、外観が洒落た雑貨屋さんや衣装屋さんがあった。
私の育った町も大きかったけれど、こんなにお洒落ではなかった。

町娘(あ、あれ素敵だなぁ)

衣装屋さんのショーウィンドウにある服に目が行った。
紺色の上品なワンピースで、私好みのデザインだ。

町娘(あー、でも高いなぁ。着て行く場所もないし、見るだけにしておこう)

自由になるお金はあるけれど、節約精神はきっちり身に付いていた。無駄遣いは敵である。

町娘(着てどこかに行くシチュエーションがあるのなら、無駄にはならないんだけどね)

一日中仕事をして、息抜きと言えば本やおやつ。休日も弟の相手をするとかお昼寝をするとか、そういう生活なのでお洒落な服は必要としていない。

町娘(って、私の生活かなり所帯染みてない?)

同年代の女の子達はお洒落をして、友達や恋人と色んな所に遊びに行くのだろう。
私には一緒に遊びに行く程仲のいい友達はいない。
恋人、は…。

町娘(魔道士さんは恋人未満。ていうか友達でもないし。一緒に遊びに行くか、というと…)

魔道士さんは毎日仕事で部屋にこもっている。
必要な用事以外で出掛けるとしたら、せいぜい風景画を描きに行くくらいか。

町娘(うん、やっぱり服はいらないわね)

すっぱり諦めて、私はそのまま市場へ向かった。





魔道士「イヤァ、ここでも町娘ちゃんのご飯が食べられるなんて幸せだなぁ~」

町娘「この町、外食屋さんも充実していましたよ。もし外で食べられるようなら、言って下さいね」

魔道士「ウゥン、外食屋さんは苦手なんだよねぇ」

町娘「そうなんですか」

そう言えば私が休みの時も外食している様子はない。
事前に私が作り置きしたものか、本人曰く激マズの魔法非常食を食べているらしかった。

町娘「外食嫌いだと、ますます出不精にな」

魔道士「デブ症!?」ガタッ

町娘「そんなこと言ってませんよ!?」

町娘(『デブ』に過敏な反応しすぎでしょ)

魔道士「外食屋さん以外もお店屋さんが充実していたでしょ。手が空いたら、好きに見ておいでよ★」

町娘「ちらっと見てきましたけど、欲しいものは無くて」

魔道士「服とかアクセサリーも?」

町娘「着て行く所がないので、必要ないですねぇ」

魔道士「ナルホド。町娘ちゃんのことがまた一つわかったよ☆」

町娘「…」

町娘(『一緒に出掛けよう』とかはないんだ)モヤッ

魔道士「? どうかした?」

町娘「いえ、別に」

町娘(って、これじゃあ魔道士さんとデートしたいみたいじゃない。どこ行くってのよ)


例えば買い物デート

魔道士「あれもいいね、これもプリティーだね」

町娘「物を増やしたら掃除の手間が増えるので」

魔道士「じゃあ必要なものを買おうか」

町娘「食材と洗剤とあとは」

これだとただの買い出しだ。


じゃあピクニック

魔道士「お弁当美味しいなぁ」

町娘「綺麗なお花が咲いてますよ魔道士さん」

魔道士「お花は家の周りに咲いているからねぇ」

そうだ。自然に囲まれた家に住んでるからか、魔道士さんはあまり自然に興味ないんだ。


それじゃあ観劇?

魔道士「おぉ月よ、僕らを照らしておくれ。彼女の姿が暗闇に溶けてしまえは、僕の心は潤いを失ってしまう…」キラキラ

影響されそうで鬱陶しい。却下。


魔道士「どうしたの町娘ちゃん、何か考え込んでる?」

町娘「いえ。魔道士さんは、今の生活がベストみたいだなって」

魔道士「? そう」

町娘(私も出不精だもんね。だから今のままで、一日中家に…)ハッ

町娘(…一日中一緒?)

魔道士「そうだねぇ、今の生活が最高かな」

町娘「そ、そういうつもりじゃなあぁい!!」

魔道士「What!?」





朝は最初に朝食の用意をする。魔道士さんは起きる時間が不規則なので、大体8時くらいに用意すると決めている。寝坊した場合は起こしに行く。

魔道士「チャオ☆ 今日もいい天気だね!」

町娘「今日は寝坊しませんでしたね」

魔道士「町の喧騒が目覚めの呼び声となったのさ、アハーン」

町娘「森と違って賑やかですからね」

食後、魔道士さんは仕事に戻るので、食後の後片付けと掃除、ベッドメイクをする。
今日は時間に余裕があるので、洗濯もしてしまおう。

町娘(やっぱりカゴに下着入ってないわね)

洗って物干しして、昼食を準備する。
魔道士さんはお昼を簡単に済ませて早く仕事に戻りたい人なので、品数は沢山は出さない。

魔道士「ご馳走様、美味しかったよ」

町娘「ちゃんと歯磨きして下さいね」

魔道士「仕事がいい所だから、歯磨きの時間も惜しいよ」

町娘「不潔な人は嫌いだなぁ」ボソ

魔道士「磨いてきまーす★」

町娘「よし」

後片付けをして、買い出しに行く。

町娘(あ、お肉が安い。昨日買った野菜と合わせれば、カレーもできるし肉じゃがもできるし)

帰ってきて夕飯を作り、夕飯後は後片付けをしてお風呂の準備をする。
お風呂にお湯を溜めてタオルと着替え(ただし下着は触らせてくれないので除く)をセットしたら、仕事中の魔道士さんを呼びに行く。

町娘「魔道士さん、お風呂の準備できましたよ」

魔道士「アハァン、今すっごくいい所なんだ! 町娘ちゃん、先に入ってて」

町娘「キリのいい所で止めて下さいね」

無精者の魔道士さんはお風呂に入らないこともある。
毎日お風呂に入るかどうかは人それぞれなので、それに関しては構わない。だけどお風呂をきっかけにでもしないと魔道士さんはノンストップで働き続けてしまうので、なるべく毎日お風呂の準備はしている。

町娘「ふぅー」

全ての仕事を片付けてから、お風呂で1日をしめくくる。
来客対応や魔道士さんのお手伝いをすることもあるが、大体これが毎日の仕事である。

魔道士「今日もお疲れ様☆ 僕も今からお風呂頂くね〜♪」

町娘「はーい」

雑誌を読んでいたところで、魔道士さんが声をかけてきた。毎日労いの言葉をくれる、こういう所はマメな人だ。

町娘(そういうのは結構嬉しいのよね)

町娘(ん、なになに。“奥さんの旦那さんへの不満特集。多く寄せられたのは『感謝の言葉をくれない』”)

町娘「…」

町娘(って、あくまで夫婦の話だから! 魔道士さんが良き夫とか、そういうんじゃないから!!)





町娘(それにしても、こっち来てからも生活はあまり変わってないわね)

買い出しの帰り道、ふとそんなことを考えた。
この生活習慣なら、どこで生活しても同じかもしれない。

町娘(それにしても、やっぱりここの通りはカップルが多いなぁ)


彼氏「あの服、君に似合いそうだね。プレゼントしたら着てくれる?」

彼女「えー、そんなの悪いよ」


町娘(あら仲の良さそうなカップル)

そのカップルは、前に私がショーウィンドウで見ていた服を見ていた。


彼氏「悪くないよ、俺が君に着てもらいたいんだから」

彼女「似合わないかもしれないよ」

彼氏「まずは着てみようよ。俺、君がお洒落してますます可愛くなった所が見たいなぁ」

彼女「もー、彼氏くんたら」


町娘(よくスラスラそんな言葉が出てくるなぁ。本当に思っているから出てくるんだろうな)

町娘(そう言えば私、着古した質素な服しか持ってないけど…)

町娘(魔道士さんは私の格好に興味ないのかしら)モヤッ

町娘(って何考えてるんだって!! もー、カップルにあてられて変なこと考えちゃった! 早く帰ろう!)


町娘「只今戻りました」

魔道士「お帰り町娘ちゃん。ちょっと僕は出掛けてくるね」

町娘「わかりました」

魔道士さんは手にスケッチブックを持っている。
仕事の小休止に絵を描きに行くのだろうか。

町娘(息抜きも『一緒に行こう』とかはないんだ)モヤッ

町娘(まぁ、絵を描くのに私がいても邪魔か)

魔道士「夕飯までには帰るね〜♪」

町娘「はい」

町娘(余計なこと考えないで、仕事仕事!)





魔道士「アハァ〜ン★ 帰ってきたらいい匂い☆」

町娘「お帰りなさい」

魔道士さんは丁度、夕飯ができた頃に帰ってきた。
ちゃんとうがいと手洗いを済ませて貰ってから、食事を提供した。

町娘「いい絵は描けました?」

魔道士「うん♪ これで仕事がはかどるよ」

町娘(絵と仕事に関係が?)

魔道士「それにしても、この町はカップルが多いねぇ。あてられてアチャチャーだよ」

町娘「お洒落なお店が多いですからね。魔道士さんは行かないんですか?」

魔道士「仕事で来てるからね、あまり寄り道はしていられないかな」

町娘「…そうですか」

町娘(そうよね、遊びに来たわけじゃないからね)

魔道士「さーて、仕事もラストスパート頑張るかな☆」

町娘「頑張って下さい」

町娘(仕事が終わったら真っ直ぐ帰るのよね)

町娘(…まぁ、仕方ないか)

遊びに行きたい、というわけじゃない。
遊びに行ってもすることがないのはわかっている。

でも、ここまで何もないと、何というか…。

町娘(魔道士さんは、今は私のことどう思っているんだろう)

そんなことを考えてしまう。

好きだ、と言われたことはある。
だけどその後は特に変わっていない。
魔道士さんは根は恥ずかしがり屋だから、ってのはわかっているのだけどーー

町娘「…うー」

町娘(何で魔道士さんのことで頭を悩ませないといけないのよっ!!)

もやもやしていた。




そして最終日。
今日の昼食におにぎりを持たせて欲しいと言われたので作って渡し、魔道士さんは朝から夕方まで帰ってこなかった。

町娘(夕飯には帰ってくるかしら)

いつでも温め直して出せるよう、今日のメニューはカレーだ。

町娘(明日の朝には家に戻るって言ってたし、この借家で過ごす夜も最後か)

町娘(…何か、味気なかったなぁ)

勝手に着いて来たのは自分。だから不満に思ってはいけないのだけれど。

町娘(…どうしたのよ、私らしくもない)

魔道士「只今のチャオ〜☆」

町娘「わわっ!? ま、魔道士さん、お帰りなさい…」

魔道士「驚かせちゃってソーリー★ お仕事、終わらせてきたよ☆」

町娘「そうですか、お疲れ様です」

魔道士「あぁ、いい匂いだ。帰ったら町娘ちゃんが料理して待っててくれているって、安心するなぁ♪」

町娘「えぇ、いつも通りですよ」

町娘(いつも通り…たまには違ってもいいのに)

魔道士「町娘ちゃん、お腹ペコペコ?」

町娘「お腹ですか? いえ、そこまででも…」

魔道士「そう。それじゃあちょっと、出掛けない?」

町娘「…えっ?」





魔道士さんに連れられてやって来たのは、町全体を見渡せる丘の公園だった。
もう薄暗くて、公園には人が少ない。

魔道士「ゴメンねー、急に連れ出しちゃって」

町娘「いえ…それより、ここで何をするんですか?」

魔道士「とっておきの魔法だよ、アハーン♪」

町娘「…?」

魔道士さんは時計を見た。時間を気にしているのだろうか。

魔道士「そろそろだ。カウントダウン、10、9、8…」

町娘「?」

魔道士「3、2、1…ハイッ!」

町娘「――!!」

カウントが終わったと同時、町全体が光を放った。
暗くなってきた町に色とりどりの光が映え、まるで星が地面に降りてきたかのようで、とても――

町娘「綺麗…」

魔道士「気に入って貰えて良かったよ、アハーン♪」

町娘「もしかして、魔道士さんの今回のお仕事って…」

魔道士「そ。この町でお祭りが近いからね、イルミネーション作りさ★」

家にこもって発光する飾りを作り、今日は夜まで飾りつけをしていたということか。

町娘「魔道士さんのことだから、飾りつけにこだわったでしょう」

魔道士「わかる? 町全体をスケッチして、どう飾ろうかとっても悩んだよ☆」

町娘「あ、その為のスケッチだったんですね」

仕事がはかどると言っていた意味がようやくわかった。
魔道士さんは芸術に関する仕事が大好きだから、スケッチを見ながら飾りつけの配置を考えたのだろう。
確かに町全体のイルミネーションを見れば、配色のバランスが良く、魔道士さんのセンスの良さが出ている。

町娘「きっと、沢山の人が喜ぶでしょうね」

魔道士「アハーン♪ それだと僕も嬉しいな★」

町娘(魔道士さんはこんな大仕事を抱えていたのに。私、くだらないことでもやもやしてたわね)

魔道士「あっ」

町娘「どうされました?」

魔道士「今思ったんだけど、この状況って…デートみたいじゃない?☆」

町娘「」

町娘「そ、そ、そんなわけっ!!」

魔道士「そっかぁ。『この仕事が済んだら町娘ちゃんとデートできるぞー』って、僕は楽しみにしてたんだけどなァ」

町娘「~~っ…」

魔道士さんは私の心を読んでいたのか。
ここ数日、私がもやもやしていたものをどうして…。

町娘「…男の人が考えるサプライズは、あまり女性に好まれないって雑誌に書いてありましたよ」

魔道士「Oh?」

町娘「そういうのはサプライズにしないで、事前に言っておいて下さい。…不安になるから」

魔道士「そっかぁ~…僕ってダメだなぁ」シュン

町娘「あ、いえっ、ダメとかじゃ…」

魔道士「…知っての通り、僕は根っこはダサい男だからさ。そういうの、わからないんだ」

町娘「あっ」

しまった。こちらがもやもやしていたからと、魔道士さんのコンプレックスを突いてしまったようだ。

町娘「ま、魔道士さん、でも私、このデートは嬉しいですよ!」

町娘(…って)

町娘(デートって言っちゃったああぁぁ!!)

魔道士「…ほんとに?」

町娘「えっ!? あ、その、えーと」

魔道士「町娘ちゃんがイヤじゃないならいいんだ。そっか、安心したよ」ニコニコ

町娘「…」

町娘(そりゃデートってのは口を滑らせて出た言葉だけどっっ!! 全く気付かないのもどうなのよ!!)

魔道士「アハァン、町娘ちゃん。良かったら教えてくれないかな」

町娘「な、何を?」

魔道士「僕はどう振る舞えば格好いいのか。町娘ちゃんの前では、ダサい僕でいたくないからさ」

町娘「…」

本当、こういう時は弱気なんだから。

町娘「…もっと私に要求してもいいんですよ」

魔道士「要求? ご飯のリクエストとか?」

町娘「違いますよ。…もっと可愛い格好して、とか……」

魔道士「Uh?」

魔道士さんはピンときてないようだ。

魔道士「町娘ちゃんは、もう充分すぎる位……。僕には、町娘ちゃんが……」

町娘「えっ?」

魔道士「~~っ…」

魔道士さんの顔は真っ赤になっていて…。

魔道士「ゴメン! やっぱ言えない!!」

町娘「ちょっと魔道士さん!? どう振る舞えばいいかって言ってたでしょ、言って下さいよ!」

魔道士「無理! ゴメン! 格好よくなるには時間かかる!」

町娘「待ちなさーい!」

不器用な私、シャイな魔道士さん。
この関係が進展するのは時間がかかりそうだけど――

町娘「待ってますからね! その言葉の続き!」


Fin





あとがき

魔王城執政官(見習い)様より、チャオさん達の日常ということで。
このカップルは不器用ですね~。そこがまたいいんですけどね。

ところで読者様から見ればどうでもいいことかもしれませんが、チャオさんが1回しかチャオって言ってない!( ゚Д゚)クワッ
posted by ぽんざれす at 18:23| Comment(2) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月28日

【スピンオフ】姫「魔王子との政略結婚」

姫「魔王子との政略結婚」(1/3) (2/3) (3/3)のスピンオフです





魔王子「イエエェェイッ、エクストリイイィィムッ!」ズザザザアァァッ

姫「ふふ。魔王子様、楽しまれていますね」

魔王子「だぁ~ってホラ、雪だよホラ!! うっひょおおぉぉ、テンションMAXだぜぇ!」ザックザック


季節は冬。
魔王子と姫は雪降る街へと旅行にやって来た。

魔王子「いよーっし、でっかい雪だるま作っちゃうもんねー!!」

姫(元気ねぇ)フフ

最近忙しかった魔王子は、久々の休日に物凄くハシャいでいた。

魔王子「できたっ!」

姫「まぁ大きい」

魔王子が作った雪だるまを見上げる。
かなり体を鍛えている魔王子だからこそ作れた、巨大雪だるまだ。

魔王子「フッフッフ。姫様~、見ててくれよ」

姫「?」

魔王子「魔王子エクストリームクラッシャー!!」ズゴオオオォォン

そしてその雪だるまは、魔王子の一擊によって粉砕された。

魔王子「この一擊、どうよ!」

姫「魔王子様はお強いですね!」

魔王子「こんな俺、どうよ!」

姫「素敵ですっ!」

魔王子「姫様ぁーっ!」ギュウッ

抱き合う夫婦。冷風も2人の周囲を冷やすことはできない。
その愛に満ち溢れた姿は、誰の目から見ても――

モブ「馬鹿だ」





姫「ふぅ、ふぅ…」

魔王子(寒さに身を震わせながらココアをフーフーする姫様も可愛いなぁ)

姫「ここはウインタースポーツが盛んみたいですねぇ」

雪山では観光客達がボードに乗って遊んでいる。
そういう遊びがあるのは知っていたが、箱入り娘の姫には馴染みのない遊びだ。

姫「魔王子様、ウインタースポーツのご経験は?」

魔王子「達人クラスよ。見てろよー!」ダダッ

姫「頑張って魔王子様ーっ!」


魔王子「ほれーいっ!」ザザーッ

姫「わぁ~、お上手!」


魔王子「でりゃーっ!」ジャーンプ

姫「まぁ凄い!」


魔王子「ほらよっとぉ!」クルンッ

姫「きゃー、素敵ぃ!」


姫「凄いですねぇ魔王子様」ニコニコ

魔王子「…あの、姫様」

姫「はい?」

魔王子「俺が滑ってるの見てるだけじゃ、つまんなくない?」

姫「いいえ? 魔王子様の素敵なお姿をずっと見ていられるんですもの、退屈なんてしません」

魔王子「」

魔王子「うらあああぁぁぁぁ!!」ズザザザザザアアアァァァァ

姫「魔王子様!? どこへ行かれるんですか!?」

魔王子(ニヤケが止まらねえぇ!! こんな気持ち悪いツラ、姫様に見せられるかああぁぁぁ!!)ズザザザザザアアアアァァァァァ

ズザザー…

魔王子「姫様、一緒に遊ぼう」キリッ

姫「どんな遊びでしょうか?」

魔王子「それは……」



姫「こ、怖いですね」ブルブル

魔王子「大丈夫大丈夫。坂もゆるいし、そんなにスピード出ないから」

姫と魔王子は2人でそりに乗り込んだ。
魔王子は平気だと言うが、坂を滑るなんて、経験のない姫には怖い。

魔王子「じゃ、行くよ」

姫「まま、待って下さい!」

魔王子「ん」

姫「……」ドキドキ

魔王子「……」

姫「い、いいですよ」

魔王子「それじゃ…」

姫「や、やっぱり待ってえぇ!」バタバタ

魔王子(可愛い)


そんなこんなで10分後…


姫「い、い、いいですよ!」

魔王子「ほんとにー?」

姫「ほ、ほんとにっ! 行きましょう、魔王子様っ!」

魔王子「そいじゃ」

そう言って魔王子は地面を思い切り蹴った。
そりはその勢いで動き、坂道の斜面を滑り始め……

姫「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

魔王子(そ、そこまで!?)

姫「いやあああぁぁ、きゃあ、きゃあああぁ、ひゃああぁぁぁぁ」

魔王子「大丈夫だから、姫様、大丈夫だから!」

姫「いやぁ、いやぁ、きゃあああぁぁ、いやああああああぁぁぁぁぁぁ」

魔王子(聞こえてねぇ)

ザザー…

姫「」ドキドキ

魔王子「お、終わったね?」

姫「」ドキドキ

魔王子「姫様ぁ?」

姫「ふぅ、ふぅ…」ドキドキ

魔王子「ご、ごめんな? もうやめようか?」

姫「も……」

魔王子「も?」

姫「もう1回……」

魔王子(マジで!?)


姫「きゃああぁっ、きゃあっ、きゃあああああぁぁっ」

魔王子(…やっぱコレ、悲鳴だよな?)


魔王子(と、こんな感じで30回くらい滑った)

姫「ふぅふぅ…楽しいですね、魔王子様」

魔王子「こ、怖くない?」

姫「怖いから楽しいんですよ!」キラキラ

魔王子「あー…まぁ、そうだな」

姫「それに…」

魔王子「それに?」

姫「魔王子様が後ろからぎゅっとしてくれるから…安心できるんです」

魔王子「」

魔王子「うああああぁぁぁ!!」ズボオォッ

姫「ど、どうされたんですか魔王子様!? 雪山に顔を突っ込んで!?」

魔王子(言われたら意識しちゃうッ!! 顔があっちぃよおおぉぉ!!)ジタバタ





魔王子「あー楽しかった」

姫「雪の降る地方は、陽の落ちるのが早いですねぇ」

魔王子「宿屋に戻るか。行こう、姫様」スッ

姫「はい」

魔王子が差し出した手を取る。
手袋越しで体温はわからないけど、大きな手は包み込むようで安心できる。

姫(寒くてもポカポカだなぁ)

魔王子「姫様、雪道あんま歩いたことないんだっけ?」

姫「はい。旅行で雪のある地方へ行くことはありましたが、ほとんど室内にいたもので…」

魔王子「本当に箱入りのお姫様だなぁ。もー、守ってあげたくなっちゃう」

姫「ふふ、魔王子様った――……」

魔王子「!?」

体が傾いた。凍った道で足を滑らせたのだ――と気付いた時には遅い。

どすんっ

姫「~っ……」

魔王子「うぬー……」バタンキュー

姫「ま、魔王子様!?」

転んだ…と思ったら、何故か魔王子が下敷きになっていた。

姫(わ、私を庇って!)

姫「ご、ごめんなさい魔王子様! お怪我はありませんか!」

魔王子「はは、平気だよ。姫様は軽いしさ」

姫「でも…」

魔王子「気にするなって」

魔王子は姫の頭に手を置いて、ニッと笑った。

魔王子「守るって言ったじゃん?」

姫「魔王子様……」

魔王子「にひっ」

見つめ合う2人。街灯が照らす氷の舞台。
いつでも互いを思いやり、慈しみ合う、そんな2人が見せる夫婦の形は――

モブ「どいたどいた! 道の真ん中でボーッとしてんな!」

魔王子「わわっ、わりっ! 姫様、行こう!」

姫「は、は、はい!」





魔王子「ふぅー…」

宿屋に着くなり、魔王子は上着を脱いで布団に倒れ込んだ。
取った宿は王族御用達のVIPルーム…ではなく、ごく普通の宿だ。

姫「和製仕様とは、趣がありますねぇ」

姫にとっては、こういう質素な場所は新鮮で面白かったりする。
お忍びでなければ、絶対に泊まれなかった宿だろう。

魔王子「独身の頃はさ~、勝手に城を飛び出してこういう所に泊まったりしてたよ」

魔王子はケラケラ笑った。
独身の頃の彼はかなりの放蕩王子だったと聞いたことがある。
思えば結婚前の顔合わせの日も、顔合わせを忘れて遊びに行っていた程だ。自分の秘密基地を持っていた子供時代から、かなりのやんちゃ者だったのだろうと思う。

姫(でも…)

魔王子は大分落ち着いた、と城の者に言われている。
問題行動はしばしばあるが、それでも公務には真面目に取り組んでいるし、剣の鍛錬もサボらずに行っている。

姫(今日は魔王子様にとっては久しぶりの、お忍び旅行だものね。解放されたような気分だろうなぁ)

魔王子「見て見て姫様。お布団いもむし~」ゴロン

姫「まぁ魔王子様ったら」フフ

姫(はっ。お義父様に『あまり魔王子を甘やかさないように』って言われてたんだったわ!)

魔王子「い~も~む~し~、う~にうに~」

姫(ここは、心を鬼にして…)グッ

姫「魔王子様!」

魔王子「ん? どしたの?」

姫「お布団は、お風呂で体を綺麗にしてからです!」

魔王子「あー、そっか。そうだったな!」

姫(わかってくれたわ)ホッ



魔王「今、不意に突っ込み不在の恐怖を感じた」

側近「魔王様は気が高ぶっているのでしょう」



姫「ここのお宿は、お部屋付き露天風呂があるんでしたね」

魔王子「姫様、先いいよ」

姫「いえ。運動をしてお疲れでしょうし、魔王子様がお先にどうぞ」

魔王子「…ほんとにいいの?」

姫「はい。私はもう少し体を休めていますので」

魔王子「そっか。悪いね、それじゃあお先」

姫「………」



魔王子「ふぅ~」

魔王子(今日は楽しかったなぁ)

こんなに自由な日を過ごしたのは久しぶりだ。
公務で溜めていたストレスを、綺麗さっぱり吹っ飛ばせた。

魔王子(まさかこの俺が、こんなに真面目になるとはなぁ)

独身時代の自分には考えられないことだ。あの頃はよく公務をサボって遊びに行って、父親に叱られていたものだ。
きっと自分の性分は死ぬまで変わらない…そう思っていたのだけれど。

魔王子(やっぱ…俺がちゃんとしないと、姫様に苦労かけるしなぁ)

人間と魔物の間に今より壁があった頃嫁いできた姫は、きっと国に馴染むだけで苦労したことだろう。
それに嫁いできた直後に事件もあったし、それで大分心労もかかったと思う。
にも関わらず姫は自分を支えようとしてくれるし、当たり前のように尽くしてくれる。

魔王子(いい奥さんだよなぁ…俺には勿体無いくらい)

可愛らしくて、控えめで、品があって、けど芯が強い所もあって…夫の贔屓目にしても、良い所ばかりの妻である。
だから、こんな欠点だらけの自分には勿体無い…と時々思うのだけれど。

魔王子(でも姫様は絶対に手放さないもんね! 俺の力で姫様を幸せにするんだ!)

姫を幸せにする為の公務だと思えば、苦にもならなかった。

魔王子(よぉーし! リフレッシュしたら、また頑張りますかっ!)

姫「魔王子様」ガラガラ

魔王子「」

思考停止。

魔王子「ひ、ひ、姫様?」

姫「あのぅ…」モジモジ

姫はバスタオル1枚だけ巻いて、露天風呂に出てきたのである。

姫「ご一緒しても…よろしいでしょうか?」

魔王子「え、えーと……」タジタジ

姫「…へくしゅっ」

魔王子「あ、か、風邪ひいちゃうね! とりあえず入って!」

姫「では……」チャポン

魔王子「……」ドキドキ

姫「……」ドキドキ

魔王子(って、奥さんと風呂入ってるだけじゃねぇか!! 何緊張してるんだよ、俺っ!!)

姫「あのぅ、魔王子様…」

魔王子「は、はいっ!?」

姫「月が綺麗で」

魔王子「ストオオオォォップ!!」

姫「えっ?」

魔王子(うわああぁぁ!! それ位で照れてるんじゃねぇ、俺えええぇぇ!!)バシャーン

姫「大変、魔王子様が溺れてしまったわ!! 助けないと!!」

魔王子「だだ、大丈夫っ!!」ゼーハーゼーハー

姫「……?」

魔王子(タオル1枚の姫様に触られたら、俺マジで死にかねんから!!)

魔王子「……」ドキドキ

姫「……」

姫「ねぇ魔王子様」

魔王子「は、はい?」

姫「今日はとても楽しかったです。また、どこかに連れて行って欲しいな、って」

魔王子「そ、そうだな。楽しい所は沢山知ってるし、また休みが取れたら行こうか」

姫「えぇ。魔王子様といると、どこでも楽しいです」

魔王子「そっか。思い出、一杯作ろうな」

姫「はい。作りましょうね……家族での思い出を、沢山」

魔王子「うん。家族の……」

――ん?

魔王子(『家族』。俺と姫様は『夫婦』。『家族で』ってことは、俺と姫様プラス――……)

魔王子「」

姫「魔王子様?」

魔王子「うわあああぁぁぁぁ」バシャバシャッ

姫「魔王子様ぁーっ、どこへ行かれるんですか!?」



魔王子(これが成人済みの既婚者の反応かああぁぁ!! ヘタレ、このヘタレッ!!)ベシベシ

急いで寝巻きを羽織った魔王子は布団の上で悶絶していた。

姫「魔王子様、具合が悪いのですか?」

追いかけるように姫が来た。勿論、服はちゃんと着ている。

魔王子「ハハ、大丈夫だよ……」ドキドキ

風呂から上がり、ちょっとは冷静さを取り戻した。

魔王子(でも、そうだよなぁ…姫様も、新しい家族が欲しいよなぁ)

姫「?」

一応、夫婦生活はそれなりにある。勿論この魔王子のことなので、毎回極度の緊張に陥るわけだが。

魔王子(まぁ、まだ結婚して1年ちょいだし、授かりもんだとしか思ってなかったけど……)

魔王子(増やさなきゃ、駄目かな? 回数……)

魔王子「ウゥーン……」

姫「魔王子様? どうされたんですか?」

魔王子「姫様、ごめん!」バッ

姫「え? え?」

突然頭を下げたことに、姫は戸惑っているようだ。
だけど――魔王子は決心した。

魔王子「俺は――姫様を愛している!」

姫「――っ!」

魔王子「この気持ちに嘘偽りはない! だけど、その気持ちが大きすぎて…駄目なんだ、俺」

姫「え…っ?」

魔王子「姫様は何よりも大事で、尊い存在だから――」

いざという時に勇気が無くなる。
手を出すのが怖くなる。
心はこんなにも、情熱的に燃え上がっているのに――

魔王子「けど頑張るから、俺! ちゃんと『父親』になる覚悟も決める!」

姫「魔王子様……」

魔王子「だからっ、その――……」

魔王子「……」

魔王子(だあああぁぁ、何で夜の話に言及しようとすると言葉が出ないんだ、俺ええぇぇ!!)

姫「あのぅ、魔王子様」

魔王子「ハイッ!!」ビシィ

姫「すみません、魔王子様がそこまで考えていらっしゃるとは存じませんで……」

魔王子「……え?」

姫「やはり世継ぎ問題もありますし、お急ぎですよね…。悠長に考えていました、すみません」

魔王子「……あー、世継ぎ問題ね」

姫「え?」

魔王子「え?」

………

魔王子「あー…ちょっと噛み合ってないみたいだから、状況を整理しよう」





魔王子「えーとつまり、俺の早とちりってわけね」

発端は姫の言った「家族で」との言葉だったが、姫はそういうつもりではなかったらしく。

姫「すみません、紛らわしい言い方をして」

魔王子「いやー…まさか『家族』が親父のこととはね…アハハ……」

あの堅物親父と一緒に遊びに行くなんて考えもしなかった。
奥さんの方が、ちゃんと義父のことを考えているとは。これは参った。

姫「あ、で、でも」

魔王子「んー?」

姫「子供は沢山欲しいですね!」

魔王子(姫様の方がずっと決意できてるよ……)


魔王子「ま…とりあえず安心したら眠くなってきた。今日はもう寝ようか」

姫「そうですね」

灯りを消す。瞼が重くなりゴソゴソと――ゴソゴソ?

魔王子「ってええぇ姫様ぁ!?」

姫「寒いので一緒に寝たいなって…駄目ですか?」

魔王子「駄目じゃ…ない……」

姫「ふふ、良かったぁ♪」

姫は魔王子にぴったりくっつく。
寝づらくないだろうか…と思ったが、すぐにすぅすぅ寝息が聞こえてきた。

魔王子(姫様って積極的なのか、天然なのか……)

安心しきったような寝顔が愛おしい。
自分の側にいることで安心感を覚えてくれているようで、それが「愛されている」って実感になって――

魔王子(……)

魔王子(俺が寝れねぇ!!)ドキドキドキ


新しい家族を迎えられるのは…もっともっと、先になりそうだ。


Fin




魔王城執政官(見習い)様よりリクエスト、魔王子と姫の日常でした(´∀`*)
結婚して結構たつのに、今だにヘタレるって魔王子お前…w
しかしバカップルぶりが加速してて、魔王の言う通りツッコミ不在の恐怖でした。地の文でツッコみたい衝動に何度も耐えました(`・ω・´)
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2015年12月26日

【スピンオフ】奴隷少女「私を、守って下さい…」執事「それが貴方の願いならば」

奴隷少女「私を、守って下さい…」執事「それが貴方の願いならば」のスピンオフです。





ここは天界から繋がる異世界に存在する屋敷。
今日もいつも通り、主人と使用人によるティータイムが始まろうとしていた。

執事「お嬢様、本日のおやつで御座います」

媛「今日のおやつは…わぁ~、チョコレートケーキですね!」

犬男「それもチョコレートケーキの王様、ザッハトルテだぜ」

猿少年「いただきまーす!!」バクバク

雉娘「猿~、そんな食べ方する奴初めて見たわよ」

媛(えっ。…見てなかった)

媛(食べ方、ってあるの? 横に生クリームが添えてあるけど…)

媛(ケーキをクリームにつけて食べるの? それともケーキとクリームを交互に食べる? それとも…)

媛「…………」

執事「…? 召し上がらないのですか、お嬢様」

媛「い、いえ、食べます! どうぞ皆さんも召し上がって下さい!」

執事「では」

雉娘「口の中でとろけて甘~い♪」

犬男「執事も腕上げたなぁ」

媛「…………」ジー

媛(執事さんはケーキを生クリームにつけて、犬さんはコーヒーにクリームを入れて、雉さんはクリームに手をつけてない…)

執事「…お嬢様?」

媛「…ぐすっ」

執事「!?」

媛「食べ方が、わからないです…」グスグス

猿少年「だ、大丈夫だから! うるさいマナーとか何もないから!」

雉娘「すっごく甘いケーキだから、無糖の生クリームで好きに味を調整して食べればいいの! 私はほら、甘いの好きだからつけてないだけ!」

執事「お嬢様、ハンカチを」スッ

媛「はい…」グスッ

雉娘「犬、あんたがややこしいことしたせいだからね」ボソッ

犬男「……俺かよ」

天女の記憶もやや朧げで、優雅な風習に今だ慣れぬ媛にはこういった困難(?)もあったが、使用人みんなと過ごす時間を楽しんでいた。





執事「買い出しに行って参ります。この買い物メモ以外に必要なものはありますか」

犬男「えーと。あ、バニラエッセンスとドライフルーツがあと少しだから買ってきてくれ」

媛(一緒に行きたいけど…買い出し先は天界だもんね、私は行かない方が良さそう)

犬男「そーいや、お嬢様は何か食いたいもんあるか?」

媛「わ、私ですか?」

犬男「遠慮せず言ってくれ。何でも作れるぜ」

媛「そ、そのー…」

執事「?」

媛「あのぅ…サツマイモの味が懐かしいな、って」

執事「かしこまりました、買って参ります」

犬男「サツマイモ好きだったのか」

媛「ま、まぁ」

ちょっと嘘。奴隷時代に散々食べてきたものだ。
だけど屋敷に来てからご馳走続きで、舌がサツマイモを懐かしがってきたというか…。

媛「そう言えば天女の子孫の件は今、どうなっているんでしょう」

天界に来て半年。だが天界から隔離された世界にずっといた為、世論のことは全く耳に入らない生活だった。
久々に地上のことを思い出したのがきっかけで、魔王がいそしんでいるその件についてもふと思い出した。

執事「あの魔王のことです、上手くやっているのではないでしょうか」

執事はあからさまに態度には出さないが、その件に触れたくない様子だ。地上の件には関わりたくない、というのが本音なのだろう。

犬男「でも俺も気になるな。買い出しのついでに話を聞いてきてくれよ執事」

執事「犬。余計なことに首を…」

媛「わ、私からもお願いします執事さん…」

執事「…かしこまりました」

執事は媛のお願いには弱い。何せ媛はお願いする時に申し訳なさそうな気弱さが前面に出ていて、断るのに罪悪感を要するのである。

媛「ありがとうございます執事さん」ニコッ

執事「いえ」

その上、この極上の笑顔。これは断われという方が無理だ…と、執事は心の中で苦笑した。





猿少年「ウキー。庭の木から桃をもいできたよー」

雉娘「あらぁ美味しそう」

媛「このまま食べても美味しいですけど、犬さんはおやつを作ったりするんですか?」

犬男「あぁ。桃団子を作るぜ」

猿少年「何か執事が『貴方がた3人と桃の組み合わせを見たら団子が食べたくなりますね』とか、わけのわからないことを言ってたんだよな」

媛「げん担ぎでしょうかね??」


執事「只今戻りました」

犬男「お、帰ってきた。焼き芋の準備しとくか」

媛「執事さぁーん」トタトタ

雉娘「おやぁお嬢様ったら急いじゃってぇ、ほんっとーに執事が好きねぇ」

猿少年「あはは。いい奥さんになるよね」


媛「執事さん、お帰りなさい!」

執事「お嬢様…わざわざお出迎え、ありがとうございます。何か変わったことは御座いませんでしたか?」

媛「特には。それより執事さん、重いでしょう。半分持ちますよ」

執事「いえ。お嬢様にお持ちさせるわけには」

媛「気にしないで下さい、そんなの。私がお手伝いしたいんですから」

執事「そのご厚意に甘えるようでは、執事として、男としてすたります。お嬢様、貴方の前では格好をつけさせて頂きたい」

媛「執事さんたら…」キュン


猿少年「うわー。荷物持ち手伝おうかと思ったけど、何か行きにくい雰囲気」

雉娘「カッコつけさせときゃ良いんじゃなーい」





執事「お嬢様。例の件、聞いて参りましたよ」

媛「ハフッ、ハフッ。あ、ありが…あつっ!」

犬男「急ぐな急ぐな。で、どうだったよ?」

執事「はい。魔王は9人目の子孫を見つけたそうです。その子孫の方も奴隷の身分だとか」

雉娘「ふーん。それなら天界に来る方がマトモな生活できるわねー」

執事「ですがどうやら、その方の主人が引き渡しに応じられないらしく」

媛「えーっ。それは大変ですね」

猿少年「魔王相手に応じないとはなかなか度胸ある奴ウキー」

犬「まさか渋る素振りをして、引き渡し料を高値に吊り上げようっつー狡猾な奴とか」

執事「ありえますね」

媛「……」ウーン

執事「お嬢様?」

媛「え、あ、あっ! 執事さん、なな何でも」

執事「…気になりますか、お嬢様」

媛「あぅ。ご、ごめんなさい…」

執事は地上のあれこれに介入することを好いていない。
現状を聞いてきてくれただけでも有り難いのだから、これ以上のことは望んではいけないのだ――と思っていたが。

執事「…仕方ありませんね」

媛「え?」

執事「お嬢様の気がかりを払拭するよう努めましょう」ニコ





魔王「全く、困ったものだ」

魔王は玉座に座しながら、苦悶の表情を浮かべていた。
今月だけで、流行りの病で約300人が死んだとの報告があった。
世界が滅びに向かっている現状、一刻も早く天界の助けが必要だ。

にも関わらず、天女の子孫集めは9人目にして行き詰まっていた。

悪魔「魔王様、申し訳ありません。今日も門前払いでした」

魔王「そうか」

術師「魔王様、こうなれば強行手段に出ては」

魔王「それはいかん。本人を納得させて天界に送らねば、その者を不幸にするだけだ」

悪魔「ですがこのままでは地上の世界が滅びます」

術師「納得させようにも、聞く耳も持たないのです」

魔王「根気よく説得を続けるしかないか」

そう結論を出そうとした時だった。


媛「し、しし失礼しますっ!」ドキドキ

執事「失礼致します」

やけに緊張した様子の女主人は、対照的に堂々とした執事を連れてやって来た。


魔王「お主達か。どうした」

執事「事情は聞きました。9人目の方の説得が上手くいかないとか」

魔王「うむ。説得が難航している」

執事「先方に事情は説明したのか? お嬢様の時のように、強引なやり方で迫っていないでしょうね…」

魔王「もうあんなことはせぬよう部下にも伝えてある。だが、天界についての事情説明はしていない」

執事「ふむ…」

一部の権力者には、世界の現状をこのままでと望んでいる者もいる。悪知恵の働く奴なら、天女の子孫を人質に天界に交換取引を持ちかける奴もいる――魔王は以前そう言っていた。

執事「先方の者は、悪巧みを考えるような輩なのか?」

魔王「そうではない。…悪巧みをするような輩なら、まだ簡単だった」

執事「と言うと?」

魔王「…色恋沙汰だ」

執事「何と」

媛「まぁ」

つまり主人が奴隷に強い恋愛感情を抱き、手放そうとしないということか。
なるほど、これは確かに難しい話だ。

執事「それなら尚更、事情を説明する必要があるのでは」

魔王「情熱的な輩なら『世界がどうなろうと想い人とは離れたくない』と燃え上がるのではないか」

執事「ほう。魔王ともあろう者が情熱的な想像をするものだ」

魔王「お主ならそうだろうとな。なぁ?」ニヤ

執事「な」

媛「」カーッ

執事「と、とにかく! お嬢様、そういうことらしいので帰りましょう」

媛「あのぅ……」

執事「?」

媛「私達で説得に行ってみません?」

執事「!」





媛「私達なら立場も近いですし…。もしかしたら少しは耳を傾けて頂けるかも」

媛にそう言われたので、教えられた場所へ向かうが、執事は内心不服だった。
不服だが…

媛「執事さんごめんなさい…ご面倒おかけして」ジッ

執事「いえ。お嬢様の気がかりを払拭すると約束しましたので」

こう上目遣いで縮こまられては、執事としても従わざるを得ない。
行動が不服でも、媛が可愛ければそれでいい…と思ってしまう。



執事「ここがその方々の住処ですか」

執事は渡された地図を見て何度も確認する。
奴隷持ちの家というのはそれなりに裕福な層が多いのだが、この家はそんなに大きくはない。

媛「看板が出てますね。仕立て屋さんらしいです」

執事「とりあえず入りますか?」

媛「待って! 誰か出てきます!」


奴隷娘「では買い出しに行って参ります、ご主人様」

主人「待て隷娘。俺も行く」

奴隷の娘を追って出てきたのは、若い男だった。
やはり住んでいる家同様、身なりは富裕層のものとは違う。

奴隷娘「そんな、私1人で大丈夫ですよ」

主人「いや。魔王様がお前を見初めたようだからな、お前を1人にしておけん」

奴隷娘「ですが…」

主人「お前を奪われては、俺はきっと一生後悔する。お前は絶対に誰にも渡さないからな」

奴隷娘「ご主人様…」


媛「2人は両思いですね」

執事「そう…なのですか?」

媛「はい! あの目は間違いなく、恋する乙女の眼差しです!」

執事「…?」

媛(執事さんにそれがわかるなら、私の気持ちに早く気付いてくれてたもんね)

片思いだった頃は割と大胆にアプローチしてたと思うが、執事はそれでも気付かなかった程の天然だ。だから、仕方ない。

媛「とりあえず、お2人が帰ってきたら声をかけてみましょうか」

執事「そうですね」





奴隷娘「ご主人様、すみません…重い荷物を持たせてしまって」

主人「気にするな。男として当然じゃないか」

奴隷娘「で、でも」

<ざわざわ

主人「ん?」


媛「男として当然、かぁ。執事さんも同じようなことをおっしゃっていましたねぇ」

執事「それを当然としない男は恋などすべきではない。余程軟弱なのでしたら、仕方ありませんがね」

媛「執事さんは見た目は華奢だけど男らしいですよね」ポ

執事「男ですから」フ


主人「おい」

媛「きゃあ!?」

主人「なに、俺らをダシにしてイチャついてるんだよ。アンタらどこかの貴族の令嬢と執事か?」

媛「聞きました執事さん、私が貴族の令嬢ですってぇ!!」キャー

執事「お嬢様ほど可憐ならそう思われても仕方ありませんね。勿論、私にとっては地上の貴族ごときより、お嬢様の方が遥かに尊い存在でありますが」

媛「もうっ、執事さんったら」

主人「人前で堂々とイチャついてんじゃねええぇぇ!」

奴隷娘「ご、ご主人様、もう行きましょう」

媛「あ、待って下さい! 私達、魔王のお使いで来た者で…」

主人「…魔王様の?」

主人は警戒心を露わにした。
しまった、と媛は思う。しかしもう遅く、主人は奴隷娘の手を引いている。

主人「こいつを引き渡す件なら断ったはずだ。行くぞ、隷娘」

媛「あっ、待って下さい!」

媛は慌てて追ったが、主人はうんざりしたような表情で手を振り、拒否の仕草をした。

主人「帰りな、返答は変わらない」

媛「せめて話だけでも」

主人「しつこいな…!」

主人は足を止め、媛の手を払いのけ――ようとして、

主人「いででええぇぇ!!」

執事「いけませんねぇ、お嬢様に手をあげようなど」ニコニコ&ギュウウゥゥ

執事に腕を締め上げられていた。

主人「いだだだだああぁぁ!」

執事「私としては、貴方がたが地上と共に滅ぼうが興味ないのですが…」

奴隷娘「地上と共に滅ぶ…?」

執事「それではお嬢様の御心が傷ついてしまうのですよ。なので話を…」

主人「いやだああぁぁ、隷娘は渡さないいぃ!」

執事「…私は『話を聞いてくれ』と言っているだけですが」

主人「そう言って、いでで、俺から隷娘を騙し取るつもりだろおぉ…」

執事「どうしましょうねお嬢様、この者は話が通じません」

媛「そ、そんな痛めつけなくても」アワアワ

彼が媛の手を払いのけようとしたせいだと思うが、それだけで執事は過剰な敵意を抱いてしまったようだ。
こうなってはどう宥めようかと媛は慌てる。

奴隷娘「ご主人様、お話だけでも聞いてみませんか?」

主人「え?」ゼェゼェ

奴隷娘が説得に回ると同時、執事は攻撃の手を緩めた。

奴隷娘「魔王様なら強硬手段を取ることもできるでしょうに、この方たちにそのつもりはないようですし…」

主人「けど、お前が言葉巧みに騙されたら…。俺はお前の心が離れていくのが辛い」

奴隷娘「ご主人様が私を捕まえていて下さる限り、私はご主人様から離れませんよ」

主人「隷娘…俺は、俺は……」


執事「困りましたね。勝手に酔って勝手に燃え上がっています」

媛「……」

媛(身に覚えがある…恥ずかしい)カアァ

主人「いいだろう、話だけは聞いてやる! どんな障害も、俺たちを引き離すことはできないけどな!」キリッ

執事「ほう?」





主人「せ、世界が…!?」

家の中に通されて、執事は事細かに世界の現状や、魔王と天界の交渉について話をした。
地上の者には寝耳に水であろう話を聞き、2人とも目をぱちくりさせていた。

奴隷娘「では、私含む天女の子孫が天界へ行けば、世界は天界の祝福を得られると…」

主人「し、信じられん…」

執事「証明する手段なら幾らでも御座いますよ。かつて天女様がこの世界に祝福をもたらしたことが記述されている書物は地上にも存在するでしょうし、何でしたら直接天界のお偉い方々と話ができるよう取り持っても」

主人「う、うぅ」

執事の物言いが堂々としている為か、どうやら主人の方も信じ始めてきたようだ。
だけれど…

奴隷娘「そういう事情でしたら、私は…」

主人「い、いやだ!」

奴隷娘「え?」

主人「世界がどうなろうと、お前とは離れたくない!!」ギュゥ

奴隷娘「ご主人様…!」

媛&執事(魔王の予想していた言葉まんまだ…)

主人「この世界が滅ぶまで、俺はお前と共にいる! 俺は、俺は、お前のことが…」

執事「これは間違いなくラリっていますね。お嬢様、説得は諦めましょう」

媛「諦めが早すぎますよ!?」

媛(どうしよう、どうしよう…あ、そうだ)

媛「あのぅ…」

主人「何だ! 俺たちの愛を引き裂こうというのか、この悪m」

執事「お嬢様への暴言は許しませんよ?」ニコニコ&ギュウウゥゥ

主人「んぐーっ、んぐーっ!」←凄い力で頬を締められている

媛「し、執事さん、そんなにしなくても…。あ、あの、主人さんはこの世界に思い入れがないのですか?」

主人「ゼェゼェ…。そりゃ、富裕層や権力者でもない限り、ある奴の方が少ないだろ。こんな治安が悪くて、いつ死病に冒されるかわからん世界…」

執事「ほう。愛する女性をそんな世界に置いておこうとは、何という鬼畜」

主人「ウッ…」ガーン

執事「本当に愛しているのなら、その方の為にどうすればいいかを1番に考えるはずなのですがねぇ…」

主人「ウゥッ…」ガガーン

執事「正にエゴの塊。最低の男ですね」

主人「」ガーンガーンガーン

媛「し、執事さん、容赦なさすぎですよ」

奴隷娘「ご、ご主人様…」

主人「うぅっ、隷娘~」グスグス

媛「!?」

主人「やだよ~、隷娘と離れたくないよぉ~。こんな俺は最低だぁ~」グスグス

奴隷娘「ご、ご主人様、泣かないで、ね? 私もご主人様のお側が1番ですよ」ヨシヨシ

主人「隷娘~」グスグス


執事「えぇい苛立たしい男だ」

媛「執事さん、もうちょっと優しく。ね?」

執事「的確に指摘してやるのが同じ男としての優しさです」

媛(何か違う気が…)

執事(私は貴方にだから優しいのであって、これが私の平常運転なのですよ、お嬢様)


媛「あ、そ、それでですね」

主人「ん?」

ある程度の涙が収まってきた所で、媛は話を切り出した。

媛「隷娘さんと離れたくなくて、この世界に思い入れがないなら…こういうのはどうでしょう」

主人「?」

媛「主人さんも一緒に天界に来られてはどうですか?」

主人「なぬっ」

奴隷娘「まぁ」

執事「…」

媛(あ…)

微妙な表情の執事を見て、しまった、と思った。
事前にこの案を彼と相談しておかなかったのは、まずかっただろうか。

媛「もしかして…駄目、なんでしょうか?」

執事「いえ…。天界人の血を引かぬ者でも、住むこと自体は禁止されておりません。ただ…」

主人「ただ?」

執事「お嬢様ですら冷遇されているような現状ですので…。天界人の血を引かぬ彼は、更に冷遇されるかと」

媛「あぁ…」

媛にとって屋敷の生活は快適なものだが、それは屋敷が天界から隔離された世界にあり、執事ら使用人達がいてくれるからである。
天界人は地上の者を見下しているふしがある。無闇に暴言や暴力を振るってくることはないだろうが、それでも滲み出る差別的な態度が媛の心を傷つけるだろう、と執事は言っていた。だから買い出しひとつにしても執事任せで、媛はまともに天界を歩いたことがない。

執事「他の子孫の方々は、天界でも差別の少ない所で身を寄せ合って生活しているようですが…。天界人の血を引かぬ者は、そこでもあからさまな差別を受けるかと…」

主人「……」

執事「どうなるかは私にもわかりませんよ。あとはそちらの判断です」

主人「………」

奴隷娘「そんな、ご主人様が差別を受けるなんて…」

主人「…でも天界なら、隷娘は奴隷の身分から解放されるんだよな?」

奴隷娘「え?」

主人「あの執事に最低な男って言われて、頭が冷えたよ。隷娘、お前はこの世界では差別されている。それなら、俺が差別を受ける方がいいじゃないか」

奴隷娘「そんな! ご主人様が救って下さったから、私はこの世界で生きるのは辛くありません!」

主人「奴隷市場でお前に一目惚れしてから…俺、ずっとお前を幸せにしてやりたかった。今って、1番のチャンスじゃん」

奴隷娘「私の幸せは…ご主人様と共にあります」

主人「なら天界に行こう。お前が1番幸せになれる場所だ」

奴隷娘「そんなことない! ご主人様が幸せでないと…」


<あーでもないこーでもない


媛「愛し合ってますね…」ウルウル

執事(帰ってもいいだろうか)

媛「ねぇ、執事さん」ウルウル

執事「は、はい!」ドキッ

媛「ひとつ…ワガママを聞いて頂いてもいいでしょうか」

執事「何でしょうか」

執事(潤んだ目で見上げられては、何も断れませんよお嬢様……)

媛「あのですね……」

執事「……!」





>屋敷近く


猿少年「ウキー。こんなもんでどうかな」

雉娘「ふぅ、ひっさびさの大仕事だったねぇー」

媛「如何でしょうか?」

主人「俺には勿体無いくらいだ。大変ありがたい」

奴隷娘「えぇ、本当に」

犬男「しかし執事から聞いた時はびっくりしたぜ。『新しい家を建てなさい』とはな」

使用人達の手により、屋敷近くに2人が住む家が建てられた。
同じく隔離された世界なら、彼らも平穏に過ごせるだろうという媛の提案である。

執事「わざわざ建てた家です、大事に使うように」

犬男「しっかし、閉鎖的な執事が了承するとはね~」

雉娘「そりゃお嬢様からのお願い断れないよね~」

猿少年「執事はお嬢様に弱いウキー」

執事「黙りなさい」

媛「ご近所に新しいお友達ができて嬉しいです!」

奴隷娘「えぇ、私としても心強いです!」


主人「絶対に恩は返すぜ」

執事「貴方ごときに見返りなど期待していませんよ」

主人「俺は仕立て屋をやってたから、衣装作りくらいならできるんだが…」

執事「…オーダーメイドでも?」ヒソッ

主人「任せとけ」グッ

犬男(執事め。『私の理想の衣装でお嬢様を飾りたい』とか企んでやがるな)


猿少年「あ。どうせなら、他の子孫もこの辺に集めちゃえば?」

執事「!」

媛「いいですねソレ」

雉娘「他の子孫がいい奴ばっかとは限らないわよー?」

犬男「そん時ゃ追い出せばいいだけだよ、俺はかまわねーぜ」

媛「……執事さん」←上目遣い

執事「…えぇ、お嬢様がおっしゃるのでしたら」

媛「わぁ、執事さんありがとうございます! 優しい執事さん大好き!」ギュゥ

執事(…断れるか!)

犬男「執事の心臓バックンバックン言ってるのが聞こえる」

猿少年「顔は平静を装っているけどね」

雉娘「確信した。執事はムッツリだわ」


執事(全く…優しいのは貴方の方ですよ、お嬢様)

今回だって、媛が言い出さなければ自分は知らんぷりを決め込んでいた。
だけどこれが天女の生まれ変わりたる慈愛の精神か。

執事(…いや、違うか)

地上全体を包み込むような天女の包容力とは違う、媛の等身大の優しさだ。
その優しさは、時に執事を困らせたりもするのだけれど。

媛「えへへ~、執事さぁん」ギュウゥ

執事(…それが心地いい)

素直に甘えてくれる媛が、ただただ愛しく思えた。








執事「10人目の子孫が見つかったそうですよ」

雉娘「へぇ、順調ねぇ~」

猿少年「このペースなら年内には13人全員見つかるんじゃない?」

執事「ですが説得に難航しているそうで」

犬男「へぇ。今度はどんな理由でだ?」

執事「その方は既婚者で、両親の介護を抱えているとか」

雉娘「あらー。家族ごと天界に…って考えると腰も重くなるわねー」

猿少年「魔王は説得のやり方が下手だから、時間かかりそうだウキー」

媛「…」ソワソワ

犬男「どうした、お嬢様?」

媛「い、いえっ」

話を聞いて媛は行動したくてたまらなかった。
だけどそれは言えない。ただでさえ、散々皆を振り回したばかりだというのに。

執事「……」

媛「……」ウズウズ

だけどそれを見越したかのように――

執事「行きましょうか、お嬢様」

媛「え…っ!?」

執事「その一家への説得です。…気になっていらっしゃるように見えるのは、私の思い過ごしでしょうか?」

媛「!!」

地上の問題を避けている執事が、自分から行こうと言ってくれた。
それなら――

媛「はい! 行きましょう!」

それに思い切り甘えようと思った。


執事「では留守の間、頼みましたよ」

犬男「おう、任せとけ」

猿少年「行ってらっしゃーい」

雉娘「思わしくない結果でも泣かないでね、お嬢様」

媛「ふふ、大丈夫ですよ」


泣く時も、辛い時も、執事が一緒にいてくれるから――


媛「行きましょう、執事さん!」


彼と一緒なら、どこへでも行ける。何でもできる、そう思えた。


Fin





づっきーに様より執事ssの続編ということでした。リクエストありがとうございます!
本編は媛と執事の恋愛に焦点を絞っていたので「いや世界はどうなるんだよ」って疑問が残ったと思うので、そっちに焦点を当ててみました。まぁ作者は2人が幸せなら世界がどうなってもいry
執事がいくらかバカになりましたが、愛するお嬢様を思っての事なのでご愛嬌。
posted by ぽんざれす at 21:14| Comment(4) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月24日

【クリスマススピンオフ】魔術師「勇者一行をクビになりました」

魔術師「勇者一行をクビになりました」のスピンオフです。





悪魔「――魔術師ちゃん」

後ろから悪魔さんが私を呼び止める。
いつもと違う低い声が、私をその場から動けなくさせた。

振り返るのが怖い。こんな声を出す悪魔さんの目つきは、きっと――

悪魔「こっち向きな」クイッ

魔術師「!!」

――私の心を、魅了して離さないだろうから。

悪魔「魔術師ちゃん…チミは俺様のもんだよな」

魔術師「ぁ…や…」

悪魔「――愛してるぜ、魔術師ちゃん」

魔術師「―――!」



魔術師「ちょっ、悪魔さん、心の準備がああぁぁ……あれ?」

チュンチュン

魔術師「……夢、かぁ」ドキドキ

刺激の強い夢だった。あまりもの刺激に、余韻がまだじわじわ残っていた。


悪魔『こっち向きな』クイッ

悪魔『魔術師ちゃん…チミは俺様のもんだよな』


魔術師「……」ボッ

魔術師「違う違う違う違う、悪魔さんそんなことしない」ブンブン

悪魔「おっはよぉ~ん、魔術師ちゃぁん!」バァン

魔術師「きゃっ!? 悪魔さん!?」

悪魔「魔術師ちゃん、なかなか起きてこないからァん! 心配しちゃったんだぜぇ~」

魔術師「ぁのぅ…いつもより10分程度寝坊しただけなんですけど……」

こっちはまだパジャマのままだというのに…。
悪魔さんはあまり人の都合を考えない。

だけど…

悪魔「寝起きの魔術師ちゃんもカワイイぜェ~。あぁもう、ナデナデしたくなっちゃうゥ~ん♪」ギュウゥ

魔術師「もぉ~」

悪魔さんは甘えてくる人だ。さっき見た夢みたく、強引に迫ってくる人じゃない。

悪魔「魔術師ちゃ~ん、ちゅっちゅして、ちゅっちゅ~♪」

魔術師「……」

キスする時は、いつもこうやっておねだりしてくる。

魔術師「たまには悪魔さんの方から…」

悪魔「え?」


魔王「悪魔王様ーっ、どちらへ行かれたんですかーっ」

悪魔「あー、今行くー! チッ、あの野郎邪魔しやがって」

魔術師「ぁはい……」

悪魔さんは部屋を出て行った。
季節は冬、まだまだ布団の中が恋しい。

魔術師「…あ、今日はクリスマスイヴだった」

私はカレンダーを見て気がついた。





悪魔「イャハハハハ!! どぅお、この格好ォ~」

暗黒騎士「阿呆だと思う」

悪魔さんはサンタさんの格好をしていた。
と言っても前開きで袖まくりしてアクセサリーをジャラジャラつけて、サンタさんのイメージから遠くなっているのだけど。

魔術師「ぇと、悪魔さん、クリスマスパーティーをするんですか?」

悪魔「いやァ、国のガキどもに何かしてやろうかと思ってな!」

暗黒騎士「で…具体的に何をする気だ?」

悪魔「まず雪を全部生クリームにすンだろ? あと空からコンペイ糖を降らせてだな…」

暗黒騎士「国中の児童を糖尿病にする気か!!」

悪魔「ガキなんて甘いモン与えておきゃいいンだよ!!」

暗黒騎士「そんな思考でサンタを名乗るなあぁ!!」

魔術師(暗黒騎士さんの方が正論すぎるよぅ……)

悪魔「じゃあ、どうしろってンだー? ガキにプレゼントやるのは親の役目だろ~」鼻ホジホジ

暗黒騎士「そうだな…雪像造りなんてどうだ」

悪魔「あ? 雪像?」

暗黒騎士「児童の間で流行っているダークヒーローがいるのだ。この本なのだが…」

悪魔「デビルナイトォ~? ふーん、児童書のヒーローねぇ。ヘッ、ガキは単純でいいねェ~」ペラペラ


>10分後


悪魔「デビルナイト☆スラ~ッシュ、ズバババッ! おい魔王、倒れろよ!!」

魔王「ぐ、ぐはぁ……」

魔術師「すっかりはまっちゃいましたね……」

暗黒騎士「奴の脳みそは児童並か」

悪魔「おっしゃあ、国の村や町を回って雪像造りしてくンぜッ!! 悪魔サンタ、出動しまーっす☆」キラリン

魔術師「ぁ、悪魔さん! …行っちゃった」

暗黒騎士「国中を回ったら20近くは造らねばなるまい…。途中で飽きなければいいが」

魔術師「わ、私ちょっと悪魔さんを追っかけてきますっ!」





魔術師「ふぅー、寒いなぁ」

厚着をしているのに寒くて、息が白くなる。
私は悪魔さんの魔力を追っていた。

途中立ち寄った村では、悪魔さんが造ったという雪像が建っていた。
村の人に話を聞くと悪魔さんは雪をかき集め、自分の力で雪像を造っていったらしい。

魔術師「よくやるなぁ」

デビルナイト自体は割とシンプルなデザインなのだけれど、それでも綺麗に造られた雪像に私は感心した。


そして2件目の村。

魔術師「あれ、ここのは剣を持っていないんだ」


3件目

魔術師「ポーズがただの直立になってる」


4件目

魔術師「うーん…全体的にデフォルメされてきたなぁ…」

段々疲れてきているのが見て取れた。


魔術師「大丈夫かなぁ悪魔さん。…次は5件目だけど……あ、いた。悪魔さーん!」

悪魔「ザクザクっと。お、魔術師ちゃん。いよーっす!」

魔術師「あ、出来上がったんですね」

立っていたデビルナイトはちゃんと剣を持ってポージングしていて、最初のクオリティに戻っていた。
…ってあれ? だったら悪魔さんは今、何を造っているのか…。

魔術師「悪魔さああぁぁぁん!? な、な、何造ってるんですかあぁ!?」

悪魔「見てわかるだろ♪ 勇者だよ、ゆーしゃ!」

確かに、その見慣れた顔は、ちょっとデフォルメされてるけど勇者さんだ。
けど、その格好が…。

魔術師「どうしてその格好なんですか!?」

悪魔「イャハハハハ!! そりゃ全国放送された姿だしィ~!! あ、でもココはもっと小さかったな」

「キャハハ、フルチンだフルチンだ~」
「ちっせー! 勇者のちっせー!」
「チン丸出しィ~♪」

魔術師「ああぁ…子供達が悪い影響受けてる…」

悪魔「デビルナイトばっかで飽きてきたっていうかァ~」

魔術師「だからって何でよりによってこれなんですか!?」

悪魔「ガキなんてバカだから下ネタで喜ぶんだよ!」

魔術師「もうサンタさんなのは格好だけですねぇ…」

悪魔「そンじゃ次の村に行くかな~」バサッ

魔術師「あ、悪魔さん、私も行きますっ!」

悪魔「アラ魔術師ちゃんたら、俺様と一緒にいたいのねェん…キャッ♪」

魔術師「もぉ~……」





こうして私は悪魔さんと一緒に各地を飛び回った。

悪魔「見てろよガキども、テメーらの為に悪魔王様が立派な雪像造ってやっからよォ!」

ワーワー

魔術師「人気者ですねぇ悪魔さん」

悪魔「そりゃ俺様、魔物達のカリスマだしィ? イャーッハッハ、俺様に感謝しろよガキどもぉ!!」

魔術師(そうだよねー、悪魔さんは伝説の悪魔王なんだものね)

そんな悪魔王が、こうやって子供達の為に頑張っている。
悪魔さんは魔物の王になっても気取らないし飾らない。前と変わらず、自然なままだ。

悪魔「勃起の爪で雪を掘る~、前を後ろを掘る掘る~♪」ザクザク

魔術師「その歌やめて下さい!!」


とにかくそんな調子で順調に進み…。


悪魔「ヨッシャ、最後の雪像が完成したぜェ~」

魔術師「お疲れ様です悪魔さん」

「わーデビルナイトの像だー」
「悪魔王様ありがとー!」
「わーい、サンタさんからこの村への贈り物だー!」

魔術師「ふふ、悪魔さん。皆喜んでますよ」

悪魔「ちょい待って……今、賢者タイム…」

魔術師「何で!?」

悪魔「ふぅ…。ってもう夕方かよ! 今日はいつもより働いたンじゃね~」

魔術師「サンタさんも楽じゃないですねぇ。じゃあ帰りましょうか悪魔さん」

悪魔「ヤダヤダ、ただ帰るだけじゃつまんなぁ~い!!」ジタバタジタバタ

魔術師「えぇーと…」

ちょっと考える。…すぐに答えは出た。

魔術師「…デートして帰りましょう、悪魔さん」

悪魔「イエエエェイッ!! 魔術師ちゃんとクリスマスデエエェ~トッ!!」

悪魔さんの顔に元気が戻った。





私と悪魔さんは空を飛んでいた。

悪魔「寒くねーかァ、魔術師ちゃん」

魔術師「悪魔さんとくっついてるから、あったかいですよ」

悪魔「イャハハ、そりゃ良かったぜェ」

悪魔さんは私が凍えないように、大きな体で私を冷風から守ってくれていた。
さりげない優しさに、心も体もポカポカ。

悪魔「今日はイルミネーションやってるとこ多いから、上空からの景色が最高だなァ」

魔術師「えぇ、綺麗ですねぇ」

暗闇で光る様々な色が国中を照らしている。これがクリスマス独特の美しさ。今日だけの特別な景色。

魔術師「悪魔さんと一緒に見れて良かったです」

悪魔「そーだなァ。きっと一緒に見るから、特別なんだな♪」イヒヒッ

魔術師「ふふっ…特別ですね」

悪魔「魔術師ちゃ~ん♪」

魔術師「何ですか?」

悪魔「こういう雰囲気だからやっぱり…ねぇ? ンー、ンー」

魔術師「……」

キスをねだる甘えた声と仕草は、いつもと同じ。

だけど、今日は特別な日だから――

魔術師「たまには…」

悪魔「ん?」

今日の夢みたいに…

魔術師「悪魔さんの方から…して下さい」

悪魔「んへっ」

予想外だったのか、悪魔さんは呆気にとられていた。

悪魔「えーと…マジでいいの?」

魔術師「えぇ…お願いします」

私は目をつぶる。

悪魔さんがいつも受け身なのは、私のタイミングでさせてくれるように。
私の好きなキスでいい、私がイヤならしなくてもいい、って。そうやって気遣ってくれているのだ。

だけど、私は――


魔術師「悪魔さんのキスが、欲しいです」


好きな人には、奪われてみたいのだ。


悪魔「そいじゃ、遠慮なく…」

悪魔さんは私の頭に手を回す。いつも強引な悪魔さんだけど、こういう時は紳士的で優しい。
目をつぶっていても、悪魔さんとの距離がわかった。彼の吐息が頬を撫でて、私の気分を高揚させて――


悪魔「――っ」

魔術師「ん――」


いつもより強めのキス。ちょっと苦しいけど情熱的で、脳がしびれるくらいに刺激的。

魔術師(あぁ――)

私はきっと、これを望んでいたんだ。


悪魔「…ぷはっ。魔術師ちゃん、苦しくなかったか?」

魔術師「いえ。…良かったです、とっても」

悪魔「そっか」

悪魔さんは嬉しそうに微笑んだ。
滅多に見れない悪魔さんの健気な一面に、私はまたときめいた。


魔術師「さ…そろそろ帰りましょう。お城でパーティーの準備してますよ」

悪魔「そだな~。やっぱ悪魔王様がいねェと、パーチー始まらねぇだろうな」

魔術師「えぇ。今日の夕飯、私も下ごしらえ手伝ったんですよ」

悪魔「マジで!? 早く帰って食いてェ~、腹ペコペコ~」

魔術師「皆さんも待ってますよ、きっと」

特別な非日常から、日常へ。
この時間を惜しいと思いながらも、私達は帰る。特別な時間は貴重だから、特別たりえるのだから。

悪魔「そォ~だ。悪魔王サンタから下の奴らに言うことあったんだ」

魔術師「何ですか?」

悪魔「すうううぅぅっ……」

悪魔さんは思い切り息を吸い込んでから、叫んだ。


悪魔「メリークリスマス、ヤロー共っ!! 特別な日を楽しめよ、イャハハハ!!」



Fin





あとがき

というわけで悪魔サンタからのメリークリスマスでした。
本当このカップルはキスばっかして…いいぞもっとやれ(`・ω・´)
posted by ぽんざれす at 18:39| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【クリスマススピンオフ】女勇者「勇者よりも、お姫様になりたかった」

女勇者「勇者よりも、お姫様になりたかった」のスピンオフです。





精霊「メリークリスマス、勇者!」

勇者「……」

暖炉からサンタの格好をした精霊が出てきた。
体中ススまみれで、一瞬魔物が入ってきたかと思った。

勇者「何のつもり?」

精霊「ほらほらサンタだよサンタ! プレゼントしに来たんだよ!」

勇者「サンタが来るのは夜中ね。今、真昼間」

精霊「あ、そうなのか! ごめーん、俺、勉強不足で~」ハハハ

幼少期をぬいぐるみと過ごし、魔王の側で邪神をやって、長年封印されてきた…という経緯を考えると、精霊にとってこういうイベント事は身近ではなかったのだろう。

精霊「夜また来るねー! それじゃ」ソソクサ

勇者「いや暖炉から帰らなくても。普通にドアから出なさい、あとお風呂入って来なさい」





勇者「夜に来るのかぁ、精霊」

こちらの地方ではクリスマスは家族で祝う風習があるので、今日は使用人は帰らせている。
だけど帰る家のない精霊は勿論、この屋敷に残るのだ。

勇者(家の者は公務で忙しいけど、私は急遽お休みになったんだよねー…だから精霊と2人きりになるなぁ)

勇者「ってことは……」

勇者はクローゼットをガラガラッと開けた。

勇者「秘蔵、フリフリお洋服コレクション~っ!」

そこには家の者に内緒で買ったフリフリ服がずらっと並んでいた。
まだ外に着ていく勇気はなく、部屋で1人で楽しむのがほとんどなのだが。

勇者(精霊と2人きりなら、いいよね……)ドキドキ

勇者(着て見せたら、精霊何て言うかなぁ)


精霊『うわぁ、可愛いね勇者ぁ!』


勇者(って言ってくれるかなぁ。それとも…)


精霊『やっぱり勇者は俺のお姫様だよ』


勇者(それでそれで~…)


精霊『世界でたった1人の、俺のお姫様…もっと近くでその姿を見せて…。あぁ勇者、俺にその唇を……』


勇者(なんちゃってなんちゃってなんちゃってー!! きゃああぁぁ)ダンダンッ

勇者はベッドに顔を埋めて悶絶していた。

勇者(あ、そうだ。精霊に『これ』も渡さないと)

勇者(……)

勇者(まぁ後でいいか)


そんな感じで、勇者は久々の休日にゆっくり体を休めていた。


>夜


勇者「へ、変じゃないよね?」

悩みに悩んで選んだフリフリ服は、ひざ下までの丈のドレスだった。
白地にピンクの薔薇模様が刺繍してあって、袖にはふわっとした膨らみがある。勇者のお気に入りポイントは、3段フリルになっているスカート。
少し開いた胸元はシンプルなネックレス、まとめた長い髪は花飾りで留め、装飾をしてみた。
靴は精霊との身長差がこれ以上開かないように、ぺったんこのパンプスを選んだ。

勇者(うわー凄い、女の子みたい)

全身鏡を見て勇者はドキドキする。
こんな可愛い服を着た姿を精霊に披露するなんて…。

勇者(あああぁぁぁ、やっぱ恥ずかしいいいぃぃぃ!!)

トントン

その時、窓を叩く音がした。

勇者(も、もしかして精霊?)

勇者は恐る恐るカーテンを開けた。すると…

精霊「メリークリスマ…すぅっ!?」

勇者「め、めりー…くりすます……」

精霊「……」ハッ

精霊は3秒くらい固まった後、我に返ったようだった。

精霊「窓の鍵開けて、勇者!」

勇者「あ、うん」ガチャ、ガラガラッ

精霊「もう、勇者ぁ~っ!」ギュウゥ

勇者「わぁ!?」

部屋に飛び込んでくるなり、精霊は思い切り抱きついてきた。

精霊「どこのお姫様かと思ったら、俺のお姫様じゃ~ん! 俺の為に可愛くしてくれたの~? 嬉しいなぁ、もう~」

勇者「そ、そう?」

精霊「えへへ~、勇者ぁ~…って違った! デレデレしてる場合じゃないっ!」

勇者「?」

精霊は一旦、ピシッと良い姿勢になる。
そして跪いたかと思うと…。

精霊「お待たせ致しました、おれっ…我が姫君。今夜はおっ、私が貴方だけのサンタになります」シドロモドロ

勇者「……」

このグダグダっぷり、きっと本か何かの影響を受けて練習したセリフだろう。
だが、しかし…。

勇者(どうしよう…私の好み、どストライクなんですけど!!)キューン

勇者(って、ダメダメ、こんな単純なことでときめいてたら…)

精霊「私と共に参りましょう、お姫様」スッ

勇者「はいぃっ!!」ドキイイィィッ





勇者は精霊に手を取られ、食堂までやってきた。

勇者「真っ暗だね、灯りつけないと…」

精霊「ストーップ!」

勇者「え?」

勇者は動きを止める。
精霊はキザに笑うと、指をパチンと鳴らした。

するとぽやっとした光が放たれ――

勇者「…うわぁ」

勇者はその光景に目を奪われた。
聖職者の格好をした人形たちが灯りを持ち、並んでいる。
楽隊がクリスマスの曲を奏で、それに合わせて聖歌隊が歌う。雪だるまやサンタ、トナカイの人形がくるくる踊りだし、可愛らしい光景だ。

勇者「凄い…」

お伽話の世界に来たかのような、不思議な感覚だった。
勇者の目が、耳が、非日常を感じている。

勇者「最高だよ精霊! メルヘンチックで、こういうの大好き!」

精霊「そう、俺の作り出す世界はメルヘン…そしてメルヘンを完成させるには」グイッ

勇者「あっ!?」

勇者の体は精霊に引き寄せられた。そのまま体がふわっと浮く感覚があって、そして――

精霊「主役のお姫様が揃えば、完璧だよ~っ!」

精霊は勇者を抱えて、食堂の真ん中まで駆ける。

精霊「皆ぁ、お姫様がやってきたよ! 今日は存分に楽しんでもらおうじゃない!」

人形たちは祝福するように2人を囲み、拍手を送った。
踊っていた人形たちは、2人の周りをくるくる踊りながら駆ける。

勇者「に、人形相手とはいえ、照れるなぁ……」

精霊「奥ゆかしいお姫様だなぁ」ニーッ

勇者「ば、ばかっ。てか…あんたも……」ボソボソ

精霊「んー?」

自分が主役なら、彼だって主役のはずで――

勇者「あ、あんたも…王子様でしょ」

自分をお姫様扱いしてくれる、世界でたった1人の人。
お姫様の相手に王子様がいるのは、メルヘン童話のお決まりじゃないか。

精霊「困ったなぁ~。今日の俺はサンタでいこうと思ったんだけど……」

勇者「じゃあ、サンタで王子様ね!」

精霊「それ良い組み合わせだね~! わーい、サンタ王子だ~」

精霊は喜んでぴょんぴょん飛び回っている。彼はきっと深く考えていないだろうけど――追及されたら、自分が困る。

精霊「勇者、パーティーしよ、パーティー! コックさん人形に料理作ってもらったんだ~」

勇者「うん!」





精霊「うわぁ~、これがクリスマス料理かぁ! 見た目も綺麗で美味しそうだね~!!」

初めてクリスマス料理を見るらしい精霊は目を輝かせていた。
見た目より幼いハシャぎっぷりが、勇者には微笑ましく思えた。

勇者「カンパイしよ精霊」

精霊「はい、カンパ~イ! いただきまーす!」

2人ともお酒は飲めないのでジュースで乾杯。
精霊はニコニコしながら料理を口にして、とても美味しそうに食べる。

精霊「ぷはぁ~、サイコ~。クリスマスになったら、どこの家でもこんなご馳走を作るの?」

勇者「大抵はね。私もこんなに豪華なクリスマスは、子供の時以来だよ」

精霊「あ、そうなの?」

勇者「勇者一族は色々忙しくてね。ここ数年は、前日に使用人が作り置きしてくれたものを食べてたなぁ」

精霊「勇者は料理しないの?」

勇者「う゛」

痛い所を突かれた。
やっぱり自分の年頃になれば、女性は料理くらいできるようになっておくべきか…。

精霊「まぁ困らないんだったらしなくていいよね。料理って難しそうだし」

完全に押し黙ってしまった勇者の様子を察してか、精霊はフォローするように言ってくれた。

勇者「ぶ、不器用なんだ、私……」

精霊「そうなんだ~。まぁ勇者の育ちを考えたら、苦手でも仕方ないよね~」

勇者「えーとね、精霊!」

精霊「?」

勇者は立ち上がった。

勇者「ちょ、ちょっと待っててね!」

そう言ってダッシュし食堂から出ていき、少しして戻ってきた。
手にはクリスマス模様の紙袋を持っている。
顔は何だか…恥ずかしそうだ。

勇者「こ、これ…クリスマスプレゼント!」

精霊「おぉ~! ありがとう、勇者♪」

勇者「わ、笑わないでね!」

精霊「?」

精霊は首を傾げながら袋を開けた。そこに入っていたのは…。

精霊「わぁ~」

ウサギのぬいぐるみだった。精霊は袋から取り出すと、ギュッと抱きしめる。

精霊「可愛いね~。ふっかふかだし…」

勇者「気に入ってくれた…? 良かったぁ~、1ヶ月前から作った甲斐があったよ…」

精霊「えっ、このウサギさん、勇者の手作りなのォ! 全然不器用じゃないじゃん!」

勇者「も、もう作れないよ! 魔物と戦うより神経使ったよ~…」

精霊「そっか。それじゃこの子、特別な子なんだね」

精霊はウサギと目を合わせ、へへっと笑った。
そして――ウサギにキスをする。

精霊から命を与えられたウサギは、そこらをぴょんぴょん跳びまわった。そんな様子を精霊は嬉しそうに見ている。

精霊「ありがとう勇者。友達増えた」ヘヘヘ

精霊にとってのぬいぐるみは友達。
孤独を嫌う精霊にとって、友達とは特別なものなのだ。

勇者(良かった…喜んでもらえて)

精霊「それじゃお礼に勇者…俺からのプレゼント」

精霊はそう言うと、勇者の手を取って、指をくるっと回した。
手元でキラキラした光が、何かを形作った。

勇者「…わぁ」

光は雪の結晶をモチーフにした指輪となり、勇者の指に丁度よくはめられていた。

精霊「うーん、チョイス失敗したかな?」

勇者「な、何で!?」

精霊「だって。勇者が可愛いもんだから、指輪がかすんじゃって」

勇者「そ、そんなことないって!! もー…」

恥ずかしくて勇者は顔を真っ赤にする。

勇者「ありがとう精霊。宝物にするね」

精霊「へへ。クリスマスって特別なこと尽くしだね。衣装も、料理も、プレゼントも…俺、今日のことは、ずっと忘れないよ」

勇者「クリスマスは毎年あるよ、精霊」

精霊「なら、ぜーんぶ忘れない! 勇者と過ごす時間を忘れたら、勿体無いじゃん!」

勇者「精霊ったら…」

精霊は自分を大事に思ってくれている。自分と一緒にいる時間を大切にしてくれる。
それは精霊にとっての特別でいさせてくれるということだから。

勇者「うん、約束だね」

もう精霊を孤独にはさせない。
これから先は、ずっと自分が一緒だから。


精霊「ところでクリスマスって、他に何すればいいのかな?」

勇者「うーん。家族で一緒の時間を楽しむのが一般的だね」

精霊「じゃあ来年のクリスマスまでには、家族になろっか♪」

勇者「んなっ!」

…これから先、ずっと精霊に惑わされることになりそうだ。来年のクリスマスはどうなっているか…それは来年のお楽しみ。


Fin




あとがき

カップルってクリスマスどう過ごしてるんだ?(悲しい疑問)
とっても平和ないちゃラブスピンオフとなりました。爆発すれ。
posted by ぽんざれす at 18:38| Comment(0) | スピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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