2016年09月07日

魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」/猫耳ルート

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>朝


魔姫「ふぁあぁ~……」

魔姫「あ……。つい、早起きしちゃったわ。今日は特に何もないんだっけ……」

魔王軍の残党狩りを初めて早くも半年。
私達の活動は実を結び、最近は人間に危害を加える魔物もグッと減った。

魔姫「それじゃ二度寝決定ね。おやすみ~……」

ホカホカ……

魔姫「ん~? いい香りね~……」

トントン

猫耳「魔姫~…まだ寝てるのかな?」

魔姫(あ、猫。ゴメンね、私はもう少し寝ていたいの)

猫耳「寝てるなら仕方ないにゃー。せっかく、新作の紅茶を淹れたのに……」スタスタ

魔姫「おはよう、猫っ!!」バーン

猫耳「おはよう。ちゃんと、服に着替えてから来てね?」ニコ





魔姫「この紅茶いいわね~、クセになりそう♪」

ハンター「……俺には違いがわからん」

勇者「俺はわかりますよ! 魔姫さんが紅茶好きだから、俺も色々と勉強してるんです!」

ハンター「砂糖を入れないと飲めないみたいだがな」

勇者「美味しく飲めればいいんですぅー!!」

魔姫「ところで今日は非番よね。どうして2人とも、うちに来たの?」

勇者「そうだ! 魔姫さん、海行きませんか!!」

魔姫「海……?」

勇者「そーそー、海! たまにはパーッと遊ぶのもいいと思って!! な、ハンター! 助手も誘ってさ!」

ハンター「俺はバイトしようと思ったが……ま、まぁ、付き合いも大事にしないとな」

魔姫「今月は音楽の国でのお祭りもあるのよねぇ。海かぁ……」

勇者「あっ! もしかして魔姫さん、泳げないとか!? 大丈夫! 浮き輪もあるし、何なら俺が教えますよ! それとも日焼けですか!? いいオイルが」

ハンター(がっつきすぎだ、勇者!)


猫耳「スコーン焼けたよ~」トタトタ

魔姫「あらありがとう。ねぇ猫、海ってどう?」

猫耳「うーん……僕、泳げな」

勇者「大丈夫! 浮き輪もあるし、何なら俺が」

ハンター「落ち着け勇者」

魔姫「そういえば、昔は水遊びやったわね。ほら、魔王城の中庭に噴水があったじゃない?」

猫耳「うにゃー……思い出してきちゃった……」

魔姫「猫ったら水が苦手なものだから、足までしか入らなかったのよね~。それを私が猫にしがみついて引きずり込んで……」クスクス

猫耳「笑い事じゃないよ~。あれだけ密着されたら抵抗できないし……」

勇者「ね~こ~み~み~」

ハンター「俺が許す…やれ!」

猫耳「え、な、何?」ガクブル

魔姫「あ。私、水着持ってないわ」

勇者&ハンター「「何っ!」」ガーン

魔姫「残念ねぇ、海で遊ぶのも面白いと思ったんだけど……」

猫耳「あるよ、水着」

魔姫「え?」

猫耳「可愛いの見つけたから衝動買いしてたんだよね。デザイン気に入るかわからないけど……」

魔姫「猫のセンスなら大丈夫でしょ。海、行けるわね」

勇者「よくやったぞ! グッジョブだ、猫耳!!」グッ

ハンター「今ほどお前を有能な猫だと思ったことはない」

猫耳「うん、皆で遊ぶのも楽しいよねぇ」

魔姫「でも、サイズ大丈夫?」

猫耳「大丈夫だよ、僕は魔姫のサイズちゃんと把握し」

勇者「やっぱ許さん!!」ギュウゥ

ハンター「それではすぐに落ちる、なるべく長く苦しませろ!」

猫耳「フギャアアァァ!!」ジタバタ





>海


ザザザザザー


魔姫「急な雨ね」

猫耳「急な雨だね」

助手「急な雨ですね」

ハンター「……タイミングの悪い」

勇者「チッキショオオォォォ!!」ガクッ

魔姫「仕方ないわね。海辺のお店でお茶でも頂こうかしら?」


勇者「ううぅ……せっかくの計画が……」ヨロヨロ

ハンター「また次の機会を待つか……」


猫耳「魔姫、助手、水着着てよ」

勇者&ハンター「「!!!」」

魔姫「どうしてよ」

猫耳「2人の水着姿を見れるチャンスなんて、そうそうないじゃない。せめてもの雰囲気作りで、ね?」

魔姫「そんなに見たいわけ、私達の水着姿?」

猫耳「うん!!」ニコッ

魔姫「もう、仕方ないわねぇ」

助手「それでは、あちらの更衣室で着替えてきましょう」スタスタ


ハンター「フン…上手いこと言うじゃないか、猫耳」

勇者「よっ、この天然スケベ~!」ナデナデ

猫耳「ス、スケベ!? そ、そんなつもりじゃ」アワワ

勇者「赤くなるなよ、こいつぅ!」ギュウゥ

ハンター「ふっ……1人だけ純情ぶるのは許さん」

猫耳「ギニャアアァ、どうしてこんな目に遭うワケェ~!!」ジタバタ


<ギャーギャー


魔姫「何かうるさいわねー。ま、男3人仲悪いよりはいいわね」

助手「このメンバーでいると、ハンター様は活き活きとされています」

魔姫「そう、私もよ。友達とワイワイやってた思い出がないから、今はとても楽しいわ」

助手「そうでしたか。魔王城では、勉強漬けだったとか?」

魔姫「いえ、違うのよ」





魔王城にいた頃は――人間達との争いや、定期的に起こる反乱で、国は荒れていた。
その為、魔王の一人娘である私は安全性を重視され、外に出ることは許されてこなかった。

魔姫『息が詰まるわ! 他の子は自由に遊んでいるのに、私だけダメなんて!』

魔王『仕方ないのだ……姫が外に出れば、必ず姫に危害を加えようという者が現れる』

魔姫『どうして私はお父様の娘に生まれたのよ! 毎日こんなんなら、お姫様になんてなりたくなかったわ!』

魔王『姫……』

今となってはひどいことを言っていたと思うけど――子供の頃の私は、自由が欲しかった。

<あはははっ
<ふふふっ

魔姫『……』

魔姫(いいなぁ)

毎日、外で遊ぶ子供達を眺めていた。同じ国、同じ世界にいるというのに、その子達の存在はまるでファンタジー。
外で遊ぶなんてのは、私にとって遠い世界での話のようだった。





助手「そうだったんですか……確かに、時代が時代でしたからね」

魔姫「私ってワガママで好奇心旺盛だったからね……お父様、かなり苦労されたと思うわ」

助手「子供にとっては当然の不満ですよ。……あ、でも、猫耳さんがいらっしゃいましたよね」

魔姫「あぁ、猫ね。あの子と出会ったのは5歳くらいの頃かしらね」





『西部はほぼ壊滅状態だ……くっ、悪魔王め!』
『こんな時に反乱を起こすなど……』
『大きな痛手だぞ! 悪魔王、許さん!』

魔姫(どうしたのかしら)

大人たちがバタバタしていたのは覚えている。
外の世界を知らない私にとっては、まるで他人事だったけれど。

『生き残りの子供を保護したぞ! どいてくれ!』バタバタ

魔姫『んっ?』クルッ

不意に振り返ったその時――その魔物が抱えていた存在が目に入った。

魔姫(あっ……)

私はその時、初めて間近で小さな子供を見た。
だけどその子は、傷だらけで、土まみれで――その時は顔がよく見えなかった。

私はその子を追いかけて、すぐに医務室に飛び込んだ。

魔姫『ねぇ……』

と、声をかけようとしたら――

魔姫『――』

ベッド上に寝かされたその子はぐったりしていた。
正に、虫の息。
外の子達とは違う。弱い存在。儚い命――幼心に、そんなものを感じた。

『やはりダメかもしれない……この幼い体が、悪魔王の技に耐えられるわけが……』

魔姫『ダメ!』

『! 魔姫様……』

魔姫『お願い、その子を助けて! 治してあげてよ!』


まだ『死』という概念をはっきり知らない私だったけれど、それでも彼を救わないといけないということだけは強くわかった。
ともかく、医師、薬師、魔法使い――あらゆる治療のプロが手を尽くし、彼は1週間後に目を覚ました。


猫耳『………』


その子が、猫耳だった。





助手「そんな出会いが……」

魔姫「あぁ……猫には、本当にひどいことしたわ」ハァ

助手「? 何か」

魔姫「あの子、事件で家族も友達も皆失って……心に傷を負っていたのよ。それで、体が治った後もなかなか心を開かなかったんだけれど……」

助手「そうでしょうね……」

魔姫「私ってばお構いなしに『暗い子ね!』って言って、猫のこと引き連れ回してたのよ」

助手「…………」

魔姫「今では、猫本人は『あのお陰で陰鬱な気分から立ち直れたよ』って笑い話にしてくれているんだけど……。それにしても、ねぇ?」

助手「うーん……ご本人がいいとおっしゃっているなら、結果オーライということで」

魔姫「それでいいのかしらね」

助手「昔の話ですよ。それよりも、早く水着に着替えてしまいましょう」

魔姫「あ、そうね。皆を待たせているものね」ヌギッ

助手「……」ヌギッ

魔姫「……ねぇ助手」

助手「何でしょう?」

魔姫「貴方……着やせするタイプだったのね。ボリュームが……」ジッ

助手「!! あ、あまり見ないで下さい……。魔姫様とは違い、肌も荒れていますし……」

魔姫「水着は肌を晒すのよ、恥ずかしがってどうするのよ~」

助手「ひぃっ、狙いを定めないでーっ」

魔姫「あはは、助手ってばいつもクールだから新鮮だわ~」

助手「ま、魔姫様ぁ~……」


ズドオオオォォォン


魔姫「!? 壁が……」

助手「破壊された!?」


<ワアアアァァ バタバタ……

大たこ焼き「グオオオォォン」

魔姫「野生の魔物だわ!! ふん、蹴散らしてやるわよ!!」

助手「……服、どこに行きましたかね?」

魔姫「………」


勇者「魔姫さーん、助手ーっ!」ダダツ

魔姫&助手「「!!!」」

勇者「あぁ良かった、無事なnゲブヒャアアァァッ」

魔姫「来るなーっ!!」バチバチバチッ

助手「接近禁止です!」ゴオオォォ


ハンター「おぉ……見事に最悪なタイミングだったわけか」

猫耳「視線そらしていこー……」

勇者「く……しかしデッケェ魔物だな。雨で良かったかもな、海水浴客が多かったらパニックになっていた」


大たこ焼き「グオオオォォッ」ビュン

魔姫「!!」

猫耳「……っ!! 魔姫、逃げ――」


バッ


ハンター「何をしようとしている、この軟体動物が」ザシュッ

勇者「無防備な女性を狙う辺り、下等生物だな」ザシュッ

ボトッ

猫耳「!! タコの足を切り落とした……」


ハンター「助手、魔姫。そこでじっとしていろ、すぐに終わらせてやる」

勇者「この程度の奴ら、俺たち2人がいりゃ十分だな!」

大たこ焼き「グオオォォォン!!」

ハンター「勇者。タコの痛覚は、目にしかないそうだ」

勇者「へぇ、なるほど。じゃ、目を狙っていくか」

大たこ焼き「グオオオオォォォ!!」ビュンッ

勇者「でりゃあああぁぁぁ――っ!!」ザシュッ

ボトッ

勇者「攻めてこようがガードされようが関係ねぇ。邪魔なモン全部、切り落とすだけだ」

ハンター「その通り。単純作業だが、まぁいいか」チャキ


猫耳(わ、わぁ……。圧倒的だ)

魔姫「猫!」

猫耳「えっ、な、何?」

魔姫「バスタオル持ってたわよね! ちょうだい!」

猫耳「あ、う、うん!」

魔姫「猫! 上、上っ!」

ドンッ

猫耳「ぎにゃあ!?」

勇者「わり、猫耳。そっち気にかける余裕なかった」

ハンター「気をつけておけ…ここは戦場だからな」

猫耳(ひどいよー…でっかいタコ足もろに当ててくるなんて)クラクラ

助手「……勝負あり、ですね」

猫耳「え?」


勇者&ハンター「「はああぁぁ――っ!!」」

――ズシュ

大たこ焼き「グアアアァァァァッ!!」

ドオオォォン

魔姫「討伐完了。ま、勇者ならノーダメージで倒せると信じていたわ」

勇者「魔姫さああぁん! 貴方からお褒めの言葉を頂くなんて、俺は幸せ者ですッ!!」

ハンター「おい、勇者だけか!? 俺は」

魔姫「だから、こっち見るな!!」バチバチバリイィィッ

勇者&ハンター「「ぐああああぁぁぁ」」

魔姫「猫、早くバスタオルを」

猫耳「う、うん! ……ねぇ」

魔姫「なに?」

猫耳「その……僕はいいの?」

魔姫「? 何が?」

猫耳「あ、いや……何でもない。はい、バスタオル」

魔姫「ありがと。さて、ガレキに埋もれた服を探し……って、貴重な男手がノビてるわ」

助手「攻撃したのは、魔姫様ですがね……」

猫耳「ぼ、僕が探すよ!」

魔姫「いいわよ、力自慢の2人にやってもらうから。ほら2人とも、起きた起きた!」ペチペチ

猫耳「………」





>翌日


魔姫「ふぇっくしょん!」

ハンター「風邪でも引いたか?」

魔姫「そうかもね……」グスグス

ハンター「ずっと裸で雨に打たれていたからな。助手も昨日から寝込んでいる」

勇者「申し訳ないです! 俺が海に誘ったばっかりに!!」

魔姫「別に気にしなくて……ふぇっくし!」

猫耳「魔姫、寝た方がいいよ。早く治さないと、今度のお祭りにも行けなくなるし……」

魔姫「そうねー…何か新しい仕事入ったみたいなのに、行けなくてゴメンね」

勇者「なーに言ってんですか、魔姫さん! 俺が魔姫さんの分まで戦いますって!」

魔姫「そうね、勇者は頼れるわ」

ハンター「おい。俺に当てつけか?」

勇者「仕方ないじゃん。ハンター、魔姫さんより弱いんだし」

魔姫「大丈夫大丈夫、ハンターも人間にしてはやるから。頼れはしないけど」

ハンター「お前らなぁ~……」

勇者「はいはい、さっさと行くよハンター」ズルズル

ハンター「覚えてろ……」グヌヌ

魔姫「行ってら……ふぇっくしょん! ふぅー。寝てくるわ」

猫耳「あ。うん」





魔姫(とはいえ、昨晩はタップリ寝たから眠くないのよねー……)

トントン

猫耳「魔姫ぇ……起きてる?」

魔姫「あら猫? どうしたの」

猫耳「ホットミルク作ったよ。飲む?」

魔姫「あら、ありがとう。頂くわ」

猫耳「入るよ。……あー、魔姫。ダメでしょ、そんな薄いパジャマ着てー」

魔姫「だって暑いんだもの」

猫耳「風邪の時はあったかくして、おでこと脇の下を冷やすんだよ。保冷剤持ってくるから、ちゃんと着替えておいてね」

魔姫「はーい」ヌギッ

猫耳「!! 僕が出てってから着替えて!!」

魔姫「何を怒っているのよ。それより、保冷剤持ってきて」

猫耳「~っ……」





猫耳「はい、持ってきたよ」

魔姫「ありがとう。んー、冷たいの気持ちいい♪」

猫耳「当てるのはほっぺじゃなくて、おでこだよ」

魔姫「暑いんだもの。汗を流したいわー……」

猫耳「熱が下がるまで、お風呂はダメだよ」

魔姫「えー、そんなのイヤよ」

猫耳「イヤでもダメなの! 魔姫ってそうやって言うこと聞かないで、よく風邪を悪化させるよね!」

魔姫「もー、わかったわよ。だから怒らないで、猫」

猫耳「うん、言うこと聞くならいいよ」

魔姫「だから、体拭いてよ」

猫耳「………にゃ?」

魔姫「おねがーい……体がダルくて力入らないのよー……」

猫耳「ダ、ダメだよぉ! 女の子の体を拭くなんて、そんな」アワアワ

魔姫「なーに言ってるのよ、私と猫の関係じゃない」

猫耳「………」

魔姫「猫?」

猫耳「……背中だけだよ」

魔姫「えぇ、お願いねー♪」

猫耳「……」





魔姫「ふぅ、さっぱりしたわー」

猫耳「はぁー…もう何もない?」

魔姫「えぇ、ありがとう。何か眠くなってきたわー…」フアァ

猫耳「なら、寝た方がいいよ。僕は夕飯でも作っているよ」

魔姫「よく働くわねぇ。ちょっとは休みなさいよ」

猫耳「いや…僕は疲れてないから」

魔姫「そう? 何か様子がいつもと違うわよ。余裕がないみたい」

猫耳「……っ」

魔姫「私のせいかしら?」

猫耳「えっ!?」

魔姫「いつもの猫なら、不満はちゃんと言ってくれるのに……私が風邪を引いているから我慢してるのよね」

猫耳「……本当だよ」

魔姫「ごめんね。猫にはつい甘えちゃってワガママばかり…なんて、言い訳にならないか。伏せている間、反省しておくから」

猫耳「……甘えられるのも、ワガママ言われるのも、嫌じゃないよ」

魔姫「え?」

猫耳「だって魔姫は僕にとって特別だから……だから、全然嫌じゃない」

魔姫「……そうね。私にとっても昔から、猫は特別な存在よ」

猫耳「どういう意味で?」

魔姫「え?」

猫耳「魔姫は僕に対して無防備すぎるよ……! 僕に気を許してくれているのかもしれないけど、どうしてなの! 僕には度胸も力もないから安全だと思ってるの!? それとも――」

魔姫「猫……?」

猫耳「――それとも」


僕のこと、男だと――


ドォン


魔姫&猫耳「「!?」」

魔姫「下で音がしたわね……」

猫耳「僕が見てくるよ! 魔姫はここにいて!」ダッ


猫耳(尋常じゃない物音だったけど……)


「おい、そこのクソガキ!!」

猫耳「!!」バッ

賊A「魔姫んとこのガキだな?」

賊B「間違いねぇ。魔姫の従者の、猫耳だ」

猫耳「だ、誰だ! 勝手に入ってきて!」

賊C「あぁ? ただのお客様だよ、お客様!」


猫耳(そんなわけない。こいつら人間みたいだけど……そう言えば!)

猫耳(魔姫達がギルドの依頼で残党狩りをしているように……裏社会にも、裏社会にとって邪魔な者を排除するギルドがあると聞いたことがある)

猫耳(こいつら……ギルドの依頼で、魔姫を殺しに来たんじゃ……!)

賊A「聞いたぜ。お宅の今日の残党狩り、今日は人間2人だったそうじゃないか?」

賊B「魔姫は体調でも崩したか? それとも、人間とは仲違いしたか?」

賊C「ちょっくら、ご挨拶させてくんねェかなぁ?」

猫耳(魔姫は今、大分弱っている……。こいつらに会わせるわけにはいかない!)

猫耳「魔姫は出掛けているよ。帰りは遅くなるんじゃないかなぁ?」

賊A「へぇ? それじゃ、待たせてくれねェかな」

賊B「そいつはいい。茶でも出して、もてなしてくれや」

猫耳「……」

猫耳(こいつらを追い出す手段はない……ここに留まらせておいて、勇者とハンターが戻ってくるのを待つしか……)

賊C「いや、待て」

猫耳「っ」

賊C「もし先に、勇者達が戻ってきたらどうする。相当厄介なことになるぞ」

猫耳(…っ、読まれていた!)

賊A「それもそうだが、引き返すわけにもいかねぇだろ」

賊B「だなァ……どうするんだ?」

賊C「そりゃ勿論」ジロ

猫耳(……!? ぼ、僕!?)

賊C「おいガキ。魔姫がどこ行ったか、知ってるんだろ?」

猫耳「えっ……し、知らな」

ドゴォ

猫耳「――っう!! ゲホ、ゲホッ!!」

賊A「従者であるお前が知らないはずがない。おい、教えな」グイ

猫耳「本当だよ……魔姫は勝手に出かけること多いから……」

賊B「嘘つくんじゃねぇぞ!!」バキィ

猫耳「ぎにゃっ!!」

賊C「どうしてもそう言い張るなら……徹底的に痛めつけるだけだ」グリグリ

猫耳「~~っ……」

猫耳(耐える……こんなの、大したこと――)


バッ


魔姫「何をしているのかしら?」


猫耳「!! 魔姫……」

賊A「はっ、出かけてたなんて嘘じゃねーか。パジャマ着て真昼間からグースカ寝てたわけかよ」

魔姫「黙りなさい。私を怒らせたからには、どうなるかわかっているんでしょうね?」

賊B「望むところだ。お前の首には莫大な懸賞金がかかっているんだ」

賊C「それに見たところ顔が赤い。熱でもあるんじゃねーか?」

猫耳「魔姫、早く逃げて! こいつら、魔姫のこと――」

魔姫「心外ね」

猫耳「っ!?」

魔姫「いくら弱ってても、小物にやられる私じゃないわーっ!!」バチバチバチッ

賊's「「ぐあああぁぁぁ」」

魔姫「ふん、反省なさい」

猫耳「魔姫…ぇ」

魔姫「猫、怪我してるわ! 早く治療を……」タタッ

猫耳「!! 魔姫、危ないっ!!」バッ

魔姫「え――」


ドゴォ


魔姫「!!」

猫耳「~~っ……ゴホッ」

賊A「ちっ、このガキ邪魔しやがって。狙いを外したぜ」

魔姫「なっ……!? ピンピンしてる!?」

賊B「ちょっとシビれるくらいで、大したことなかったぜ」

賊C「どうやら、魔力まで弱っているみたいだな?」

猫耳「……ぅ」

魔姫「猫、猫っ!! しっかりして!!」

猫耳「僕はいいから……逃げて、魔姫……」

賊A「おっと、そうはいかねぇ。俺らは、お前を殺す為に来たんだよ」

魔姫「……っ!」ギリッ

賊A「そう睨むなよ。強がってるのが見え見えで可愛いねぇ」ヘヘヘ

賊B「顔だけは傷つけんなよ。ギルドに出す時、判別がつかなくなるからな」

賊C「あばよ、姫様……地獄でお父様がお待ちしてるぜ」

魔姫「……っ!!」

猫耳(魔姫……っ!!)


――どかっ


賊A「ぐっ!?」

魔姫「あ――」

猫耳「……え?」


勇者「何か……グッドタイミング? あ、それとも遅かった?」

ハンター「2人とも生きている。だが――」

勇者&ハンター「「お前たちは許さん」」

賊's「ひっ……」


ぐあああああぁぁぁぁぁ……


魔姫「2人とも、来てくれたのね……。猫、無事……?」

猫耳「うん……僕は大丈夫」

魔姫「そう……何か、安心したらどっと眠気が……」フラッ

猫耳「魔姫……うっ」ズキッ

勇者「あ、魔姫さんと猫耳が!」

ハンター「こいつらの粛清の続きは後でだな。おい、今助けてやるからな!」ヒョイッ

猫耳「ありがと……う」ガクッ

猫耳(力強い腕。魔姫を守るに相応しい。僕とは……何もかもが、違う)





魔姫「う~ん……」

勇者「何てこった! 魔姫さんの熱が上がったぞ」

ハンター「今、医者を呼んだ。熱が下がるまで、俺とお前が交代で護衛だな」

猫耳「ごめん……」

勇者「謝ることじゃないって。それより、自分の体心配しな」

猫耳「大丈夫。見た目が派手なだけで、大したことないから……」

ハンター「そうか、安心した。俺は一旦家に戻って諸用を済ませたい。2人とも、この場は任せたぞ」

勇者「了解。さーて…猫耳、ちょっと休ませてくれ。ちょっと疲れててよ……異変があったら大声で叫んでくれ」

猫耳「うん、わかった」

猫耳「……」

魔姫「うぅーん……」

猫耳「魔姫、安心してね……。頼りになる2人がいてくれるんだもん。もう、怖い目に遭うことはないよ」

猫耳「てか勇者はわかりやすいけど、ハンターも絶対、魔姫のこと好きだよね」

魔姫「うーん、うーん……」

猫耳「でもね、魔姫。僕だって――」スッ

魔姫「……すぅーっ」

猫耳「魔姫のこと――守りたいって、思っているんだよ……?」





『あいつ、出来損ないなんだってよ』

『魔物のくせに、戦えないんだ』

『何であんな奴が、魔姫様のお側にいるんだ』


猫耳『……』


魔物というものは本来、屈強な肉体もしくは魔力に恵まれた、戦う力に優れた種族だ。
だけど――僕は多くの魔物が持つその特性から、外れてしまった。


猫耳『力が……出ない』


それは、死の淵から生還した代わりに失ったもの。
悪魔王の技で傷つけられた体は、戦いの為の機能を失ってしまった。
悪魔王に恐怖心を植えつけられた心は、魔力を生み出すことができなくなってしまった。


猫耳(僕は――どうして生き残ってしまったのだろう)


生き残っても仕方ない。この命に価値はない。死んでも、誰も悲しまない――はずだった。

だけど――


魔姫『猫っ!』ポンッ

猫耳『! 魔姫様……』

魔姫『ボーっとして、どうしたのよ。相変わらず、暗い子ねぇ』

猫耳『ほっといてよ……』

魔姫『いーえ、ほっとかないわ! ダーツの相手を探してたのよ!』

猫耳『何で僕……』

魔姫『相手がいないからに決まってるでしょ』

猫耳『……変な奴』


他に友達がいれば、自分なんかに寄り付きもしないだろう――けど、


魔姫『ホラ、来なさい! 来ないなら、引っ張っていくわよ!』

猫耳『……わかったよ』クス


魔姫は、自分を必要としてくれる、唯一の存在だったから――





魔姫「うぅん……」


朦朧とする意識の中、夢を見ていた。
あれは――昔の光景。


猫耳『もーっ、魔姫のばかぁ!』

魔姫『何よぅ、猫のわからずや!』

昔、猫と喧嘩したことがある。理由は今にしてみれば、他愛ないことだった。
とにかくその喧嘩で、私は猫と絶交することにした。…のだけれど。

魔姫『猫ったら、何で謝りに来ないのよーっ!』プンスカ

喧嘩から2日経っても猫が謝りに来ないことに、私はひどく憤慨していた。

魔姫『謝りに来たら、許してあげようと思ってたのに……』

魔姫『謝りに来れない理由でもあるの? ……どうして、来てくれないのよ……』

魔姫『もしかして。猫が私を許してない、とか……?』

ワガママ放題に生きてきた私は、そんなことすら気付くのに遅れて。

魔姫『……何で、私が謝らないといけないのよ!』

魔姫『……でも………』

魔姫『このまま……猫と遊べなくなるのかしら』ジワァ

初めての喧嘩で、どうしていいかわからなくなって、心がぐちゃぐちゃになって。

魔姫『……そんなのは、イヤ!』

だけど、だからこそ、行動しなきゃ、って思えて――
気づいたら、猫の所に走り出していた。

魔姫(猫、猫――)

はやる気持ちが足を急がせた。
1分でも、1秒でも早く猫に会いたくて――


魔姫『猫――っ!』





魔姫「猫……」

ボーっとする。景色が変わり、目の前に天井があった。
猫はどこ――そう考えながら周辺を見て、ようやく気付く。

あぁ、あれは夢だったの。

魔姫「……猫?」

だけど夢から覚めても、私は猫を探していた。
何だか心細くて、猫に会いたくて――

ガチャ

魔姫「!」バッ

ハンター「よぅ。起きてたか」

魔姫「……猫は?」

ハンター「今はいない」

魔姫「え……っ」

ハンター「俺と勇者に看病を任せると言って、どこかに行っちまった。行き先くらい告げていきゃいいものを……」

魔姫「猫が、いない……」

ハンター「まぁあいつのことだ、そう遠くには……」

魔姫「猫……」ポロポロ

ハンター「!?」

魔姫「どうして、どうしていないのよ……」

ハンター「あー…まだ熱があるのか? 寝ておけ、じゃあな!」ピュー

魔姫「猫……」

何故だか無性に悲しかった。
猫がいない状況、夢の続きみたいで――まるで、あの時の私の心境そのもの。
どうしてこんな気持ちになるのかわからない。だけど、とにかく――

猫に、傍にいて欲しかった。





それから熱にうなされながら、何度か夢を見た。
夢の中の私は、猫を探していた。
生まれ育った魔王城、父亡き後に転々とした地、中央国のお祭り――

一緒に過ごした場所なのに、猫はどこにもいなかった。

孤独だった私の側にいてくれた。
父を失った後も側にいてくれた。

側にいてくれたから、私は元気でいられた。

だから――猫がいないだけで、私の心はこんなにも心細くなって、世界から取り残されたような暗闇に包まれてしまうの。


「魔姫」

魔姫「!」





魔姫「……」

猫耳「あ、目を開けた。お薬、飲める?」

魔姫「……猫」

猫耳「僕のこと、わかるの? 2人から聞いた話では、何か熱で頭がボーッとしてるって聞いたから……」

魔姫「猫っ!」ギュッ

猫耳「にゃにゃっ!?」

魔姫「どこ行ってたのよぉ……探したんだからね……!!」

猫耳「探し……? ぼ、僕も薬草を探しに行ってたんだよ」

魔姫「薬草……?」

猫耳「うん。お医者さんによると、魔姫は変なウイルスに感染してたみたいで……その薬草は、ネコ科が好きな類のって聞いて」

魔姫「だからってどーして、わざわざ貴方が採りに行くのよ!! バカなんじゃないの!」ポカポカ

猫耳「バ、バカって……。でも、そうだよね……僕みたいな奴が行くより、他の人に頼んだ方が確実だもんね」

魔姫「そういうこと、言ってるんじゃない……」ギュウ

猫耳「え……っと?」

魔姫「こういう時に、いなくならないでよ……猫は、いて当たり前なの! いなきゃダメなの!」

猫耳「……ワガママだなぁ、魔姫は」

魔姫「ワガママな私を受け入れてくれるのは、貴方だけだもの……」グスグス

猫耳「そんなことないよ。勇者やハンターだって……。魔姫はもう、僕以外にも仲間がいるじゃない」

魔姫「それでも、猫が特別なのはずっと変わらない」

猫耳「魔姫……」

魔姫「貴方がいないだけで、不安で心細くてたまらないのよ……だって猫はもう、私にとって特別な家族で……」

猫耳「……ぅ」

魔姫「……?」

猫耳「魔姫ぇ」ボロボロ

魔姫「ちょ、猫!? あ、貴方、何泣いてるのよ!?」アセアセ

猫耳「ふええぇぇぇ」





魔姫「落ち着いた? 全く…病人に気を遣わせるんじゃないわよ」

猫耳「グスッ、ごめんね魔姫……でも僕、僕、嬉しくて……」グスグス

魔姫「嬉しい……?」

猫耳「僕は……力もないし、弱いし、頼りにならないし……。魔姫だけが僕を必要としてくれていたのに、僕はずっと、役に立たないままで……だからせめて役に立ちたくて……」グスッ

魔姫「……だから、薬草を」

猫耳「せめて、僕も魔姫の助けになりたいって思って……」グスッ

魔姫「十分、助けてもらってるわよ。猫がいなければ私、とっくに孤独死してたわ」

猫耳「魔姫……」

魔姫「だから……ね? 猫には、側にいてほしいの。今までだけじゃなくて、これからもずっと……」

猫耳「うん……うん!」


~♪


魔姫「……あら、この音楽は?」

猫耳「お祭りの音楽かな? 今日だったんだよ」

魔姫「あぁ……風邪のせいで、行きそびれちゃったわねぇ」

猫耳「来年行こうよ。……僕たち、ずっと一緒なんでしょ?」

魔姫「ふふ……そうね」


~♪


猫耳「……それにしても、聞き覚えある曲だよね。何の曲だっけ?」

魔姫「ウエディングソングの定番じゃなかったかしら」

猫耳「あ、そうだったねぇ。はは、昔を思い出す……」

魔姫「……」

猫耳「……」

魔姫「ね、ねぇ」

猫耳「な、何っ!?」

魔姫「む……昔はよくやったわよね! 結婚式ごっこ!」

猫耳「にゃにゃっ!? お、思い出しちゃったの!?」

魔姫「まぁ……。むしろ、何で忘れてたのかが不思議なくらい……」

猫耳「そ、そう」

魔姫「ねぇ、猫」

猫耳「ん……?」

魔姫「また……する?」

猫耳「……ふにゃっ!?」

魔姫「せ、せっかくロマンチックな音楽だし……お祭り、行けないし……ねぇ?」

猫耳「理由になってないにゃ……」

魔姫「……嫌かしら?」

猫耳「………」ドキドキ


猫は黙って目を閉じる。

男女の役割が逆でしょ――そう苦笑いしながら、私は彼との距離を縮める。
昔と変わらず、あどけなくて可愛らしい顔に胸が高まる。

気分を盛り上げるのは、音楽の国の演奏――って、ん?


魔姫「……待って。何で、遠方の国の音楽がここまで聞こえ……」

<ガサガサ

魔姫「ん? 窓の外に何か……」


ハンター「おい、音楽止まったぞ。ネジ巻け、ネジ」

勇者「待って、待って! ねーじねーじ」グルグル

ハンター「全く……肝心な時に音楽が止まるとは、お前のそういう所が女を遠ざけているんだな」ハァ

勇者「何だとぉ! 俺だって頑張って……」


魔姫「何をしてるのかしら?」ニッコリ

勇者&ハンター「」


<グアアアアァァァァ


猫耳「魔姫の調子が戻ったにゃー」

魔姫「もー…まさか見られてたなんて」カアァ

猫耳「いいじゃん魔姫、見せつけてやれば♪」

魔姫「……えっ?」


チュッ


魔姫「……」

猫耳「えへへ。これで、公認カップルだにゃ~」

魔姫「な、な……」プルプル

ハンター「天然……なんだよな?」

勇者「恐ろしい逸材ですな」

魔姫「ね、猫ぉーっ!」

猫耳「わー、逃げろぉーっ!」


私と猫は、ずっと一緒。今までも、これからも――それを誓い合った今日は、特別な日。


魔姫「覚えてなさいよーっ。一生逃がさないからねっ!」



Fin


あとがき

猫耳は、本編では魔姫に男と意識されてない状態だったので、恋愛仲にするにはどうしたもんかと悩みました。
幼馴染って王道だけど、ずっと友達止まりの関係だったら進展が難しいんですねコリャ。
でも、魔姫が1番素直になれる相手は猫耳だと思ってます。

ちなみに悪魔王のせいで戦えなくなった設定は完全なる後付けなのですが、矛盾はない……ですよね?((
posted by ぽんざれす at 17:14
"魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」/猫耳ルート"へのコメント
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